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第1回<大正4年>全国中等学校野球選手権大会

予選関西大会
<決勝> ○和歌山中学-市岡中
和歌山中2回表好機を逸した後、市岡得意のバント戦法で1点を先取したが、その後かえって固くなり6回入るや、中島投手二死乱れて押し出しの2点を与えて、攻守所を替え和歌山中の意気大いに上がって制勝。関西代表となった。

全国大会
<1回戦> ○和歌山中―久留米商
先攻の和歌山中は四球2個と矢部の適時安打、中筋の左中間二塁打で計3点を入れたが、久留米もその裏3安打連発して1点を返し前半は小康を保つたが、6回に至るや和歌山中一死満塁となり、四球押し出しと遊匍失に2点追加した。久留米はその裏、和歌山中内野陣の連失で1点を報い善戦したが、8回無死満塁のピンチにバント攻めを食らって混乱し、安打を織り交ぜて一挙9点を奪われ勝敗を決した。

<2回戦> ○和歌山中―鳥取一中
鳥取は終始走者を出して圧迫しながら、しばしば無謀な盗塁を企て矢部捕手の強肩に刺され好機を逸したことと、バント守備法を知らなかったのが敗因。
和歌山中は鹿田投手の外角球に完封され僅かに1安打、二塁に達した者1人とういう貧攻ぶりで8回裏に犠打と遊匍失に1点を与え敗色いよいよ濃厚と見えてきたが、最終回バント攻めに鳥取守備全く混乱し一挙7点を入れ快勝した。

<準決勝1> 和歌山中―京都二中(ドローゲーム)
和歌山中先攻、2回表に迎えた好機を巧みに生かして1点を先行したが京都二中もさるもの、その裏長打を放って同点にこぎつけ、以後戸田・藤田両投手の投げあいは1点を争う熱戦となったが、9回表一死後のとき降雨激しく、ドロンゲームとなる。

<準決勝2> ×和歌山中―京都二中
京都二中は1回二死後、遊匍トンネルを中堅手も後逸して1点。更に三匍に2点を先行し、3回以後は毎回良く打って小刻みに得点を重ねた。一方和歌山中は2回2走者を置いて小笠原右前安打って2点、8回は二死満塁となって四球押し出しと戸田の二匍失に3点を返したが時既に遅く涙を呑む。



第2回<大正5年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<決勝> ○和歌山中―高野山中

新進・高野山は前日と打って変わって振わず、エラー続出し、和歌山中1回に3点、5回5点、6回3点、7回5点と後半毎回得点を重ね、高野山は9安打を放ちながら散発に終わり全く一方的に和歌山中が大勝した。前半善戦しながら後半崩れたのは守備の破綻が大敗を招いたといえる。

全国大会
<1回戦> ○和歌山中―鳥取中
鳥取は打てず、1回三匍暴投に1点先取したのみ。和歌山中は2回長岡遊匍失に一挙二進、小川のバント安打となって一・三塁となり柳とのスクイズに1点。紀のバントは看破され小川三・本間に挾殺されたが、柳三盗の時、捕手三塁へ暴投して1点を追加。その後波乱なく和歌山中の攻撃も散発安打に終わり制勝した。

<2回戦> ○和歌山中―広島商
和歌山中は3回・5回小刻みに得点を重ねリードしたが、広岡7回牛尾四球、増岡・島田の安打と三進の走者を刺さんとして9-2-5の送球外れ外野に転々とする間に走者を一掃し、更に二死後、石本の左中間三塁打と遊匍失に一挙4点を奪って逆転した。しかし、和歌山中は屈せず8回奥山一塁失に無死走者を出すや、得意のバント攻めが功を奏し敵陣をかき乱し再度逆転、9回に止めの1点を加えて快勝した。

<準決勝> ×和歌山中―慶応普通
和歌山中は1回奥山・中前安打しバント攻めが悉く内野安打となって2点を挙げ、2回にも紀スクイズ失敗に小川挾まれたが三塁手の失策に救われて生還、計3点を挙げ押し気味に見えたが、慶応は2回二死後、足立右翼本塁打し5回2安打に各1点、6回にも二死後、四球に1走者を出し重盗を企て成功し同点に追いつき、9回さらに当たり屋足立安打しバントと野選で生還したのを足場に和歌山中の内野陣を乱し、加うるに山口左翼越本塁打を雄飛し大きく引放した。和歌山中は折角前半リードしながら、健闘空しく慶応の試合巧者に屈したゲームであった。



第3回<大正6年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<紀和決勝> ○和歌山中―奈良師範
奈良勢は無安打。三振13、守っては失策21の成績で示す通り実力において問題とならず和歌山中は悠々大勝した。

全国大会
<1回戦> ×和歌山中―京都一中
投手戦に終始し和歌山中は3回の得点機を逸した他振わず、これに反し京都一中は7回赤座二遊間安打に出てバントで二進後、投手の2塁牽制暴投に長駆生還、決勝の1点を挙げた。この年、歯医者復活規定を採用した為、和歌山中は愛知一中と再び対戦。

<敗者復活戦> ×和歌山中―愛知一中
和歌山中は愛知・長谷川投手を打ち込めず終始得点のチャンスがなかったが、愛知は1回二死後、長谷川左翼三塁打を放ち小島の適時安打に1点先行した。その後6、7回にも好機を作り押し気味に試合を進め、一方和歌山中・谷口投手も得意のカーブで健斗し3安打、10三振をとり最後まで追加点を許さなかったが味方の打撃不振で惜敗した。



第4回<大正7年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<紀和決勝> ○和歌山中―郡山
すでに7月25日より各地の予選行われ代表校決定され続々チーム上阪集結をみたが、折柄、米価問題に因を発して米騒動が起り、富山県滑川町から京阪神に飛火するに及び8月13日至り、朝日新聞社が人心不安と群衆心理の恐ろしさ、形勢益々険悪なのを考慮して大会中止を発表した。



第5回<大正8年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<紀和決勝> ○和歌山中―奈良師範
奈良勢のレベルは未だ和歌山中の敵でなく、和歌山中の独走に任せた一戦であった。

全国大会
<1回戦> ×和歌山中―神戸一中
和歌山中は1回戸田左翼二塁打、3回井口安打で出たが入らず、6回一死後、神田三塁を抜き戸田の左中間二塁打に1点を先取したのみ。一方神戸は7回一死後、来田二越安打し吉田の左前安打で生還同点として更に8、9回に敵失、犠打、安打に各1点を加え神戸一中勝つ。



第6回<大正9年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<紀和決勝> ○和歌山中―奈良師範
両チームの実力に格段の差あり和歌山中は1回4個の四球と敵失、井口の安打に一挙6点、更に4回二塁打3本、単打2本を放ち敵失、四球が加わって8点を加え一方的に試合を進め7回コールド・ゲームで大勝した。

全国大会
<1回戦> ×和歌山中―京都一商
先攻の和歌山中1回戸田遊越安打、北島中堅越二塁打を放ったがむなしく3回浜中、中飛失に生き捕逸に二進、二死後戸田の中前安打に生還1点を先取したが、この日北島投手試合前の練習不足からか全然押さえが利かず悉く高目に球が浮き制球に苦しむ、京都一商その裏犠打と安打で同点となし4回には制球難の北島投手を攻略して満塁に四球と2安打、失策に一挙4点を加え逆転、後半はしばしば走者を出すも波乱なく1回戦で早くも和歌山中姿を消した。



第7回<大正10年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<紀和決勝> ○和歌山中―郡山中
両軍の実力に隔りあり和歌山中は1回深見の三塁打、柳、田島の二塁打に敵失を加えて一挙5点を入れ更に2回1点、5回深見再度の三塁打を放ち6回四球と失策、安打に3点を加え全く無人の境を征くが如く大勝した。

全国大会
<1回戦> ○和歌山中―京都一商
不戦勝の和歌山中は神戸一中と対戦したが、神戸は北島、井口両投手に完封され僅かに2安打に終わった。
これに反し和歌山中は1回戸田遊匍失に出るや深見、井口の二塁打を初め4安打を集中5点を挙げ2回にも二死後、北島中前安打、二、三塁を連盗し暴投に得点、後半は更に猛打を振って大量得点を重ね8回戸田中堅本塁打を放つなど驚異的な強さを示して大勝した。

<2回戦> ○和歌山中―釜山中
釜山は7回まで4安打散発したばかりで、9回ようやく山本右翼線二塁打し捕逸と二木の安打に零敗を逸れた。和歌山中は1回戸田二匍高投に一挙に二進、深見、堀の安打、北島の左中間三塁打など猛打を浴びせて5点、更に3回四球と敵失、武井の中堅安打など4点、4回にも戸田の右越三塁打、井口の安打、四球で4点加えて問題とせず恰も傍若無人の境を征く有様で和歌山中の大勝に帰した。

<準決勝> ○和歌山中―豊国中
和歌山中1回、戸田右安打し犠打と井口の三匍失、北島の遊越安打に2者生還、2回にも三塁安打の柳が高木の犠打と戸田の中前安打に1点を加え、更に3回井口三匍失に始まり北島の遊越安打と四球、武井の右飛失、戸田の中堅安打後逸で一挙5点を入れ大勢を決した。この波に乗った和歌山中の攻撃振りは驚異的で相手の繰り出す2投手をまるで打撃練習のように打ちまくり大勝した。

<決勝>
京都一商は頼みとする竹内投手準決勝に足を挫いて欠場したのが手痛く和歌山中1回当たり屋戸田中堅二塁打し8-4の返球悪役に三進、田島の三匍に幸先良き1点を挙げ、3回武井左翼二塁打し戸田二匍失に続くや田島左翼線二塁打して2者を迎う。更に敵失と2個の四球と深見の二塁打など安江投手に襲いかかり一挙5点を加う。京都一商も屈せず3回田中四球、川越の三匍に二進、河瀬二越安打して二盗、原田の二匍失に2者生還、二死後、小冠者、川越左翼線二塁打し原田の中前安打に1点を返し差2点と迫って善戦健斗した。
しかし和歌山中は5回堀、高木の安打で1点、6回には一死後、田島三塁上を抜き井口の一打、左中間を抜く二塁打となって生還、更に敵失、四球、犠打で2点加えて7回には戸田の左中間2ランホーマーで2点、8回には気力を失った安江投手に攻撃の手を緩めず堀の右越本塁打で2点、更に敵失と深見・武井の安打で2点計4点を加え16-4の大差をもって優勝した。
京都一商の善戦を期待されながら和歌山中の猛攻に当初より意気消沈、先頭打者、川越の攻守好走の活躍は目覚しかったが内野守備特に遊撃と一塁手に欠陥多く捕手の邪飛捕球にも難あり、しばしばピンチを招いた。和歌山中、北島投手は前年同じ京都一商戦に自らの制球難に苦敗を喫しておるだけに一ヶ年の涙ぐましい精進ぶりが報いられ、本大会では見事な出来栄えで外角低目をつく剛速球がよくきまり与えた四球、4試合に僅かに6個という好投ぶりを示し主将の重責を十二分に果たした。



第8回<大正11年>全国中等学校野球選手権大会

<紀和大会予選> ○和歌山中―郡山中
郡山はしばしば好打を放って和歌山中陣営を脅かしたが、得点するに至らず、和歌山中は野田投手を打ち悩み安打こそ少なかったが、1回バント攻めに2点、3回にも安打と犠打で2点、5回敵失で1点と小刻みに試合巧者振りを発揮して得点を重ね制勝した。

全国大会
<1回戦>
和歌山中の攻撃大いに振い1回先頭打者、田島左中間を破る三塁打を放ち深見の左飛に生還、井口四球後、安打と高村二匍失に1点を加え早くも2点を挙げ幸先良し。3回柳右中間二塁打し深見・井口の安打で2点、その後小康を保ったが、最終回二死後から深見二匍失、井口一匍失に出るや、武井の適時安打と高木の右中間三塁打に止どめの4点を加えた。これに反し早実は井口投手の制球力豊かな変化球が打てず、僅かに3安打に終わり8回漸く三塁を踏むといいう貧功振りで全然良いところがなかった。

<2回戦>
和歌山中は第一打者田島いきなり右翼越本塁打して、敵胆を奪い柳三匍悪役に生きバントと井口の右前安打に早くも2点を先取す。更に3回には一死後、深見左中間に本塁打し4回は敵内野陣の乱れに乗じて1点着々得点を重ねて断然優勢、後半は立命投手力投して無得点に防いだが肝心の打線不振で2回安打の右前適時安打で1点を返したのみ、6回には無死満塁と攻めながら井口投手の力投に三者三振に討ち取られ、後半の善戦も空しく和歌山中の軍門に降る。

<準決勝>
両軍投手の好投に緊迫な投手戦となり、和歌山中は立ち上がり敵内野陣の堅くなった連失に2走者を出し期待された深見三振したが、井口左越二塁打を放って堂々2点先行した。しかしその後は三塁踏む者なく、一方松本も8回まで1安打、毎回凡退を続けたが、最終回一死後、田中、中越三塁打を放ち河村の二塁間安打に還えり差1点と迫り俄然ゲームは白熱化した。続く黒田の投匍二塁悪役を誘い、2者ともセーフ、更に重盗成って波乱を捲き起こしたが小林の二飛に併殺、和歌山中は危機を脱して快勝したが最後まで手に汗握る好試合であった。

<決勝>
大会随一の大立物浜崎投手を有する神戸商に対して和歌山中の苦戦は予想されたが和歌山中は左腕浜崎の剛速球に得意の健棒が牛耳られ2回一死満塁を迎えながら2者三振、4回にも二死走者二、三塁に拠ったが武井三振して無得点に終り、その後7回迄従らに浜崎の好餌となるのみ。一方神戸商は一回二死後、山田・今中・中野の3安打集中して忽ち3点リード、4回更に中野遊匍、一塁悪役に二進し酒井・西垣のバントに手固く1点加えて浜崎の出来栄えから見て到底挽回不可能と思われた。
然し和歌山中は飽くまで屈せず8回好打順を迎えラストバッター阪井中越し捕逸に三進、田島の内野安打に生還、敵陣はこれに動揺したが柳の二匍失、深見の三塁上を抜く痛打に1点、井口中飛落球に柳、深見あいついで生還、井口も武井・高木のバントに還って一挙5点を奪い形勢逆転、満場総立、狂喜乱舞す。浜崎もがっくりときたが、疲れを見せ9回二死後より四球と味方内野陣の連失に満塁、更に捕逸と井口の二匍不規則バウンドして安打となる幸運も加わって止どめの3点加えて終幕の大波乱に危うくうつちやり2年連続優勝の新記録を樹立した。それにしても本大会に示した和歌山中の上位打線の打撃は中学選手のレベルの上にあり、真に見事なものであった。味方バックスのエラーにも気を落とさず、全軍を引緊め引緊め4点の負担に苦しみながら頑張りとおし、打っては3安打を放って内実共に一軍の大黒柱として活躍した井口投手に敬意を表したい。



第9回<大正12年>全国中等学校野球選手権大会

<予選>
規定により敗者復活した海草中は決勝に進出、和歌山中と対戦ダブルヘッダーを強行し夕陽傾く午後5時半よりプレイボール。3回海草中が遊撃、中堅手のトンネルに2点を先取して意気が揚り和歌山中は神埼投手のスローボールを打悩みあせり気味、5回日没迫る夕闇の中に二死満塁の好機を迎え押し出しと捕手パスボールに漸く同点となったが意外な結果に場内騒然となる中に日没ドロンゲームとなる。

<決勝>
7月31日前日の引分戦に興味を呼び、両校の応援団繰り込み殺気みなぎる光景は紀和大会未曾有のことであった。先攻の和歌山中は1回田島適時安打を放って2点先行すれば、海草中もその裏和田左翼線二塁打と吉田三匍失に忽ち同点となり好試合を展開。4階和歌山中は野田の安打で1点リードしたがその後は、互いに譲らず熱戦を続け最終回、山本・明楽の長打に常勝和歌山中凱歌揚げる。

<紀和決勝>
郡山は好投手野田を有し、戦前両軍の技倆伯仲で接戦予想された上、奈良勢の応援多数乗り込み凄みを利かすとの噂さに万一に備えて和歌山勢も応援団繰り込み、試合前から殺気立つ有様。
前半郡山・野田投手に封じられ、5回山本の三塁打も空しく漸く3安打と敵失に3点、8回にも無死満塁の好機を迎え四球と捕逸で2点を加え漸く勝利を不動のものにした。郡山は1回森田中堅越三塁打したが、後続空しく7回松田の内野安打と松山の二塁打に1点返したのみ、戦前では紀和決勝として最も、緊迫した試合を演じたのはこのゲームであった。

全国大会
<2回戦>
和歌山中1回四球に出た柳盗塁と捕手暴投に1点、2回4個の四球に押し出しの1点を加えたが、金沢も3回二死後、土師死球、徳光右翼安打したのを野手三塁へ高投して生還、更に投越安打に同点となった。和歌山中は5回に至り田島左前安打、バントに送られ寺井の適時安打に1点リード、更に6回明楽死球、柳右翼線上に二塁打し、高木の遊匍失と由良の投匍に得点3点を加えて大勢を決した。

<3回戦>
和歌山中は1回柳二死後、明楽四球、高木左越三塁打に生還、更に田島四球二盗後、由良の適時安打に2点、野田二塁頭上を抜き二盗、山本の安打に由良生還、野田も本塁を欲張って憤死したが立ち上がりから安打集中4点をリードして意気揚がる。
更に2回、寺井四球バントに送られ、明楽も還り3回には安打と敵失に1点を加え前半断然敵を圧す。広陵は3回一死後、沖四球、平田の左翼線二塁打と正田の遊越安打に2点返せるのみ。後半は5安打を散発したのみで反撃の好機なく和歌山中に凱歌揚がる。

<準決勝>
和歌山中1回熊谷投手の乱れに乗じ2個の四球と内野失で労せずして2点先取し、6回高木三遊間安打、田島三匍高投に二進した時、由良適時安打して高木生還、7回一死後、柳三匍高投に二進し二死後、田島の遊撃安打に1点、更に8回野田遊匍高投に二進後、寺井、柳の安打と3個の四球、バントで致命的な3点を加えて大勢を決した。これに対し松江は4・5・6各回走者を三塁に送りながら無得点に終わり漸く8回4安打を集中して3点を挽回したが、日暮れて既に道遠く敗退した。松江の内野陣にエラー多くしばしば一塁高投して、むざむざ二塁を与えたのは味方の投手の負担を重くし敗因となった。

<決勝>
約1ヶ月前に和歌山中が甲陽を自校に迎え勝つているだけに、6分4分で和歌山中有利と予想された。和歌山中は劈頭柳二塁安打し、明楽死球、捕逸に二、三進、高木二飛となったが田島期待に反せず中前安打し幸先良い1点先行した。
なお明楽も本塁を衝いて憤死したのは惜しかった。しかし4回甲陽は四球の2走者をバントで送った時、藤田左越三塁打を放って堂々2点を還し、更に山野井三匍低投に生き井上の遊匍と芝の投越安打で2者を迎え一挙に形勢逆転、和歌山中は必死となって挽回に努め、7・8両回満塁となったが後続不振、9回漸く二死後、高木左翼二塁打し、田島の二匍失に1点奪回したが健斗及ばず3年連続制覇の夢ここに破れて初陣の甲陽に名を成さしめた。甲陽中は決して最上の協力チームとは思わなかったが、それが連日強敵を下し優勝を遂げたのは全く精神力の賜といえよう。



第10回<大正13年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<決勝>
戦前、和歌山商チームの充実から推して相当善戦を期待されたが中村投手が散々打たれ安打19本を浴びて全く一方的試合に終わった。

全国大会
<2回戦>
両軍技倆伯仲して好試合を展開した。和歌山中は4回表に寺井四球、二死後、小川の左翼線上三塁打に1点を先行すれば広島商もその裏、豊田中前安打失に二進し、花山の適時安打に同点となる。和歌山中は6回由良遊匍一失に生きバントに送られ、山本の三塁突破の安打に勇躍生還、逆に1点リードした。しかし粘り強い広島商は8回を迎え地力を発揮して和歌山中内野陣のエラー続出に乗じて3点を挙げ再度逆転せしめて広島商勝つ。



第11回<大正14年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
和歌山商はサウスポー小川を打てず、1回南部、6回安原の2安打に止まり三塁を踏む者なし、これに反し和歌山中は1回四球2、ボーク、敵失に小川以下4安打を放って早くも6点挙げ大勢を決した。更に3回には四球と犠打で1点、6回にも寺井の三塁打、犠打で2点を加え和歌山中の大勝に帰す。

全国大会
<1回戦>
熊本商は打撃不振で安打散発し、二塁に達した者僅かに1人という貧打振り。和歌山中は前半決定打が出ず凡退を続けたが6階山本左中間二塁打し、小川三振後、野田の右翼線三塁打で1点先取し、野田は高村の投匍に本塁を衝いてタッチアウトとなったが8回、更に山本中堅左を抜く三塁打し小川四球、二塁後、野田の右犠飛に止どめの1点を加え制勝した。

<2回戦>
和歌山中は1・2回共に走者を三塁に進めたが決定打なく、4回には無死満塁となりながら高村捕邪飛、梶本投匍、寺井三邪飛に退き6回にも一死後、木村遊越安打、高橋四球に好機を迎えたが高村の左飛に野田三塁を衝いて併殺、4度好機を逸した。早稲田実も野田投手を打ち込めず貧打戦を続けたいが、8回に一死後、山田四球二盗し、牧口中飛で二死となったが、斎木の遊匍は本塁悪役を誘い貴重な1点を挙げて早実に凱歌揚がる。



第12回<大正15年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会予選
<決勝>
和歌山商は小川投手を打ち悩み、前半4回唯一の好機を逸し、9回一死後、細野遊匍失に生き、高石左中間に三塁打して1点を挽回したのみ2安打の貧攻振りに終わった。
和歌山中は1回松尾四球、丹下のバント安打となり、土井バントに送るや山本の三塁打と小川二匍に早くも3点リード、3回にも山本四球、小川、後藤の安打に2点を加え更に6回梶本三塁打し、松尾の安打に迎えられ7・8回にも攻撃の手を緩めず山本の三塁打、高橋の適時安打などで各1点を加え常勝和歌山中12度連続優勝を遂ぐ。

全国大会
<1回戦>
愛知商は1回、中島4球目を捕手逸し二進、平松の遊越安打に1点先行したが、その後7回まで凡退、8回二死2走者を置いて左松右翼線深く三塁打し2点、更に高谷の中前安打に友松生還、1点差に迫り白熱戦となった。和歌山中は1回土井左中間三塁打し、松尾中前安打で生還。松尾も小川のバントと丹下の安打で得点。更に4回丹下が左翼本塁打を放ち、6回には小川右越三塁打し山本の右飛失、丹下の三匍、島本の三匍で2点加え前半優勢裡に試合を進めた。8回愛知商の反撃に一寸危ぶまれたが、その裏二死後、当りや丹下左越三塁打して投手暴投に1点を加え愛知商の追撃を退けて和歌山中決勝した。

<2回戦>
和歌山中1回二死走者二塁に置いて小川の中前安打で生還。2回も高橋左中間二塁打、後藤の安打に1点加えて早くも敵を圧し4回二死満塁に土井・山本の連続三塁打に一挙4点、5回には丹下投匍失に始まり3個四球、3安打、暴投、敵失を織りまぜ11人の打者を送り7点を加え大勢を決した。台北商はそれでもゲームを捨てず、7回浅尾安打で1点、8回小川の左越三塁打と深川の遊匍に2点を返したが、攻守共相当の開きが見られた。台北商の敗北は是非もない。

<3回戦>
和歌山中は劈頭松尾遊撃左を抜き土井バント、山本の中前安打に早くも生還、小川、高橋の安打と丹下中堅越三塁打と息をつかせぬ猛攻に一挙4点を先取、更に3回には小川中越三塁打して2点、4回梶本安打、松尾三遊間安打して一死満塁となり小川三振後、高橋の遊匍野選と丹下の右前安打で3点と前半大きくリードした。鳥取一中は小川を打てず、6回二死満塁となり、宮脇の投匍は捕手失し叶の右前安打で3点返したがその後凡退和歌山中準決勝に進む。

<準決勝>
小川・円城寺は互いに力投して譲らず殊に小川の剛速球は三振15、安打4の成績が示す通り素晴らしいものがあったが、惜しむらくは打力不振で8回まで三塁に達した者なく最終回、山本左中間三振打を放ったが、期待された小川右飛、高橋のスクイズバントは惜しくも本塁に走者刺され無得点、一方の大連商は6回小西四球を選びバントに送られ、肥塚三匍野選、梅本三振後、桜井二遊間安打を放って貴重な1点を挙げ、さしもの大援戦も和歌山中に利あらず恨みを呑む。

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第13回<昭和2年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
田辺・山中投手は変化球で巧みに和歌山中打線をかわし、4回まで善戦したが5回に至り、集中打を浴び、バックスエラーも加わって大量8点を奪われ大勢を決した。田辺はこれに意気消沈して攻撃振るわず2・4・9回に各1点を返したのみ、留居軍ながら和歌山中は回を重ね山中の球に慣れるに従い真価を発揮して悠々決勝に勝ち進む。

<決勝>
前日強敵を破った和歌山商の有利かと思われたが、1回和歌山商トップ打者二匍失に一挙三進、一死後、塩谷手固くスクイズを企てたが、バントした球がころがらず捕手拾って三塁走者をタッチアウト、先行の機を逸す。3回にも二死満塁となりながら後続凡退、しばしば得点機を逸してあせり気味となり、8回にも細野安打と四球2で満塁と攻め立たてたが後続打者三振して無得点に終わった。
和歌山中は4回脇所死球、石本のバント暴投に行き橋本四球で満塁となり、橋本の捕前バントは脇所を封殺したが、谷田の内野安打に貴重な1点を挙げ和歌山中2軍優勝す。和歌山商は前日ライバル海草中を破ったため却って優勝を意識してか、固くなりしばしば走者を出しながら肝心なところで適時安打が出ず三振14個を数えて悲涙を呑む。

全国大会
急造の留守チームでは本舞台の活躍は覚束なく、2回福本四球、二塁した後、谷田の投匍で三塁に拠ったのみ。安打1本の貧攻ぶりで守っては8個のエラーを演じて大敗を喫した。鹿児島商は2・3・4回内野陣の連失に安打を織りまぜて労せずして各2点を入れ楽勝した。

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第14回<昭和3年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会予選
大会中長雨に悩まされ球場の乾きが悪く、しぶきをあげて強行する有様で7日漸く終了したがこれにこりて翌年より再び和歌山中校庭に戻して行うこととなった。

<準決勝>
和歌山商は和歌山中・小川投手の速球を打ちあぐみ僅に3安打に終わったのに返し、和歌山中の攻撃は物凄く放った安打23本、中でも山下は2ホーマーを放って完ぷなきまでに打ちまくって大勝した。和歌山師は打撃不振で毎回凡退、海草中も3回まで適時安打を欠いたが、漸く4回に至り庄司三遊間安打、荒川も三塁を抜き西山四球で無死盗塁のチャンスを迎え、松本の投匍に併殺喫し忽ち二死となったが打谷の二塁打に2点入れる。更に5回一死後、浜野左前安打、二死後二盗成り庄司の遊匍失と投手の暴投に1点加え西山の好機で押し切って勝つ。

<決勝>
戦前両軍の実力から好試合を期待されたが、海草中は3回二死後、鈴木・浜野安打に出たが皇族凡退、8回にも二死後、浜野二遊間安打し荒川二塁打して絶好機を迎えたが、流石に小川頑張って3番打者庄司を三振に討ち取り得点を許さず、これに反し和歌山中は2回小川中前安打、山下に送られ喜多島の二匍を名手荒川ファンブルする間に1点を先行した。
更に6回二死後から小川を左中間二塁打を放ち山下の二遊間安打に1点を加え、海草中の反撃を押さえて優勝した。しかし海草中は小川の剛速球に良く食い下がり、西山投手の好投とバックスの好守と相俟って力のこもった好ゲームを展開したのは印象的だった。

紀和大会
<2回戦>
佐賀中は小川の剛球に全く封じられ3回に光武弟が中堅に、6回山田が一、二塁間を抜く安打を放ったのみ。和歌山中は1回から猛打を振るい打者一巡、この間2個の四球、土井の左中間三塁打、山下の右越本塁打、島本・橋本の安打などで一挙5点入れ、更に2回1走者を置いて小川左中間本塁打を放ち2点を加え、4回にも脇所の右翼二塁打を始め集中安打を浴びせて3点を加えて大差をつけ楽勝した。

<3回戦>
小川、梶原両投手好投して緊迫したゲームだったが、初回高松中トップ高橋内野安打に出て外山の中越二塁打に1点、3回にも岡見三匍失捕手牽制に追い出されながら一塁失に命拾いし高橋四球後、外山の三塁内野安打と梶原の遊匍野選で1点加えた。更に4回一死後、中村正左中間二塁打し岡見中前安打、高橋の右飛に本塁を衝いて捕手のタッチ拙く生還、その裏、和歌山中・土井右越本塁打を放ち気を吐いたが、その後は梶原投手を打ち込めず最後まで三塁踏む者なく雄図空しく敗退した。和歌山中内野陣にエラー多く、しばしばピンチを招いたのが敗因といえよう。あたら超中学級の小川投手を持ちながら最後の桧舞台に味方の打力を伴わないため退いたのは惜しまれる。それにしても高松中・梶原、和歌山中・小川の力投、活発な打撃、それを囲む好守備を織り込んだこの試合は球史を飾る決戦であった。



第15回<昭和4年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
戦前の予想は和歌山商の善戦を期待してはいたが、果たせるかな試合会場を埋めるファンの異常な興奮裡に息詰まる様な戦いとなった。是が非でも勝たねばならぬ和歌山中と背水の陣を布いて、よし敗るとも玉砕せんとする和歌山商との間には自然心理上の相違があった。恐らく総てのプレーの上に、このものが左右したであろう。和歌山商の勝因として挙げられるのは左腕投手紫田の好投でこの少年投手を中心に上田主将以下全員一団となって進撃するところに、心持良いほどのハーモニーを見せていた。連勝の壮図を胸に抱きながら遂に大志ならなかった和歌山中、彼等は実に不運だった。
頼みとする山下は身体の故障あってか、彼がもつ怪腕の冴えを見せず危機に際しては固くなり不覚の点を許した。しかし幾度か苦境に陥りつつも盛り返し、補回戦に持ち込んだが、天運に利あらず、最後に勝を譲るに至ったのは同情に値する。

<準決勝>
郡山中打撃不振で毎回殆んど凡退、3回に漸く2点を返したのみ。これに反し海草中は好打好走して2・5・6回の如きは打者一巡して、恰も無人の境を征くが如く殊に6回には打者12人、2犠打と1四球を除く9人が全員安打を放つなど、郡山中をして戦意を失わしめ途中棄権を申し出る始末まで完ぷなきまで粉砕した。

<決勝>
前日の偉勲に和歌山商の健斗が大いに期待されたが先行の海草中・第1打者、大亦左中間深く長打し回送よく本塁打となし幸先良い1点を挙げ、打撃大いに振るって西山、荒川の本塁打を初め長短合計18本を放ち堂々大差をつけて悠々優勝を遂げた。
和歌山商は7安打を散発したに止まり頼みとする紫田が打ち込まれて、手の下しようもなかった。こうして海草中は連続14回出場の常時和歌山中に代わって、初めて紀和代表となった。

紀和大会
<2回戦>
海草中は新妻投手の無制球に乗じてヒッティングに出て野選、バントから西山、山脇の安打で忽ち3点、更に2回2点、4回に1点を加え、代った北村投手をも打ち込み見事なバント・ラン・プレーを行うなど縦横無尽に活躍し6回慶応商工は新妻の中越三塁打と藤井の二塁右を抜く安打に1点を報いただけ、海草中は悠々緒戦を飾った。

<3回戦>
優勝候補随一の高松商に対し、海草中は捨身の一戦を試みた。予想通り1回より高松商は猛攻し、田上・碣石・田岡・佐藤の安打とバントで忽ち3点先取した。しかし海草中は屈せず3回至るや、大亦が直球を浜野カーブを痛快に左右に打分けここに開運の端を発し、高松商はファンブル3、暴投1を演じ捕手が走者に衝き当てられて落球する等日頃の手腕を忘れていた。前半の波乱から後半戦に入り両軍必死の攻防を続け、大観衆熱戦に魅せられ一人として立ち去る者なく、9回海草中また無死満塁と攻め立て、大亦の遊撃背後の小フライは好捕され二塁走者併殺を喫したが、浜野の遊匍高投に止どめの2点を加え、大豪高松商を破る大番狂わせを演じた。
この試合何れが勝っても恐らく優勝試合に進み行くものとして、両チームは命をかけて闘った。整然たる守備を誇る高松商が終始不安な守備を続け危機を招く等、周章度を失ったのはよくよく悪日であったといえよう。海草中は勿論力もあったが、試合運びも上々で3回の暴走総てが成功した等勇猛な走塁の賜と云うべきも、高松商が冷静な処置に出ていたなら塁の中間で刺殺されるようなものもあった。西山に代わった神前少年の見事な出来栄えに只々感嘆の声を放つのみ、カーブを武器としてこれに速球を巧みにコンビネーションし、速球に釣ってカーブを看過させた手腕など老成投手も及ばぬ捌きであった。

<準決勝>
1回海草中重盗に失敗後、荒川中堅左に三塁打を放ち忽ち2点、更に3回四球、安打、野選、犠打に加うるに得点の足を利して4点をかせぎ5回には集中安打を浴びせて2点計8点を入れ大勢を決した。
これに対して台北一中は全く精気を欠き8回表、二死満塁の時、猛烈な夕立に襲われ投球困難を極める中に試合続行され、四球連発のため海草中・西山投手をプレートに送る等、防戦に努めたが、トコロテンで4点を与えた時、遂にタイムを宣せられコールド・ゲームとなる。台北一中のため同情に耐えないが、海草中にとっても後口の悪いゲームとなる。

<決勝>
戦前の予想は海草中やや有利と見られたが、1回先攻の広島商二死満塁と攻め立てたが和田の遊匍に入らず、海草中も大亦四球、鈴木強気に打って三遊間安打、浜野のアントに送られ荒川の二匍に本塁を衝いたが寸前アウト、両軍鉄桶の守備に互いに譲らず、前半広島商や押し気味に7回至るや、広島商一死満塁、田中三振を喫したが、左打者太田外角を引つかけしぶい安打を右前に放ち2点先取した。これに神前気を落としたが、四球を連発し更に1点を押し出し致命的3点を奪われる。
最終回海草中は大亦、三遊間を抜き鈴木の好打投手弾いて二塁手前に転じ、大亦と共に併殺を喫し、海草の武運天外に去るかと見えたが、飽く迄屈せず四球と安打で満塁と迫ったが山脇2-3と粘って遂に三振して万事休す。強気の海草中・渋味に富む。広島商は奇手の快味に比す可く、一は正手の床しさを思わせる。広島商チームは戦前評判にもなかっただけにその優勝は意外に思われるが、全体としてバランスのとれた恐るべき地力を持っていた。最後に長蛇を逸したとは言え、奔馬空をかける海草中の健斗振りは本大会の初陣を飾るに十分なものといえよう。



第16回<昭和5年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
前半0-0の均衡を保ち熱戦を演じたが7回和歌山商に幸運訪れ二死後、赤桐中堅安打し廻口2-0後死球に浴びし紫田の遊撃背後のフライ、東山・浜野が激突落球する間に2者生還、次いで重盗を刺さんとして山脇三塁へ暴投、海草中守備陣がたがたと崩れて致命的3点を奪われ9回にも二死後、廻口の右中間飛球を野手衝突し走者に三塁を与え、捕逸に止どめの1点を許して海草中シャットアウトを食う。
好守に勝る和歌山中は、前半着々と得点を重ね、後半は打ちまくって全く問題とせず6回以後、投手を西尾に代え余裕を残して大勝した。この日山下は本塁打2本を放って気を吐いた。

<決勝>
和歌山商先発の廻口出来悪く、2回早くも紫田サウスポーに譲る。即ち2回一死後、山本死球、後藤左前安打、稲田四球後、投手暴投で1点挙げれば3回和歌山商一死後、岡崎四球、井上左前安打し捕逸で忽ち同点となる。
更に6回和歌山中・島本右中間に三塁打に出て大谷の遊匍に生還、リードすれば和歌山商も屈せず7回二死後から四球と久保の安打で再び同点に追い付き満場を唸らす。
その裏和歌山中猛攻して稲田・喜多島、連続安打し山下四球で無死満塁となり岡の犠打や遊失、大谷の適時安打で一挙4点を加え大きくリードする。和歌山商必死に反撃に出て山下に代わった若漢西尾投手に対し赤桐左前安打し廻口本塁打を放って堂々2点を返し、その差2点と迫ったが及ばず和歌山中の優勝成る。和歌山商は2回以降、好投していた紫田投手を退け7回再び廻口をマウンドに送ったのは彼を過信してか、腑に落ちないが、両軍投手や不出来だったと言え打線大いに振って壮絶なシーソーゲームを演じて真に見応えある好ゲームであった。戦前実力は和歌山商や有利と見られながら不安定の山下投手を打ち込み、先取点を上げるべきだったのにその機を逸したのは矢張り和歌山中の伝統の力の前に屈したといえよう。

全国大会
<1回戦>
和歌山中は初回北海中の石沢、相馬に対して6安打と5個の四球を奪い致命的な9点を挙げた。この混乱の中に北海の投手は相当荒れ窮地に陥ったが、比較的良く守ったのは連続出場の場慣れにあろう。ただそれ投手の脆弱に至っては同情に堪えず、一方和歌山中・山下の無制球も又、驚く可く3個四球を連発して走者を押し出す始末で前途に不安を思わせた。

<2回戦>
両チームは好守共対等の力を保ち、和歌山中も敦賀商も下位打者の活躍に塁上を賑わし上位打者は不振だったが敦賀商は特に甚しかった。山下・小林の出来も優劣なかったが、小林が精魂こめて秘術を尽くした投球は実に悲荘を極めたものであった。しかし7回、味方の失策と思わぬ破綻が和歌山中を利し形勢いよいよ非なるを告げた。
小林は最後まで身材に恵まれないが、球威もありカーブもよく変化あるモーションに和歌山中の打者とかなり苦しめた。最も惜しまれるのは敦賀商が7回に2点返して一死であった時、城戸が四球となるべき悪球をファウルして一塁手に捕らえれたのと5回の逸機であろう。

<3回戦>
一進一退静岡中の優勢より、和歌山中の逆襲に大波乱を呼んだが7回以後、両軍投手の精神をこめた投球に変化なく静岡中を空しくした。静岡中はチームに覇気張り強味を一層増加した。投手鈴木は昨年の経験を土台として、速球と懸引に一きわ箔をつけ昨年より長足の進歩を示し十分な落ちつきに加え?刺があり、一流チーム中の党首として錚々たるものであった。
和歌山中に対して8安打、適時に打たれた嫌いはあったが、6回の失策に渦されることがなかったならば和歌山中に乗ずるべき機会はなかったかも知れない。しかも、静岡中の立役者遊撃鈴木吉がその回一塁に高投して、敗因を作ったのは悲運といえよう。8回静岡中が好打順を迎え反撃を思わせたが、両鈴木が凡飛、三振に終わったのは勝運から見放されたのであろう。和歌山中の勝因は、西尾を山下に代えたのが成功しその上退いた山下は攻撃を振ったことが挙げられる。初陣15才の少年、西尾投手は5回以後2安打に押さえ注目を浴びた。

<準決勝>
広島は5回に好機を迎えたのみで、双方投手の好投で少しの乱れも見せず投手戦のまま終局に近づいた。和歌山中は前半の3点の挽回に努めたが、灰山の制球は意のおもむくところをつき、和歌山中打者を眩惑せしめた。和歌山中の安打僅かに3、広島商の勝因は1回立ち上がりより攻撃にあったのはいうまでもないが、この得点に気を良くした灰山が好投したのにある。
相手相当のゲームを示すのは昨夏より広島商の家風とするところ、この試合の如きも正に好敵手を向かうに廻しそれに相応する試合振りを示したもので、不思議な力の持ち主として優勝試合に興味を残したものというべきであろう。
和歌山中は学生らしい好ゲームだが、体力にやや劣り殊に山下の球威、制球に難があって1回に打ち込まれて西尾少年が和歌山中の運命を双肩に荷うに至った。しかも西尾は見事その責を果たして2回以後、5安打を浴びながら対静岡中戦の成績にやや劣ったけれど遂に広島商に1点も与えなかった健斗振りは15才の少年としてはむしろ出来過ぎといえよう。将来の大成を大いに期待したい。



第17回<昭和6年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
連日の奮闘に両軍共に疲れ切ていた感があった。殊に伊都の投手は完全にコントロールを欠き徒らに敵打者に名を成さしめたが、ゲームを棄てず最後まで投げたのは悲荘だった。

<準決勝>
両軍共はち切れんばかりの元気で善く斗い、前半の打撃戦は後半に入って投手戦の形に変わり大チームの面影を見せた。耐久中・田上投手は終始スピードのある剛球をベースの真中から外角を通る曲球を混じえて和歌山商の打者を悩ましたが、前半において浮き気味の高いコースに入る速球をヒットされて決定的な4点を許したのは諦めがたいところであろう。和歌山商・紫田投手はよいコンビネーションであった。3日間にややスピードが落ちたのは無理からぬところだが、しかし、しばしば襲われかけたピンチを食い止め味方の攻撃を十分発揮せしめた功績は素晴らしいものがあった。

<決勝>
何よりも先ず郡山中の善戦健斗を称賛したい。連日の奮斗にすっかり洗練されて見違えるばかりの好プレーぶりを見せて、堂々和歌山商の堅陣に肉薄して行った意気と技倆、正に敗れて尚悔いなしというべき武者振りであった。仲村投手の出来はとても素晴らしいもので、打者の近くからホームを通る曲球には流石の和歌山商の健棒も打ちあぐんだようだ。しかも最初の仲村のホームランで堂々1点を先取して、手に汗を握らせ勝敗の予断を許さなかったが、5回久保の三塁ベース上を抜くゴロを野球ファウルと誤認してむざむざ三塁に進ましたのが蹉跌のきっかけとなった。更に6回赤井死球に出て熊代のホームランに一挙、2点を奪われ勝負を決してしまった。
和歌山商は最初楽観していたせいか、前半に思わぬ苦戦を続けた。殊に紫田の出来栄えが良くなかったのはゲームの開きを縮めた最大の原因だった。かくして和歌山商は雌伏10年、遂に宿望達して駒を甲子園へ進めることとなった。

全国大会
<1回戦>
入場式直後の試合、しかも和歌山商にとつては目に余る強豪、しかしその大敵に果敢に立ち向かった。1回久保遊撃内野安打、2回は赤井左前安打で広陵中の陣営を脅かし、守れば楠木の右翼の難飛球を熊代駿足を飛ばして見事に好捕し部矢の三塁右の安打を許したが山田の三匍で見事な併殺を演じた。3回に至り一死後、井上長梶に快音生れ左中間痛烈に二塁打で抜き久保遊撃右を破り井上本塁に憤死、二死となったが屈せず強打者赤桐衆望の期待にそむかず三遊間に安打して久保を迎え堂々たるアーンドランなどで、1点を奪取して意気天を衝く。この1点リードに気を良くして紫田投手懸命の投球を続け3,4回広陵中必死の反撃を試み7回駿足の角谷、サウスポーの弱点を巧みについて突如本盗を企て成功、同点となり蘇る。更に8回二死から下位打者を迎え紫田気を緩めたか、或るは漸く力尽きたか、4安打を集中され忽ち3点を挙げられ和歌山商善戦空しく遂に敗退した。和歌山商8回の好機を失ったことが直接の敗因となしたもので稲田投手のカーブが外角に流れて雑賀赤桐を四球に出しバントに二、三進した時、赤井はあまり得点をあせるかの傾きがあった。もう少し待って好球を狙い打ちしていたら和歌山商のためには実に惜しい逸機であった。



第18回<昭和7年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
和歌山中は稲垣投手の肩定まらないのに乗じ花々しく打ち、先ず1回、喜多島左中間安打し後藤の左中間三塁打に生還、捕逸に後藤も還えり、更に4回一死後、太田右前に快打し喜多島四球に続き後藤再び右翼越しに三塁打し2点を加え後半大きくリードした。
一方和歌山商は前半不振凡退を繰り返したが、6回に至り漸く一死後、雑賀遊撃を破り山本に送られ赤井の二匍失に生還1点を返し、稲垣投手もこれに調子づき6回以後、和歌山中を無安打に封じたが、及ばず4-1で和歌山中昨夏の復讐を遂げた。
大会直前に好調を伝えられた耐久・田上投手は豪球を以ってきこえ本年度の大活躍を期待されたが、初回より乱調で大きく崩れ2回早くもプレートを退く始末で意気消沈し惨敗を喫したのは意外であった。

<決勝>
和歌山中第一打者喜多島、左翼線に三塁打し太田四球後、巧みな牽制球に喜多島刺されたが、太谷三匍失、重盗を企て捕手落球に1点先取、更に3回一死後、太田・後藤・大谷3安打を放ち1点を加え優勢。
海草中は1・3回に好機あったが野手の好守備に阻まれて、無得点、6回和歌山中・吉田の右中間二塁打と喜多島右中間を抜く三塁打を浴びせて2点追加し、9回にも猛打を振い太田・後藤の単打、太田左越三塁打などで駄目押しの3点を入れ全く一方的に和歌山中大勝した。海草は6回裏、無死2走者を出したが、毘舎利三振、松下右飛で入らずシャットアウトを喫した。

<紀和決勝>
立ち上がり郡山中物凄く当たり2回3安打で1点先取、和歌山中は郡山・中田第2投手のフラフラした緩球に悩みながらも3回二死後、2走者を置いて後藤左前安打、後逸に2点を入れれば、郡山中は4回、2四球と星野の適時安打で1点追加し同点、シーソーゲームとなる。しかし5回和歌山中・大谷の適時安打で1点、6回にも一死二、三塁の好機に宇野右前に好打して2走者を迎え郡山中、最終回の一打同点といった息詰まる反撃を退けて和歌山中に凱歌揚がる。

全国大会
大谷の欣然たる投球は小倉工の力攻を巧みにそらし貴重な1点を守って動かず、7回小倉中・西村の安打が好機到来を思わせ強打者、新富に送らせる大事をとったが、大谷のドロップに切り抜けられてから小倉工の陣営は淋しく敗戦の色を濃くした。和歌山中の1点は宇野・木村の武勲を語るもので必ずしも酒井の失投というべきではなく、6安打を与えた酒井はその分を尽くしたといえよう。只和歌山中は僅かに打力に優り、勝敗を決したものの大谷の健斗も見逃せない。大谷は速球、曲球ともに制球よろしきを得、殊にそのドロップ・カーブの奏功に至っては、このゲームを大谷のドロップ勝ちと言うも過言ではなく、小倉打者の総ては奔殺(ロウサツ)の憂目をみた。

<2回戦>
立ち上がり両軍投手好調、試合は投手戦の形をみせ互いにチャンスを作りそれを又言い合わせた様に切り抜け凄じい熱戦を展開した。前半早稲田実は、ややよく後半は安永の四球に和歌山中走者を出したが適時安打が出ず延長戦に入った。両軍投手の出来栄えからこの試合はいつ果つ可しとも見えなかったが、11回早稲田実・南方に中堅前へ安打されたが、運の尽きで深田に送られ南方は田川の投匍に三塁に刺され和歌山中一息ついたとき、大谷は気を許したか早稲田実の重砲星野・清水に何れも初球を快打され左翼手ファンブルする間に決勝の1点を挙げさしもの激戦も幕を閉じた。早稲田実がこの回、3安打集中したのは何れも初球を狙ったもので、それまで第1球直球を見逃していたのがこの回に限りが敢然打って出たのが成功したものであった。大谷は最後に打たれたが10回に至るまではむしろ安永を凌駕する好投振りを示していた。又和歌山中の内野守備は見事なもので一流といってよかろう。安永は重味ある球勢を生かしアウドロを適宜にまじえて和歌山中打者を巧く料理し3安打に封じた。



第19回<昭和8年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
海草中・森田投手腰を痛め意気揚がらず海南1回磯野・亀井の適時安打に堂々3点リードし、6回更に二死ながら2走者を置いて長谷川中堅安打、トンネルに走者を一掃大勢を決した。海草中は3回好機を迎え、しかも好打順だったが松下・荒川何れも内野ゴロして入らず海南中の一方的勝利に帰した。

試合は予想通り大会随一の白熱戦となった。両軍共はち切れんばかりの元気で、チーム全体として優劣はみられなかった。和歌山中は敗れたりとはいえ悔いのない善戦を続け特に和田投手の健斗は賞賛に値したが、只8回に雑賀に三塁打を浴び、敗因を招いたのは気の毒で捲土重来を祈りたい。一方和歌山中は攻守とも上出来で、一層の自重を望んで止まらない。

<決勝>
技術上の甲乙を附することは出来ないが、この日海南中・長谷川投手の出来栄え素晴らしく一糸乱れずピッチングに得意のカーブを混え敵打者を完封したのは真に見事だった。これに反し和歌山商・稲垣投手は上出来でなく持前の力を十分に発揮し得ない憾みがあった。
海南中の殊勲賞は何んといっても亀井三塁手で、攻守共きびきびしたそのプレイは際立った。2回裏、海南中・阿瀬の一匍を飛び上がって捕え併殺した和歌山商・山本一塁手の美技も特筆に値しよう。海南は闘志に於て既に相手を呑み、5回まで押されながら萎縮せず後半強靭な反発力を発揮して遂に勝利を物にした。

<紀和決勝>
海南中・長谷川投手はこの日押さえが利かず、高目高目に球が浮き上がりから郡山中の猛攻を浴びた。即ち1回郡山中激しく攻めたて桜井いきなり左翼二塁打に出て、星野の中前安打に1点先行し意気頓に揚がる。更に3回中田四球、大橋遊撃安打、星野中越二塁打を放って長尾の遊匍に計3点を挙げ断然海南中を圧した。
海南中はやや負けの形で3回栗生遊匍失に出て中田の三匍で封殺されたが、中田の二盗成り上山の遊越安打に生還1点を返し、その後は3点のアヘッドに可なり苦戦を続けた。8回磯野中前安打し小林も適時安打して磯野を迎えたがその裏、郡山中・大橋左前安打しこの日当たり屋星野右中間本塁打し、長谷川の遊匍に1点を返したが遂に及ばず敗退。海南中は連日の奮戦に疲れが出たのか、攻守に優りながら前半の失点が最後まで響き十二分の実力を出し切れず、紀和大会有史以来初めて奈良勢に甲子園進出を譲ることとなった。



第20<昭和9年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
前日のゲームから見れば問題とならぬと思われたが、流石に準決勝らしい試合となった。田辺中・柏木投手は巧みに海南中の打棒をかわして懸命の投球をしたが、回を追うに従い打ち込まれ得点を重ねられた。田辺中に望まれるのは気迫で、強豪海南中と接戦しただけに満足しているように見受けられた。田辺中は最初、海南・亀井投手の球をよく当ててはいたが流石に海南の堅塁は抜けなかった。最後の2点など与えなくてもよいものを蛇足というべきだろう。しかし兎にも角にも田辺中の善戦をたたえたい。
和歌山中は宮本投手のシュートに手を焼き安打僅に3、殆どチャンスなきに反し海南中は7回を除いて安打あいるは四球で出塁し脅した。4回楠本中堅安打、今市も安打し増田のバント失敗後、右前に適時安打を放ち宮本のスクイズで2点リード、8回更に今市の左越三塁打で1点を追加完勝した。

<決勝>
劈頭海南中・中田の凡ゴロを若漢増田三塁手ファンブル、一塁に暴投してより海草中陣営は浮き足立ち、この回漸く事なく済んでホッとする間もなく2回阿瀬四球捕逸に二進、前里一匍後、栗生の投匍を弾いて阿瀬生還、続く中田の三匍再度の暴投に二、三進、近藤の中飛にむざむざ2点を与う。海草中バックス失策続出は宮本投手に終始不安を与え、動揺して制球を乱し5回無死満塁のピンチに四球、安打、失策を織りまぜて一挙7点を奪われて川上と交代した。勢いに乗った海南中打線は川上をも打ち込み予想外の大差をつけて海南中大勝した。

<紀和決勝>
思い起こす不覚の一敗に戒心した海南中は最初は少し上り気味で、あの悠々たる覇者の試合振りを忘れたかの態だった。これに食い込み郡山中捨身の意気込みが物をいって長谷川投手から々2点を先取、一時は海南中危うしとも見えた。この大事を救ったのは4回近藤左翼を破る三塁打で口火を切り、亀井四球、長谷川安打して同点となるや、稍々不調かに見えた長谷川は速球を捨てて曲球と主とした投球法に一変して巧みに郡山中打者を牛耳り遂に年来の宿望を達し紀和代表となった。勝った海南中の第一の殊勲者は何といっても近藤中堅手で2本の三塁打、1本の二塁打に四球を加えた出塁の悉くが得点の5点を殆どかせぎ出した。後半立ち立った長谷川投手を中心に、1回毎に優勝に近づく回を死守する守備振りも完璧だった。郡山中はこの強敵を前半脅した出来栄えは称賛に値するが、中田投手は前半浮き気味の球をよく通し、海南中・長谷川投手に投げ勝ったようであった。

全国大会
<2回戦>
長谷川、前の一騎打ちは何れ劣らぬ球速を武器として鋭く曲がるカーブを混ぜ互いに譲らず、今は只投手の疲れに乗ずる以外いつ果てるとも見えなかった。8回前は左打者小林に対して球威を欠いた直球を投じて右中間に長打され野手の動きが悪いのに乗じ三進、次打者阿瀬との間にスクイズが行われた。前はカーブで外角を攻め、バント失敗せしめ小林は完全に狭殺されるかと思われたが挾殺を誤り、野手落球して小林三塁に九死に一生を得た。これに投手気落ちしたか、河瀬に二塁頭上をライナーに抜かれ万事休した。一方長谷川はノーヒットノーランの記録を残したが小林、阿瀬の殊勲打と共に賞賛したい。神戸は凡失から破綻を招き、折角7回までの前の好投をフイにしたが、無安打では所詮勝ち目がなかった。

<3回戦>
藤村、長谷川の好投手を有する呉港中、海南中は大会随一の好取組、長谷川の速球は藤村の素性良きに反しシュート鋭くカーブもよく幾分、呉港中打者に不利かと思われた。
藤村は初回中田に右翼安打され二死後、長谷川の二越安打で1点。更に4回亀井・小林の安打を浴び1点を加えられ海南中絶対優勢裡に回を重ねた。しかし藤村は5回以後カーブを多投し見事立ち直って反撃に移った。果然7回、呉港中・抽木がカーブを中堅に好打したのをきっかけに吉田はよく四球を選び無死2走者を置いて藤村一、二塁間を抜き、更に田川・原の幸運な2安打によって逆転した。この2安打は何ら良い当たりではなかったが、前進守備を布いた海南中内野手頭上高くジャンプするグランドヒットとなり手の施す術もなかった。連日の炎天灼熱のためグラウンドが乾き海南中の守備を悩ましたものでよくよく勝運に見離されたものと言う他なく、それによって長谷川の好投をフイにしたのは同情に堪えない。
呉港中は逆転勝ちしたが力もあり幸運もあったが、藤村が前半苦戦しながら後半活路を見出した投球は偉とするに足りそれが結局勝因ともなった。しかしながら強豪呉港中に対して一歩も譲らず、大会屈指の好ゲームを演じた海南中の健斗は敗れたりといえども球史を飾る十分なものであった。



第21回<昭和10年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
海草中1回より緩球をよくミートして田中、中前安打し和田二匍失、楠本右中間に三塁打、宮本も中堅安打して早くも3点を先取、5回に至や宮本左翼安打野手後逸で三進したのをきっかけに川上・橋本・島・田中、猛打を振い敵失を織りまぜて4点を入れ勝負を決した。最後まで箕島商はゲームを捨てず健斗したが松村投手が17安打を浴びて施す術もなかった。

<準決勝>
海南中は長谷川を休養せしめ近藤投手を起用した。和歌山師は1回近藤投手の肩の定まらないのに乗じて1点を先取したが、その裏海南中は阿瀬の二塁打、亀井の3塁打と栗生の中飛などで力の差はどうすることもできなかった。

<決勝>
剛球無敵の長谷川投手を擁し黄金時代を誇る海南中の強味は目に余るものあり、海草中の苦戦は予想された。海南中2回二死後、走者一、三塁の時、重盗成って1点を挙げれば海草中もその裏、川上遊匍失バント二進後、増田の適時安打に同点となる。5回海南中敵失と近藤の三塁打で3点、更に6回には阿瀬・栗生相続いで見事な本塁打を放ち大勢既に決するかと見られ海草中全く手の下しょうなく呆然自失の態。後半に入り海草中二死満塁に川上一塁頭上を抜いて走者一掃してその差2点に迫ったが、8回表、海南中・阿瀬中堅安打、長谷川の右翼二塁打にまたまた1点追加した。しかしその裏、海草中1走者を置いて危機打者橋本2-0後右中間に痛烈な三塁打をたたき込み、宮本のスクイズで自らも還って2点返しその差1点と迫り満場を湧かす。
最終回裏、海草中敵失と安打で一死満塁となり皆岡粘って中堅安打して楠本を迎え、増田またよく粘って三匍すれば川上本塁封殺されたが、併殺せんとした送球を一塁手がポロリと落し松井二塁より脱兎の如くすべり込んで海草中に凱歌揚がる。長谷川投手しばしプレート上に座り込み動かず、県予選録に見るサヨナラ逆転劇に興奮、その極に達したが確かに紀和球史を飾るシーソーゲームとなった。

<紀和決勝>
両軍技倆伯仲し、紀和大会としては稀に見る大熱戦を展開した。この日海草中楠本主将、日射病に仆れ氷のうを頭にベンチに控え、遊撃手増田は膝関節炎全治せず悲壮な空気海草中ベンチに漂う。郡山中1回大橋中堅安打、平井左中間三塁打して1点先取すれば海草中3回、二死後田中四球後、和田の中堅二塁打と増田三匍失にたちまち逆転した。
4回郡山中は一死満塁、上島の左飛に同点となり満場騒然、更に野手の本塁悪役に一挙本塁を欲張ったが寸前アウト。海草中も5回一死満塁の好機を迎え左飛に生還、また1点リード8,9両回郡山中の反撃鋭くピンチに襲われたが、一つは前進守備をした島の美技に、一つは遊撃手増田よく掴んで三塁に送球走者を刺す好判断に阻み、斯くして海草中は6か年振りに宿望を達成し紀和代表となった。

全国大会
<2回戦>
試合は最初松山商奇襲策戦に出たのに反し、海草中は正面より堂々と正攻法をとり猛攻前半海草中優勢裡に進めた。即ち2回と5回好機を迎えたが何れも松山商の好守に阻まれた。即ち2回二死後、和田右翼線安打し二塁より皆岡本塁を衝いて憤死、5回二死後走者二塁の時、田中の一打一塁手をはじいて転々としあわや生還と思わせたが、中山投手の好カバーに惜しくも阻まる。8回に至るや果然波乱を呼び即ち松山商一死後、亀井安打、筒井良一失に生き伊賀上三振で二死となったが、投手の二塁牽制悪投となって亀井生還、筒井は2-1後果敢な本盗を企て成功巧みな走塁に2点挙げる。
されど海草中反撃に出てその裏走者一、三塁、一打同点の好機を迎えたが期待された4番、川上の一打も完璧の松山商守備陣を抜く能わず恨を呑んだ。しかし大豪・松山商に対して危機に陥れた斗志と気迫は見上げたもので敗れて悔いなき善戦といえよう。松山商は試合運びと走力に一段と優れていた。



第22回<昭和11年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
和歌山師は最後に刀折れ矢つきて潰滅したが、前半に和歌山商が対海南中との再試合で疲れているのに乗じ、3回より吉川捕手とプレートに送らす苦しいシーソーゲームを演じ、試合は半ばを過ぎても勝敗の予断を許さない程だった。和歌山商は再試合の疲労のため、小林・中谷両投手はストライクを投げることすら困難な程苦戦に陥ったが、後半ビッグ4の偉力を発揮して8回に至って敵を粉砕したのは流石であった。
和歌山工・喜多投手懸命の投球も海草中慣れるに従い宮本の二塁打を初め11安打を放ち、毎回に着々と得点を重ね、一方宮本は好投して3安打を与えたのみシャットアウトせしめた。

<決勝>
優勝候補和歌山中を仆した他、楽勝余分のある海草中に対して連日苦戦を重ねた和歌山商は不利と思われたが、この日は見違える程の元気で不調を伝えられた小林投手は見事立ち直って完投したのに反し海草中・島投手以外の不調で4回、和歌山商は小林右翼線に二塁打し味村三匍一失に生き一死後、金・太田(富)の適時安打に一挙3点を入れ満場騒然、6回更に無死満塁の好機を迎えたので海草中ベンチはたまりかねて島を退け宮本投手に代えたが、勢いづいた和歌山商の打力は抑える術なく打順一廻して3点入れて大勝した。和歌山商・小林投手は緩曲球で好投し珍しく一試合完投して、全く予想を覆して大番狂わせを演じた。

<紀和決勝>
郡山中・中田投手前半球威なくカーブも曲らず早くも5点リードを許し、一方打力不振で5回漸く小川中前に最初の安打を放ち四球、野選に無死満塁、和歌山商はここで中谷に交代せしめて次打者を三振に討ち取り、同時に上手く一塁牽制に走者を追い出し三塁走者を重殺、危機を切り抜けたかに見えたが、主将・中垣に右前安打を許して2点までに肉迫したが、打力に乏しく最後まで今一息中谷を打ち込めず、和歌山商は5年振りに紀和代表の紫旗を手にした。

全国大会
<2回戦>
先攻の和歌山商、制球に苦しむ敵投手から四球2と小林の投手強襲安打で2点先取、意気揚がり、3回二死満塁に金左前安打を放ち中谷も本塁を働いて憤死したが1点を加う。更に4回無死2走者を出し太田義三振、吉川中飛後、中谷左中間を抜く三塁打に2者を迎え入れた他、7回を除いて毎回得点を重ね得点差を開いて楽勝した。小林投手は見事ノーヒットノーランの記録を残して大勝した。

<3回戦>
当大会随一の優勝候補大豪の岐阜商に対して和歌山商は元気一杯立ち向かったが1回二死満塁となりながら入らず、2回和歌山商・上原四球、二死後、佐伯右中間に三塁打を放ち1点を先取した。その裏、岐阜商俄然猛打を振い野村遊撃強襲、足に当たって外らす間に二塁に達し森田の安打で生還。その後満塁となり近藤の三遊間安打と松井の右中間二塁打、押し出しの1点で一挙5点を獲得、5回また1点を加え和歌山商・小林投手退き中谷投手となり防戦に力む。6回和歌山商一死後、中谷の左翼線二塁打、小林中前安打に続いたが、味村の投匍にダブられ好機を逸したうえに8回、2走者を置いて加藤(三)に中越三塁打を浴び野手失に3点を与え敗退した。岐阜商は優勝候補の噂に違わず堂々と打っては12安打を放ち守っては1失を記録せるのみ、この大豪を向うに廻して甲子園の花と散った和歌山商の敗戦は是非もない。

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第23回<昭和12年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
箕島商は選球眼悪く悪球に手を出したのに反し、海草中は箕島投手が条件を整えんとして投げ込む直球を逃さず打ち込み4回を除き毎回得点を加え一方的に大勝した。箕島商に斗志がみられなかったのも得点差を一層大きくした感があった。
準決にふさわしい好試合を演じた。殊に両軍守備は実に鮮かで光っていたが、攻撃において海南中の打者が好球を見逃していたのが試合のキーポイントをなしていたものといえよう。又和歌山中・吉田投手は良く球をミックスして最後まで好投を続けていたのも見事だった。只海南中はが11回に入って投手交代したのは西岡がそんなに疲労もしていず調子も良かっただけに不思議に堪えないが、この大接戦まことに敗れて悔ないものであった。

<決勝>
優勝戦に相応しく息詰まる接戦を演じた。前半は全く互角で3回和歌山中二死後、山西二塁打、4回海草中・松井右翼線に二塁打したが共に入らず、5回和歌山中一死後、大江右中間に三塁打し島スクイズを気にし過ぎで暴投で1点を先取、6回表木村中越二塁打し小谷の右飛に三進後、スクイズ失敗で三本間に挾段されチャンスを逸す。その裏、海草中遊匍失と四球に走者を出しバントに送られ島一匍すれば、野手の本塁送球遅れ竹尻生還、続く皆岡三塁右を抜く二塁打し2者を迎え遂に2点リードする。
7回海草中はここで出来の良くない島を退け松井をプレートに送ったが和歌山中・西本死球、下野江テキサス、吉田のバント投手一塁へ暴投して1点かえせば、海草中・古角左前安打、二死後岩出適時安打して1点を追加、シーソーゲームを演じ満場騒然、最終回、和歌山中二死後、山西遊匍高投に二進、木村三匍失にその差1点差と迫り場内かたずを呑む中小谷投匍して万事休し海草中に凱歌揚がる。終始力の籠った好ゲームだった。

<紀和決勝>
1回海草中・松井四球バント二進後、島遊匍悪役に生きる間に好走1点挙げ、2回には一死後、金の二越テキサスを初め古角、竹尻、岩出、島、坂田、加茂と7本の長短打を集中して一挙7点を加えて大勢を決した。投打に相当開きがあり小杉投手が不調とあってはどうにもならないが、2回、未完成投手と交代せしめた策は当を得てなかった。
7回海草中は一死満塁、岩出一匍後、島の中前安打に止めの2点を加え、8回にも安打の坂田二盗、捕手の高投に一挙生還、2ヶ年振りに海草中紀和代表となる。

全国大会
<2回戦>
林・島の対戦は注目されたが前半の経過は極めて芳しくなく凡戦に終始した。即ち1回徳島は折角の好機に4番打者2ストライク後バトン失敗に終わったのは小細工に過ぎた嫌いがあった。海草中は一死満塁と攻め立てながら坂田右飛に走塁を誤って得点成らず、その後も捕手が邪飛を見失ったり、凡プレー多く徳島商は遂の投手の暴投と捕逸に1点を与え、海草中の三塁手坂田の美技を最後に徳島商は諦めがた一戦を失った。海草中はいささか固くなった嫌いがあったが、斗志に勝り徳島商は好感を持ち得るチームであったがいささかファイトに欠け初陣を失った。

<3回戦>
北海中・大橋投手の出来は大して不調と思われなかったが、海草中待球主義に出て選球眼良く2個の四球と遊失に1点先取したのを始め、2回には古角死球、竹尻四球を選ぶや松井三塁越安打、岩出二塁打、島三塁打と攻撃大いに振って一挙5点を入れ、スタートにおいてよく機先を制して回を追って実力を発揮して大勝した。北海中は島の外角を外れるボールと浮き気味の速球を打ちあぐみ、前半大量得点を与えて反撃の機をつかめず大敗した。

<準決勝>
試合は両投手の健斗から経過の変化乏しい嫌いはあったが打者を狙う投手の球道、投手を狙う打者の気組に言うべからざる味わいが有り終回まで興味がつながれた。海草中の守備には加茂一塁手や古角中堅手の飛離れた美技があり1失を記録したに過ぎず、好試合に敗れたもので惜しまれるのは只3回の破綻であった。
海草中は3回古角四球、竹尻のバントで二進し二死後、二匍失に1点を先取したが、その裏、中京商は野口・石井の好打に反撃を見せ忽ち3点を入れ逆に2点リードした。海草中には遊撃手が投手より封殺球を落とした失策があったが、この得点は四球1、安打2、失策1に加えて三塁走者を置いて右翼大飛球があり止むを得ない点であった。この試合中京商は流石に貫禄を示したが、海草中としても敗れて悔なき善戦と言えよう。



第24回<昭和13年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
小粒揃いの和歌山中はファイトを燃し好球を逃さず、短打主義に出たのが成功して3点リードした。海南は前半甘く見てか、粗雑な方法で意外の苦戦に陥ったが7回以降、立ち直って打つべきを良く打ち頽勢(タイセイ)を挽回したのは流石であった。
先発の和歌山商・近藤投手は四球を連発して早々に上原にプレートを譲り1回ピンチを切り抜け、カーブと変化球に強気の海草中の打棒を巧みにかわし接戦を演じた。2回海草中一死後、加茂中越三塁打し竹尻三匍失に1点先行すれば、和歌山商は7回四球2と近藤二匍に一、三塁に拠る時、中野遊匍失に同点満場騒然となる。しかし海草中は8回一死後古角左飛に出て皆岡の左中間を破る大三塁打に決勝の1点を挙げ制勝した。

<決勝>
海草中は対和歌山商戦の苦戦にこりて、この日は当初から手堅く山崎投手を攻略、機先を制して得点を重ね、島投手は回の進むに従い快投振りを発揮して堂々3年連続優勝した。即ち1回海草中・松井第1球を遊匍して生きるや直ちに二盗、二死後、岩出の二匍1失に早くも1点、幸先よいスタートを切った。2回にも竹尻・松井の安打で1点、更に3回には岩出・右中間に三塁打し皆岡・竹尻の適時安打で2点と着々得点を重ね海南に圧勝した。島は剛速球で完封、制球力もあって素晴らしい出来だったが僅かに9回二死後、突如調子を乱し四球連発、1点を押し出したのは一抹の不安を与えた。

<紀和決勝>
両軍の技倆に開きがあって海草中は1回松井左前安打、直ちに二盗するや、古角の左翼三塁打を始め島の本塁打、岩出・金がつるべ打ちに打ちまくり一挙7点を入れ早くも勝敗を決した。島の剛速球は天理を完封し、ノーヒット・ノーランを記録した。

全国大会
<2回戦>
期待されたこの一戦、海草中滑り出し良く1回松井中前安打、得意の盗塁成功して敵膽を脅し古角・岩出のバント策戦に1点を挙ぐ。6回2走者を置いて皆岡三塁戦上に痛打を放ち2点、平安中は前半島に封じられたが、7回斗将雁瀬三邪飛に命拾いした後、右中間に二塁打して広瀬の三匍で三進、上村の右飛に生還やや色めき立ち、海草中8回表、松井三匍悪投、古角の右前安打に一、三塁となり岩出の適時安打と4四球で押し出しの2点計5点を挙げ勝利を?んだと見えたが、その裏平安中一死一、二塁の時須山の一匍加茂併殺せんとした二塁送球がやや高くセーフ、一死満塁、木村進一塁戦上を抜き2点、この頃から制球力乱れて1点を押し出し上村の右飛を岩出本塁に好投して寸前に併殺危機を脱す。しかしその差1点と迫り満場騒然、島全く平静を失い最終回、無死四球に走者を出すやたまりかねて松井をプレートに送ったが及ばず、代わった遊撃手田中の手痛いエラーと須山の中堅安打に逆転雄図空しく挫折して悲運の涙を呑む。前半海草中は攻守に敵を圧し完勝するかと見えたのに雁瀬の一打を浴びてから島が動揺著しく自滅したのは意外であった。しかしながら両軍の攻防には好打、美技を織り交ぜて素晴らしい記録を留めたゲームであった。



第25回<昭和14年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
和歌山商は2回二走者を置いて遊匍すれば下痢をして練習を休んでいた竹尻の一塁暴投を誘い1点を入れ、意気軒昂、その後中野投手よく頑張って善戦したが、海草中あわてず回を追うに従って地力を発揮して、真田・竹尻の長打を始め8安打を放って制勝した。海草中では2年生の若漢真田の三塁打、二塁打各1本の猛打振りが目立った。

<決勝>
海南中の善戦を期待されたが、海草中は山崎投手を攻略して痛烈な当たりを見せ着々得点を重ねて完勝した。即ち1回海草中第一打者古角遊撃を誤らせ、竹尻右翼安打、加茂バントに送った後、島の適時安打で2点、3回には加納安打、バントに二進後、竹尻三塁打して1点、続く加茂は一度スクイズ失敗して竹尻を殺したが憤起して中堅越本塁打を放つなど快調なスタートを切った。後半に至るも攻撃の手を緩めず、一方島は制球力も豊かで昨年以来の不安を解消した素晴らしい出来を示した。
法大・滝野選手を招きその活躍を期待された海南中は、僅に2安打の貧攻振りで意気揚がらず良いところなく敗れた。本大会を通じて海草中は3試合に安打32本、3割2分の打撃率を挙げ従来どちらかといえば守備の海草中といわれた汚名を一掃素晴らしい打力を示した。

<紀和決勝>
前半天理中・福田投手の緩球を打ち悩んだ海草中は回を重ね慣れるに従って地力を発揮して小刻みに得点を重ね制勝した。海草中は上乗の出来栄えではなかったが7回8番打者宮崎、左翼金網越本塁打を放って気を吐いた。

全国大会
<1回戦>
嘉義中・酒見投手のカーブとシュートは鋭く、海草中打ち悩み、前半0-0の均衡を保ったが、後半やや疲労したのに乗じすかさず好打を浴びせ得点を重ねた。即ち5回、古角高目の球を左越二塁打し左前安打で出塁の志水を迎え竹尻も巧みに左前安打して古角生還、6回には島曲球の曲り鼻を左越大三塁打を放つなど猛打振りを示して勝利を確実なものとした。嘉義中は内外共堅実で見事なものがあったが、打力が島に奔弄され無得点に終わった。

<2回戦>
京都商・神田投手は外角に速球を投げ込み忽ち古角・加茂を三振に討ち取り、花々しいスタートを切ったが余りに一本調子すぎ変化を欠いた為、竹尻、島に痛打を浴びその上致命的失策が連続して1、2回で早くも3点を与えた。定評ある竹尻・島に対し短兵急に攻め立てたのは拙かった。島は荒れ気味でしばしば四球で走者を出したが締る可きには締り、僅に2安打を許せるのみ、その後海草中は毎回走者を出しながらヒットエンドランを2回失敗し漸く7回古角のセーフティー・バントに機を作り真田、田中の好打で2点加え快勝した。蓋し実力の差を示した、当然の勝利と言う可きであろう。

<3回戦>
米子中・田中投手は長身より慎重に投げ下す直球に気合かかり攻撃も活気横溢して対高岡商とは見違えるばかりの元気さであった。海草中は3回裏、四球3と遊失に1点を先取、回を追うにつれ、打力は鋭鉾を現し4回に1敵失と古角・竹尻の安打に2点を加えて後半戦を進む。
米子中は7回一塁失と安打に一死走二、三塁の好機をつかみ本塁も今一歩の間に臨むところまで進んだが、島の剛速球にバント失敗し頓挫した。海草中は好投とチームの洗練さを併せて3試合を0敗せしめ底知れぬ力を示して準決勝に勝ち進む。

<準決勝>
島・安田両投手は中等球界一流の名投手で一日の休養に海草中の苦戦が予想されたが1回立ち上がりに古角に死球を与えて動揺したか、一死後竹尻、島を歩かせ真田、スクイズ失敗して古角憤死したが真田憤起中堅右に、田中中堅左に二塁打し宮崎左前安打して、一挙4点を入れ機先を制す。この大量得点に一言と投手交代せしめたが、島田商陣営早くも色を失い3回には安打真田、宮崎四球で一言退き再び安田の登場となったが、戦意を欠き、一方島の快腕はノーヒット・ノーランに加えて三振17という快記録を立て攻撃にあっては安田、一言を徹塵に打ち砕いて長短12安打を浴せて完勝した。

<決勝>
1,2回波乱なく3回に入るや海草中・古角四球、加茂遊失、竹尻のバントに古角三封され島三振二死となったが、真田の中堅痛打、野手転倒する間に2者生還、友浦投手は4回より再び立ち直って慎重に投げたが7回漸く力尽きたものの如く、古角・加茂・島に集中安打され押し出しの1点を加えて大勢を決した。島の球威は特に鋭く無安打、無得点、僅に四球で2走者を出せるのみ、それも前者は二塁に刺され後者も挾殺されて1つの残塁をさえ止めなかった。
斯くして17年振りに南海の地に大旆を飜えしたが、戦を交えること5度、総て0敗に屠り許した安打僅に8、三振57準決勝、決勝を無安打に討ち取るという本大会未曾有の大記録を樹立した。一昨年以来苦戦を嘗めた島投手が撓まず3ヶ年の忍苦ここに報いられ、更に全員が島を扶けて鉄桶の守備を布き強烈な攻撃力を以って完勝した団結の力に弥讃したい。



第26回<昭和15年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会
<準決勝>
海草中立ち上がりから果敢に攻め5点リード、6回から真田を退け田中をプレートに送る余裕を見せて2安打に完封した。一方攻撃は長短13本を放ち一方的に大勝した。

<準決勝>
弱冠箕島商は回を追うに従い、深まる痛手にも屈せず健斗、放った安打1本とはいえ斗志一杯によく斗った。海南中は流石強豪の面目を発揮し、1回5本の長短と4回四球で致命的な6点先取し投手を交代せしめたが、更に2回以降猛打を浴せて大量得点を重ね問題とせず大勝した。

<決勝>
海草中は真田投手の好投に牛耳られ、僅に4安打を放ったのみに対し、海草中はサウスポー亀井投手から長短11本を奪い守っては2つの併殺を演じて攻守に敵を圧し、戦前の予想を裏切り一方的試合に終わった。即ち海草中1回先頭打者・宮崎死球に出たが牽制球に刺されたのは後で竹尻の安打で出たことを思えば全く軽率なプレーであった。しかし3回宮崎投匍一失、バントに送られ竹尻の中前安打に生還、4回田中無死、左越三塁打し志水の一匍トンネルにチャンスを迎え加納打者の時、重盗企で三塁手失に田中生還、その後貴志の安打で志水を迎え、この回3点を加え大勢を決した。8回にも宮崎安打、竹尻死球の後、真田右中間三塁打を放ち2点、更に田中の左犠飛で1点を加えた。海南中は8回筒井四球、一死後、内山の中堅安打に1点、二死後前田左翼安打を放ち内山を迎え計2点を挽回したのみ。

<紀和決勝>
2回海草中・田中四球、志水投匍一失に生きるや加納・貴志・加茂・森本連続安打を浴びせ打順一廻して一挙6点、3回にも二死後四球1、安打3を織り交ぜて3点を加え勝敗を決した。攻守に劣る五条中は5安打を散発したに止まり村島投手は制球力に乏しく四球7を数えバックスの守備も悪く大量得点を与えて完敗した。

全国大会
<決勝>
真田投手腰痛を訴え注射を打ってプレートにたったが、ボールが多く得点の開きがあった割合に終始不安を伴い決して楽なゲームではなかった。両軍の実力差は相当あり試合慣れの点に優る、海草中の勝利はまずまずというところ。

<3回戦>
京都商は老巧神田投手を擁し、大会随一の優勝候補で海草中捨身の一戦を試みた。劈頭第1打者、宮崎中前に快打し得点にはならなかったけれど全軍の志気を高め、2回二死満塁に加茂2-3後、中前に痛打すれば中堅手前進して後逸、三塁打となって走者一掃の殊勲をたてた。しかし京都商も地力を発揮して、6回3点を返し同点となって俄然試合は緊張の度を加え死斗を続けた。8回裏には海草中無死一、二塁の絶体絶命のピンチに陥り木原の中前安打に満塁、たまりかねて田中をプレートに送ったが三塁走者との間にスクイズを挙が行ない失敗、小フライを揚げ捕手志水好捕したが転倒したため併殺できず、しかし田中シュート・ボールで徳網を二匍に討ち取り関係者胸撫で下ろす。そのまま延長戦に入り12回、海草中二死満塁を迎え加茂の一撃、名手姜トンネル三塁走者勇躍生還、決勝の1点を挙げ約3時間半に及ぶ大熱戦も海草中の快勝に幕を閉じた。

<準決勝>
信越の古豪・松本商は体?に優れ、荒削りながら烈しい斗志はフィルデングの凄さからもうかがわれた。小型の海草中は食い下がり戦法で、1回一死一、三塁の時、真田遊撃強襲し野手ファンブルする間に1点先取り、田中三匍して併殺されたが幸先良し、しかし松本もその裏、二死後、洞沢右翼敵時安打を放って忽ち同点、振り出しに戻り松本やや押し気味に見えた。5回海草中・森本四球、竹尻バントし真田の右前安打で1点リード。更に8回無死満塁の好機を迎え、貴志のスクイズ成功して手堅く1点を加えた。前半危ぶまれた真田は後半立ち直って、見事な投球振りを示しカーブよく低目に決まって松本商の打線を完封し、戦前の予想を覆して大敵破った。

<決勝>
真田・一言の一騎打ちに試合の運命をかけて花々しく争覇の幕を開けたが、立ち上がり島田商・中村・松下に連安打され海草中ピンチに陥ったが、4番一言の遊匍を見事な併殺で退けて危機を脱す。3回裏、海草中は唯一回の機会を巧みにとらえ、無死満塁を迎えるや、森本と加納のスクイズ成って貴重な1点を先行した。しかし4回表、遊撃後方に打ち上げられた高飛球が強風に流されたのを中堅加納が追い込んでポロリと落し、1点を与え俄然試合はエキサイトした。後半は1点をせり合い、激しい攻防を展開したが7回二死後、志水の遊飛風に幸いされて落球に出塁後、加納2-2から高目の直球を右中間に三塁打し決勝の1点をたたき込み、強豪島田商を破って堂々連続優勝を遂げた。その日吹きまくった強風に流され高いフライの捕球が両軍を悩まし、ポロリ落としてそれがいずれも得点に結びつくなど珍しい決勝戦であった。小粒の海草中が毎試合の安打数が相手より劣りながら強敵を仆し得たのは一致団結の賜物という他なく、優勝経験をもつ選手の粘り、気構えが優勝をもたらしたものといえよう。



第27回<昭和16年>全国中等学校野球選手権大会

全国大会中止される。
昭和16年7月、日支事変益々拡大し、独ソ開戦に発展して世界大戦の様相を呈するに及び太平洋戦争史で有名な7月2日御前会議の結果、大軍を満州へ動員すること。南仏進駐など臨戦対制に入ることを決定、このため文部省は7月15日に至りスポーツ団体代表を集めて学徒の足止め、県外試合の禁止、県外の合宿の中止などを発表、既に各地で予選を始めていたが全国大会中止されるに至った。
(昭和16年8月~20年8月まで第二次大戦で中断される。)

<決勝>
大会規定(満19歳以上出場不可)により真田投手を欠いた海草中は危ぶまれたが、加賀投手を攻略して着々と得点を加え守っては辻速成投手好投で予想を裏切り海草中勝つ。1回海草中一死後、水田四球、森本左中間安打、加茂三振後、辻源右翼右に安打して水田を迎え1点を先行した。和歌山中は真田なき海草中を軽く見て1点の先行を許したのに焦り出し、僅か5回無死満塁から松浦三匍後、加賀死球で押し出しの1点、和中投匍後、岩橋の内野安打に1点追加、更に6回二死満塁から松浦の投触安打に1点を返しその差2点と迫ったが、海草中の斗志に圧せられ後半振るわず、7回海草中・森本、加茂、高橋の3安打と犠飛と併殺を企てた野手の暴投で3点を追加され勝敗を決した。

二次予選<8月3日~4日>
従来と異なり、奈良県の他に三重県代表も加えて行われた。
速成の辻投手出来悪くかなり打ち込まれたが、海草中は左投手の沖村から1,2回7安打を奪い5点リード、辻投手を助けて制勝した。

<決勝>
1回2走者を置いて加茂の右翼安打に因る先制の1点のまま、決定打を欠いて苦しい試合を進めたが、7回辻原の三塁打などで4点を加え勝敗を決した。辻投手の出来も昨日と打って変わり危な気なく立派に重責を果した。



<昭和17年>文部省主催の大会 8月23日~29日

<1回戦>
先行の台北工、2安打を放ち1点リードのまま、菊地投手の好投で押し気味に前半を終り7回無死、関口第1球を左越三塁打を放ち満場騒然となったが、加茂のトリックに見事三塁走者を刺しピンチを脱した。最終回海草中一死後、森本二盗成功して辻の一打遊撃トンネルする間に同点となり補回戦に入る。されど10回表、台北工、遊失と適時安打に1点を加え海草中ベンチは憂色に包まれたが、その裏、小川左翼を誤まらし二進するや高橋・重根のバント攻撃に敵内野陣を乱し水田の遊匍本塁悪役を誘って同点となり、更に森本前進守備する野手の頭上を抜いて逆転快勝した。

<2回戦>
辻投手の不調から1回補逸に1点、2回また安打を浴び1点を奪われたが、海草中も猛攻忽ちはね返し、後半は辻も立ち直って波乱なく最終回更に二死後、高橋の遊匍失にとどめの1点を加え海草中勝つ。

<準決勝>
前半両軍共凡退をくり返し7回入り徳島商二死後、三匍失に走者を出す辻動揺して四球を連発して1点を押し出し最終回を迎う。海草中無死走者一、二塁となり俄然色めきだち、水田の送りバント功を奏したかに見えたが二塁走者スタート悪く三封される。森本一匍失に尚も一死満塁と攻めたてたが期待された辻三振、加茂打者の時カウント1-1、三塁走者重根俊足を飛ばし好スタートを切り本盗を企てたが、一瞬天地主審の手は高く上げられ海草中涙を呑んで退く。



第28回<昭和21年>全国中等学校野球選手権大会

戦争の為、中断されていた全国中等学校野球大会は青少年スポーツを通しての日本再建を願い、あらゆる困難を克服して開催される運びとなった。進駐軍の関係で球場は西之宮に移されたが、開会式では海草中学校畔取主将から歴史と光栄に輝く大優勝旗が返還され、ここに6年振りに復活大会は開幕された。

<県予選>
和歌山中校庭は戦時下軍隊駐留の為、甚だしく荒されたため球場を和歌山商、海草中に移して開催したが、戦時中の空白の為、技倆の低下著しく得点差も大きく開いて好試合は見られなかった。食料難、用具難に苦しむ世相の下では之も是非もない。

<準決勝>
海草中は和中投手に牛耳られ4,5回安打で走者を出したが、後続振るわず8回二死後、山羽三塁を抜き垣内右翼線二塁打して初めて好機を迎えたが原三振に止み、僅か4安打で反撃できなかった。
之に反し和歌山中は4回四球と2安打で2点、6,7回四球、盗塁、失策を織りまぜて1点、2点と得点を重ね8回には4安打を集中して大量得点を入れ和歌山中の大勝に帰した。選球眼を欠いた海草中打力の不振が敗因。

<紀和決勝>
天理中は試合巧者の和歌山中・和中投手に阻まれて3回まで得点のチャンスなく、之に反して和歌山中は2回裏、加納・田原の安打に続く犠打、敵失で2点先取り、更に3回藪中四球に続く3安打を集中して2点を加え一方的ゲームと思わせたが、4回表、天理中は和歌山中の連続失策に俄然反撃の火蓋を切り2点を返し、その裏和歌山中は2点を追加すれば5回表、天理中1点をかせぎ決勝戦にふさわしい白熱戦となった。しかしこの裏和歌山中・田原に始まった攻撃は鋭く敵陣を切り崩して一挙5点を獲得、試合を決定的なものにした。斯くして和歌山中は昭和7年以来、実に15年振りに甲子園出場することとなった。

全国大会
<2回戦>
好試合が期待されたが、和歌山中の打棒は左腕速球の平古場に全く抑えられ三振16を喫し、僅に最終回2点を恢復せるのみ、浪華商は初回よりよく打ち前半小刻に得点を重ね全く一方的なゲームに終った。安打2、三振16を喫し毎回三者凡退に終ったのは左投手に対する打法に一工夫がなさすぎた。

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第29回<昭和22年>全国中等学校野球選手権大会
<決勝>
海南中は2回二死満塁に辻二塁打し走者を一掃し、更に4回4安打を集中して3点を加え伊沢をノックアウトする。海草中は井上のドロップに手を焼き1,2,8回に訪れた好機を打ち込めず、5回漸く伊沢左翼に三塁打し岡の中前安打トンネルに2点を恢復し、更に6回二死走者一、三塁の時、重盗成ってその差3点と迫ったが及ばず海南中勝つ、伊沢が制球力を欠き終始不安を続けたが敗因であった。
斯くして海南中優勝したがはからずも選手中無資格者が出場したことが発覚し連盟は緊急理事会を開いて審議の結果遂に失格となり、第2位の海草中が紀和決勝に出場するという稀らしい球界異変が持ち上がった。

<紀和決勝>
海草中は1回3安打、3回死球、敵失で早くも3点、2回2点を加え大きくリードした。御所工は4回表、谷川右翼線二塁打し2四球で満塁となったが後続凡退、5回にも一死満塁の好機をつかみ敵失で2点、8回伊沢投手の乱れに乗じて3個の四球と二匍失で2点を返したが及ばず海草中優勝す。海草中としては御所工の貧攻に救われたが、伊沢投手は制球に難あり、守備陣もエラー多く芳しい成績とはいえなかった。途中、御所工側ファンより金丸選手の資格に就いてアピールあったのに端を発し、多数のファンが球場内になだれ込み審判員が整理に当たるなど試合が中断される騒ぎがあった。

全国大会
海草中・伊沢投手制球力を欠き1回四球と野選で無死満塁の危機を招き、大場の三匍は本塁に封殺したが、更に併殺せんとした捕手の一塁送球悪く外野に転々とする間に呆気なく2点与う。海草中の打力全く振わず好球を見のがし悪球に手を出し、遂に無得点に終ったが、岐阜商の攻撃も決して活発なものといえず、5回追加点1点を挙げたのみで貧打戦のそしりは免れなかった。



第30回<昭和23年>全国高等学校野球選手権大会
和歌山県予選
<準決勝>
田辺は1回四球、安打とバンドで1点を先行、2回には寺本哲、中堅越の本塁打を放ち更に6回には投手強襲安打に続くバンドを海南井上投手が一塁に悪投し捕手の後逸、スクイズなどで2点を加え4-0とリード、海南打棒は田辺寺本投手の巧みなチェンジ・オブペースと好守に阻まれ、9回左前安打で走者一、二塁となり井上左越三塁打を放ち2者生還2点差に迫ったが後続空しく遂に田辺勝つ。
桐蔭1回3安打、2四球、敵失で4点を先取、4回二、三塁打を含む4安打、3四球、敵失などで一挙9点を入れて大勢を決した。日高は9回辛うじて2点を返しただけで桐蔭西村・松島両投手を打てず完敗した。

<決勝>
田辺は粒揃いの大型チーム。これに対する桐蔭は西村の快速球を頼みに期待通りに好試合を展開した。田辺は1回一死後、恵中四球、投匍失、右翼安打で1点先行すれば桐蔭3回二死後、2安打と1敵失で忽ち同点となり、更に5回三振不死の金丸バンドで二進、捕逸で三進後松島の三遊間安打で生還2-1とリード。更に6回桐蔭広谷の遊匍野手トンネルして一挙三進、続く竹中美の右飛に広谷生還し桐蔭優勢の裡に両軍必死の白熱戦を続けた。
最終回、田辺無死走者一、二塁の好機を迎え色めきたったが、三振と遊飛で二死、続く二匍野選で満塁となり四球押出しで1点を返したが、次打者投匍で本塁封殺され万事休し桐蔭に凱歌あがる。最後まで行き詰まるばかりの接戦だったが、田辺は強振に過ぎ僅かに2安打を放ったのみ、西村を攻略成らなかったのが敗因といえよう。

<紀和決勝>
桐蔭西村投手は制球こそ乱れたが、のびのある連休は最後までおとろえず郡山必死の攻撃を制圧した。郡山杣田投手も非力ながら球ののびよく5回まで巧みに桐蔭の攻撃を封じたが、6回に至り遂に崩れ西村の三塁打、金丸・広谷の安打に2個の野選を交え内野の混乱まで加わって4点の大量得点を許した。打撃と走塁に1日の長ある桐蔭の勝利は順当ながら得点に現れた程の差は認められなかった。若し郡山ナインが守備の若さを暴露しなければ杣田ももって楽に投げられた筈で6回裏大山・杣田・松本の3安打に1点しか挙げられなかった不運と共に惜しまれる。桐蔭は更に7回郡山守備陣の混乱に乗じて4点を加え大勝した。

全国大会
<決勝>
桐蔭は2回の先取5点で楽勝するかと思われたが、投手西村の無制球で薄氷を踏む思いをしながらも芦屋の決定打不足に救われて辛勝した。桐蔭は2回長短5安打と1四球、1失策に5点をあげたもののその後8回まで有本の好投に1安打を記録したのみだったが最終回竹中美の適時安打で止どめの1点を加えた。
一方、芦屋はしばしば走者を出しながら1回無死走者二、三塁のチャンスも僅か四球で1点、6回には二死満塁に中川の適時安打で2点を加えたに止どまり再三のチャンスももう一押しというところをうち込めず敗れた。

奥羽代表としての青森は存外整っていたが、試合の駈引において矢張り桐蔭に稍々劣っていた。桐蔭の投手西村の無制球を良く承知して待球策に出たことは賢明だったが1・2回走者を出してからの攻め口を誤り悪球に手を出し好機を逸した。桐蔭は2回に収めた2点も決して芳ばしいものでなくむしろ青森の凡失に乗じたものであった。5回に進み青森は徹底的に球を待って四死球5を奪い押し出しの2点を入れ互角の態勢に盛り返した。
然しこれも束の間、桐蔭は再び青森の凡失に乗じて2点を加え投手西村を松島に代え四球を警戒しつつ青森を押えていった。青森はチームの漢字もよくボクトツそのままであるが、欲をいえばもう少し気力が欲しかった。函館には桐蔭は目に余る大敵で荒れ気味の西村の剛球に手が出ず攻める術を知らず6回無死満塁を逸し完敗を余儀なくした。桐蔭は4回好打順を迎え松島の安打、竹中美の左翼線二塁打で藤塚の心境をかき乱し尚3安打を集中して一挙4点を挙げ前半にして早くも大勢を決した。

<準決勝>
西京商は春の選抜優勝校、桐蔭の苦戦は免れないとされたが、これまで薄氷を踏む感があった西村が、この日は予選当時の好調を取り戻し実力を十二分に発揮したのに反して北本は前日健斗のため疲れたのか、やや球威に衰えをみせ桐蔭の当て主義の打撃に攻められ、しばしば塁上に走者を送りその前途にやや不安を覚えた。3回桐蔭竹中駿、無死で安打し垣内のバンドで二封、一死後、投手一塁けんせい悪球で垣内二進、金丸の中前安打で三進後、井関三振したが、松島の遊匍失で1点を先取西京商の機先を制した。
西京商は2回無死一、二塁のチャンスをバント失敗で逃し4回には一死後四球に出て二盗した種田が勢に乗じて小柳の遊撃正面を襲うゴロで禁物の三塁に走り刺されるの愚を繰り返し、尚この回松岡の右前安打で小柳は二塁から本塁に突入し間髪の差でアウトとなるなど訪れた好機を悉く逸し去ったのは惜しまれる。
桐蔭の勝因は西村の好投に因るもので西京商の敗因は西村を一気に攻略せんとして打ち気に出たため8回の四球に浴しながら遂にこれを生かさず、その上再三に及ぶ暴走とバント失敗でチャンスをつぶしたのと、3回遊撃手の失策も大きくひびいていた。

<決勝>
小倉投手福島の変化に富む投球と細い身体に対し、立ち直りをみせた西村が特に西京商を完封して優勝戦に臨んだその疲れを知らぬ体力は良き対照を見せ桐蔭は打って取らんとすれば福島は巧みに外して凡打にせしめ、小倉待球して四球にかき乱さんとすれば西村真向から速球を投げ込んで逆に三振に打ち取り、隙をねらうも隙がなく投手戦は愈々佳境、大観衆かたずを呑む。6回裏小倉は2つの四球、1つの死球野選があって二死後1点を先取した。即ち河野のバント一塁手、二塁送球が帰塁かと送ったのが小倉に幸いし、やがて二死満塁の死球がものをいったのであるから桐蔭としては一寸のつまずきが大事を招いたわけである。桐蔭は尻上がりに強さを増しチームに元気もあり野球和歌山の名に恥じない戦い振りで小倉に対し堂々の陣を張ってゆずらず、僅かに1死球に禍されて敗れたがここまで戦えば何の憾むところもなかろう。



第31回<昭和24年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
両軍投手好投して7回まで無得点、8回桐蔭中村左翼安打、金丸左翼失で無死一、二塁続く西川のバントを一塁手失して中村生還、松島の安打で金丸・西川還り西村四球、井関の中前安打などで5点を得て勝利を決定的なものにした。串本はこの大敵を向うにまわしよく戦い中でもバッテリーの活躍が目覚しかった。
吉備3回三輪の三遊間安打と堂岡の二塁打、宮崎の左中間安打で2点先取しながら、その後山下に代わった大越投手の好投に阻まれた。海南は4回、本下四球、土屋の左前安打で1点を返し更に野崎・松本臣・松尾の連続安打で追加点を挙げ同点、延長戦に入るかと思われたが最終回、大越三匍失に一挙二進、古田のバントで三進、土屋の中堅大飛球で決勝点を挙げ海南辛勝した。

<決勝>
桐蔭西村投手の立ち上がりを海南攻めたて1回野崎の三塁打、木下の本塁打で堂々2点を先行し気分的に楽なゲームを進めた。西村はその後立ち直り健斗したが、8回唯一のチャンスを中村走塁を誤って反撃できなかったのは惜しまれる。敗れた桐蔭の実力は十分認められるとともに捲土重来を望みたい。腕の故障を心配されていた海南山下投手はチェンジ・オブ・ペースを巧みに使いわけ勝利投手となった。この試合後半担々たる経過をたどったが、両軍共熱のはいった好ゲームだった。

<紀和決勝>
海南1回野崎三塁横を抜きバンドで二進中前安打とボークで1点先取し、更に5回には辻左越三塁打、野崎遊越安打に1点を加えた。その裏、天理は安打と四球、一塁失に二死満塁となり市原の三匍ハンブルに1点を回復、その後両軍共しばしば塁上を賑わしたが投手の健斗とバックスの好守に波乱なく6回海南山下を退け大越のプレートに送ったが、大越期待に反せず天理を抑えそのまま押し切った。

全国大会
海南は塁送球の不確実さに災いされて3回を出ずに敗因を作った。立ち上がり粉川、桜井、鈴木の好打に7点を奪った木戸は鈴木の投球を愈々有効なものとして押しまくり6回海南やや反撃の気勢を示したが既に被った痛手をどうすることもできず水戸をして名を成さしめた。海南長谷川コーチが都市対抗のため甲子園大会前の練習に支障を招き先輩団との間にいざこざがあったりしたことがチームの士気に影響し、意気揚がらなかったことも敗因といえよう。何れにせよ両軍の実力に得点差程の開きはなかったからこの惨敗は意外であった。



第32回<昭和25年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
紀南同志の対戦で強豪田辺を破った串本が期待されたが串本西脇投手出来悪く1回新宮植田四球、寺本三遊間安打に一、三塁、大橋遊匍に植田生還、更に小野一匍失に寺本還えり串本はその裏、無死走者一、二塁となったが投匍に併殺を喫した。新宮4回表、2走者を置いてピンチヒッター飯田の二塁打に2点を加え串本の敗色漸く濃厚、6回裏、無死満塁の好機も小山三振のとき、三塁走者帰塁遅く併殺され新宮の美技に阻まれて止む。8回新宮は更に安打連発でだめ押しの2点を加え決勝戦へ勝ち進む。

1回向陽一死満塁の好機を迎えたがスクイズ失敗して併殺されその裏、海南も無死一、二塁でバント失敗し好機去るかと思われたが、野崎カーブを右翼三塁打して1点を先行、山下、二出川投手共大きく落ちるアウドロを武器に適時胸の辺りをつく速球を混えて相譲らず健斗したが、海南は4回一死後、吉田の左翼二塁打で1点を追加、2点リードした。然し向陽は6回一死三塁の好機を今度はスクイズ成功、更に二出川適時安打に2点返し2-2とする。7回海南向陽の内野手の連失で一死二、三塁となりながらまたまたスクイズ失敗、無得点に終われば向陽も8回二死二塁に茨木よく右前安打したが三塁コーチの指示悪く三、本間に憤死得点に至らず、その裏、海南2四死球、5安打を集中して二出川をノックアウトして4点を得て押し切った。両軍共バントの拙さが目立っていた。

<決勝>
1日休養した杉本と3日連投の山下が共に曲球を武器に懸命な投球、3回まず新宮杉本が左中間三塁打し中継に出た野手の三塁への大暴投に1点先行、4回海南川口右前安打、二盗に成功、野崎四球無死一、二塁の好機から強気に打って山下1飛、古田の一打は左中間を襲ったが、植田の美技に阻まれたのは惜しかった。新宮内外野手の好守備を考え山下に送らせ手堅く1点を返すところだったと思われる。その裏新宮2走者を置いて橋本左前へ三塁打して更に2点追加したが、海南の追撃鋭く5回1点、6回四球に出た野崎を古田二塁打して1点を帰し3-2とその差1点と迫り投手戦から打撃戦に転じたが、8回海南期待された好打順を無為に終れば新宮植田左飛凡失に生き2四球で満塁となり大平、橋本連続安打して3点を加え大きく引離して試合を決した。打力に優る新宮の勝利といえよう。

<紀和決勝>
実力接近した場合の先取得点はナインに与える精神的影響は大きく、この日郡山は2回に1点をあげて足並が急に調子づいていた。だが以後は二、三塁打を放ちながら加点できず、7回にも3個の四球を奪いながらけん制球に刺されるなど攻撃面の粗雑さはおおえなかった。
一方新宮は4回から得意の足を生かしてしばしば好機を生みつつ最後まで予断を許さぬ激しい反撃を繰返した。然かし惜しいかな打球はしばしばライナー性の当りで郡山守備の正面をつき不運の攻撃と幸運の守備を交錯しつつ郡山にとっては正に魔の最終回を迎えた。即ち遊匍失で満塁と攻めたて仲1-0後の一打は中堅前の安打となって2者生還、劇的逆転で栄冠は初めて紀南の新宮に輝いた。勝運から見放されていたというか、郡山にとっては飽きらめ切れぬものがあったろう。然し両軍死力を尽くしての一戦は正に高校野球ならではのもので新宮の勝因ともなった不屈の斗志もさることながら郡山の善戦は激賞に値する。

全国大会
<決勝>
初陣同志の一戦は活気あふれる両軍打線に両主戦投手は耐えきれず早くも2,3回ノックアウトされ最終回まで波乱を生み多彩なゲームを展開した。新宮は小刻みに得点、2回近藤を降板させた時は前途はかなり明るいものがあったが鳴門もさるもの3回集中打で杉本を降して逆転、4回にも救援の左腕仲を攻略して3点を追加した。新宮も屈せず、5回小野の快打で2点、7回には二死後、橋本の長打と一塁手の落球で同点に持ち込んだ。これも束の間、鳴門は栗橋の安打と中飛で勝利点を奪い、8回には田渕浩の好打で勝利を決した。然しそれにしても新宮は打棄る可き最終回のチャンスを焦り逃したのは惜しまれる。即ち佐藤の快打で1点、一死後、大橋の三塁強襲安打で植田生還した時二塁走者佐藤が無暴にも本塁をついて仆れ寺本三盗を試みて再び仆れ、あたら好機も自らの暴走に自滅した。両チーム共よく練習を積み波乱多いゲームで満場を湧かせた。



第33回<昭和26年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
1回新宮和泉三匍失、仲二塁を抜き加えて海南内野陣の連失で早くも2点先行した。海南は1,2回チャンスを迎えながら空しく逸したのに反し3回新宮小坂右前安打に出て飯田の中前飛球は野手の美技に阻まれたが、橋本の遊匍後逸に更に1点を加えた。海南もよく打ち毎回無死走者を出しながら決定打を欠いたが6回谷井一塁越安打し二盗後、的場中堅三塁打して1点を返し尚好機が続いたが後援凡退。海南はバックの連失にも気を腐らせず4安打に封じた的場投手の好投があり、打っては8安打を記録しながら4回中前安打に本塁を衝いた暴走と、6回1点を返し尚一死走者三塁に拠る好機を逸したのが大きく響いた。

1回県和商は耐久梅本投手の立ち上がり不十分を利して1点先取すれば、耐久も川口の三塁打で1点を返し両チーム好打の応酬に活気を帯びた。梅本は曲球、高松は速球をそれぞれ武器としてバックの好守に助けられ後半戦に入った。県和商は7回に四球、山下の安打で一死二、三塁の好機を迎え次打者の一塁ゴロは二塁走者山下の好判断と好走で一挙2者を迎えここに県和商は地力を発揮して試合をリード。8回にも一安打、1失に1点を加えたが、耐久よく食い下り、その裏1点、9回にも2安打で1点を返したが、遂に及ばず県和商は辛勝した。

<決勝>
戦前4分6分に思われたこの試合1回立ち上がり新宮杉本投手が好球を揃えすぎたのに乗じ県和商は高松の二塁打などで2点を先行したがその裏新宮は一死満塁の橋本左前安打し2者生還、続く川﨑の一匍で勝ち越し更に2回裏、杉本三匍悪投に二進2安打と巧みな走塁で2点を加えた。しかしその後、県商組みし易しとみてか粗雑な攻撃を繰り返す中、6回表県和商一死後宮本左中間三塁打しスクイズで1点。7回には2四球、西山の安打でその差1点と迫り新宮はたまりかねて杉本を退け脇口を登板させた。
最終回、県和商榊田四球、既に二死となり勝敗決ったと見えたが松島の二匍凡失で走者一、二塁、西山の痛烈な遊匍幸運にもグラウンド・ヒットとなり野手の頭上抜いて外野に転々とする間に榊田松島生還して形勢逆転す。更に高松打者の時、西山1ボールの時果敢な本盗を企て成功1点を加え満場騒然。その裏新宮必死の反撃に出て二死後、脇口四球、ボーク連発で三進、山県の遊失で1点を恢復し、尚代打宮本四球としつこく攻めたが小坂右飛して万事休し新宮は再制覇の夢成らず退いた。この試合後半は1点差に迫って緊迫戦を演じ優勝戦を演じ優勝戦にめずらしくシーソーゲームとなった。

<紀和決勝>
県和商高松はやや制球に苦しみ前半しばしば走者を出し危ぶまれたが相手の貧攻に救われた。一方攻撃は下手投げの高田、西川投手を盛んに打ち込み1回高松の適時安打に1点を先取したが、走者が粗雑なため1,2回共自ら好機を逸した。ことに冒頭第1打者が右中間に長打を放ちながら三塁に憤死したのは暴走のそしりを免れない。又6回高田・岡本の適時安打の時中堅手の好送球は当然本塁に刺すべきだったに投手がカットし同点としたのは惜しかった。後半県和商高松立直りを見せドロップがよく決まり9回、無死二走者の危機も後続打ち取り好調をみせたが、一方高田・西川投手も制球力とカーブを武器としてしばしば巧みなけん制球に走者を制したプレート度胸は見上げたものであった。

全国大会
<本大会の記録>
桐生の打撃が案外不振で和歌山の投手高松のアウト・ドロップに食い止められたのが敗因となった。鋭い球を持たなかったけれども高松は近い直球をみせておいで巧みにアウトドを外角に投じて成功した。桐生・黒柳は球勢を欠き、3回高松への死球にたたられて2点を与え更に5回にはカーブの連投を狙われて1点を追加され前半全くとるべき策がなかった。7回桐生反撃に出たが打順悪く遂に逸機したのは惜しい。技術的な面よりも桐生に望みたいのは気力である。

梶原の投球は何れも近きに失し1回は5人の打者に四球を出すという乱調張りで矢張り上がっていた。青森は和歌山高松投手から5安打しか奪えなかった貧打もは敗因の一つと言える。和歌山は梶原の乱調に乗じ1回労せずして4点を挙げて機先を制し更に5回にも3つの四球、金川、山下の二塁打で5点を加えここで勝利を不動のものとした。高松投手は投げおろしの速球を外角一杯に決めアウドロをきめ球として好投、やや打たれはしたが、味方の大量得点に守られ危気のない投球ぶりであった。

強敵高知を屈服させた敦賀川端少年もこの日意外にコントロール乱れて1回半ばにして救援を余儀なくされた。敦賀は忽ち3点を奪われ早くも暗影に包まれたが、救援した野口はカーブを主軸として和歌山の打撃を食い止めた。6回堀井の長打に1点を返し漸く気力換回して追撃はやや遅きに失し遂にそのまま敗れ去った。県和商は高松の崩れぬ投球が最後まで敦賀の猛攻を退けたのが勝因とみられる。

和歌山の高松投手、連投に疲れを覚えたのか、この日全く精彩を欠き最初から不安の投球を続けたのに反し、熊谷・服部は下関、大垣北を敗った当時と比べ優るとも劣らぬピッチング振りを発揮して和歌山を無安打、無得点で抑えた。熊谷はさして打力のあるチームではないけれども気息えんえんの高松に対してよく攻め1回鎌田、田岡の2安打で1点を挙げ、更に4回には高橋の三塁打を筆頭に黒渕、寺田の集中安打で2点を加え敵失を利して忽ち4-0とリードし準決勝としては意外の一方的経過をたどった。投手振わず大量得点を先取されてはさすがの和歌山も全く志気阻喪し、反撃の気迫は更にうかがわれず走者を出すこと僅かに3度という程度の低調さを見せて完敗した。



第34回<昭和27年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
向陽海南共に4回までよく攻め再三走者を出したが好守美技に阻まれて波乱なく5回を迎えた。海南土屋三塁頭上に痛打しバントに二進、続く青木初球を三遊間に安打し走者一、三塁、吉田初球をスクイズ敢行、1点を先取した。向陽は1点の負担に8回まで攻めあぐんだが、最終回に至り無死、清水左翼頭上に安打、中谷のバントを野手焦ってハンブルし満場騒然たる中に小藪は悪球に手を出し三振、続く冷水に東は更にインドロを連投ストライクを取りながら左翼頭上に痛打され打球は風に流されて二塁打となり清水生還、同点にこぎつけた。
ここに大会初の延長戦に入り12回表、向陽冷水三遊間安打、バント、捕逸で三進した後、二出川巧みに第2球を左前安打し決勝の1点を挙げた。勝因としては向陽坂田投手がカーブと絶妙のコントロールで無四球、6安打に封じた好投ぶりが第1に挙げられる打線もよく振い守備にあっても遊撃中谷の好守強肩、最終回宇藤が安打性の右前ゴロを一塁に刺したプレーなど光っていた。

新宮杉本、串本出島両投手の連投で対戦、この日は前日と打って変わり新宮果敢に攻め2回二死後2走者を置いて長嶋の右前安打、岡田卓も中前安打して2点を先取し試合を優勢に運び更に3回裏、一死後、二盗と一塁失に1点を加えた。一方串本は4,5回好機を作りながら決定打を欠いて得点できず、この日の杉本投手の出来栄えは上々といえず毎回走者を出したが前日に変る味方の好守備で阻み、攻めては6,7回疲れを見せた串本出島投手をノックアウトして駄目押しの得点を重ね大勢を決した。串本は長短7安打を放ちながら決定打なく遂に零敗を喫したが強豪新宮を死地に陥しいれた敢斗ぶりは弥賛に値する。

<決勝>
向陽坂田投手は外角を衝く絶好の制球とカーブを得意とすれば、新宮杉本投手は連投の疲れを見せず低目を狙う速球とドロップを配し投手戦を続けた。3回向陽は無死で宇藤右翼右に二塁打、手堅くバントで進んだが、強攻策をとって得点機を逸した。この裏新宮1死山県、投手強襲安打、畑下三振の時二盗、小坂の二匍一塁失する間に先取点を挙げた。5回向陽はテキサス安打に出た二出川をバントで進めたが増田の一打は三塁手の美技に阻めた。後半に入り向陽7回好機を逸したのに反し新宮は一死走者二、三塁に岡田三遊間安打で2者生還、勝利を不動のものにした殊勲を一打といえよう。新宮の勝因は4日連投の杉本が球に伸びがあり低目のドロップがよく決まり好投したのが第1に挙げられる。本大会新宮は当初は好守共低調だったが、此の日は好守共に上出来だった。向陽は4度もチャンスを迎えながらドロップが打ち込めなかったのが最大の敗因であり坂田投手の健斗も全員固くなったためかバックスに失策多く報いられなかった。

<紀和大会>
郡山は2回早水が右越二塁打、3、4回も四球で走者を出し新宮も3回表、長嶋が左中間に二塁打を放ったが、何れも後続なく一進一退のまま前半を終わった。この間郡山の樽野が広い守備で再三難飛球を好捕すれば新宮川﨑も6回村田の安打性直球を転倒しながら手中に納める美技を演じて相譲らず両軍投手の好投で試合は予想に違わぬ白熱戦となった。新宮は7回無死満塁となったが宮本の遊直で小坂ダブラれて一瞬にしてチャンスを逸した。8回にも一死後、岡田卓左前安打、山県左越二塁打したが後続空しく9回にも一死満塁と攻め立てながら決定打が出ず、郡山もその裏無死安打の走者を出したが、無為、息詰まる緊張の中に延長戦に入る。11回に至って新宮二死後岡田卓の右前テキサスに遂に決勝の1点を挙げ新宮は押し切った。

全国大会
<本大会の記録>
3回まで波乱に富んだ法政が押していた。即ち法政が立ち上り杉本投手を鋭く攻め1回二死後から大石、斉田の連安打で一、三塁と脅し2回には遊失、内野安打バントで二、三塁の好機を迎えたがここでベンチはスクイズさせたが、これを外されて三塁走者アウト。中谷遊匍に退いてリードすることができずに終わった。受身の新宮は3回無死で岡田卓が左翼線二塁打に出て反撃のチャンスはあったが離塁大きく捕手の送球に刺され互いに得点機をつぶしていた。4回から杉本の伸びのある速球とカーブを併用した投法で打力を誇る法政を抑えれば、中谷また乱れ気味の投球が却って効を奏し投手戦の様相を呈し互角の形勢で6回となった。新宮は岡田卓殊勲の左中間三塁打が出て山県も四球、ここでスクイズを警戒した法政の捕手は畑下打者の時離塁の走者を刺さんとして三塁送球したのがはずれバックアップした左翼手の好送球で岡田卓を刺しピンチを脱したかにみられたが、精神的に動揺したのが捕手石川が3球目の低目にはずしたボールをハンブルする間に山県の生還を許し、これが致命傷となって懸命の追撃も空しく敗れた。それにしても法政の1,2回の逸機は惜しまれるが新宮を勝利に導いた杉本投手の健斗と岡田卓の快打は頼もしいものがあった。

新宮は力一杯斗ったが勝運なく惨敗した。前半しばしば訪れたピンチも全員必死の好守に芦屋を1回1点にとめたのは新宮の高校球児らしい斗志を現わし立派なものであった。杉本投手は決して不調ではなかったがその直球は何れも芦屋の攻撃を封じるには今一歩球威を欠いていた。芦屋は1回二死後から土河が左中間を破る三塁打を放ち左翼からの中継に出た遊撃への送球が悪投となる間に一挙本塁に突込んで貴重な先取点を挙げ、更に7回にはこれも二死後から堀口の当りそこねの内野安打で石本を迎え入れてダメ押しの追加点を挙げた。植村はこの日も投げ下しの送球とブレーキの鋭いアウドロで好投し新宮を僅か4安打に抑えて芦屋の勝因を作ったが、各回に亘る芦屋の攻撃ぶりには非常に無造作なところがあり自らの力を過信して慎重さを忘れたことがかく苦戦を招く原因となった。



第35回<昭和28年>全国高等学校野球選手権大会

大会直前県下を襲った豪雨のため、未曾有の大水害を被り交通機関不通となって危ぶまれたが万難を排して開催、田辺など海路を渡って来和したが吉備高は被害甚大、選手の家庭にも羅災者があって棄権、日高川大氾濫で最大の被害を被った日高高は父兄の理解と激励に励まされ出場し元気一杯活躍。

<準決勝>
向陽立ち上りよく攻め二死一、二塁に中谷左越大三塁打を放ち堂々2者を迎え向陽の意気上る。川端投手は余りに好球を揃え過ぎた。海南3回裏、無死で山東二塁打し一死後淡路のスクイズ成功して1点を返す。向陽は4回無死安打に出たが二盗失敗、5回にも二死満塁となりながら無為一方向陽坂田投手はサイドスローを交えて外角低目をつく直球とカーブがよく決まり向陽押し気味に見えた。反撃する海南は6回裏、一死2安打に走者を出すや、向陽は一死満塁となり捕手逸球に勝ち越し点を挙げ、その裏から再度坂田をプレートに送ったのが一応成功し最終回を迎えたが、海南先頭打者、土屋遊越安打し筒井の絶好のバントで土屋二塁に達しながらオーバーランして惜しくもアウト。しかし筒井俄然三盗し投手暴投に再度坂田をプレートに送ったのが一応成功し最終回を迎えたが、海南先頭打者、土屋遊越安打し筒井の絶好のバントで土屋二塁に達しながらオーバーランして惜しくもアウト。しかし筒井俄然三盗し投手暴投に再度同点となり延長戦に持ち込む。向陽は10回表、二死ながら中谷右前安打し栗栖左越三塁打を放ち決勝点を挙げ遂に強豪海南を降ろした。流石にこの試合準決勝にふさわしく好試合だった。桐蔭笹本は意表をつく直球を大胆に投げ込み悠々ピッチングを示したのに反し日高土屋は制球力無く苦しい投球であった。桐蔭の1回田中四球、捕手失で二進、一死後、連続安打で先制点を挙げさらに3回二死後から大浦の左前安打で1点、4回にも原田中前安打、二盗した後田中の二塁打で1点と着々と得点を重ね6回2安打、一塁失と盗塁、捕手エラーを織りまぜて3点を入れ大勢を決した。一方日高は笹本を攻略できず2点を返しただけに終わった。

<決勝>
2回向陽二出川テキサス性安打を放ち野手の動作緩慢に乗じ一挙に二進、中谷四球栗栖のバントで二、三進し大垣内のスクイズで1点、中島はスクイズ失敗して中谷狭殺されたが先取点を挙げ意気揚がる。3回にも好機あったが入いらず、その裏桐蔭奮起して一死後、福田右越三塁打し田中の左邪飛に本塁をついて同点、向陽も4回二死満塁に死球を得て押し出し再度リードを奪った。向陽坂田は滑り出し上出来でなく前途を危ぶまれたが先取点に気をよくして好投し桐蔭笹本はサイドスローに苦心の投球を続けたが前半7安打を浴び毎回走者を出して脅かされた。
後半に入り向陽攻撃の手を緩めず押し気味で桐蔭1点の奪回に苦心したが3安打に押えられた3回以降殆どチャンスなく結局押し出し点が物をいって向陽初の優勝を遂げた。

<紀和決勝>
スコアーの開いた程の実力の差は認められずむしろ向陽は前半押し気味だったのに田原投手を打ち込めず殊に2回無死満塁に得点するに至らなかったのであせりが見られた。一方、御所実は4回迎えた無死満塁の好機に無造作に投げた第一球を島村が前進守備の二塁手の左を痛烈に抜いて均衡を破り更に田原の三塁打と野手失で矢継ぎ早に攻め立て大量得点を挙げその蓋然性儘押し切った。この坂田投手を退けたのも結果からみて稍々早きに過ぎた嫌いがあり中堅手が間に合わぬのに三塁に送球後逸するなど混乱したのは遺憾であった。

全国大会
<準決勝>
新宮前岡はインドロ、田辺岩本はアウトカーブを決め球に息詰まる投手戦を展開した。双方共先取点を狙って焦り気味、ボールに手を出していた。延長戦となって11回まで双方三塁を踏む者なく12回田辺一死走者二、三塁の絶好機を迎えたが橋本、岩本凡退フイにした。
これに対し新宮は13回岡田卓内野安打、バントに送られ二死後長嶋、由谷、庵野がいずれも高目の直球をたたいて二塁打3本を集中し一挙に3点を入れ勝利を不動にした。岩本は終始健斗したが頼む打線が無安打では到底勝ち目はなかった。

串本福島投手は連投の為かスピードが落ち県和商は2回2安打を放ち1点をリード、更に6回1四球1安打で1点、8回には梶の二塁打と敵失でだめ押しの1点を加えそのまま押し切った。串本のチャンスは5回一死後走者一、三塁の時でスクイズ失敗で好機を逸したのが、この試合の山だった。9回二死後、3安打で1点を返したものの時既に遅く及ばなかった。串本は、福島投手が不調で加うるに7安打が散発に終わったのは不運であった。

<決勝>
新宮前岡はこの日、直球に威力なくドロップを武器に県和商打線に対したが県和商は選球悪く焦り気味でボールに手を出した嫌いがあった。県和商堀内は決め球を持たぬため苦心の投球を続けた。2回新宮長嶋中前安打、バントに進み前岡四球後、清水の中前安打に1点得。6回二死三塁に迫ったが庵野遊匍に入らず、一方県和商2回二死後、椎崎二塁打したが後続なく5回にも高松左前安打したが二盗に失敗。8回無死増田左前安打に出て二盗、色めいたが椎崎3度バント失敗、高松、西川凡退して好機を逸して敗退した。県和商8回の送りバントを悉く失敗したのが直接の敗因といえよう。

<紀和決勝>
新宮前岡は慎重な投球を続け攻めては1,4回に安打を集中して前半で試合を決めた。1回には岡田卓四球、岡田守の三塁打と長嶋のスクイズで2点を先行。4回長嶋の安打に始まり打順一巡する猛攻を加えて3点を追加した。高田は前岡のインドロに悩まされ5回2個の四球を足場に1点。7回には坂本の本塁打で1点を返したが及ばなかった。高田は2回無死で木南が捕手けん制球に刺され7回にも福田が一死後、二盗に失敗するなど得点の開きを考えない無謀な走塁で好機をつぶした。



第36回<昭和29年>全国高等学校野球選手権大会

<本大会の記録>
新宮の前岡、武生の牧野は4回まで対等の投球をみせたが牧野は5回前岡、岡田卓の好打で得点を許し、更に6回長嶋の安打を機に1点を追加された。武生にとって惜しまれるのは6回二死満塁を失ったこともあるが何より2回の逸機が痛かった。一死後牧野が安打、藤吉の中越二塁打で二、三塁の好機を迎え楽田の一撃は一瞬一塁を抜いたかと見えたが、前身守備を布いた清水の好捕にあい三塁走者牧野が三本間に侠殺に仆れてしまった。若しここで武生が先取点を奪っておればこの一戦はより力のはいったものとなったに違いない。

新宮前岡投手は制球の乱れもなくこの試合ではインドロに冴えを見せて好打を誇る北海の攻撃をよく抑えた。一方北海の田村も対福島戦とうって変わって好投し球そのものは平凡だったが徹底して低目をつく投法バックスの好守と相待って新宮に乗ずる隙さえ与えなかった。試合は坦々たる投手戦の中に延長戦に入り北海11回好機をつかんだが併殺を喫すれば、新宮も12回岡田守が最初の安打を放ったが由谷の三邪飛にダブられた。17回新宮は一死後、岡田守が右翼二塁打し由谷三振後、長嶋左中間を破る三塁打を放って貴重な1点を奪い快勝した。岡田守、長嶋の好打は正に殊勲甲といえよう。

<準決勝>
新宮は開戦直後凄い気迫で中山に体当たりを食わした。やや受身に立った中京中山投手は新宮に先手を取られて2回は甚だしく球道を乱し1点を返したが尚新宮は優位を占め前半は仲々興味深いものとなった。新宮前岡が真向から投げ込むドロップは可成り威力を示し、中京の強打者も打ち崩すことができなかった。中山は2回の乱調子から立ち直り両投手秘術を尽くしての対戦となった。4回表までリードした新宮はその裏中京の反撃を抑えきれず中山弟の長打に2点を許して逆転。更に5回裏三塁手の連失から1点を追加された。前岡は愈々精魂を尽して6回には2者を連続三振に葬り健斗したが新宮の武運は後半に恵まれず4-2のスコア一に変化が起こらず善戦も甲斐なくそのまま敗れた。勝敗の岐路をなしたものは内野手の失策もあるが矢張り攻撃面に力を持つ中京が順当の勝利を示したものというべきであろう。それにしても大敵を恐れず正面から鉾を交えて殆ど対等に試合を斗いぬいた新宮の意気込みと前岡の好投は見事なものであった。



第37回<昭和30年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
3回田辺は輪宝四球、二死後、中村カーブの曲り鼻を見事に合わせ左翼フェンス越えの2ランホーマーを放って気を吐き更に4回無死満塁、竹中の投匍で走者は本塁封殺されたが輪宝の安打で大江生還して1点を追加、試合を決した。県和商は田辺大江投手に封じられ3安打を散発したのみで良いところなく敗れた。

新宮前岡は内閣低目の直球とインドロに冴えをみせ、和工を抑えノーヒット・ノーラン、三振13を奪うという会心のピッチングを示した。一方和工の西谷はカーブを多く投げてバックスの好守と相まって1回に破たんを見せた他は新宮に乗ずる隙を与えなかった。新宮は1回表、岡根遊撃右に安打、バントに二進後、けん制悪投と中堅手の三塁送球悪投により一挙生還、更に8回庵野の適時安打で1点を加え勝利を不動のものにした。和工は5回と9回にチャンスがあったが剛球前岡に対して余りに強振にすぎて無為に終った。

<決勝>
好調の新宮前岡投手に対して田辺大江投手もよく投げ5回まで両軍0-0、6回新宮岡根右越三塁打を放ち、次打者西浦は大江のカーブにかかり三振、庵野スクイズ失敗して三塁走者憤死せしめ既に2死、チャンスを失ったかと見えたが庵野低目の直球を左翼頭上を抜く二塁打し前岡四球後、亀井の遊匍低投で庵野ホームをつき貴重な1点を挙げこの1点が結局ものをいった。この日生憎南西7mの強風が中堅から砂塵を吹きつけ両チーム共苦しんだが続く3者三振に仆れた他チャンスらしきものなく敗れた。

<紀和決勝>
試合は投手戦で進んだ。新宮前岡は左上手からの速球とドロップ。高田渕田は右下手から内外角にシュートとスライダー気味の球で夫々の打線を抑えた。前岡は冒頭の抑えが利かずトップ打者を四球で出し、バント戦法で三塁まで許したが福田を三振せしめ危機を脱して以来尻上がりに調子を上げた。渕田もよく前岡と互角に渡り合っていたが6回頃から疲れたようだった。新宮はそこを逃さず7回先頭の浜田が三遊間を抜きバントで送られ二死後、西浦の中前適時打で間一髪の差で還えり貴重な快勝への1点を挙げた。高田にとって惜しまれるのはそれまで再度美技を見せていた中堅木南が西浦の中前安打を僅かにジャックルし本塁投球が遅れたことと、もう一つは渕田と同じ程度の力量の投手成瀬との交代の時期が遅れたことであろう。

全国大会
<本大会記録>
今大会屈指の好取組であるこの一戦は新宮3-0とリードして完勝と思わせたが9回裏浪華商古市の三塁打で1点差に迫り8万の大観衆を湧かせたけれども強引な戦法は、遂に新宮を抜けず惜しくも敗れた。新宮勝利の立役者は投打に活躍した前岡である。3回二死後、前岡が左中間に長打して1点先行し5回再び庵野、前岡の好打で試合の主導権を完全に握り浪華商の敗色は濃くなった。即ち一死後、岡根四球で先発の谷本を退けて広島を迎えた。新宮は更に1点を追加すべくバントを敢行二進させた作戦功を奏し庵野の二塁強襲安打で1点追加、やや動揺した広島の進駐を狙うかのように前岡1-1後再び左中間に長打して更に1点追加、この5回の攻防が勝敗の分岐点となってしまった。浪華商は四球で走者を出しながら決定打なく最終回一死後、厚朴安打、池田四球の後、古市右中間三塁打して2点、尚同点のチャンスだった。
竹内は第1球スクイズしたが走者がスタート悪く本塁でアウト。杉山四球に続き勝浦打者の時勝敗を一気に決すべく強引な重盗を敢行して成らず新宮は堂々優勝候補を破る殊勲を立てた。浪華商にとってはスクイズといい重盗といい焦りがあり8回まで余りに攻撃に無気力であった。前岡は快調という程のでき栄えでなかったが、荒れ気味で却って浪華商打者を惑わすのに役立ったかも知れない。何れにせよ優勝候補随一の浪華商に快勝した新宮ナインの喜びは察するに余りがある。

予想通り申し分ない投手戦に始まった。第1戦に浪華商を破った新宮前岡投手は制球力ある投手で小倉打線に乗ずる隙を与えなかった。小倉の畑もスピードこそ前岡より心持ち劣る様であったが巧いピッチングでこれも前半危ぶなげなかった。そこでこの優秀な両投手に互の打線がどのように襲いかかるか、この良否がゲームを左右するポイントとなった。
新宮4回二死走者を置いて対浪華商戦に猛打を発揮した前岡は敬遠の四球を与えられ後続を絶たれた。しかし6回二死後から曲者庵野が2-0後外角外れ気味の球をよくミートして二塁左を抜いて出塁、続ぐ前岡に畑は勝負に挑んだが前岡は1-2語の好球を逃さず大きく右翼左を破る三塁打して畑に打ち勝ち庵野を迎え入れた。老練な畑がなぜ敬遠しなかったかと誠に惜しまれる一投であった。
この一投を境にして両チームの志気に差を生じ新宮は7回筒井の中前適時打で1点を加えた。小倉はバットを長く持って徒らに強振していたのは拙く新宮の勝利は前岡の投打に亘る活躍にあったが全員が何んとかしてチャンスを生み出そうとする盛んな斗志をたたえたい。

浪華商、小倉と優勝候補をなき仆した新宮はこの日は中京のバント攻めに混乱し前岡の好投も空しく敗れた。中京商1回3者三振、打者一巡するまでに7三振を喫してこの調子で歯が立つまいと思われたが、そこは試合巧者の中京商、4回よりコツコツ合わせ始めた。5回まず渡辺四球、鈴木とのヒット・エンド・ラン成功して無死一、三塁となりスクイズで1点。長坂も三前バントして内野安打となり、高田のスクイズバントを三塁手本塁に投じたが捕手落球して鈴木生還。岩本尚バント企てたのを投手一塁へ悪投して2者生還、桃原の三遊間安打で又1点計5点を挙ぐ。このあたり中京商のしぶとい攻め振りが功を奏すし、試合巧者中京商の面目躍如たるものがあった。
新宮としては魔の5回といえよう。6回中京商長坂が四球を出したとき安井をリリーフに送り弱い投手力をカバーした継投策もタイミングよく当っている前岡を徹底的に警戒して新宮に反撃を与えなかった周到な策も中京の勝因と言ってよかろう。このため当りの出ていた新宮も手の施す術もなく中京捨身の試合につぶされ雄図空しく挫折した。



第38回<昭和31年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
県和商の先発吉田は好調な滑り出しだったが新宮は3回一死後、倉本の幸運な内野安打を足掛かり2安打、1四球、1敵失で先制の3点を挙げ続く4回にも二死後、倉本の三遊間安打をきっかけとして好打して3点を加えて一方的に試合を進めた。これに対し県和商は6回制球力の乱れた桧作から1安打、2四球を得て代わった浜口からも4個の四球後、1安打を奪いタイムリーエラーもあって5点を返し1点差に迫った。然し7回から新宮桧作を再び登板させて立ち直り県和商打線を押える一方7回には吉田投手の好球を田渕の左越安打を始め長短打3本放ちダメ押しの1点を加え食い下る県和商を振り切った。新宮はチャンスに倉本、天ノ川の適時安打が出たのが勝因だが、県和商は折角吉田投手の健斗をバックスの手痛い凡失でふいにした。

海南谷投手はコントロールよく特にドロップが内角に決まり、一方日高玉置忠はカーブを混じえてコーナーをつく直球をうまく配し息詰まる投手戦となった。6回海南二死後貴重な先取点を挙げたが、日高もその裏すかさず谷野投手を攻めて同点に持ち込んだ。然しその後投手戦を続け1-1の儘延長戦に入り、11回裏、この日当り屋日高桧三木高目のカーブを左翼左に二塁打し投手けん制球に刺されたが更に藤川安打して二盗後、織田の二塁打でホームイン、決勝の1点を挙げ熱戦の幕は閉じた。

<決勝>
日高玉置投手は滑り出しやや悪かったが、2回以後コーナーを低く攻め打者をインザーホールに追い込んでは伸びのある直球とカーブを配して打ち取り3、4回のピンチも切り抜けた。然し6回野手失に1点を許してからはペースがやや乱れ7回二死後、高目の好球を桧作に三塁打され更に8番西辻に与えなくともよい四球を与え、続く津井の長打を呼んで追加点を許してしまった。新宮桧作り投手は球威の不足をもっぱら凡打主義で補い成功した。1回玉置<忠>に低目の直球を投げて二塁打されたが、事なく、5回のピンチは楠の盗塁失敗に救われ、7回には三木に左越二塁打され藤川に四球を与えて無死絶対のピンチに陥ったが織田の左飛は野手の好捕に、楠の三匍は5-4と併殺してシャットアウトした。日高の玉置投手は決して不調とは云えなかったが新宮の力と内野手の手痛いエラーで屈した。新宮桧作投手の攻守に亘る活躍は見事で新宮優勝のきっかけを作った。

<紀和決勝>
力では数段優れていた新宮が大西の軟投に打ち気を誘われ悪球に手を出したのが苦戦の原因で前半は両軍特点なく5回に至り新宮西辻の右中間本塁打で先取点を挙げ漸く均衡を破った。9回にも二塁失に出た浜口を田渕が左翼線二塁打して還えしだめ押しの追加点を挙げ制勝した。この日桧作り投手は速曲球のコントロール良く郡山をノーヒット、ノーランに退け快心のピッチングを見せた。

全国大会
<本大会の記録>
早稲田実は最終回スクイズで逆転、新宮を打棄った。入場式直後の第1試合とて前半は共に萎縮していたが最終回にやっと高潮した。早稲田実は4回まで毎回安打を放ち新宮を脅し続けたが新宮は2回二死後、桧作左前安打し続く田渕の三匍一塁悪投で二、三進、西辻四球後、津井がよく選んで桧作を押し出し先取点をものにした。新宮桧作投手はこれに気を良くして4回以後やっと自己のペースを取り戻し巧みにシュート、スローボールを混じえて焦りを見せた早稲田実の進撃をかわして逃げ切るかと思われたところが、最終回になって球威を失い一死満塁から2度のスクイズで2点を許し逆転の憂目にあった。新宮の上位打者が慎重に低目を攻める大井投手に対して強振し続けたのが敗因であり4回にも2安打、6回にも一死二、三塁の絶好機をスクイズに失敗して追加点を挙げ得なかった。最終回早稲田実の菊地、手塚がスクイズを成功させた時の新宮のバッテリーは全然無警戒だったのは腑に落ちなかった。

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第39回<昭和32年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
県和商1回阪本投手の初球を狙って宮地一塁失で生き二盗後、入口のバントで三進、スクイズを警戒し過ぎた投球を捕手後逸して1点を先行した。その後担々と進んだが7回県和商は山本四球、村中の三匍一塁悪投で無死二、三塁となり坂下、福塚連続スクイズを企て成功、次いで宮地三遊間安打し二盗後、入口の右前安打で3点を奪って勝利を不動にし大きな番狂わせを演じた。県和商吉田投手は内角に食い込む速球とドロップをうまく配して田辺を散発の5安打に抑えたが田辺は坂本投手に左程球威がなかった上にピンチに内野エラーが出てつぶれた。県和商は好球を見逃さず果敢に打って出たことと、うまいバント作戦が成功したことが勝因だった。

伊都は2回松本中越二塁打に出て三盗し一死後、井生が三遊間安打して松本生還、貴重な先取点を得た。9回にも二匍失に出た松本をバントで送りこの日当り屋井生が左越二塁打を放ちダメ押しの追加点を挙げ逃げ切った。一方桐蔭は森岡投手の内角低目の直球、内角に食い込むカーブを打ちあぐんで凡退を繰返し8回迄無安打に押さえられた。桐蔭最後の攻撃で前田左前に初めて安打し玉置遊匍で二封された後、木村の中前安打が出て二死一、二塁と攻め寄ったが河野の遊飛で遂に反撃できずシャットアウトされた。

<決勝>
両軍共固くなり前半波乱なく5回に至り伊都は一死2走者を置いて田村の中飛はあわや安打かとみえたが、中堅手前に転びながら好捕得点を阻まれた。又県和商はその裏、山本四球に出て二盗、送りバント失敗で山本二、三塁間に挾まれながら野手悪投して三進したが、村中三振、坂下スクイズ失敗で山本本塁でアウト、然し県和商は7回漸く井生の球に馴れ先ず吉田が左翼線に二塁打し、続く筒井もワンバウンドで左翼スタンドに飛び込む二塁打を放って吉田生還、更に山本の左越三塁打でこの回2点を挙げ通算4度目の優勝を飾った。
伊都ベンチは予想に反して軟投井生を登板させて5回裏山本四球で出した際、森岡投手に切り替えてピンチを防いだが、6回また井生を再登板させて7回に県和商の猛打を浴びて敗れた。井生を思い切れず投手交代の時期を誤ったのが敗因だった。

<紀和決勝>
高田は本格派の丹原投手を先発させたがカーブが曲り切らず、その上直球が低目に過ぎて立ち上りら制球に苦しんだ。県和商はこの隙に乗じて1回足でかせいだ宮路の遊匍内野安打を足がかりに入口四球の後、筒井意表をついて三バントを強行、三塁線にころがって絶好のバントとなって2点を先取。この奇襲で丹原投手ががっくりして続く村中が中前に適時安打を放って又2点を加え早くも大勢を決した。



第40回<昭和33年>全国高等学校野球選手大会

<準決勝1> ○海南―県和商
県和商福塚投手は低目をつくカーブがよく決まり、海南宗選手は得意の外角低目の速球を慎重に配して共に安定した投球で1点を争う試合を続けた。5回海南は無死、榎本が中前安打し宇治田の投匍で二進した後、中野が0-2の後、適時安打を放ち榎本一挙に生還1点を先取した。海南は福塚投手から奪った安打の中2安打をうまく5回に生かしたのに対し県和商は初球を狙い積極的に宗投手を攻め8安打でしばしば好機を作りながら肝心の決定打が出ずゲームを失った。中でも3回一死後、三塁強襲安打に出た雑賀が入口のライナーの右前安打を野手にとられたのと誤認し二塁に封殺されたのは惜しまれる。

<準決勝2> ○田辺―新宮
優勝候補の新宮が田辺にうまく打棄られた番狂わせの一戦だった。田辺は主戦西田、新宮はリリーフの杉本が先発、共に立ち上がりは良かったが、杉本は遂に4回に打たれた。この回田辺先頭の鶴田が右中間二塁打に出て守田の右前安打と脇村の四球で無死満塁として橘の左犠飛で鶴田が生還、この先取点に気をよくした西田投手はドロップ、カーブを多投して新宮打者のタイミングをうまく外して二塁を与えたのは二塁打の山崎だけ、これというチャンスを新宮に許さず最少得点を守りきった。

<決勝> ○海南―田辺
海南宗、田辺西田両投手共に滑り出しは良かったが2回田辺は一死後、橘が三匍失続く黍野の三匍は三塁手からの送球を二塁手が落として走者一、二塁田辺にとっては絶好のチャンスを迎えた。田中の一打は二塁カンバスの右を鋭く抜き外野に転々とする三塁打となり2者生還、続く西田とのスクイズは打球がきつく田中本塁寸前にアウトとなった。海南は2回無死、走者を出したが無為、3回二死後羽根四球でこの日の当たり屋榎本が0-1の後の真中に入る低目の直球にバットを合わせ球は右中間深く転々羽根に続いて榎本俊足を飛ばして2者生還同点とした。
気をよくした海南は四球の宇治田を置いて中野が左翼線ぎりぎりに二塁打し平野の左前安打で宇治田生還、遂に1点リードした。これで海南宗投手は立ち直ったのに反し速球の落ちた西田投手から6回寺田、中村安打し、宗に送られ二、三進後、北野の一撃は二塁横を抜き寺田を環した。ここで田辺は投手を橘に切り替えたが羽根の三匍を三塁手本塁低投、バックネット近く転々とする間に中村、北野相次いで生還。だめ押しの3点を加えた。田辺は宗投手の球にバットが合わず凡退を繰返し8回代打洞が5イニング振りに左前安打を飛ばしたが後続なく、9回最後の攻撃も二死後、守田右前安打したが脇村二匍でゲームセットとなった。

全国大会
本大会の記録
40周年を記念して各都道府県代表47校を集めて甲子園、西宮両球場を使用して行われた。

<1回戦> ○海南―福岡
海南打線は定評通り素晴しく迫力があった。安打は長短あわせて19本、5回で全員安打、全員得点を記録するすざましさ。1回先頭の左打者榎本が外角球を左前安打しニ盗、中野も左前安打した。この時野手の返球が悪く榎本生還、寺田も左前へたたいて中野を迎えた。福岡の先発投手山下はカーブ、シュートを武器にコーナーワークを生命とする技巧派。この試合も配給に苦心のあとが見られたが球威がなかった。海南は2回榎本の三塁打で2点を加えすっかり自身を固めた。5回一死後、宇治田から5打者連続して安打を放ち福岡ベンチもたまらずプレートを吉田に代えたが、海南は更に宗が四球で歩いた後羽根、北野がクリーンヒットを連発して大量得点をあげ大勢を決した。福岡は前半バットを短く持ち宗投手の外角球をうまく右へ流したが宗はそれ以後内角を攻めて福岡の外角打ちを封じ頭脳的なピッチングを示した。

<2回戦> ○海南―尾道商業
宗は第一戦福岡を押えたような頭脳的な冴えは少しもなくボール数も多くこの虚をついた尾道は2回竹中兄が二塁右に安打、捕逸で二進、木村、清水のバントは何れも野手の虚をつく安打となって先制の1点を挙げた。この後尚一死一、三塁のチャンスだったが串畑3バント失敗から追加点を逸した。一方海南は4回トップの榎本が二塁左を抜き寺田のバントの後中野が風に幸された右前安打、宗、中村が四球で押し出しの1点を拾い、北野が第1球を狙って中前に快打、更に四死球が続いてこの回4点の収穫を挙げた。宗投手もこれに気をよくして尾道懸命の追撃を押さえて逃げ込み策に出たが、そのプレートは全く不安に見えた。
5回上野、谷重、箱崎の集中安打に1点を返し元気づいた尾道は後半、毎回得点圏内に走者を送り持ち前の粘りを発揮して攻めに攻めた。最終回一塁に走者を置いて竹中兄の放った右前安打は野手後逸し一挙生還、この間に三進した竹中兄はスクイズで還り待望の同点に追いつき満場騒然、けれども矢張り球運は尾道についていなかった。海南は11回三塁失に出た寺田が二進後、この日の当たり屋中野の左前適時打と平野の三遊間安打で決定的な2点を奪ってさしもの熱戦に終止符を打った。

<3回戦> ○海南―姫路
7回寺田殊勲の長打で奪った1点を宗の快打で辛勝した。海南宗も姫路井上も共に力溢れるピッチングを見せた為、両軍打線は容易に打ち崩せず宗は一見細身で非力と思わせるが柔軟な全身を使っての上手投げから鋭いシュートと外角低目をつくカーブの球の配給よく打ち気で向かってくる姫路打線を巧みにかわしていた。海南は遂に7回一死宗安打、北野四球でチャンスを迎えた。ところが宗は井上-井村の巧みなけん制球に刺殺されて逸機するかのように見えた。井上ほっと一息ついたというわけではなかろうが寺田に1-1のあと外角高目の力のない球を投げて左中間に長打されて、ここで0-0の均衡は破れてしまった。彼にとっては心残りの一球だったろう。後半も必死に食い下がったが遂に海南の堅陣を破れずに敗退した。

<準々決勝>
両チームの打棒大いに振い活発な打撃戦を展開した。もっとも海南宗も柳井友蔵も疲労から日頃の球威を欠いたことが両チームの打力を誘う原因となった。海南は1回榎本二匍失、中村三匍三塁手の悪送球が右中間に転々とする間に榎本還えり中村三進後、スクイズを警戒して前進守備を布いた逆をついて平野打てば二越安打となって幸運な2点を先取した。3回には好打者榎本右中間を抜き駿足を飛ばして本塁打とし更に1点を追加した。しかし宗の投球には伸びがなく柳井のしつこい攻撃に5回で同点とされてしまった。即ち3回柳井の棟居が三塁線にバントを企て内野安打とし藤山の左前安打で一、二塁、一死後、黒瀬のうまい右前安打で1点、4回にも友歳兄内野安打、久保のバントで二進後、岡村三塁不規則バウンドのヒットで1点を追加し、5回に黒瀬の右中間三塁打と佐々木の一塁不規則バウンドの安打で同点とし試合を振り出しに戻してしまった。
海南は4、6回いずれも得点圏に走者を出しながら打順が下位のため得点にならず試合は柳井のペースで進められた。7回一死満塁となって友歳兄の遊匍で追加点を挙げたが、この当たりは平凡なゴロで当然本封できたにもかかわらず三封してむだむだ1点を与えたのは宇治田のボンヘッドで、これが海南の命取りとなってしまった。海南は宗が打たれて勝手が狂い得意の打力も振わなかったが、その中で榎本本塁打、平野の3安打は敗れた海南の中にあって気を吐いたものであった。



第41回<昭和34年>全国高等学校野球選手権大会 県予選

<準決勝1> ○南部―御坊
息詰まる熱戦だったが南部の長打力が、威力を発揮し御坊は花光・松井の継投作戦に切り抜けんとして自ら苦しんだ。3回御坊一死、左前安打の染道に続き平野のバントが内野安打、更に次打者のバントも投手失に満塁、スクイズ警戒で固くなった投手のボークで1点を先行した。然し6回南部は二死一、二塁となり御坊ベンチは球威の衰えた花光投手に尚も続投させた為、田端に右越三塁打を浴び2者生還逆転した。南部川上投手は快調なピッチングでそのまま押し切るかと見えたが、御坊もさるものトップ森本が第1球の直球を左翼一杯に打ち込むホームランで同点、更に湯川の内野安打を生かして一死三塁と攻め立てたが、惜しくもスクイズ失敗併殺を喫し延長戦に入る。
南部は後半よく打ち押し気味に進めたが13回に至り一死後、垣渕右中間三塁打し依然絶対のピンチに襲われた御坊は満塁策をとって滝川と勝負に出たが、この苦心の作戦も松井投手の制球意の如くならず1-3で遂に押し出しの決勝戦を与え、南部は強敵御坊商工を降した。南部川上投手は内角低目に入る速球とシュートを武器に少しの崩れもみせず投げ通したのは見事であった。

<準決勝2> ○海南―田辺
田辺好投手西田も海南の底力ある打棒に打ち崩れた。海南の投・攻・守三拍子そろった強味を遺憾なく発揮された試合だった。4回海南無死、堂上の右越三塁打から始まって寺田、羽根、木下が次々と右翼へ二塁打を放って堂々2点を挙げ更に5回にも堂上、寺田が左中間を抜く連続三塁打を飛ばして圧倒した。海南木原投手の低目に入る速球は益々スピードも加わりカーブの切れも冴えて完封し13個の三振を奪う好投だった。
田辺は8回一死、片山が右前安打を放った後、羽根の連失で1点を返したのみ。その裏、海南は寺田が再び右越二塁打を放ち1点を加え危な気なく制勝した。

<決勝>  ○南部―海南 
南部無欲の勝利だった。川上投手は連投による疲労によく耐えて海南を封じ、而も自らの殊勲打で決勝点を挙げた活躍振りは大きなものだった。前半相譲らぬ投手戦で左腕川上投手が内角低目に鋭く決まるカーブで抑えれば海南木原も横手投げから外角ぎりぎりの速球を多投して試合は無得点のまま回を重ねた。海南は5安打を散発したのみで特に4回頃疲労の色漸く濃い川上投手を打ち崩せなかったのが海南としては惜しまれる。後半戦に入り優勝を意識してか海南は稍々萎縮したのに反し南部は気をよくして川上も立ち直り走者を出して押し気味。即ち5回無死走者を出し更に7回田端、滝川の連続安打して結局バント失敗でものに出来なかったのが海南を脅した。
最終回を迎え南部は一死後、田畑の一打中堅手の前で不規則にバウンドして二塁打となり強打者滝川は敬遠の四球、次打者川上は2-2後ファウルを重ねて粘った後、第7球目を左中間に放ち田畑勇躍生還、サヨナラ勝ちで優勝候補海南を撃破、斬くて南部は初めて県代表の栄冠を獲得した。海南木原がスタミナに不足しこの日の投球にそれが現れていたのに反し、捨身の斗魂を以って投打に活躍、殊に最終回サヨナラ安打を放った川上投手の殊勲は賞賛に値する。

<紀和決勝> ○天理―南部
天理は立ち上がり南部川上投手の外角球を巧くミートして二死から4安打連発、先制の2点を挙げた。その裏南部は無死垣渕四球に出たが後続無為、3回には再び無死市場が内野安打に出て好機を迎えバントに二死後垣渕第1球を中前安打して1点を返す。然し4回天理一死後、内野安打と敵失で二進した大井は山崎の中前安打に本塁を衝いて滝川の好送球で寸前アウト。南部ピンチを脱してホットしたのも束の間、6回一死三塁のピンチに襲われ次打者のバント一塁手拾って本塁へ投げたが一瞬セーフ。益々優勢で更に8回にも3安打とバントで一死満塁から1点を加え9回には天理島中三塁打を放ちがっくり気落ちした川上投手を打ち崩してだめ押しの2点を加え試合を決めた。
南部は8回裏無死、市場内野安打に反撃のチャンスを迎え代打者中村三振後、期待の垣渕右前に快打を放ったが市場は走塁を誤まり三塁を欲張って送球にタッチアウト、打った垣渕も一、二塁間に挟まれあたら好機をつぶしたのは大きかった。試合運び一段上の天理のペースにかき廻されては南部はどうしようもなかった。矢張り場慣れしない南部は動きが鈍く川上投手も最初からこつこつ右翼に狙い打ちされて精彩を欠き苦心の投球を続けて後半は疲れを見せた。斬くして有史以来3度紀和代表は奈良勢の手に奪われた。



第42回<昭和35年>全国高等学校野球選手権大会

県予選
<準決勝1> ○海南―桐蔭
海南木原、桐蔭森川両投手の力投に予想通りの投手戦になったが海南が先取点を守り切り、桐蔭の反撃を振り切った。初回海南は幸運な2点をあげた。トップの宮脇が二ゴロ失に生き、河尻の遊撃右を破る安打で無死一、二塁、つづく橋本が三振に倒れたあと、堂上が一、二塁間を抜いて宮脇生還、ここで右翼からの返球を受けた森川が三塁に進む河尻を刺そうと大悪投し、河尻も生還した。 そのまま前半は、木原の浮き上る球と森川のドロップを打ちあぐみ、わずか4回裏海南の根木が無死二塁打しただけで波乱がなかった。ところが6回表、桐蔭が絶好の反撃機をつかんだ。
この回一死後、谷口が遊撃強襲安打し、金田のむつかしい当たりを二塁手が後逸する間に一挙三進、一死一、三塁と攻めつけ、この試合のヤマ場となった。ここでは桐蔭は芝田にスクイズさせたが不成功、思い切って谷口、金田が重盗を企てたもの、谷口が本塁寸前に刺されてしまい、森川の好投に報えなかった。

<準決勝2> ○新宮―南部
9回終るまで勝敗の行方がわからなかった。新宮は好調なすべり出しで2回表、一死後下川が四球を選び、宮本の一ゴロで二封されたものの、大木が右前安打し、さらに田上の中前安打に宮本が二塁から一挙に生還、先取点をあげ、南部川上(貞)投手を果敢に打ち込んだ。しかし打力のある南部は4回一死後、川上(宣)が中越えの三塁打を放ち、田中の三ゴロを三塁手が判断に迷い、野選になる間に川上が生還、さらに田中の二盗に捕手からの送球を二塁手がはじいて田中は三塁まで進み、高田とのスクイズを決めて逆転した。川上(貞)投手からの調子をみてこれで試合は決まったように見えたが、どたん場に近づいた8回表、新宮は見事な長打力で1点の負担をはねかえした。この回一死後畑中が返球で生き、すぐに二盗、仲がワンバウンドで左翼のフェンスを越す二塁打して同点にし、向井も左中間を破る二塁打で仲が還えり決勝点を堂々とたたき出した。南部も9回二死後遊ゴロ失に高田が出塁(代走浜口)丸山の安打性の遊撃ゴロが美枝にはばまれ敗れた。

<決勝> ○新宮―海南
10回表、新宮は遂に決勝の1点をたたき出した。この回、一死後宮坂が中堅超えに三塁打し、浜中のスクイズバントが決まり、宮坂がホームイン。決勝点をあげた。立ち上がりから息詰まる投手戦で前半新宮田上投手は大きなドロップを武器に慎重な返球をみせれば、海南木原投手も下手投げから浮き上がる速球で力投し、たんたんと進んだ。
5回表新宮は一死後秋野が内野安打に出塁、つづく田上のバントは投手が一塁に悪投して秋野は一挙三進、大木も四球で一死満塁、畑中の犠牲バントで秋野が生還、さらに8回は一死後向井が左前安打し、宮坂とのヒット・エンド・ランが成功、向井は一挙三進、宮坂も左翼手が三塁に送球する間に二塁に達し、浜中の右犠飛で1点を追加し、海南を引き離した。2点を先行された海南は、8回すさまじい反撃を見せた。無死根木が左翼越えの二塁打し、川端も三塁右を抜いて一、三塁、松田の痛烈な左前安打を左翼手が後逸、その間に根木、川端が相次いで生還、同点とし、松田も一挙に三塁に進み、木原、小椋凡退ののち宮脇が左前安打し、松田を迎え入れ、一挙に逆転、勝敗は決まったように見えた。
だが新宮の勝利への意欲は激しくすぐさま9回表、秋野が無死で三遊間安打し、田上の三塁前のバントが野選となり、つづく大木の投手前バントを投手が三塁へ大悪投し秋野がホームインまで同点に追いついた。しかし、10回裏海南の必死の追撃も及ばず力尽きて惜敗した。

<紀和決勝> ×新宮―御所工
まさに魔の8回だった。もうほとんど新宮の勝利をあせったが新宮田上投手の投球がわずかに高目に浮いた。トップ打者の樫を難なく三ゴロに打ち取ってほっとしたのも束の間、続く高野にねばられて四球を与えた。御所工の声援を一身に受けた福本定石通り第1球、高目の球をハッシと打てば、グーンとのびて中堅前の安打、これを中堅手秋野が突っ込みすぎて後ろにそらす間に高野は三塁を回ってホームイン、福本も二塁へ。田上投手の表情も心なしか固い。つづく4番林は初回先制の安打を放った強打者、果敢に初球を攻撃すれば、これが左前安打、福本は初球を攻撃すれば、これが左前安打、福本は三塁を回り一挙ホームへ。球は左翼手からバックホームされたわずかに左にそれ、ついに決勝の1点を与えてしまった。
それまで完全に新宮ペースだった。初回、立ち上がりにちょっと固くなった田上が、トップ樫に四球を許し、林の安打で先行さえたものの3回、見事な反撃で一挙に逆転。まずこの回トップ田上が0-2後の絶好球を右前に快打、大木のバントは二塁手の好守にはばまれて田上二封。しかし新宮は強気だ。早速、大木は二盗、一打同点と詰めよった。つづく畑中は虚をついて投前に絶好のバント。御所工、岡本投手も球を手にしたが投げることができず、走者一、三塁、しかも重盗の強行作戦が図に当たり三塁走者大木がホームにすべり込んで一瞬セーフ。仲は一飛に倒れたが、勝負強い向井が登場して外角球をうまく右前安打し、畑中還って2点目。それ以後8回までずっと新宮は押し気味で、御所工のまれた格好だった。しかも7回には無死下川左翼左に二塁打、代走に浦が送られ、秋野も四球に歩き、追加得点のチャンスになったが、田上、大木、畑中が無造作に打って凡退、8回も無死沖が左前安打、向井の二ゴロで二進しながら後続なく、どたん場9回一死松浦倒れて一死後、秋野の代打宇井2球目を左翼線に二塁打、一打同点のチャンス、さすがに緊張した空気がピーンとみなぎり、伝令が両校ナインに飛ぶ。ところが田上の第1球目、宇井のリードが大きく捕手からのけん制球に二、三塁間にはさまれ三塁寸前で憤死。惜しい走者を殺した。スタンドから長いため息がもれる。田上はねばったものの中飛に打ちとられ、この瞬間、新宮の甲子園への雄図もついえた。



第43回<昭和36年>全国高等学校野球選手権大会

県予選
<準決勝1> ○向陽―橋本
立ち上がり広畑投手が制球に苦しむところを向陽はうまく攻めた。初回山本(芳)、吉水が四球に歩き。重盗に成功した無死二、三塁のチャンスに植田の左犠飛でまず1点。2回は坂口の安打、一死後、柴田の四球で走者一、二塁と攻めつけ、二死後、山本(芳)の右飛が野手の悪判断で二塁打となる間に2者生還、さらに吉水、植田の安打がつづいて、この回3点を加えた。橋本もすぐ反撃、3回表、無死で森中(筧)が安打、すぐに二盗、山藤も四球で歩き、木下一、二塁間安打で1点をかえした。後半にはいった6回、先頭打者木下が中前に安打、追加点の好機を迎えたが強攻策が失敗、7回にも小寺の代打堀端が無死で四球を選び、井上の投前バントで二進したものに、後続を断たれた。5回以後広畑が立ち直って好球しただけに2回の失点が大きくひびいた。

<準決勝2> ○桐蔭―県和商
数少ないチャンスに唯一の安打が出て、桐蔭の勝利は幸運に恵まれたものであった。4回表、無死四球で芝田が歩くと、手堅く小川がバントで送り、池田が三振に倒れたあと森川が初球の外角球をうまく左中間に安打、芝田が二塁から一挙生還、これが決勝点となった。1回表、トップ駒坂が左前安打しながら投手のけん制球に刺され、その後岡室、原田の安打が出たが無得点。毎回のように走者を出し、最終回には小島、安行の安打と高松の三前バントが野選になり、無死満塁と勝ち越しのチャンスを迎えながら、鈴木が三振、辻本のバントが三飛となり併殺を喫して万事休した。試合内容は県和商が圧倒的にすぐれていただけに、あきらめきれぬ敗戦だった。

<決勝> ○桐蔭―向陽
桐蔭はうまい攻撃で5回裏2点を挙げ、試合の主導権を握った。この回一死後、武田が右中間に二塁打、田村が手堅くバントで送り、続く左打者芝田が三塁線にうまくセーフティバントして武田が生還。さらに小川が初球を左翼越えに二塁打し、芝田も還って2点。6回にも一死後北谷が一、二塁間に安打、中谷四球の後、二死後武田が右前に安打、野手が後逸する間に一挙に2者生還、2点を加え勝敗を決めた。しかし前半は全く互角のスタートだった。津田は一球一球球室を変えて内外角に投げ分け、森川も落差のあるドロップと速球で打者を追い込んだ。2回裏桐蔭は一死後、北谷の四球、中谷の三遊間安打で先制機を迎えたが後続なく、向陽も3回表、無死浜野が遊超え安打したが柴田のバントは投ゴロになって併殺、その直後に田村の左中間二塁打が出るチグハグな攻撃で無為。
向陽は後半、6回半ばから投手を寺前に切り替えて桐蔭の打線を抑え、4点リードを追ったが、森川の力投に反撃の糸口をつかめず、6回以後走者を出すことができずに敗退した。それにしても3回に先取得点していればどうなっていたかわからなかっただけに惜しい逸機だった。

<紀和決勝> ○桐蔭―御所工
両チーム無得点の均衡は敗れず後半の6回表を迎えた。この回、桐蔭の先頭打者はトップ左打者芝田、御所工岡本投手の初球を右前へ快打、次打者小川は2-2からのスリーバントは失敗して走者を二塁へ送れず、3番池田は果敢に初球を打って遊撃の深いゴロで芝田が2封されて二死、強打者森川を迎えて岡本投手緊張した表情、1-0後の2球目、内角直球を森川が思い切ってたたくと打球は糸を引くように右中間のど真中を外野のフェンスへ転々。一塁走者池田は二、三塁を回ってしっかりとホームベースを踏む。森川もゆうゆうと三塁へ・・・・遂に待望の1点をとった。
それまで手に汗にぎる投手戦だった。初回森川は固くなったのか、トップ高野を四球で歩かせ、石原に絶好の三前バントを許し、一打1点のピンチに立った。しかし、林の二ゴロ、岡本を三ゴロにとって得点を許さず、4回にも一死後林に中前安打されたが、先取点をねらって二盗を試みたが田村の好送球で刺し、乗ずるすきを与えなかった。桐蔭も2回無死で森川二塁内野安打、北谷のバントに送られた直後三盗し、中谷との間のスクイズ失敗、三本間で挾殺、4回には無死中前安打の小川を一塁に置きながら後続なく、どうしても1点がとれない。この1点をめぐりさすがに連続出場をねらう御所工、油断はできない。桐蔭はさらに追加点をねらい8回には芝田が一死後三遊間を破り、小川のバントで送られたが池田が凡退。9回にも北谷が鋭いランナーの中前安打し、捕逸で二進したが後続をたたれた。
御所工最後の攻撃、栄光を目前にひかえたこの回トップ石原遊撃内野安打、次打者はこの日2本の快打を放っている強打の林――最大のピンチだ。3球目、林のバットから快打が出た。白球が鋭いライナーになって中前へ・・・・・しかし中堅池田の懸命な前進によって地上寸前で好捕。石原は帰塁しようとしたがよろめき、矢のように一塁へボールが返って併殺。スタンドからは安心と残念を織りまぜた長いため息がもれる。つづく岡本も1-3とねばったが平凡な二ゴロ。ウイニングボールは一塁手北谷に送られた。抱き合って喜ぶ桐蔭の選手、じっとうなだれる御所工のナイン。劇的な終幕だった。
桐蔭は13年ぶり、19回目の甲子園へ。

全国大会
<本大会の記録>
<1回戦> ○桐蔭―海星
中堅クラスとしての活躍を期待されていた海星が、桐蔭の前にもろくも敗退した。得点差の3-0が示す通り、内容のうえでも桐蔭が一方的に勝っており、攻守に海星を倒しての勝利は実に堂々として文句のないものであった。
桐蔭を有利に導いた3回の1点は無死左打者の田村が死球にめぐまれ、、芝田のバントで二進、さらに捕逸が加って三塁を占め、打者小川の第3球、絶好のスクイズ・バントで田村がホームを踏んだ。さらに7回には四球の北谷がバントと遊ゴロで三進、第1球をねらった武田の右前打、田村の左超二塁打で決定的な得点が記録された。小柄な左腕投手森川の好投も桐蔭の勝因として特筆せねばなるまい。制球力があり、右打者の内角低目をつく直球、外角いっぱいに逃げるシュート、緩急おりまぜたカーブなど変化に富んだコーナー・ワークで海星打線を4安打無得点に押えた。この森川を盛り立てる守備力も日頃の訓練をよく現わして大きなくずれをみせなかった。

<2回戦> ○桐蔭―秋田商
左腕森川は4回までなかなかの快球で秋田の進撃を阻んだが、味方もまた今川に抑えられてまずまず勝負は5分と5分の形勢で前半は終った。4回裏桐蔭が無死一、二塁という絶好機をつかみ森川の中堅の快打で二塁走者、本塁をついたが、川村の好遠投でホーム寸前で刺されたのは惜しい。逸機というべきだが、これは川村の美枝と称すべくやむを得なかったと思う。今川、森川の投手戦は5・6・7回と続き桐蔭の4安打、秋田の1安打では得点の目あてはなかなかつきそうもない。表面に浮び出る戦況では安打4を放っている桐蔭がやや有利らしく見えるが、今川の急所をしめる手腕には無形の力を認めなければならぬから得点を握るまではどちらも油断がならない。試合は大型といわれないが、実に熱戦だった。試合は10回まで延長され、最後の場面は桐蔭の二死二、三塁の走者でこの回も当然ゲームは11回まで持ち越されるものと予想されたとき、ラストバッターの田村が殊勲の一打を中堅に放って秋田にとどめを刺した。さすがに今川も武運のつきるときはどうにもならぬものか、投げそこないではなく打者の虚をついたのだが、田村のバットに引っかけられ敢えない最後を遂げた。この試合の両軍は文字通りよく守り非のうちどころがなかった。欲をいえば、どちらも準々決勝に出したいようなチーム振りであり、秋田の惜敗に同情を禁じ得ない。

<3回戦> ○桐蔭―福岡
終始桐蔭が押しぎみに試合を進めた。桐蔭は1回一死後小川は三遊間安打で出て二盗、さらに北谷右前安打、森川四球で満塁と先行機をつかんだ。続く武田の大きく打ち上げた中犠飛で小川がかえって先取点をあげた。さらに3回も先頭の芝田が投前バント内野安打で出ると手堅く小川がバントで送り、北谷の遊ゴロで三進した後、森川の二塁左内野安打で芝田を迎えて1点を加えた。1回は足を生かし、3回にはバントをうまく使って得点に結びつけたあたり定評通り桐蔭の試合運びのうまさを裏付けた。
福岡の五日市投手は外角に流れるカーブを効果的に使っていい投球をしていたが、走者が塁に出ると速球が落ち、また高めに浮いて打ちごろの球となっていた。桐蔭はその後も攻撃の手をゆるめず、4回には中谷が四球で出たあと吉原の左中間二塁打で1点。7回に北谷・森川の連続三塁打で五日市投手を打ちくずし、中谷のスクイズバントなどで決定的な2点を追加した。福岡は森川投手のうまい投球に手が出ずわずかに1安打、3回一死後小保坂が中前に安打しただけ、左投手の内角に食い込む大きなカーブに手を焼いたのだが、球をひきつけ鋭い振りをしていればもっと打ち込めただろう。いずれにしても研究不足だった。だが9回森川投手の制球難につけ込み村田・山崎・小野寺が四球で満塁とはじめての好機をつかんだが、後続打者がいずれも凡退してついに得点をあげられなかった。好チーム桐蔭を相手に最後まで試合を捨てなかった福岡の闘志とまじめなプレーぶりは好感が持たれた。

<準決勝> ○桐蔭―岐阜商
3回岐阜が1点先取しただけで、6回までは試合内容も乏しく、たんたんとして準決勝にしては物足りないものであった。ところが7回桐蔭が見事な逆転を見せ、8回には更に決定的とも思える2点を追加した。桐蔭の左腕森川の投球からみてこのまま押し切るかに見えたが、粘りの岐阜商は9回一死から失策に次ぐ連安打で2点、スクイズでさらに1点を加えて同点としたため場内はわき、ようやくにして準決勝らしくなった。しかし、これも束の間、桐蔭は9回裏3たび長繩と代った前田から田村が四球を運び、投手の一塁けん制球悪投で二進、芝田の投前バントを前田投手が三塁へ投げて野選、走者一、三塁とし、打者小川1-2のとき前田第4球目を暴投してあっけなく勝負がついた。終回近くわいたこの試合は6回までは凡退にひとしいもであった。岐阜商は3回一死前田の三塁打とスクイズで先取点をあげた。
一方桐蔭は岐阜商先発前田がはげしく上体をひねった投げるわりにスピードがない投球にタイミングが合わず6回一死までわずか1安打という貧攻、ところが北谷二ゴロ失に出たとき、岐阜商は前田を退けて、左腕の長繩を救援に送り、彼の巧みな一塁けん制球でこの回を切り抜けた。試合も余すところ3回、岐阜商予定の継投策で、3回の貴重な1点を守りきるかのような形勢でもあった。岐阜は右翼に代った前田をプレートに呼びもどし長繩を右翼にして桐蔭の目先をかえてきた。ところが武田が遊撃に安打してバントで二進したとき再び岐阜は長繩をプレートに送ったが、吉原は2-1と追いこまれた後、内角球を見事三塁線に安打して同点。さらに池田も右翼に快打して一、三塁とし田村のスクイズで逆転した。これに勢いを得た桐蔭は8回小川から三塁前安打して悪投で二進、北谷はよくねばり、11球目に四球を奪い、森川のバントで二、三塁、武田敬遠の四球で満塁、つづく中谷三振後、吉原の快打で2点を加えた。ところが9回岐阜商は3点をばん回したが、この裏桐蔭のねばりに屈服した。
岐阜商はせっかく先取しながら8回森川のピッチングに対し、あまりにも強引に振り回したのが貧打の因でもあり、敗因だった。とかくねばりにねばり遂に岐阜商を退けた桐蔭ナインの闘志は賞したい。

<決勝> ×桐蔭―浪華商
大観衆スタンドを埋め、決勝戦としてはまれにみる威感。まことに晴れの決戦場であった。浪商は地元であり、桐蔭は隣接地で、ゆかりのファンが多いからであろう。
終戦後唯伏何年の桐蔭が、大敵浪商を向こうに回してこの一戦、桐蔭森川の左腕がどこまで浪商打線をおさえるか、桐蔭の打者が大豪尾崎の速球をどこまで打ち込めるかが興味の中心にあった。1・2回森川はやや高めの球を2安打されたが、桐蔭の内外野は微動だもせず。順調なスタートぶりはきわめてたのもしい。4回まで両軍得点を見ずに過ぎた。大観衆は桐蔭の善戦にわき立っていた。5回初めて浪商が得点した。浪商は尾崎の右翼当たりそこねのヒットを足がかりとして高田・脇田の安打から桐蔭の守備少しく乱れるに乗じたスコアーで、桐蔭のためには惜しまれる1点だった。だが、桐蔭はいささかもひるまなかった。尾崎のスキのない好投にはなかなかつけ込めなかったが、1点の差で守り抜いた健気な死守ぶりは天晴れといっていい。捕球も法にかなっており、小粒ではあるがしんが通っているプレーぶりはこれまで進出したゆえんでもあろうが、高校野球として大いに推奨するに足ろう。打法も尾崎に対してかなり考え、無理もなかったが、何にしても尾崎の力は上回っており、どうにもならなかった。けれどもここまで奮戦すれば思い残すことはあるまい。森川必死の投球が浪商の上位打線を巧みにくぐり抜けたのが最小限に得点をおさえたのであるが、内外野の守備もまずまず上々であり、その昔の和中の面影をしのばせるものがあり、願わくば名門の復活を念じたい。



第44回<昭和37年>全国高等学校野球選手権大会

県予選
<準決勝1> ○新宮―橋本
新宮は見事に逆転した。3点リードされた新宮は7回先頭の山面が右前打、続く宮本のゴロを三塁手が一塁へ悪投する間に一挙三進し、大川の三遊間安打で生還、続く奥のバントは一塁手の悪投を誘って無視満塁、田崎のスクイズバント失敗で三塁走者の宮本が本封されたが、二死後暴投で1点を加えた。さらに8回は先頭の小坂が二ゴロ失で出てバントで二進、山面四球のあと宮本殊勲の中越え二塁打して2点をあげ逆転。そのまま押切った。
橋本は6回までに新宮の宮本、福田両投手に長打4本を含む9安打を浴びせ、3点を先取したが、7回から福田投手に完全におさえられた。1回の無死一、三塁の好機を逃がし、3回には二盗失敗後に三塁打が出るなど、前半再三のチャンスを逸したのが痛かった。

<準決勝2> ○南部―桐蔭
両校共優勝候補にふさわしく、好守好投の応酬で観客をわかす好ゲームを展開したが、6回の攻防が明暗をわけ、南部が逆転勝ちに成功、桐蔭の2年連続甲子園出場はならなかった。同点で迎えた6回表、桐蔭は相手の失策と安打で一死一、二塁のチャンスを迎えたが、後続なく無為に終った。この裏南部は先頭の田野が片原の投ゴロで二封されたが、片原は二盗に成功、坂口三振のあと谷上の二越え安打で片原生還、決勝点をあげた。桐蔭は1回相手の失策を足がかりに2本の安打で2点をあげ、試合運びの妙を見せたが、以後毎回のように走者を出しながらも、南部の西垣投手に要所をしめられ、ずるずると敗れ去った。
南部の勝利はヒジの痛みをおして投げた西垣の力投もさることながら2点リードに屈せず桐蔭の好投手北谷を打ちくずした打撃陣の気力にあるといえよう。

<決勝> ○新宮―南部
新宮福田は速球と大きなカーブを、また、南部西垣は切味のよいシュートを武器に、ともにたん念にコーナーをつき、投手戦になった。強打でなる両チームのバットから快音は聞かれず、このまま大会2度目の延長戦かと思われた。しかし『ピンチのあとにはチャンスあり』のたとえ通り、7回裏のピンチを南部の拙攻に救われた新宮は、8回表この試合2度目のチャンスを迎えた。先頭の田崎が死球で出塁、荒尾はバントを失敗のあと中飛に倒れたが、1番小坂は粘ったあげく三遊間をゴロで破り一死一、二塁になった。次の大川は動揺した西垣の第1球をすかさずたたき、左中間を深々と破る二塁打、二塁から田崎、一塁から小坂相ついでかえり、これが決勝点になった。大川への第1球は真中高目の絶好球で、好投を続けた西垣にとっては無念の失投だった。
ともに貧攻ながら8回まではむしろ南部が押していた。2回表は一死二、三塁のチャンスサインの不徹底で無為、また7回表も一死満塁のチャンスを強攻策からスクイズに切替えたところを新宮バッテリーに見破られて得点できなかった。先取点が大きくものをいう大試合だけに、このどちらかに点を入れていれば試合はどうひっくり返っていたかわからない。健闘の南部にとってまことに惜しまれる逸機だった。力量全く互角、ガップリ四つに組み、決勝戦にふさわしい見ごたえのある試合だったが、新宮の闘志がわずかに南部を上回り、その差が勝敗の明暗を分けた。

<紀和決勝> ×新宮―天理
1回天理の攻撃を3者凡退におさえた新宮はその裏絶好のチャンスを迎えた。まず先頭の小坂がうまいセーフティーバントを投手左にころがして出塁、次の大川の三塁前のバントが野選となって無死一、二塁、山面が定石通りバントで走者を二、三塁へ。さあ先制のチャンス。期待の宮本は2球目スクイズ失敗で小坂を三本間に殺し、自分も投ゴロに倒れて結局無為。
天理は3回橋本が四球をえらび平井の送りバントで二進、土井は三ゴロで二死になったが、次の強い遊ゴロの荒尾トンネル、ボールが左中間に、橋本三塁をけって生還天理は無安打で幸運な先取点をあげた。新宮にとってはあきらめきれない高価な失策だった。
1点を追って新宮必死、4回無死一、二塁も後続が断たれ、5回にも二死後大川が中前安打に出たが、盗塁失敗でアウト。このあたり、新宮の攻撃はあせり過ぎた感じ。一方天理は、7回一死満塁で詰めよった。新宮またもやピンチ。5回からリリーフした中本の投球に力がこもる。花山のバント失敗後三振で二死。その直後中本の恒岡への第1球が暴投、ボールはバックネットへ転々、ホームをカバーした中本への田崎の返球も悪投、この間に三塁から山中、二塁から小西とホームインして天理は決定的な2点を加えた。さすがは県予選で2度も逆転勝ちしたねばりの新宮だ。9回裏になって猛攻を開始した。先頭の小山は左翼線に二塁打、中本、福田も内野安打、四球でつづき、無視満塁の絶好のチャンスを迎えた。長打が出れば同点か、あわよくば逆転勝ち。しかし天理道治は田崎を三ゴロに仕止め、小山は本封、山脇も一ゴロで中本は生還したが二死、期待の小坂も平凡な遊撃ゴロになり万事休した。



第45回<昭和38年>全国高等学校野球選手権大会

県予選
<準決勝1> ○南部―和工
和工は実に惜しかった。3ー0とリードされた9回表最後までのチャンスに無死で吉野、辻が連続ヒット、つづく中谷の二塁打と、南部・西垣投手の暴投で2点をあげ、なおも無死三塁と攻めながら後続なく、無念の涙をのんだ。優勝候補南部をここまで苦しめたことには、満場から感嘆と称賛の拍手がアラシのようにわき起った。中盤までは全く対等の試合だったが、7回表、和工の遊撃手が手痛いエラーを重ねたことから均衡はくずれた。この回南部は一死後垣渕が遊撃ゴロ一塁悪投に生き、畑崎の二塁ゴロで二塁へ、次打者皆瀬が再び遊撃前へ鋭いゴロを放つとこれがトンネルで左翼前へ抜けたため、垣渕懸命のの力走でホームイン。8回には急に疲れを見せた辻投手から左飛失と2安打でさらに2点をもぎとった。南部の誇る大型打線が、あまりスピードのない和工・辻投手に手こずったのは大振りし過ぎてミート・ポイントが狂っていたためとみられる。また和工打撃陣は、疲れを見せながら急所をよく締める南部・西垣投手に三振12を奪われ、反撃を始めるのが少し遅すぎた。

<準決勝2> ○向陽―海南
向陽は好守にはつらつとしたプレーをみせ、堂々優勝候補の海南を降した。1ー0とリードされた3回裏、向陽は2本の安打と四球で迎えた一死満塁の好機に林の三ゴロで三塁から野崎がかえり同点とした後、浜野の三遊間安打で桶谷もけり勝越し点をあげ、海南のエース山下を降板させた。
勢いついた向陽は代わった下手投げの川端にもよく食い下がり、6回にも安打出塁の浜野を一塁において佐本が左越え二塁打を放ち1点を追加、海南を圧倒した。初回2本の長打を含む4安打を連ねながら、一塁走者が向陽・野崎投手の巧みなけん制球に刺されるなどの拙攻で1点しかあげられなかった海南は、リードを許してからあせり気味、7回無死一、三塁の好機もまたも野崎投手のけん制球で一縷走者が刺され無為、9回一死一、三塁も重盗の失敗で無得点に終り、向陽の倍近い13安打を放ちながらそのままずるずると敗れ去った。
この日の海南は得意の足におぼれすぎた感じで、いつもの試合運びの妙は全くうかがえなかった。向陽の勝因は、落ちついたピッチングで要所を締めた野崎投手の好投もさることながら、しばしばむつかしい打球を処理して若い野崎を盛立てた守備陣の好守にあった。とくに1回と5回、絶好の返球で海南走者を本塁寸前に憤死させた桶谷中堅手の強肩は光った。

<決勝> ○南部―向陽
劇的な幕切れだった。0ー0の均衡破れず、あわや延長戦かと思われた9回裏、二死走者二塁に3番打者谷上の放った一打はみごと右中間を破り、桶谷中堅手必死のバックホームも間に合わず、二塁走者片原が生還した。ぼうぜんとする向陽ナイン、おどり上がって喜ぶ南部のベンチ。この回先頭の柴田三振、このまま延長戦に入るかに見えたが、トップ片原2ー2から5球目中前安打、樫山は手堅く送ったあと谷上の決勝打が出たのはこの後だった。3球目、大屋が全力をこめて投げたカーブだったが高目に入ったのが谷上にとっては幸い、大屋にとっては不運だった。南部高にとって今大会いちばん苦しい試合だった。再三塁上をにぎわす南部打線も決定打が出ない。向陽・大屋は南部の西垣より球速においては落ちるが、ファイトはひけをとらない。決め球のシュートで、打ち気にはやる南部打線を打たせてとり、マウンドを死守した。彼を楽にしようと向陽の打撃陣も必死だが、6回無死一、二塁のチャンスをものにできなかった後は、全く西垣のペースに巻きこまれ三者凡退を繰り返すばかりだった。そして9回裏の1点に涙をのんだわけだが、向陽にしてみれば、ここまで死力を尽くして戦ったことに悔いはあるまい。ずばぬけたスタープレーヤーがいるのでもなく、前評判もさほどでなかっただけに、ナイン一丸となってきびきびとしたプレーが、練習できたえた実力を思う存分発揮し、高校野球の真骨頂を見せてくれたことに、県下の全野球ファンとともに惜しみない賛辞を送りたい。

全国大会
本大会の記録
<1回戦> ○南部―泉丘
泉丘の山下、南部の西垣ともに本格派で、評判通りの速球をもっていた。2人のちがいは山下は真向から投げおろすのに対し、西垣は少し手の振りが横から出ていた。そんな山下と西垣だが、2人とも荒い投球をした。特に立ちあがりの1回は制球が悪かった。泉丘は1回一死から野市一ゴロ失、小森中前安打、小野三振したが、山下四球で満塁と西垣を攻めた。しかし三浦は投ゴロ、いいチャンスを逃した。その裏、南部は片原左前安打、樫山のバントで二進したあと谷上のうまい右翼線三塁打で1点、続く坂口の一、二塁間好打でまた1点を山下から奪い先制した。
この回の攻防の差は、西垣にくらべ山下の方がわずかだが、球にのびを欠いていたのと、泉丘打線が西垣の高めのボールに手を出したのにくらべ、南部打線が好球をみのがさずにあざやかにたたいたからである。
2回から両チーム共絶えず走者を出したが、西垣はカーブが決まりはじめ、山下はシュートに活路を見出だして投げあった。勝負は初回の攻防が明暗を決めたわけだが、泉丘に惜しまれるのは3回に当たっていた3番の小森が死球で退場、5回無死で野市が二塁打して反撃機をつくったときに打てず、最終回バントで二進した三浦がオーバーランして刺されたことだ。両投手共制球力を覚えることが今後の課題だ。

<2回戦> ×南部―桐生
南部の先攻も見事だったが、桐生の逆転はもう一つ鮮やかだった。桐生は4点リードされた3回裏、二死二塁に田島をおいて岡田が内角に入ってくるカーブを左越えに二塁打、4回は右前打の888を中戸がバントで送ったあと、木村が左前に適時打して888を迎え入れ、差2点と迫った。小刻みながらチャンスを着実に生かして迎えた5回、素晴らしい攻撃で逆転した。この回死球の村岡が二盗、下山四球で、一死一、二塁に岡田がこんどは内角球を右中間に二塁打して同点、888が2ー1と追いこまれた内角へのカーブを左へライナーの二塁打を放って勝越し、中戸三振のとき888三盗、捕手の三塁悪投でかえって、逆に2点をリードしてえしまった。南部の西垣が活路を求めようとした武器のカーブを逃さずたたいたあたりさすがうまさを誇る桐生攻撃陣だけのことはあった。西垣は右に左に打ち分ける桐生打線の前につぶれた。
南部はいきなりバント安打に出た片原が2つの犠打で素早く1点を先取し、2回には皆瀬の左中間二塁打と柴田の二塁手左を抜く安打で2点を追加、3回には西垣のスクイズで1点と計4点を奪って順当な試合運びをみせた。しかし、後半逆にリードされたので、やや気落ちしてか、反撃の気力も見せず、2回途中から救援した桐生の下山に、わずか2安打の1点しか取れず終った。下山の内外角低目を使い分ける投球にすっかり打撃のペースを乱されたのは、せっかく先手をとっていただけに惜しかった。



第46回<昭和39年>全国高等学校野球選手権大会

県予選
<準決勝1>
準決勝にふさわしい力のこもった一戦だったが、打棒快調の桐蔭が、力投する橋本・広畑投手を終盤に圧倒した。
1-1で迎えた8回表、先頭はこの日2安打の当りや松本、初球をいきなりたたいて左中間を深く破る三塁打、一死後嶋村も左翼頭上を抜く三塁打でまず1点。次打者横山の2球目、スクイズを見破られ嶋村三本間にはさまれたが、捕手の三塁悪投で生還し、勝負を決めた。橋本は5回まで桐蔭・高本投手におさえられ、2安打しか打てなかったが、6回からの反撃ぶりはすごいファイトが見られた。この回栗林四球、榎本・古井の幸運な内野安打が続き無死満塁のチャンス。ここで高村投手がスクイズを警戒して投げたウエストボールが、暴投となって栗林がかえり同点。なおも追加のチャンスだったがスクイズサインの手違いで三塁をとび出した榎本が刺されたうえ、田中の三塁線安打で二塁から本塁をうかがいかけた古井が好返球で三塁に刺され折角の盛上りをつぶしたのは惜しまれる。
橋本はさらに7・8回にも一死三塁の走者を強攻策の失敗で生かせなかった。橋本の試合はこびがもう少しうまければ、逆転していたかもしれないが、これをよく防いだ桐蔭の堅い守備は立派だった。

春の甲子園出場校同士の対戦はこの日最高の呼びものだったが、市和商は攻守とも精彩を欠き、岩崎投手もカーブが高めに浮くのをねらわれ日頃のさえがなく、海南の一方勝ちとなった。
海南は1回、四球に出た浜井を三塁において山下が遊撃左に内野安打してまず1点。3回にも小川四球のあと栗田の中前安打を野手後逸する間に小川・栗田が生還し2点を追加した。5・6・8回にも大量点をあげて引離した。一方市和商もファイルを出して戦ったが直球・カーブを巧みに投げ分ける山下投手を打てず、1回の二死走者三塁、4回の二死一、三塁のチャンスも生かせず、7回から代った川端にも押えこまれて大敗した。

<決勝>
海南・桐蔭高ナインが持てる力を一ぱい出しきって、大会最後を飾るにふさわしい衝突となったが、海南・山下投手は直球に一段とスピードが乗り、時折りカーブとシュートを織りまぜる見事な配給ぶりを見せ強打桐蔭を完封、打線も4本のヒットを生かして2点をあげ、堂々宿敵を振切った。桐蔭は2回、松本が右中間安打、井口右飛のあと、前日の殊勲者嶋村が左中間に強烈な当たりを見せ、中堅手栗田がハンブルする間に二進、走者二、三塁と攻めたてた。しかし続く横山は外角速球を空振り三振、高本四球で二死満塁と期待をつないだが、田中が2邪飛に打取られ絶好のチャンスを失った。
3回まで無安打に押さえられた海南打線が火を吹いたのが4回、一死後、川井が高本の外角直球にバットをあわせば、球は右中間を抜く二塁打、続く当りや山下を迎えて桐蔭ベンチは緊張したが、山下は内角カーブをたたいて三遊間を抜き、左翼田中からの返球を三塁手がカットする間に、川井が頭からホームベースに飛込んで生還、先制の1点をあげた。海南は6回にも敵失に乗じて2点目をあげた。先頭の浜井が四球で出塁、栗田の犠牲で二塁に進んだあと、川井が外角の速球を右翼線に痛打、これを右翼手がジャックルする間に浜井が生還したもの。この追加点が桐蔭の死命を制した。
しかし桐蔭の追撃も急、6回は二死後谷村が三遊間安打、7回にも一死後嶋村が敵失で出塁して懸命な反撃をみせ、最後までねばり強く戦ったが、球運はついに桐蔭に恵まれなかった。3回以後は、わずか1安打、山下投手の低目の球をいたずらに大振りして凡フライを打上げる攻撃を繰返していたのは、強打を誇る桐蔭としては不覚であったろう。

<紀和決勝>
しんどい試合だった。常勝海南にとってこれ程苦戦したことはなかった。山下がいまひとつ調子が悪く、救援した川端も右人差し指が痛んだまま、だが天理を上回るファイト、敵のエラーにつけこむ巧みな攻めはさすが、海南の7回にあげた2点が決勝点となり、追いすがる天理を振切った。
初回、海南は見事な先制攻撃をみせた。先頭の浜井は2ゴロで一死となったが栗田は立ちあがり制球力のない外山からストレートの四球、つづく川井は三遊間を抜いた。栗田好走して三塁へ。川井も送球間にすかさず二塁へ進んだ。山下が1-1後の直球をたたけば、高くあがった中飛。三塁走者栗田がホームを踏んで先制の1点をあげた。
天理もその裏、反撃を開始。やや堅くなったのか、山下は自慢の速球にスピードが乗らない。先頭の荒川が左中間を深々と破る三塁打、たちまちピンチに立った山下は難波を捕邪飛、次づく小柳をスクイズ失敗のスリーバンドで三振させた。これでほっとしたのか、4番角田に初球を中前打され、同点に追いつかれた。
しかし海南は3回の巧みな攻撃で追加点をあげた、一死後川井が遊撃強襲安打に生き、山下はやや敬遠ぎみの四球、つづく南口が中前にテキサス打して一死満塁、つづく川端は2-3からボールぎみの球をスリーバント失敗。チャンスは去ったかと思われたが、柴田打席の時の第1球目外角のタマを細川捕手が後にのがして川井が三塁からホームを踏み、2点目をひろった。
チャンスの後にピンチあり。山下はどうもいけない。3回またも荒川に左翼線二塁打された。ベンチは切札投手川端にスイッチ。栗生監督自慢の継投策だ。あせる天理は難波がヒットエンドランをはかったが、難波は三振、三塁にすべり込んだ荒川も南口からの送球を受けた寺坂が巧みにタッチアウト。川端は期待どおりのリリーフぶりを見せた。
海南は5回も好機をつかんだ。一死後山下は左前安打、南口も四球を選んでつづく。そこで天理ベンチは外山を思い切って永崎をマウンドに送った。両軍虚々実々の攻防だ。川端三振後柴田は二遊間を抜くヒット。球は中堅まで転がったが、二塁走者山下は慎重に三塁でストップ。次く寺坂の一発をまったが寺坂は惜しくも遊ゴロ。絶好機を逃した。6回には二死後栗田が中前安打後二盗失敗。しかし7回ついにだめ押し点をあげた。この回川井遊ゴロ一死のあと、山下はこの日2つ目の四球、南口遊ゴロで山下二封されたが、川端は期待にこたえて一、二塁間を抜くヒット。柴田の三ゴロは佐竹がこぼして満塁、次く寺坂の三ゴロは一塁投球がワンバウンドの抵投となってセーフ。三塁から南口還って1点、動揺した永崎投手がつづく小川にストレートの四球を出して押出し、川端がホームを踏んだ。
天理も必死に追撃する。その裏、川端のシュートを佐竹が中前打、つづく代打山口に四球を与えて無死一、二塁、絶対のピンチ、細川を中飛に打ち取ってほっと一息ついたが、つづく永崎に四球をえらばれて一死満塁。荒川に一塁線に絶好のスクイズを決められて1点をばん回されたがこの回は難波を三振させきり抜けた。しかし天理も8、9回、必死に追撃してきたが、川端力投し得点を与えなかった。ウイニングボールが南口のミットに入った瞬間、海南4たび甲子園出場が決った。

全国大会 8月9日~18日
<本大会の記録>
修徳は東京代表にふさわしい力のあるチームだったが、不運から強チーム海南を倒せなかった。エース成田は、評判通りの好投手で、速球、シュートを思い切って内角へ投げ、打力を誇る海南を、6回までわずか2安打におさえていた。だが後半変化球に頼ったために海南の反撃にあった。
2-0とリードされた海南は、7回川井、山下が内角のシュートを強引にひっぱり、ともにバットが折れてテキサス安打、南口が送って、一打同点のチャンスを迎えた。寺坂はスクイズを2度ファウルして2-1と追い込まれたあと、外角のドロップを食いつくようにして遊撃右を抜いて川井をかえし、なお一、三塁とチャンスは続く、ここで海南は川端に手堅くスクイズさせて同点とし、寺坂も三進、柴田が同じように2-2後の外角球を遊撃左へ内野安打して逆転に成功した。8回にも栗田、川井の長短打で1点を加えて2点の差をつけた。修徳にとって惜しまれるのは、1、5回の追加点機を逸したことだ。1回山下から押出しの1点を奪ったあと、救援の川端にはスクイズ失敗から併殺、5回は夫妻、原の長短打でつかんだ好機に、相原の一打が二直となり原とともに併殺でつぶれたことだ。ベンチとしてはスクイズか、強打させるか決断のむずかしいケースだったが結局打たして失敗してしまった。修徳は8回せっかく1点差に迫り、9回無死一、二塁のばん回機を迎えながら、焦りから走塁を失敗、追抜ける好機をつぶして敗れた。

やや同型と思われる右投手同士、どちらが投げ勝つかが勝敗の分岐点とみられた。海南は1回によいチャンスをつかみ、ここで先制点を奪うのではないかと見られたが、やや拙攻で機会をのがし、かえって2回早鞆に先手を打たれてしまった。早鞆は紺谷宏、亀井の死四球で好機をつかみ、荒木・竹内の適時打で3点を先取したのは大きかった。
これがため海南は大分気勢をそがれたし、早鞆の意気は上った。早鞆は初回から勝気満々で、評判通り準決勝へ進んだ。海南は最終回大いに奮起し、山下の長打を生かして1点をばん回したが、日暮れて道遠しの感、遂に早鞆の前に屈した。
技量の比較からすればそう差はないのであるが先手をとったのと後手に回ったのとでは気力の燃えあがるものと、しぼんでしまうものがあり、気力の旺盛なものはチャンスにも強くなる。早鞆は3回にも尾篭が中超えに長打して遂に先発の山下を退け、腰を痛めている川端を早々と引出した。
大量点を背にした早鞆亀井投手は疲れを見せながらも気力をふるいたたせ、慎重に投球を散らして海南に乗ずるスキを与えなかった。天晴れな投球というべきであろう。いかなる悲境に立ってもあくまで食いさがる粘りを養うことこそ重大な問題であるようだと思う。シンの通っていない形式技術では9回のうち必ずくずれを見せるものである。
技をみがくものに大切なことは第一に心の用意であり、野球をやるなら心の野球からはじめることが肝要であろう。
さて救援した海南川端投手も下手からの巧い投球を見せたが亀井の快椀に打力を封じられ、しかも8回中村に左翼深々と止めの一発をきっしてついえ去った。



第47回<昭和40年>全国高等学校野球選手権大会

優勝校 三池工高校<福岡代表>
紀和代表 天理高校
和歌山県代表 県和商高校

和歌山県予選<7月19日~8月1日>紀三井寺県営球場 参加校27校

<準決勝>
桐蔭はさすがに伝統のチーム。連投の疲れで立ち上り不調の笠田、前田投手をうまく攻めた。まず1回表、前田、横田がよく選んで連続四球で出塁。打者宮崎のとき暴投で二、三進。宮崎は三直に倒れたが、続く和田が左前へ適時打して先制の1点。2回には北邨の左前打を足場に2四球と宮崎の左前打で2点を加え、7回には前田の右超え三塁打のあと再び宮崎の適時打があり、ダメ押しの1点をあげた。
これに対し笠田は前半桐蔭・角投手の重い球にバットが合わず苦しんだが、後半疲れの見せた角投手を攻め、5回には2四球で二死一、二塁と迫り、6回には一死後から織谷の四球を足場に、生地の右前適時打で1点をかえし、7回にも一死一、二塁と桐蔭をおびやかしたがあせって好機をつぶし、また角投手のうまい配給に攻撃をたたれた。

前半の攻防が勝敗を決めた。県和商は初回一死後から奥上が左前安打して二盗に成功、続く立石の一ゴロで三進、井上はさんざんねばったあげく詰った当りが三塁前の幸運な安打となって1点。さらに窪井の左前打があってこの回2点。これで気をよくした県和商は5回には4安打と1四球でさらに2点を加え、7回には奥上の死球を足がかりに2安打を連ねてダメ押しの1点をあげた。
南部は4回早川、谷地の連安打から一死二、三塁と攻め、同点のチャンスを迎えたが、鈴木の三塁左の安打性のゴロも三塁手の好守でつぶされた。5、6回には無死で安打の走者を出したが、いずれも次打者の一打が投ゴロになって併殺される不運さ。結局県和商の頭脳的な下手からの軟投が打てず敗れた。

<決勝>
決勝戦は住時の和中-和商戦を再現する伝統の一戦となった。立ち上がり両軍共、やや堅さが見られたが、1点を争う白熱のゲームとなり、好守の応酬が続いたが、桐蔭・角にやや疲れが多く、終始強硬策で攻め立てた県和商が3-2で辛勝した。
県和商は3回、先頭の松村が右前打に生き、木村投飛に倒れたあと得津が中前に適時打して一挙に二、三塁とし、当りや奥上は敬遠ぎみの四球で満塁、続く立石が2-3から四球を選んで押出しの1点をあげ先制。4回にも一死から雑賀が左中間に三塁打し、松村の遊ゴロを野手が本塁へ高投した間に雑賀頭からホームにすべり込んで2点目、さらに6回にも雑賀が二塁打して木村の三ゴロに乗じて一挙にホームインした。
桐蔭は4回1死から和田が遊直失で生き、松本右飛のあと新井が左超え大三塁打を放って和田を迎え入れて同点、松村の今大会中の完封記録を30イニングにとどめて気をはいたが、その裏またも県和商にリードを許し、7回には新井のこの日2本目の長打と宮本の犠飛で2点目をあげ、その差1点と迫ったが、県和商の好守に逃げられた。桐蔭は3回無死から宮本が二塁打で出て犠打で三進したが、当っている前田、横山が県和商・松村のカーブに凡退したのが痛く、昨年に続き優勝を目の前にしながら涙をのんだ。勝った県和商、負けた桐蔭ともにほんとうに立派なファイトで県大会の最後を飾った。

<紀和決勝>
天理・外山投手に押さえられたとはいえ、3回表の県和商の足をいかした反撃は見事だった。1回裏味方のボーンヘッドから天理に1点を与え、反撃のチャンスをうかがっていた県和商は、この回、足に自信のもつ先頭打者雑賀が外山投手の第1球をいきなり三塁前にドラッグバント。球はゆるくころがり三塁失を誘発させて出塁、次打者松村は送って一死二塁、木村はよく選んで四球、その瞬間二塁走者三盗を企てた。天理・奥田捕手虚をつかれて三塁への送球が悪く悪投となって左翼に転々、雑賀は三塁をけってホームイン。しかも県和商もこの回同点にしたきりで、5回に一死から四球走者、9回投手強襲内野安打の奥上一人という攻撃で、天理・外山左腕投手の前に追加点をあげることができず敗れ去った。


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第48回<昭和41年>全国高等学校野球選手権大会 8月13日~22日

<準決勝>
海南は球威に欠ける山根投手を、のびのびと打ちまくり、長打14本を放って田辺をくだし、決勝戦へ楽々とコマを進めた。
2回、海南は一死後、三塁強襲安打の宮本と四球の後安が重盗に成功して二、三塁とし、前山が初球をあざやかに左中間三塁打して2点を先取、気をよくした海南は栗生の好投に支えられて終始優勢に試合を進め、7回にも連安打と投手暴投などで2点。8、9回にも6本の長短打で計4点を加えた。
一方、田辺は1回、二死満塁の先制機を逃したのが痛く、栗生の速球とカーブを打ちあぐみ、得点のチャンスをつかめなかった。7回に長打2本でようやく1点、9回にも連続安打で1点を加えたがおよばなかった。

向陽は後半、ねばり強く反撃、6、7回の好機に上位打線が適時打を放って昨年の県大会優勝校、県和商高に見事逆転勝ちした。試合は前半、重い速球をびしびし決める県和商平野と下手投げからコーナーいっぱいねらう向陽吉田憲投手の息ずまる投げ合いが続いた。
均衡が破れたのは5回、県和商はこの回二死一、二塁で平野が外角球をうまく合わせて右翼線を抜き2点をあげた。しかし向陽はしぶとく食い下がった。6回一死二、三塁から谷口の二塁ゴロで1点を返し、さらに池尾が中前に適時打して同点。7回、勢いに乗った向陽は一死後吉田憲が右前安打、木村が犠打で送り、湯川四球のあと菊池が2-1後高目直球を打って左翼右を深々と破り、見事逆転した。向陽の勝因の1つにはたびたびのピンチに3併殺を記録した鉄壁の守りがあげられる。

<決勝>
“苦節13年”――。このことばは向陽ナインのために用意されていたという感じさえする。それ程に向陽の戦いのあとは苦しいものだった。準々決勝の対箕島戦以来逆転につぐ逆転で勝ち抜いたこのチームには闘志と気迫と粘りがみなぎっていた。この試合もいったん海南に逆転されながら、中盤勝負強い打撃を見せて見事にはね返した。海南の集中安打で2回、4-3とリードされたあと、向陽は、しつように食下がり4回、逆に海南の栗生をとらえた。
この回、先頭の木村が二塁左を破って出塁、敵失と四球で無死満塁としたあと、土井の痛打は二塁正面に飛び、一瞬にして併殺、チャンスは去ったかにみえたが、二死後、一塁走者が盗塁して二、三塁とした後、勝負強い谷口が栗生の高目の球を右翼右にはね返して逆転した。さらに5回にも一死満塁から湯川が左超え二塁打して走者を一掃、大きく差を広げた。
一方海南は3-0とリードされた2回、吉田の外角球をねらい打ち、栗生の右翼左二塁打を含む4安打と2つの四死球で一挙に逆転、このあたり海南の攻撃は破壊力があったが、3回以後、吉田が内角に沈む球を主球とする投球に切りかえたため、海南の打球はほとんどつまった内野ゴロとなり、好守を誇る向陽内野陣にはばまれた。海南の山下、栗生両投手はいずれも故障がたたり、苦しい投球だったが、内野のまずい守備も投手の足をひっぱっていた。

<紀和決勝>
午后1時、プレイボール。向陽は初回から激しく攻めたてた。湯川が植村の速球をとらえてきれいに中前へ。菊池がこれをバントで送ったが、土井の投ゴロで湯川が二塁で刺され、二死満塁。このあと谷口がストレートの四球、池尻が死球で二死満塁の絶好のチャンス。森川監督が緑のメガホンを手にベンチを飛び出す。「それ行け」、しかし無念上野山が右翼前にたたいた安打性のゴロは、芝生に邪魔されて伸びず、一塁へ送られてアウト。
その裏郡山打線は向陽吉田投手を打込んだ。吉田の調子はいまひとつだ。カウントを整えようと投げる球に威力がなく、1回裏死球と長短2本で郡山に2点を許し、苦しい試合となった。
だが向陽はさすがねばり強い。3回表湯川の一打は地をはうような遊ゴロ、野手の前で大きくバウンドして幸運なヒット。逆転のチャンス到来、菊池がバントで送ったあと、土井の一撃は遊撃手を襲い、エラーを呼んだ。湯川は一挙に本塁へ――。1点を返して意気上る。しかし次の谷口が放った一打は左翼手のグラブに入って1点どまり。
中盤はリリーフ栗原が大きなドロップで郡山打線を押え、投手戦の感があった。2-1で郡山リードのうち、向陽は8回打順が主軸にまわり、反撃のチャンスを迎えた。期待通り、一死後土井、谷口が連安打、しかしそのあと凡ゴロが続き、逆転機を断たれた。
最終回、祈るような応援団のまなざしの中で先頭の富が三ゴロで倒れ、続く吉田もつまった二塁フライで早くも二死、ここで森山監督は最後ののぞみをかけて水本を代打に起用したが、植村投手の前に屈した。熱闘2時間27分、向陽ナインはすべてを出しきって敗れた。

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第49回<昭和42年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
後半、箕島が上手い攻めと持前の長打力で宿敵向陽に逆転勝ちした。
箕島は5回裏一死後に鳥羽が四球を選び、すぐに二盗、古川の投手ゴロを栗原がはじいて一、三塁としたあと、古川も二盗、ここで菅田がうまく一塁線にスクイズを決めて同点とした。
7回には一死後、威力の落ちた栗原から東尾が左越え二塁打し、二死後、鳥羽が左翼線に殊勲の二塁打を放って逆転、8回も主井の三塁打でダメを押した。向陽は3回表、一死満塁の好機に、吉田の遊撃ゴロで先制したが、このあとは川端の大きなカーブと低目に決るドロップに反撃の芽をつまれた。とくに4回、無死から三塁打を放った富がホームを欲張って刺され、5回にも二塁打の栗原をおいて森栗が中前安打したが、走塁のまずさからかえれず、追加点のチャンスをのがしたのが痛かった。

市和商が地力で熊野を押切った。熊野は先発の辻投手が初回3者凡退で押さえたあと急に腕が上がらなくなり、2回から神前にマウンドを譲った。市和商の打線は立ち上りカーブが決まらずスピードのない神前を攻め、野上、白川の連続安打から重盗で二、三塁、一死後岩崎の適時打と山口の犠飛でそつなく2点をあげ、さらに四球と重盗、安打で試合を決めた。このあとは大きなカーブに要所をしめられたが、8回山口の右越え三塁打で安打の岩崎をかえし、山口も土山の犠飛でかえった。
一方の熊野は野上投手のコーナーをつく速球にバットが合わず、安打1本三塁も踏めずに退いた。ただ最後まで試合を捨てず、きびきびしたプレーは立派だった。

<決勝>
市和商野上、箕島川端両投手の投げあいで決勝戦におふさわしい1点を争う好試合となったが、市和商はわずかな好機にうまく得点に結びつけて栄冠をかちとった。市和商は2回先頭の野上が投手の足元を抜き、白川の三遊間安打で三進、続く上川が遊撃左に内野安打して野上を迎え入れ、先制点をあげた。8回にも無死で上川が右中間を深々と破る三塁打を放ち、中継した二塁手の本塁送球でそれる間にホームを踏み、箕島を突破した。
一方箕島は野上投手の速球によくバットを出したが、もう一押しが足りず惜しくも念願を果せなかった。4回一死二塁の好機に打順が3、4番へ回ったために、強攻策をとり凡退したが、ここで追いついておれば、3回以後川端が立直っただけに、試合の様子も変わっていただろう。しかし、優勝好捕筆頭の市和商に最後までしぶとく追いあげた闘志はりっぱだった。市和商はエース野上が内角に速球と鋭いカーブを投げ込み、打線も好調で県大会をあぶなげなく乗切ったが、しばしば追加点のチャンスを走塁の失敗などで逃していた。紀和大会では慎重な攻めが望まれる。

<紀和決勝>
市和商はもてる力を出し尽くして田原本農を圧倒した。堂々と大会初優勝、春夏甲子園出場を果した。
市和商のエース野上は、県大会でみられなかった速い球をびしびし投げ、1回表、軽く田原本農の3人を凡退に押えた。
さてその裏の攻撃、制球に苦しむ田原本農、吉川投手からまずトップの寺井がストレートの四球を奪った。的場は一ゴロに倒れたが、寺井二進、井田の右飛、野上の四球で二死一、三塁の先制機を迎えた。しかし期待の白川は三振に終わって無為。
2回にも四球と土山の安打で好機をつかんだが、寺井のいい当りが二塁手の正面をついて併殺、3度目の正直とばかり3回表、的場が無死から死球で出塁した。が、井田の打球はまたまた二直で不運な併殺、この回無得点に思えたが、野上の右翼大飛球を右翼手東浦の落球に恵まれ野上俊足を利して二塁へ、続く白川も右中間を深々と破る三塁打、待望の先取点。さらに打者白川のとき、吉川投手が暴投して白川もホームイン。
4回にも岩崎が初球をたたいて左中間に三塁打、勢いついた山口も二塁打を放って3点目。田原本農はたまりかねてリリーフに遊撃中西を送った。
一方野上の調子は上々。カーブを織りまぜた速球に、さすがに猛打を誇る田原本農打線も手が出ず、わずかに2安打を散発しただけ。三塁を踏む者が1人もいなかったが最後まで奈良代表にふさわしい闘志をみせていた。

全国大会
本大会の記録
宮崎大宮の牧は立ち上がりが悪い。しかし、初回は3者凡退、しかも三振2つを奪う好調なスタートを切った。ところが、2回、牧は先頭打者の野上を四球で出した。これは野上二盗に失敗し、ことなきを得たかに見えた。だが、続く白川の遊撃ゴロを野手がはじき一塁に生かした。まさかこの失策で牧は動揺したということはなかろう。しかし、ストライクが決まらなくなった。牧は上川を歩かせたあと、岩崎に1ー2と有利に立たれ、左越えに二塁打され、先制点を許した。やはり立ち上りの悪さが災いしたといえる。
先取点をあげて市和商は元気づいた。3回無死一、二塁は逃したが、5回二死から的場の一塁前バント安打を足場に井田の右越線二塁打、野上の中前安打と好打を集中して2点を追加した。1点ならともかく、3点差をつけられては、相手が好投手の左腕野上だけに宮崎大宮も苦しい。4回児玉、園田の安打でつかんだ一死一、三塁、9回同じく一死から中島が右中間を深く大三塁打したが、後続打者がいずれも野上の内角をつく速球とカーブに手をやきとうとう1点もかえせなかった。大宮にとって惜しまれるのは4回の好機を逸したことだ。ここで同点にしておけば士気はあがり、市和商を苦しめたに違いない。

今治南のベンチは野上の直球を徹底的にねらわせたようだ。1回の先取点は、その速球に堂々と立ち向かっていたのだが、功を奏したといえる。
村上は第1球を打つ、外角寄りの直球だったが、巧みなミートで会心の右前安打を生んだ。機先を制した見事な初球攻撃である。長野の二ゴロで村上直は二進、3番の左打者広川は1ー3から待球せず、やや外角の直球を流し打って三遊間の安打として一、三塁。
野上に左人さし指のつめを割るハンデキャップはあっても得意とする速球を快打された市和商バックスの受けたショックは大きかったに違いない。橋本は投手ゴロ併殺の場面だったが、野上から送球をうけた土山は二塁で広川を封殺、しかし返す球を一塁へ低投、村上真がラッキーな本塁を踏んだ。市和商の動揺によって拾った1点である。その裏、今治南も、併殺をあせった二塁手の一塁悪送球で追いつかれたが、2回にはまた1点を勝越した。大谷が外角直球を右中間へ大三塁打、すかさず藤原が右へ犠飛を打ち上げた。そして3回にも安打と四球で二死一、二塁と野上を苦しめ、橋本の中前安打でまた1点を追加した。
好投手野上が3回までに5安打され、3点を失うとは・・・・・・・そこには、今治南が野上の勝負球をあえてねらった積極攻撃と、バットを極端に短く持った打法があったからである。形成不利な市和商も、そのままむざむざと引き下がるチームではなかった。その反撃は今治南の積極攻撃に劣らぬ立派なものだった。7回には二塁打、四球などで一死一、三塁とし、寺井が投前スクイズを決めた。
差1点と追いあげた市和商は、9回にとうとう追いついた。山口安打、一死後寺井の三ゴロで山口は二塁へ進む。このチャンスに的場が三前へ内野安打、大谷三塁手が一塁へ低投する間に本塁を踏んだ。この大谷の失策が、市和商10回逆転につながった。急死に一生を得た市和商は10回2死から上川が右中間三塁打、力投する曽我部は2ー2から岩崎にカーブで勝負をいどんだが不運にもコースが甘くそれを左中間に打ち返されてしまった。無念の一投というよりほかにいいようもなかろう。9回、大谷のプレーも大きな痛手となったが、それを責めるのは酷だろう。魔がさしたのかも知れない。

この大会を代表する左右のエース、市和商業の野上と、大分商の河原の投げ合いが見どころのの前評判をよそに、スタートから2人ずつの走者を出して波乱含み。4回に市和商がすばらしい攻撃を実らせた。
口火は当たっている上川の左越え二塁打、岩崎が形通りバントすると、拾った河原は三塁に送った。よいスタートを切っていた上川は巧みに三塁手の後ろへ回り込みタッチをかわした。岩崎も生きて無死一、三塁。これが河原の狂い出したはじまりだ。山口はすかさず初球の外角球を右へ流し、一塁手の左を抜いた。2回の初打席も一ゴロだったし、これまでの2試合に左へ打ったのは1本だけの山口にこの配球はうかつ。勝越しの1点で市和商は選手の動き、ベンチの作戦が勢いに乗った。
土山のバントも安打となり、捕手の悪投があって1点、寺井四球で満塁のあと、バントのうまい的場が内角低目の初球をきれいに投手右へころがすスクイズ。一塁送球の間に二塁から一気に土山もかけこむ味なプレーで、完全に河原の気持ちをぐらつかせた。井田のバント安打、野上の一、二塁安打、手のつけようがない市和商の迫力に河原は暴投、ストレートの四球と投球が荒れた。大会前からいわれていたバントでゆさぶられるともろい欠陥を現しただけで、そこへ左足を左翼側に踏み込んで投げるフォームが腰の切れをにぶらせ、球の力を失わせた。この4回、市和商は岩崎の中越え二塁打が続いて決定的な9点。5回にも3安打で4点を加えた。
大分商は河原が打ち込まれてもひるまなかった。
平凡な内野ゴロでも、外野へフライにも懸命に走った。キビキビと動き、甲子園の代表として誇りをもってプレーもした。
もし2回に同点にしたあと二死二、三塁か、3回無死一、二塁にもう1本安打が出ていたら勝負はどうなっていたか。ピンチを、左人差し指の爪を割る故障にくじけずカーブで切り抜けた野上のがんばりもたたえてよい。

<準決勝>
見ごたえのある投手戦だった。広陵の宇根も、市和商の野上の左手の爪を割っているが『ここまでくれば精神力』といった意気込みが、ピッチングににじみ出ていた。
力で勝る野上はこれまでになく慎重で一球、一球に全神経をそそぐように速球、カーブを投げ込んだ。一方の字根もコントロールは正確で、内角をつく速球とカーブの配球に頭脳を絞った。うまさで野上のしのぐ字根が、内角球に前日の対東奥戦以上の鋭さを見せていたのは、この試合にすべてをかけようとする一念のあらわれであろう。
大会随一といわれた大分商・河原に18安打した市和商の好打線もさすがに入念な字根の投球にはヒットもポツン、ポツン。当たっていた上川でさえ2回の二死一塁ではカーブを空振りし、4回までに市和商は5つの三振を奪われた。安打は2本。
これに対する広陵も4回まで3安打で、野上のスピードを多少ともあまし気味だった。このあたりまでは、まず互角の前半だったが、5回広陵は下位打者が野上に食い下がった。一死真木四球、生田のバットの折れた一撃が、三塁線をかすめて一、三塁になった。打者は9番の字根だし、冷静な警戒心を欠いていたのではないか。広陵ベンチはその気持ちを見透かすように字根の0ー1後にスクイズを敢行するとあざやかに決まった。先取点をあげたチームは強い。広陵は鋭いミート打法の本領を発揮して野上を攻めた。7回一死満塁で金本が速球に軽く合わせて遊越え安打した。
2ー0、苦しくなった市和商だが、懸命に反撃して試合は盛り上がる。7回裏一死井田が中越え二塁打した。このあたり市和商の長打力が大いに注目されたが、字根のうまさはピンチになればなる程深味を出した。打ち気にはやる野上を高目でつって遊飛、大型打者白川も内角球でつまらせ、一邪飛に退けた。8回も市和商は一死から岩崎が左中間に二塁打、山口も遊撃左へ内野安打したが字根は二死二、三塁で寺井を三振に切った。いよいよ9回。市和商は最後の力をふりしぼった。二死から野上、白川が長短打して1点、上川の二飛も堅くなった野手の落球にすくわれて一、三塁になった。
息づまる投手戦もクライマックス。岩崎は1ー1から三塁線を強襲したが、橘が身を呈して取り、一塁へショート・バウンドの送球を金本がうまくすくいあげて広陵は1点のリードを守った。
広陵は確実ミート打法と字根の冷静さで、強敵を倒したが、市和商も死力を尽くしての戦いに悔いはなかろう。



第50回<昭和43年>全国高等学校野球選手権大会

県予選
<準決勝1> ○県和商―南部
県和商は平野投手の力投もあって、南部を一方的に押しまくった。まず2回、一死から平野が投手の足元を抜いて出塁、続く坂本は中飛に倒れたが、野田のゴロを三塁手井戸が一塁ヘ高投して二、三塁。中村貴の右前安で1点を先取した、これで県和商はペースに乗り、4回連投で球威のない平尾投手を捕えた。江崎が中前に安打、続平野の儀打一塁の落球を誘って一、三塁、平野は二盗し、一死後、野田の四球で満塁と攻めつけた。このあと中村のスクイズ、神山の左前打、さらに中村淳のテキサス安打が続いて決定的な4点を奪った。8回には四球の坂本を置いて野田が左翼スタンドに本塁打して突放した。南部は連戦の疲れがあってか、平野投手の内角速球ニバットが合わず、8回、敵失で一挙二進した岡本道が一死後、井上の三ゴロで三進、谷口の左越え二塁打て生還して1点を返しただけにとどまつた。

<準決勝2> ○星林―向陽
星林・寺下、向陽・藪上両投手の力投で前半は1点を争う好試合となったが、後半、星林は長打力と足を生かして大量点をあげ、ねばる向陽を突放した。星林は2回表、死球で出塁した山本を清原儀打で送り、寺下の内野安打で一、三塁。寺下二盗後、筒井が左越えに二塁打して2者を迎え入れた。続いて5回表、中越え三塁打の松井を東出が左安打して返し、7回表には田中の右越え三塁打を含む連続4長打のあざやかな集中攻撃で向陽の闘志をくじいた。向陽は3回裏、二死後中浦が左越えの二塁打を放ち、増田の中前安打で1点差に迫った。しかし、その後は鋭い当りが野手の正面へ飛ぶ不運も手伝って得点に結びつかず、8回、長短打3本を放ちながら暴走で本塁寸前に刺されるなど試合運びのまずさがたたって1点を返すにとどまつた。

<決勝> ○星林―県和商
1時28分、プレイボ-ル。県和商111平野投手の第1球は内角へ見事に決った。県和商111平野、星林111寺下ともに立上がり1人ずつ走者を出したが、後続を凡退させまずまずのすべり出し。ギョロリと目をむき、1球ごとに気合を込めて投げる平野。にが虫をかみつぶしたような表情で黙々と投げる寺下。県和商は3回、神山が寺下投手の足元を抜いて出塁、投手の爆投で二進、後続を断たれたしたものの押し気味に試合を進めた。4回表、星林は四球と盗塁の吉田を二塁に置いて松井が打席に立った。平野投手とは中学時代にバッテリ-を組んだ中だ。互いに「打たせない」「必ず打つ」との闘志が激しくぶっつかる。松井は平野の内角にバットを合せて三遊間をきれいに抜いた。無死一、三塁、くちびるをかみしめる平野、バックスに声をかける余裕もなく、次打者東出への第1球は棒球、打球はまだ水を含んだ右中間の芝生へまず吉田が、続いて松井が汗を飛ばしながら本塁へかけこんだ。両軍ベンチはあわただしく選手を呼び作戦を耳打ちする。平野の投球間隔がようやく長くなった。一死後、田中が泳ぐように外角球にバットを合わせると一塁の頭を越える安打、東出もかえった自責点0.5点の平野が打ち込まれた。完全に星林ム-ドに変わった。寺下投手の内角をえぐる速球がますますさえる。県和商・藤城監督はメガホンを捨てた。5回裏、死球と安打で迎えた一死一、二塁の反撃機もけん制に走者が誘い出され、むざむざつぶした。星林・安井監督は足を組み、冷静に戦況を見守る。7回裏、くすぶっていた一塁側スタンドがわいた。平野と坂本の長短打が続いた。それも束の間、野田の地をはう一撃も一一の併殺打に終わった。本塁にかけこんだ平野がヘルメットをたたいてくやしがる。そして9回裏、尾崎は内角をつかれて三振。続く江崎は三塁線へ痛烈に安打を放った。が、頼みの平野は大きな左飛、寺下とは中学時代同級で、自信をもっていた坂本も投手ゴロに倒れた。

全国大会
本大会の記録
<1回戦> ○星林―日大一
星林はそつなく打ち、走り、守った。そこには和歌山県のチ-ムが伝統とする野球のたくましさとうまさがあった。2回の先制はこうだ。無死で東出が足を生かした遊撃内野安打で生きると、すかさず二盗し、日大一の小山をおびやかした。続く上野は四球、田中の巧妙なバントで一死二、三塁。ここで山本が小山の下手からの直球を力で左越え二塁打、一気に点奪ったわけである。そして4回は東出の左中間三塁打、上野の中犠飛、山本の2本目の左越え二塁打と遊撃失で2点を加えた。日大一もまた星林とはちがった味の洗練された巧さがあった。しかし都会チ-ムにありがちなたくましさとねばりが欠けていた。4点をリ-ドされた4回、無死で小林が四球で出ると三沢も好打の一、二間安打をとばし、千葉が三塁へバンド安打、三塁手のミスを誘って1点、さらに小山の中前打で1点を加えたが、この間に三沢のまずい走塁などがあって星林・寺下をくずす好機を逃がしてしまった。点差こそあまりなかったが、試合内容は星林が絶えず主導権を握っていた。星林の腰をすえて鋭く振切る打法、果敢な走塁は見事で、日大一もまたバンドのうまさを見せていた。

<2回戦> ×星林―興国
興国・丸山は右腕からの下手投げ、星林・寺下は左腕からの上手投げ114.。その投法はまるで逆だったが、2人は一球、一球、一球たんねんに投げ、うまさでみごとな投げ、うまさでみごとな投手を展開した。ことに丸山は立ち上がり、打気満々の星林を連続3者三振に切ってとると、外角一ぱいの直球と同じコ-スから大きくすべるように曲がるカ-ブ、そして内角に沈む曲球を巧み配合し、6回までわずか1安打、毎回三振奪取の11個という好投。寺下もまた2回に強打岡本に右翼頭上を痛烈に抜かれる三塁打を奪われて無死三塁のピンチをつくり、芦田に中飛を打たれたが、中堅手・吉田のすばらしい好返球に救われてからは気負う興国打線をかわした。しかし、押し気味に試合を進める興国は、7回二死一、二塁のはじめてのピンチを脱すると、その裏、死球の益川が岡本のバントと芦田の三塁前バント安打で一死一、三塁の絶好機をつくった。ここで興国ベンチは強気の策で樽本に打たせ、樽本はうまく二塁右へゴロ、二塁手清原はよく前進してさばいたが115殺はむずかしく、一塁へ送球する間に益川が本塁を踏み、8回は益川の適時打など4安打を集めて加点。そのまま押切った。星林は得意の足を生かそうにも、丸山のうまさに塁上にでることができず、8回2死から連打でつかんだチャンスも後続なく敗退した。これで丸山は3試合を完封した。



第51回<昭和44年>全国高等学校野球選手権大会

県予選
<準決勝1> ○箕島―御坊
機動力を誇る箕島が、持ち身を生かしてねばる御坊商工を振切った。箕島、3回攻撃。四球の走者を一塁において秋岡は確実な送りバント。それが内野安打となって一、二塁。次打者大沢のとき、すかさず重盗、大沢は気落ちした西川の球をとらえ三塁線を破る殊勲打を放ち、1人生還、4回裏には先頭の島本が真中高目の初球を右翼スタンドへ大会第4号の本塁打。御坊商工も5回、左前、中前の2安打と四球二死満塁の好機をつかんだが、あと一発がなく無得点。御坊商工はねらいが定まらず島本投手の球を打ちくずせなかったのが敗因。箕島は足と打力の勝利。向陽がどたん場で押出しのサヨナラ勝ち。向陽は9回表一死後、森本116史117が投手強襲安打、続く石谷康が右翼を深々と破る三塁打ちで同点に追いついた。ここで桐蔭は、林池田を敬遠、満塁策をとったが、湯川は堅くなった北村の球をよく選び、押出しの決勝点となった。1-3とリ-ドされた桐蔭は6回、先頭の北村は遊失で出塁。平野四球、松村は三塁前ゴロで北村三封されたが、高山が右前安打を放ち、一死満塁の絶好の反撃をつかんだ。中村116史117から死球をうけ、さらに明渡、宮本が気落ちした森本116史117の好球をいずれも中前にはじきかえして、逆転したが、その後は救援の石谷康に押さえられた。

<決勝> ○箕島―向陽
箕島が攻守で向陽を圧倒し、決勝した。向陽は腰を痛めていた主戦藪上を起用、必勝を期した。しかし球威がなく、わずか1回一死をとってしりぞいた。救援の森本116史117も連投で疲れ、箕島打線にねらい打ちされた。向陽は投手陣の不調がこたえた。箕島は3回見事な攻撃を展開。試合を自分のペ-スにまき込んだ。この回、一死後川端賢が左中間を破る二塁打。島田も左前安打し一、三塁の好機。島本はいきおいこんで三振したが、在本は右中間を破る殊勲の二塁打を放ち、川端が生還、続く森下も気落ちした森本116史117の球を左前にはじきかえし、島田を迎え入れた。7回にはダメ押しの1点を加え終始向陽を圧倒。無理に本塁をねらわず、好球必打の戦法が得点に結びついた。守っても二塁手大沢、遊撃手秋岡らが好プレ-を見せて、島本をもりたてた。一方向陽は、箕島・島本投手の頭脳的な投球に手が出ず、6回まで散発の2安打、ようやく7回疲かれのみえた島本の球をとらえ、林、池田が右と左に安打、藪上の送りバントで一死二、三塁と反撃の好機をつかんだ。しかし、続く湯川がスクイズバントに失敗して林が三本間で刺されてチャンスをつぶした。箕島はチ-ムの打率0.257、機動力がお家芸だが、攻めに今一つの慎重さがほしい。

<紀和決勝> ×箕島―御所工
1点リードされた箕島は5回に見事な反撃をみせた。先頭の森下が右前へ決打、初安打、続く川島が遊撃前へころがした。森下は二塁をけって三塁へ。球は一塁から三塁へ送られたがセ-フ。尾藤監督も立ち上がって次打者村田に指示。スクイズか、強打か、村田は山本116和117の球をうまくとらえて左前へ。森下がおどりあがって生還した。島本投手は1回、御坊工を二死まで追込んだが柏木に死球を与えた。続く山本116祥117に二塁打たれ、1点を先取された。しかし島本はその後鋭いカ-ブと連球を決め守備陣も好プレ-で援護した。4回表、御所工は一死一、三塁、両手をあげた主将の川島捕手に応えて箕島ナインは引締まった。スクイズを見破ったバッテリ-は球をはずし、飛出した三塁走者を刺した。しかし島本はなれないグラウンドのせいか、疲れのためか、後半になってもう一つ球にさえがみられない。6回に連続して三塁打を打たれた。118気にするな119という尾藤監督の声に7回まで投げたが、8回から在本にバトンタッチ。3点差の9回、反撃が期待されたが、先頭の島田は二ゴロ。続く島本の当りは一塁ライナ-。最後の在本も投前ゴロ。残念。甲子園にかけた箕島の夢は破れたが、最後まで健闘はたナインに、スタンドからひときわ盛んな拍手が送られた。



第52回<昭和45年>全国高等学校野球選手権大会

県予選
<準決勝1> ○市和商―新宮商
市和商は、打ちに打ちまくり、何とか食下がろうとする新宮商を一歩も寄せつけなかった。市和商は、初回、新宮商神田投手の立上がりを攻め打者一巡、大量6点の先制点をあげ、試合の行方を決めた。この回伊原木が短打で出たあと、続く高出、田中、陽山が連続3本の三塁打を放ってまず3点。さらに井口、山本の長短打、本山の犠打などで得点を重ねた。3回には4本の短打でダメ押しの2点を追加した。その後は神田とかわった山田に押えられ、5安打と打棒が振わなかったものの、そのまま押切った。新宮商は、市和商の投手岩井と、8回からかわって登板した戸上に押えられ手が出なかった。放った安打はわずか3本。24日準々決勝の対向陽で延長13回まで投げ抜いた神田は疲れたせいか、この日、得意の外角低目が決らず、苦しむところを市和商にねらい打ちされたのが敗因といえよう。

<準決勝2> ○箕島―和工
両チ-ム共投手の好投で中盤戦まで淡々と運び、7回まで双方ほとんど三者凡退、結局、8回に1点先行された箕島が、この回逆転の2点をあげて和工を振切った。ねばりの箕島を存分にみせた試合だった。箕島は1、2回に安打を出し、幸先のよいスタ-トを切ったが得点に結びつけることができず、しかも3回から6回まで三者凡退。先得点をとられた8回裏、東田が左翼線ギリギリの二塁で出塁、つづく中村の三塁打で生還、同点とし、二死後、田中の左前安打で中村もかえって決勝の2点をあげた。和工は2回から7回まで3者凡退に押えられたが、8回、3安打を奪って山下が生還、貴重な先得点をあげた。だが、あともう一発がでなかった。

<決勝> ○箕島―市和商
箕島は1、2回、長短打を放ったが、得点にならず、市和商の岩井投手を攻めあぐんだように見受けられた。しかし、3回、2点を先取して主導権をにぎった。この回箕島は二死のあと川端が死球で出塁、この機会をうまく生かした。続く在本が中前にはじきかえして走者一、二塁とし、当っている島本を迎えた。岩井投手が勝負にいどんでの2球目が、快音とともに大きく右越えの三塁打、これで一拳に2点。岩井投手の失投というより島本の打撃力をほめるべきだろう。勢いづいた箕島は5回、田中の三ゴロが左前安打で出塁の中を殺す結果となったものの、田中は川端の中前安打で三進、島本は四球で満塁、このとき、続く森下の左前安打で田中、川端が相次いで生還。試合の行方をかためた。さらに8回、岩井投手にかわった山本投手を果敢に攻めて、ダメ押しの3点を追加した。チャンスを生かしたうまい試合運びだった。一試合ごとに打棒をふるってきた市和商は1回、田中が左中間に三塁打を飛ばしたものの、結局、島本投手に三振を奪われ、散発4安打に押えられた。総合力からみると当然ともいえようが、あくまで堂々と強豪箕島にぶっつかっていった市和商の気力も評価されなければなるまい。

<紀和決勝> ○箕島―郡山
1点リ-ドされた箕島は6回から猛反撃に出た。この回、1番打者田中、ハッシとたたいた第1球は左前へきれいな安打となった。2番打者川端は送りバントしたが、一塁線への飛球で倒れた。一死となったものの田中は二盗、さらに3番打者在本の時に三盗、チ-ム一の俊足を生かしての快走にスタンドはわいた。田中は在本が放った中前安打で生還、同点、郡山ベンチはさすがに焦りの色がみえ、投手を津山から笠松にかえた。チャンス。一段攻勢を強める箕島、打順はちょうど当りに当たっている4番打者島本。郡山にやや右寄りにシフト。深い守備を敷いたが中前へうまく打って一死走者一、二塁、森下が右飛に倒れたが続く東田の中前安打で在本がかえって逆に1点リ-ドした。箕島の猛攻は8回にも、この快も打順よく、先頭打者川端、ねばりにねばって四球。続く在本は投手ゴロだったが、それをとろうとした笠松投手があせったのかボ-ルをはじいて無死一、二塁、さらに相手にエラ-で二、三塁へ進んだ。島本が拍手を浴びてバッタ-ボックスへ。リ-ドを大きくとった在本が笠松の好けん制球で刺されたものの、敬遠されて出塁した島本はすかさず二盗。一死二、三塁、この好機に森下が3球目を左越えにはじきかえし二塁打、2者生還、勝負に決ったかのようにみえた。箕島は最終回、郡山の必死の食下がりを受けた。一死後エラ-で出た坂本が、二盗な成功した。あるいは一打同点も・・・・・・。1番打者植田、5球目、快音を残して三塁右へライナ-性のゴロ、三塁手森下が横っとび球を押えて二塁走者をけん制して一塁へ。2死だ。続く福西に死球を与えたが、藪内を二ゴロに打取った。8回から急にくずれて四死球が目立ちはじめ、好守備に救われたエ-ス島本は試合終了後118みんなに助けてもらった119とひとこと。

全国大会
<1回戦> ○箕島―北見柏場
春、夏連続優勝をめざす箕島が島本の投打にわたる活躍で初戦をものにした。島本は2回に低目を力強く右へ打ち返して先制点の足場をつくった。このあと東田の安打、死球で一死満塁、中谷は二ゴロで三塁走者を本封、二死満塁となったが、2-1と追込まれた中の4球目がヘルメットをかすめる死球となって押出しの先取点をあげた。島本は3回にも、一死一塁で外角よくの高目を左中間へ深々と三塁打し、森下とのスクイズでホ-ムを踏んだ。早くも3-0.。試合の主導権を握った箕島はそれまでのボール打ちも少くなり、のびのびと攻め、そして守った。5回島本の四球のあと2安打、盗塁、失策などで3点を加えて大勢を決め、6回には島本が右中間へ2本目の三塁打を放つなどで点差を大きくした。投げる島本は内角に速球を決めて散発の4安打、ピンチらしいものは5回、安打、四球の一死一、二塁だけで、それも次打者をゆるい二直の併殺に打ちとり、三塁を踏ませず完封した。北見柏陽は敗れたが強敵を向うにまわし少しもひるむところなくよく戦った。大山投手はシュ-トを多投し、コ-ナ-を入念について球威不足をおぎなって箕島打線と対したが、2回そのシュ-トが、不運にも2つの死球を招いてしまった。また攻撃では、バットを短かく持ち、島本の速球に食いついたが、力不足からいいコ-スに球はとびながら、鋭さがいまひとつなかった。

<2回戦> ×箕島―岐阜短大付
5回箕島が1点を返して1-2。その裏の攻防がこの試合のヤマ場だった。岐阜短大付は先頭大野が左翼金網にワンバウンドでぶっつける二塁打を放った。北浦の三塁前バントは投手島本と三塁手森下が譲り合って安打。大野は三塁をオ-バ-ランして、島本のうまい擬投に三本間できょう殺され、そのすきに二塁へ走った北浦は捕手小南の送球に刺されたかにみえた。が、タッチをあせった遊撃手の田中がポロリと落球、あやうく命拾いした。この走者を残したことが箕島の致命傷となった。岐阜短大付は遠藤三振のあと、桐山が、けん制球に入った二塁手の逆をつく安打して一、三塁。小椋は初球の内角球を左中間の金網に直接ぶっつける大二塁打を飛ばして2者を迎え入れた。あとはセキを切ったような速攻、小椋が暴投で三進すると、高橋は中間二塁打。篠田は島本の左をゴロで抜き、大塚のライナ-が快音を残して右前へ飛んだ。雨にうたれ、マウンドで放心したように立っている春のヒ-ロ-が無残だった。島本は立ち上がりから制球に苦しんだ。1回無死からいきなり2つの四球を与え、岐阜短大付のたくみなバント攻めにあって2点を失った。5回中村の三塁打と小南の左犠飛116落球117で1点を返し、味方がこれから反撃というときにこのくずれである。春、夏優勝に118投げる方119の島本が不安といわれたが、それが現実となった。岐阜短大付は、左投手島本の内角球を強引にひっぱる打法で堂々と打ちくずした。島本を中心とする強打箕島を1点に押えた湯口のピッチングもまたみごとだった。よく球を選び、くいさがってくる箕島打者に根気負けせず投げとおした気力。特に島本には内外角低目へ速球、カ-ブを決めて乗じるスキを与えなかった。島本のバットを封じられると、箕島の得点力は半滅する。湯口の力投が岐阜短大付の第一の勝因といっていいだろう。けんわう



第53回<昭和46年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
壮絶な打撃戦、結局、市和商の後半の反撃がものをいった。
市和商は1回3点を先取されたが、すぐその裏、本山の安打から始まる5安打、四球2つの猛攻で6点を奪った。新宮・前野投手は1、2回戦とくらべてやや球威がなくこのまま市和商の優勢のうちに進むかに見えた。
しかし、3回、岩井投手が打込むまれ8ー6と新宮に逆転されたところから試合は全く予断を許さなくなった。市和商は6回、川上の二塁打で得た二死一、二塁に岩井が右中間二塁打を放ち2点をあげて同点とした。
さらに7回、前野に代った峯本投手から安打2本と四球1で無死満塁、本山の遊撃右を抜く安打などで3点をあげ、これが勝利に結びついた。
新宮は前半猛攻をふるった。とくに庄司は1回、岩井の初球をたたいて大会4号、庄司としては大会3本目の3点本塁打を放ち、3回にも無死二、三塁から安打で打点2とめざましい活躍をした。この前半互角の打撃戦も、7回前野ー峯本ー前野という投手リレーが裏目に出て逆転され、後半、見事は復調ぶりをみせた岩井に封じられ敗れた。

桐蔭の粘り強さがものをいって終盤一挙に向陽を引離した。1回から4回まで制球のよい桐蔭・和田と、試合を重ねるごとに復調してきた向陽・中原の投げあいで淡々とした投手戦が続いた。
桐蔭は5回、中前安打の貴志が二盗したあと、中堅左を抜く三塁打で先制の1点。好投していた中原はこれでやや気落ちしたのか次打者和田へのスクイズを警戒したウエスト球が暴投となって中村がかえった。このあと和田、片山の連続二塁打が出て計3点をあげ試合の主導権をにぎった。
和田の内外角にうまくちらす球に押さえられていた向陽打線は5回ごろから当たりが出はじめ6回、死球の雑賀をおいて右翼へ流し打ちして1点をかえしてから犠打で二進したあと、中原が反撃を開始した。8回無死一、三塁から宮下のスクイズが成功、1点さに追いつき、なお成田の中前安打で一死満塁という絶好のヤマ場を迎えた。ここで中津が中前安打を放ち同点に追いついた。しかし、そのあと追加点がでなかった。

<決勝>
市和商が終始試合を押し気味に試合を進めた。市和商は準決勝までの4試合を1人で投げ抜いた岩井を立てた。桐蔭は和田、中村の2本柱のうち今大会好調の左腕和田をあえて準決勝の対向陽戦に続いて連投させ、背水の陣をひいた。市和商は3、3、4回と二塁まで走者を送りながら得点に結びつけられなかった。しかし、やや高目に浮き気味の桐蔭・和田の球に打線は自信を持ち、5、6回と攻撃を開始した。5回市和商は二死一、二塁から川上が右中間に三塁打を放ち、まず先制の2点をあげた。6回にも戸上、冨田、東出の3連続安打が出るなどさらに2点を追加した。
これに対し桐蔭は29日の対新宮戦で8点を奪われて不調から立直った市和商・岩井に5回まで散発2安打に押さえられた。6回に反撃、安田の片山を二塁において、成瀬の右越え三塁打で1点をかえした。8回にも2安打、四球で二死満塁と迫ったがものにならず9回一死一、二塁の好機にも後続打者がでなかった。桐蔭は1年生ながら好打の山下、強肩の捕手・貴志ら俊敏な選手を揃えていたが、チャンスに一気にたたみかける市和商のチーム力が一枚上だった。

<紀和決勝>
明暗は1回すでに現れた。
1回表、市和商先頭打者本山は校歌に送られて勇んで打席に着いた。郡山のエース川畑はゆっくりしたモーションから鋭いカーブ、シュートを繰出す。たちまち本山は追い込まれた。『やる』『手ごわいぞ』市和商ナインにさっと緊張の色。本山は二フライ、谷三ゴロ、川上三振。これに対し市和商の岩井は1回裏、1安打四球1を奪われて、やや不調の立上り。
市和商は3回、戦闘打者宮田がドラッグバントを試みあざやかに成功、初の走者を出した。宮田は川畑の大きいモーションをついて二盗を試みたが、捕手からの送球にアウト。惜しいチャンスをつぶした。この裏岩井は、一死満塁の危機を迎えた。郡山・薮内の強い打球を右翼手宮田は好捕したものの転倒う、その間に郡山三塁走者がかえって1点を奪われた。
岩井は4回一死一、二塁のピンチも切抜け、市和商は1点をリードされたまま期待を後半につないだ。
5、6、7回と市和商はベンチから『ガンバレヨ』の声援をうけて次々と川畑攻略に向った。気負って振るもののファウルフライを打ち上げたり、当りそこねのゴロになったりするばかりだった。7回橋本との打球はあわや本塁打と思われる大飛球だった。郡山左翼手金野が背走、好捕したとき満場からため息がもれた。
8回表、一死から東出が遊撃頭上をライナーで抜く安打を放ったが続く南出の投ゴロで無情な併殺、9回表は、1番から始める好打順で市和商ベンチは最後の望みをかけたが、本山は中堅フライ、谷の代打白川はライトフライ、川上の力いっぱいのスイングも当りそこねの遊撃小飛球となってゲームセット。



第54回<昭和47年>全国高等学校野球選手権大会
<準決勝>
積極的に攻めた桐蔭が終始試合の主導権を奪い、圧勝した。
初回、桐蔭は簡単に二死となり、この回の攻撃が終わったかに見えたが、成瀬が四球を選んだのを突破口に、大攻勢に移った。楠井が中前安打、すぐ重盗して二死二、三塁、小松が三塁強襲安打を放って成瀬をかえし、続く貴志も左前安打して楠井も生還した。5回にも四球と2安打で1点を加え海南を突破した。
海南はこれまでの試合にいつも先取点をとり楽勝していただけに、初回の2点がが重圧となって選手が堅くなり、桐蔭打者の内野ゴロを4本も安打にしてしまい苦戦。7回無死で吉井が中前二塁打して反撃機をつくり、和田の右前安打で1点を返したが、後続が凡退して追加点をとれなかった。先制攻撃で球運をわがものにした桐蔭、6安打を放ちながらずるずると負けてしまった海南、気力の差が勝負を決めた。

市和商の打者は向陽・梶谷投手の手元で伸びる速球を打ちあぐみ、わずかに4安打を放っただけ、反対に好機とみればかさにかかって攻めた向陽が逆転、完勝した。1ー0とリードされた4回、向陽はトップの平畑が四球、すかさず二盗して無死二塁とし、次打者が手堅く三塁に送って攻めの態勢を固めた。田村は二塁ゴロに倒れたが、前日満塁本塁打を放った東野が右越え二塁打で平畑をかえし、続く浜治の安打で長馳生還して一挙2点をとり、逆転した。
6回にも平畑が再度四球を選び、すかさず二盗と同じような戦法で攻め、敵失と田村の左中間二塁打で生還、点差を2とした。市和商も4回、西田、丸山が連打して先制の1点を入れたが、その裏にあっさり逆転されるもろさを見せた。市和商は8回にも2連打で一死一、三塁と好機をつかんだが後続なく、試合を通じて二塁に出た走者わずか3人という完敗ぶりだった。

<決勝>
桐蔭はよく打った。着実な攻めで先制点を奪った向陽の重圧をすぐさまはね返し、間を置かず点を加えて勝負を決した力は打力の他に気力と長くつちかわれた伝統の力に他ならない。
まず向陽が先制攻撃をかけた、立ち上がり桐蔭・中村投手が2つの四球を連続して出すや、平畑が犠打で一死二、、三塁と大量得点機をつくり、開発の右犠飛で1点。続く田村が右前安打して2点目をあげて優位にたった。ところが2回、桐蔭は小松が左前安打してたちまち反撃の糸口をつくった。貴志は二飛に倒れたが、東が四球で一死一、二塁、中村の一ゴロで二死二、三塁とじりじり攻めあげ、続く平松が内角高目のたまを右越えに安打し、2者をかえして同点とした反撃ぶりは、桐蔭の底力を見せつけた。その後は長短打を次々と放って3回1点、4回2点と加点、向陽を押し切った。
向陽も5回、二死二塁のとき、二塁走者皆本が開発の中越え安打で一挙に本塁をついたが、二塁でのリードが悪く、本塁で憤死、反撃機をつぶしたのが痛かった。
向陽・梶谷投手は1年生ながら26日の試合で市和商を4安打に押さえる好投を示したが、この試合、わずかに疲れが見え、投球が高目に浮いて桐蔭打者にねらい打ちされた。9安打を奪われて7回まで投げたが、スライディングで左ひざにけがをしながらの力投、打っては2安打を放って向陽チームをよくひっぱった。

<紀和決勝>
天理の猛打を浴びながら、球運は桐蔭にほほえんでいた。外野を縦横にころがる天理の安打もなかなか点に結びつかない。1、2回痛打を浴びながら無得点で押さえた桐蔭は、2回裏に先制機をとらえた。トップの小松はファウルで粘った。打席を出て手に砂をつける落ちついた態度は『打つぞ』との気迫、6球目、軽く合わせたバットに快音がひびいた。中前へ初安打だった。貴志は手堅く犠打、これが野戦となった。2回続いたピンチのあとだけに『それ先取点』と応援団が声をからす。ベンチの田中監督もからだを前に乗り出した。あわてた金森投手が暴投、四つんばいになってタマを追う吉村捕手、目に砂が入って片目ではいずった。東は三ゴロに倒れたが、中村のスクイズは投手の左側にコロコロ、本塁へとび込む小松、からだにあたるように返球、主審の手は横に開きセーフ。先取点は桐蔭がとった。『勝てる』そんな気分が応援席に流れた。
しかし、好機は猫の目のように変る。3回表、赤青のボンボンがうちふられる三塁側応援席に水をかけるように、天理・藤岡が中前、続く新谷が右中間に三塁打、さらに佐藤中前安打、この回、2走者が本塁を踏みしめ一瞬にして逆転した。
『桐蔭、桐蔭、天理を倒せ』歓声とブラスバンドの音はスタンドを圧した。桐蔭は5回表にも2点を追加した。しかし、天理の猛攻は続く。2連打、3連打『なぜ、あんなに野手のいないところに飛ぶんだ』ため息とうらみの声が桐蔭応援団からもれた。打たれても打たれても粘る桐蔭、つねに相手走者を2、3人ずつ塁において攻撃をかわし続けた。
5ー3、逆転の好機は8回裏にきた。相手金森投手のカーブはよく決る。このたまをこの大会打率4割のラッキーボーイ小松は中前に安打した。反撃の口火は切られた。犠打、安打、四球と続き、一死満塁、一打同点、スタンドは『天理を倒せ』の声でゆれた。田中監督は帽子に手をやり、補欠選手が2、3人ベンチの外に出てサインを示す。打率5割の平松、2球目を打った一打は右翼線をわずかにはずれ、外野フェンスに、次の一打は遊飛、次の山下の一打がまたも同じ所へゴロ。二封された中村が、砂をつかみ空をあおいでくやしがる。
この時、球運は去った。9回表つるべ打ちの天理打線は4安打、重盗、失策で一挙3点を加えた。耐えに耐えた桐蔭のせきが切れた。最後の攻撃で、1点を返し、一死満塁と攻めたが、すでに球運なき攻勢、勝利は天理の手をはなれることもなかった。



第55回<昭和48年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
箕島・津村投手が上体をそらせ、左腕から投げ込む球が実によく決まった。打線もバットがよく振り切れ、長短9安打して快勝した。
箕島は1回、二死一塁から島本の矢のような打球が、三塁手のグラブをはじく内野安打。続く打者は今大会第1号本塁打を放った当り屋宮井。期待にたがわず右中間へ二塁打して川口を迎えあっさり1点を先取した。
5回に先頭打者児島が、右中間を破る二塁打、尾崎が手堅くバントで送ったあと、笹尾が左前打して児島生還。二死後島本が左前打して一、二塁、ここで宮井が再び右翼線二塁打して笹尾をかえした。大野木の一打は内野ゴロとなったが、浮き足だった内野手がグラブからこぼして、さらに2者生還。この回、だめ押しの4点を挙げた。
新宮は2回無死で植松が左越え二塁打して好機をつかんだが、好調の津村に江崎三振、続く2者も内野ゴロに打ちとられた。3回以後は1安打1四球に抑えられ、遠来の新宮応援席は対大成戦で9回に見せたあざやかな逆転劇の再現を祈って必死に声援したがむなしかった。

伊都の主戦宮部は疲れていた。カーブが思うように曲がらない。コーナーをねらって投げてもど真ん中に。前日、準々決勝で市和商打線をわずか4安打に抑える力投をみせたのに。
和工打線は、これを見逃さなかった。1回一死後、鎌田四球、奥が二遊間安打、中島死球でたちまち満塁、谷口の一打は走者一掃の左中間三塁打、続く高橋も右前打して谷口生還、立ちあがりに一挙4点を奪い、宮部を降板させた。
2回にも宮部に代わった福田をとらえ、右中間に適時打して1点追加。3回には二塁打の中島をバントと犠飛でかえし、6点目。前半の速攻が勝負を決めた。
伊都は和工・井上投手のたんねんにコーナーをつく速球を打ちあぐんだ。3回無死から名倉と宮部が連打したが、坂本バントは三塁封殺、東山遊ゴロで併殺され、好機は一瞬につぶれた。5回にも適失の堂裏を送ろうとして2度もバントを失敗するなど、敗れるときはこんなものか、と思われるほど勝運から見はなされた。

<決勝>
1ー1の同点で迎えた6回、箕島4番打者島本が左翼席へ勝ち越しの大会第3号本塁打を打ち込んだ。島本自身は今大会2本目この一発が勝敗を決した。
6回一死後、島本に打順が回ると、身動きもできないほどぎっしりつまった一塁側観覧席がどっとわいた。『何かやりそうだ』期待が一身に集まる。島本はスパイクで打席の土を掘ってマウンドの井上をにらむように身構える。ボールカウント1ー3後、外角にカーブが走った。『カキーン』島本のバットが快音を発した。打球は空に吸い込まれるように伸びて左翼芝生席へ。『やったー』応援席は総立ち、早くも優勝を決めたかのように紙テープが乱れ飛んだ。島本はゆうゆうとベースを1周。仲間もベンチから飛び出し握手で迎えた。
マウンドの井上は空を仰いだ。投げた球は、決した悪くはなかった。むしろ島本の打撃をほめるべきだろう。
箕島は1点リードされた5回、投手津村は自ら右前打を放って出塁、笹尾のバントが2度もファウルとなった後、見事にスリーバントを決めて津村を二進させた。続く尾崎がベンチの期待にこたえて一塁右へ痛打、津村が生還して同点とした。この津村の活躍が箕島ナインを盛り上げ、逆転優勝への導火線となった。
これに対し和工は初回に先制点を奪い、前半は試合を押し気味に進めた。和工は1回、岡田四球。鎌田の送りバント失の後、奥が中前打。中島も左前にきれいにはじき返して一死満塁と攻めた。箕島・津村投手は前日の準決勝で新宮打線をわずか2安打に押さえた時とは別人のように立ち上がりが悪かった。が、動揺をこらえて懸命に投げる、谷口は投手ゴロで鎌田本封されたが、次打者高橋が四球を選んで押し出し。三塁走者奥が両手をあげて生還、三塁側応援席をわかせた。『初優勝なるか』和工はこの波にのって勝利をものにするかにみえた。しかし、2回以降は津村がよく立ち直り、散発の2安打に押えた。安打性の当たりも、箕島内、外野の守備に阻まれてしまった。
優勝した一塁側ベンチを背に、和工チームは黙々とベンチ内を片付け引き揚げて行った。ユニホームを着れない下級生部員が通路にあふれ、バットをヘルメットを受取る。『今度はお前らの番だ。がんばれよ』泥にまみれ、汗をしたたらせた選手たちの声、それにこたえる元気な返事、先輩から後輩へと55回にわたって引き継がれて来た高校野球の息吹が今年もまた新しい部員の体に移っていた。

全国大会
本大会の記録
丸子実は、スイングの鋭さに、すばやい走塁を加味して箕島を圧倒した。
まず1回。二死一塁で、2ー1に追いこまれた堀場は、4球目の外角球を痛打、打球は逆風を疾いて右翼手の頭上を越す三塁打。1点を先取した。そしてこの堀場が5回、箕島バッテリーのどぎもを抜く痛烈な一打を放った。一死後、戸谷二塁内野安打、佐藤の三ゴロはスタートの鋭い戸谷の足を気にしてか二塁へ悪投。このあと、堀場はこんどは左翼ラッキーゾーンの金網に直接当たる安打を放って満塁。ここで丸子実は、箕島の動揺を巧みに利用した。
一変して、強攻策からスクイズへ。小林宏の投前へのスクイズ・バントを、津村は間に合わない本塁打へ投げて野戦にしたうえ悪投が重なって2者生還、3ー1と再びリード。続く深井が積極的に打って左中間へ適時打。一挙4点を奪った。
箕島は強打の片りんを見せたが、丸子実のバッテリーにうまくかわされたといえる。1回右越え三塁打した大野木が、3回二死二塁の好機に2ー1から、外角へのつり球にひっかかって空振りの三振に終った。打ち気を逆手にとられたかっこう。しかし、4回二死一、二塁からヒットエンドランが成功、津村の一塁内野安打で二塁走者の西村が好走、よく本塁をおとし入れて一度はタイにこぎつけた。だが、一見平凡にみえる小林宏・堀場の合った呼吸からは、遂に大量点が奪えなかった。これも鋭くミートする丸子実と強打する箕島との打法の差といえよう。



第56回<昭和49年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
前半、積極的に打って出た向陽が着実に加点、梶谷、大畠の継投で粘る日高に決勝した。
向陽の先制攻撃は見事だった。1回一死二塁から、倉八が右中間を深々と破る三塁打、続く中島も中前に適時打して、またたく間に2点、3回には二塁打、送りバント、スクイズで1点、さらに倉八の右翼線本塁打でこの回2点を追加した。また、4回にも日高守備陣の乱れに乗じてだめ押しともいえる2点など、長打、機動力を発揮して得点を重ねた。
1回表、2点を先行された日高はその裏、すぐ反撃、二死後前の四球高橋の中越え二塁打で1点をかえした。6回にも一死から前が中前打したが、二盗に失敗。そのあと連続二塁打が出ただけに、この二盗失敗が惜しまれた。

和歌山工が地力を発揮、長短12安打を放って県和商に逆転勝ちした。和歌山工は1回に2点の先行を許したが、その裏二死二塁から畔取が中前適時打して1点を返し、2回には四球、敵失などで同点、3回には山中の中前安打を足場に、逆転に成功、5回、8回にも加点した。
県和商は1回、死球で出た荒駒が送りバント、遊ゴロで三進、納谷の左前安打で還って1点、さらに井村の中前安打で納谷も生還して計2点を先行した。しかし、その後は立ち直った鎌田に散発6安打に押さえられ、追撃を阻まれた。

<決勝>
『3点を争う試合になりそうだ。』両チームの監督は試合前、口裏を合わせたように話していた。ともに打線の好調を信頼してのことだ。その3点の壁を破ったのは向陽だった。
1点の先行を許した向陽は5回無死から四球に出た大畠が梶谷のバントで二進したあと、滝本行が遊撃手左へ絶妙のバント安打、正岡四球で満塁としたあと、茨木が右前に安打して大畠がかえり同点。続く、奥田のスクイズで滝本行を迎え入れ、逆転に成功した。さらに、二死二、三塁と攻めたて滝本和の二ゴロが敵失となる間、2者生還し、この回4点をあげた。この裏、1点差に詰めよられたが、6回二死後、制球を乱した鎌田から2四球などで満塁とし、茨木が右翼線へ走者一掃の二塁打を放って完全に勝ちムードに乗った。和歌山工は3回、三遊間安打の松下を川口のバントで二塁へ進め、山中が中前に適時打して先行した。逆転された5回にも中前打の松下、四球の川口、死球の鎌田を置いて浜野が右翼線へ二塁打して2点かえし、8回にも高橋適時打で1点を返した。しかし、向陽の梶谷・大畠の続投策にかわされ、昨年に続き甲子園を目前に決勝で敗れ去った。

<紀和決勝>
不運がつきまとった試合だった。強気の大畠主将は試合前のジャンケンで勝ち、迷わず先攻をとった。1回一死後滝本和が郡山主戦の木下から四球を選んで出塁、倉八が中飛に倒れたのち、打者は四番中島、打席に入った中島は木下をぐっとにらみつける。バットは快音を発した。球は右前へ。が、不運。当たりは野手の正面をつき、好返球で中島一塁アウト。41年の第48回大会で郡山と対戦したときも、初回二死満塁の好機にライトゴロで刺されている。どうも紀三井寺球場とは勝手が違う。出ばなをくじく当たりだったのに。
好守備を誇る向陽内野陣。しかし、意外なところに落とし穴があった。郡山1回二死二塁のとき、羽山が二塁ゴロ。しかし、打球は和歌山大会無失策の奥田のグラブをはじいて、右前へコロコロ。無念。1点を先行された。試合前、選手たちは『グラウンドの土が硬くて、バウンドが変だ』といっていた。これに対して、堀内監督は『グラウンドのせいにしてはいけない』と、戒めてはいたが、それにしても。
球運に恵まれないときは、こんなものだろうか。1回、さらに郡山の重盗、捕手中島からの三塁送球のタイミングは完全にアウトだった。しかし砂煙が収まって、塁審の判定はセーフ。名手正岡が走者にスパイクされて落球したのだ。右手人さし指の第1関節の先がパックリ裂けてしまった。血が噴き出た。ベンチに戻り、手当を受ける。野手にとって、ハンディとなる指のけが。出場は無理か。しかし、正岡は人さし指のつけ根を強く縛ってグラウンドに馳け戻った。真白な包帯が痛々しい。それでも、三塁を襲う痛烈な当たりを次々とさばき、無失策で守り切った。
8回まで散発2安打、無得点。土壇場の9回に、向陽はすべてをかけた。先頭の倉八が一塁線に痛打。しかし、好捕され一死。続く中島の大飛球も中堅手のグラブにすっぽり、絶体絶命。が、主将大畠はあきらめなかった。カキーン。初球をねらった大畠の打球は、遊撃左を破った。さあ一、チャンスだ。三塁側応援団は総立ち、肩を組み、声を限りの応援。打席にはいった梶谷は1ー2からバットを強振、左翼頭上を越す二塁打、大畠が一塁から躍りあがってかえり、4点に縮めた。しかし、永山のライナー性の当たりは、木下投手の正面をつき万事休した。



第57回<昭和50年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
箕島は高野山の先発、北部投手を強気に攻め、中盤で着実に加点し、辻本の好投で快勝した。
箕島は4回ニ死後、南村が遊撃左を強襲する二塁打、すかさず中野が中前へ痛打して1点を先制。5回は北野・小林が連打、川口が送って一死ニ、三塁。谷畑がスクイズを決めて1点。さらに6回も南村、中野が連続長打を放って1点を加えた。
高野山は1回、制球に苦しむ辻本投手から道上・田中が四球を選んで無死一、二塁。だが、良田の一球目、ヒット・エンド・ランが失敗、道上は三塁に憤死し、絶好の先制機を逃した。救援の上芝投手はよく投げ、懸命にばん回を図ったが、立ち直った辻本投手が打てず、2安打に完封された。

見ごたえのある投手戦を展開した。県和商、鳥居投手は力のある速球で伊都打線を抑え、伊都・福田投手は切のよい直球、カーブで県和商につけ入るすきを与えない6回までは互角の内容で進んだ。
伊都は7回、一死から西村が中前へ初安打、これを野手が後逸する間に一挙三進、続く福田の右犠飛で均衡を破った。8回には木村、高橋の長短打でチャンスをつかみ前浩の右中間二塁打でダメ押した。相手のミスからの幸運な先取点であったが、その好機を逃さず得点に結びつけたしぶとさが勝利を生んだ。その点、県和商には粘りがやや欠けていた。1安打、出した走者が二人では、善戦が精一杯だ。

<決勝>
こんなに大差がつくとは、だれも予想しなかった。が、伊都は、立上がりに不安定な箕島投手陣の弱点をじっくり攻め、一気に試合を決めた。伊都は1回、先頭の前浩が四球で選び、岡本の送りバントを辻本投手が間に合わない二塁へ投げて無死一、二塁。西村の中前打を野手がはじく間に1点を先取した。箕島は1回戦に好投した1年生の東を救援させたが荷が重かったのか3四球を連発、押し出しの二点。なお無死満塁で再び登板した辻本から、小田が左前打して1点を加えた。
さらに伊都は攻撃の手を緩めず2、3、8回にも手堅く得点を重ねた。試合前、箕島ベンチは『先取点をあげないと勝ち目はない』と言っていたのに心配通りの試合展開となった。
しかし、箕島は大量失点にもくじけず、よくがんばった。7回二死から南村が右前へ初安打。中野と山本がボールをよく見て2四球で続き、満塁としたが、代打の児島が中飛に倒れてしまった8回も二死後、二塁ゴロ失に出た谷畑が猛然と二盗、なんとか一矢を報いようとしたが後が続かなかった。伊都の福田投手が追い風を利用して、内外角に投げ込めなかった。

<紀和決勝>
福田の左腕は立上がりさえ1、2、3回と天理の強打線を全く寄せつけなかった。2、3回には六連続三振を奪う好投ぶりが、天理の岡本投手は小柄だが好投した。大きく曲るカーブに伊都打線はゆさぶられ、凡打が続く。速球をビシビシ決める福田投手とカーブを主体にした軟投の岡本投手。タイプは違っているが、息詰まる投手戦となった。
4回、天理先頭の中尾は三遊間をライナーで破った。すかさずバントで二塁へ送って来た。島の一打はふらふらと左翼へ上がるフライ。詰まっていたうえ風に押し戻され、左翼手西村の目測を誤らせた。あわてて突っ込む西村。前へ落ちる球を西村はスライディングキャッチを試みて、はじく間に一人生還、不運な1点を献上してしまった。この1点が最後まで響いた。
その裏、伊都もよく反撃した。岡本が右前へうまく打った。すぐ二盗を試みた。タイミングはセーフだったが、打席の西村が守備妨害をとられアウト。岡本はおくせず再び盗塁を試みて成功したした。が、あとが続かない。5回にも二死から小田が安打に出たものの盗塁失敗。毎回のように岡本投手から安打を奪ったが、どうしても得点に結びつかなかった。
カーブを多投する岡本投手を打ち崩すには、球をよく引きつけるしかない。7回、一死から福田がうまく中前へはじき返した。続く打者は中西、2回には投手を強襲する安打を放っている。何度もベンチを振り返り、窪田監督の指示を仰ぐ。おそらくヒット・エンド・ラン。大きな構えで投球を待つ。『来た』中西は思い切り振った。バットの芯でとらえた球は、矢のようなライナーで飛んだ。しかし、これまた不運。二塁手のグラブにすっぽり。一塁へ帰れず、ぼう然と立ちつくす走者の福田。
『立った1点だ。がんばれ伊都』『天理を倒せ』三塁側応援団は総立ちで声援をおくる。8回には上田が、9回にも前浩が中前へ痛打、懸命に食い下がった。だがついにゲームセット。大きなため息とともに、2時間10分のドラマは終った。



第58回<昭和51年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
1点を争う好試合となったが県和商が終盤、やや疲れの見えた南部・吉田を巧みに攻め、勝ち越し点をもぎ取った。1ー1で迎えた8回、県和商は先頭の久保が四球で出塁、前山の二ゴロで二封後、小杉啓が右翼線に三塁打、前山が捕手久堀のブロックをかいくぐって決勝点をあげた。続く土橋も外角にはずれた初球に飛びつきながらスクイズを決め、ダメ押し点を奪った。県和商の勝利への執念が吉田の気迫を上回った場面だった。
序盤は、両チームとも緊張のため、動きが悪かったが県和商は3回、久保の左前打を足がかりに敵失ゆあ併殺の間に先制点をあげた。
これに対し南部は5回、右前打の吉田を片山が送り、宮崎が右翼線二塁打して同点とし、息づまる試合展開となった。
南部・吉田はよく投げたが、県和商のうまい試合運びの前に屈した。

箕島・辻本昌、吉備・山崎両先発投手の思わぬ不調から乱打戦となったが、攻撃力と試合運びに一日の長がある箕島が吉備を下した。
箕島は1回、固くなった吉備守備陣の2失策などで二死満塁とし、押し出しや吉松の走者一掃中越え二塁打で一挙4点。2回にも加点して、早々と一方的な試合運びのの様相を強めた。
しかし、吉備は0ー7の劣勢にもめげず、3回、制球の悪い箕島・辻本昌を襲い、上松の二塁打などで3点、5回にも2点を加え必死に食い下がった。この反撃は、1回戦から見せていた吉備らしい持ち前のたたみかける攻撃ぶりだったが、箕島は左腕東を救援に送って防戦。東のコーナーをつく投球に吉備打線は以後、1安打に封じられてしまった。箕島は序盤の大量点のためか、攻守のいつもの鋭さがなく、大量点後の試合運びに課題を残した。

<決勝>
まれにみる激戦だった。箕島が先行すれば県和商が反撃して同点とした攻防は決勝にふさわしい試合展開。結局、箕島打線がここ一番というところで底力を発揮、食い下がる県和商を振り切った。
やま場となった8回、箕島は死球の先頭、北野を上川が手堅く送った。一発出れば勝ち越しの場面、二死後、県和商ベンチは辻本昌を敬遠して一、二塁としたが、栗山の一打は鳥居投手の足元を抜く鋭い当り、俊足の北野がスタートよく二塁から本塁を踏んだ。試合はまず箕島ペースで始まった。2回、先頭の西村の打球を県和商左翼手が目測を誤って二塁打とし、赤尾、岩尾の連打で、西村生還して貴重な先取点。4回にもニ死から加点し、優勢な展開を見せた。これに対し4回まで無安打の県和商は5回、制球に苦しむ箕島・辻本昌から先頭の赤山が四球を選び、坂本が右前へ初安打。これを犠打で送って一死ニ、三塁とし、ニ死後、山田が右翼線に2点二塁打して同点。一気に劣勢をばん回し、鳥居投手も力をふりしぼって投げた。箕島が、鍛え抜いたしぶとい打撃を示したのに対し、県和商は振りがやや大きく6四球を奪いながら決定打が出ず、9回の攻撃も箕島・辻本昌の気迫にのまれた感じで三者凡退した。

<紀和決勝>
『なんとしても、先取点がとりたい。』尾藤監督は得意の先制パンチで一気にマイペースに持ち込む考えだった。その好機が早々と訪れた。1回、先頭の上川と3番辻本が安打を放ち一死一、三塁、天理の福家投手の立上がりを鋭く攻めたが、期待の栗山は三ゴロで併殺された。二回一死後、西村が二遊間に岩尾が中前に連打。福家投手は肩を痛めているといわれ、出来は決してよくない。『これはいける』と応援席はわく。犠打で手堅く二、三塁に送り、北野の一発にかけた。当たりの鋭い打球が転がったが遊ゴロ。この序盤の好機は、無情にも得点につながらなかった。『回が浅いし0ー0。結果的には失敗に終わったが、あの場面で他の作戦は考えなかった』と尾藤監督。
押し気味に試合を進めながら、一発が出ない。『いやな展開だな』と箕島応援席から声がもれ始めた3回、天理の先頭福田が内野安打、新田が手堅く送る。だが、鈴木喜は三ゴロ。『天理も意外と攻めが雑かな』という空気が流れた。続く鈴木康の一打は平凡な二ゴロ。『しとめた』と思った瞬間、野手がはじいて、三塁走者がホームを踏んだ。一番心配されていた守備の乱れ。そして、辻本は続く中野に1ー0から左翼スタンドに入る2点本塁打だを浴びてしまった。失策で気落ちした失投が、残念な一投だった。
だが、箕島は食い下がった。5回、いきなり久保が左越え二塁打。北野が送ったあと、上川は0ー3から意表をつくスクイズバントを決め久保生還。待望の1点が入った。反撃ムードが高まる。6回にも辻本が中前打で出塁。栗山の犠牲バントで二進、打者赤尾の時、捕逸で三塁へ。箕島ベンチは2ー2からスクイズ。策はよかったが、打球は不運にも投手の真っ正面。辻本が本塁に憤死して追撃はなかった。9回、2点リードされた箕島。『ミートだ』『確実にいけ』ベンチの選手から大声がかかる。スタンドに詰めかけた箕島応援団も、あらんかぎりの声援。だが、赤尾右飛、西村投ゴロ、そして最後の打球は遊撃ゴロ。送球が一塁手のミットにスッポリとおさまった瞬間、甲子園出場の念願はちに消え去ってしまった。

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第59回<昭和52年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
自身たっぷりの箕島に、捨て身の向陽。向陽の一年生投手樋口が連投にめげず、序盤は箕島・東と互角に投げ合い準決勝らしい好試合になったが、箕島はじりじり得点を重ねて勝った。
1回無死二塁の好機に強攻策でつぶした箕島は4回、赤尾の中前打と栗山の二塁打でニ、三塁、続く西川の死球で満塁とし、上川は右飛に倒れたが、石井雅が右前にはじき返し、二走者を迎え入れた。『右へねらえ』というベンチの指示にこたえた一打だった。6回にも石井雅の適時打で1点、7回は赤尾のスクイズでダメ押しの1点を加え、東の力投で向陽を寄せつけなかった。向陽は5、6回に安打の走者を送りバントで二塁へ進めたが、いずれも後が続かなかった。東の投球に的がしぼれず、散発の三安打で打力の差で敗れた。しかし、絶妙な制球力とマウンド度胸のよさで好投した樋口を、バックが再三んの攻守でもり立てて健闘、試合前の選手の言葉通り、見事に燃え尽きた。

市和商が8回に1点を取れば、田辺は9回に同点に追いつくという激戦。延長にもつれ込んだ15回、田辺が勝利をもぎとった。
再三んの勝ち越し機を強攻策の失敗で逸した田辺は15回一死後、西岡洋が左翼線に二塁打、若田の四球と敵失で満塁としたあと尾崎が投前にスクイズを決め、待望の勝ち越し点をあげた。
市和商は8回、橋本が四球を選び、送りバントと二ゴロで三進、ここで中999が中前に適時打を放ち、1点リードした。橋本の調子から逃げ切ると思われたが、田辺は9回一死後、木下の四球と落合の中前打で一、二塁。西岡洋は右飛に倒れたが、若田の遊ゴロを遊撃手が一塁に悪投する間に同点にした。市和商にとっては、15回の1点といい、大事なところで出た失策が命取りになった。

<決勝>
がっぷり四つに組んだ激闘だった。春夏の連覇をめざす箕島と、無欲でぶつかった田辺。その精神的な違いが試合に現れ、終始押し気味だった田辺に勝利の女神がほほえんだ。
延長10回、それは42イニング無失点を続けてきた東にとって魔の回となった。田辺は先頭の尾崎が右中間を破る二塁打、続く山根はスリーバントを決め尾崎は三塁へ。大橋への3球目。
スクイズを警戒してはずした球は、跳び上がった赤尾捕手のミットをかすめてネットにぶつかった。躍り上がって本塁を踏む尾崎。大橋も気落ちした東から左中間二塁打を放ち、ついに東が降板。二死後、代わった石井毅から木下が中前にはじき返し、一気に試合を決めた。『小細工よりも長打力で』という田辺・岩本監督の思惑通りの攻撃ぶりだった。守っても田辺は主戦木下が、当たりまくっている箕島打線を完封した。伸びのある速球と打者のタイミングを狂わす変化球を織りまぜ、文句のないピッチング。前日の準決勝で15回投げ抜いた疲れも見せず、10回二死満塁のピンチも懸命の力投で切り抜けた。
箕島はいつものそつのない野球が影をひそめた。2回、中前打で出塁した栗山が投手のけん制に刺され、4、8回にも走者を出したが、いずれも送りバントを失敗するなど、選手に硬さがみられた。10回一死後、栗山の右前打などで二死満塁と最後まで田辺を脅かしたのはさすがだったが、代打内山は二ゴロに倒れ力尽きた。

<紀和決勝>
早々と訪れたチャンスに、三塁側スタンドはわき立った。1回戦から見せていた『切り込み隊長』の尾崎が智弁学園・山口投手の初球をハッシととらえた。打球は右中間を破る二塁打。試合前、『山口の速球はこうやって打つんだ』と、バットをおっつける格好をナインに示した尾崎。その自信が、快打を生み出した。山根の投ゴロで三進。続く大橋は三球目のスクイズを投前にころがした。和歌山大会で見られなかった絶妙のバント。好スタートを切った尾崎が投手の送球よりも一瞬早く本塁へすべり込んだ。見事な先制攻撃に応援席は総立ち。『田辺は大将』のプラカードが激しく揺れる。その裏、一死三塁のピンチは走者のミスで切り抜けた。『球運も田辺に味方している。これならいけるぞ。』2回には二者連続三振に切って取った木下の力投に期待感は一層高まった。
前夜10時に消灯、朝8時までぐっすり寝た田辺の選手たちは試合前から岩本監督がびっくりするほどのリラックスムード。押せ押せの試合運びに、ベンチも活気がみなぎる。4回には西村、木下が連続安打。鋭い振りにさすがの山口投手も顔色がない。山口攻略はあと一歩だった。
4回、木下のスッポ抜けたカーブが打者に当たる。二盗を刺そうとした西村の送球は、中堅に抜けた。そして前田への一球目は真ん中高め。打球は右中間を破り、中継した二塁手山根の悪送球で一挙に前田も本塁を踏んだ。痛恨の一球。思わぬところで出た失策。つきは逆に智弁学園へ傾いていった。『調子はふつうだったが、制球が甘かった』と木下投手。中学時代県下一の捕手とうたわれたが、遠投100mという強肩を見込まれて、2年生の春から投手に転向。学校まで3kmの道のりをランニングと自転車で交互に通学し、足腰を鍛えた。タイヤを腰にぶら下げて走り、お寺の石段をウサギ跳びしたことも。『でも、つらくはなかった。田辺高で野球がやれたのだから』敗れたとはいえ、屈指の好投手山口と堂々投げ合った健闘は立派だった。『大学に行っても野球を続けたい。日米大学野球で投げるのが夢です。』『弁慶さん』の木下はこういって球場を去っていった。



第60回<昭和53年>全国高等学校選手権大会

<準決勝>
闘志をむき出しにして投げる動の岡本。つねに淡々とした表情で打者に対する静の上野。対照的な2人の緊迫した投げ合いは、岡本から崩れた。それも四球による自滅だった。
箕島は5回、制球に苦しむ岡本から2四球と上野山の安打で一死満塁と攻めた。二死後、北野も待球作戦に出て、2ー3から押し出しの四球を選び、均衡を破った。
箕島は5回までに107球を投げ疲れの見え始めた岡本を6回に再び襲い、二死一、三塁から上野山が左中間に二塁打して2点。7回には北野が右翼席にだめ押しの本塁打を放ち、勝利を固めた。2回戦で10安打、準々決勝で14安打と波に乗る串本打線も、上野の外角低めをつく投球に手こずる。何度も好機をつぶした。ようやく8回、一死二塁から久保の適時打で1点を返し、久保も二盗後、瀬上の一塁ゴロで一挙に生還。必死に追いあげたが、上野を救援した石井毅にかわされ決勝進出はならなかった。

1回戦から5点以上たたき出してきた吉備打線は、決勝進出をかけたこの試合でも健在だった。伊都の繰り出す三投手に14長短打を浴びせて6点をあげ、藤村も助けた。
1点を先行された1回、吉備は谷野の二塁打と岡本の左前安打ですぐに追いついた。再び1点を追う3回、安打で出た藤村を一死から犠打で進め、谷野の二塁打を呼んだ。続く岡本は一球目を左翼席に2点本塁打。この試合で始めてリードを奪った。勢いに乗った吉備は4回に藤村の適時打、6回には二死一、三塁から伊都のお株を奪う重盗を決めて加点し、優位に立った。立ち上がり危ない投球をしていた藤村は3回以後、一安打1四球に抑え、つけ入らせなかった。伊都は、足を使った戦法でスタートからズバリ的中した。1回、四球に出た西が二盗、犠打で三進後、久保博の中犠飛で生還、無安打で1点を取った。2回にも坂本が左前安打して二盗、久保文の適時打でかえった。が、3回以後は2人の走者を出しただけで機動力を発揮することができなかった。

<決勝>
箕島との対戦成績は、新チーム結成以来の0勝3敗と勝ち星なし。吉備の林監督は、決勝戦前夜のミーティングで『打倒箕島』に燃える選手の緊張をほぐすために、こういった。『あしたはおそらく負けるやろ。大事なのは、あとの態度だ。勝とうと思『こけた』のは吉備だった。それも、わずか30cmの手元の狂いが、明と暗を分けてしまった。
7回、箕島は先頭の北野が一、二塁間を抜いて好機の芽をつくった。次打者は西川。春までは『猛打箕島』の不動の四番打者だった。が、今大会は12打数2安打6三振とスランプ。当然、送りバントが予想された。林監督も、藤村ー井口のバッテリーも同じ思いだった。『バントをするならやってみろ』藤村は、そんな気持ちで投げた。初級。西川の胸元をつくシュートだ。西川のバットが横になった。球は藤村と井口の中間に転がる。井口の指示は、『二塁へ』。完全に間に会うタイミングだった。朝の練習でも、何度も同じようなケースを想定し、藤村は難なく二塁で刺した。だから、この紀三井寺球場でも『刺せる』との確信があった。
藤村はダッシュしてつかんだ。矢のような球を、ベースカバーに入って橋本へ球は無情にも右へそれた。橋本は『入ってくれ』と祈るような気持ちでグラブを伸ばして捕った。が、右足がわずかに離れた。一死一塁となるはずだったが、無死一、二塁に。浮足だった吉備。攻撃の箕島、もうあとは勢いの違い。
この日で四連等。『別に疲れは感じない』と試合前に話していた藤村の球は上ずり始め、スピードがなくなっていた。そのことを井口も感じていた。大試合の経験を充分に積んでいる箕島が、これを見逃すはずはない。森川が、動揺した藤村の前に再度転がして内野安打。無視満塁。石井毅にストレートの四球で押し出し。こうなると、吉備に箕島の勢いを食い止める力はなかった。練習の力をいかに本番に出すか。この試合は、その差が出た。
戦いは終わった。吉備の選手は、ベンチ前で箕島の校歌を聞いた。後ろに林監督、水野部長もいた。校歌が終わったとき、林監督は選手のに『こっちを向け』といった。振り返った嶋田・谷野・岡本らに次々と握手を求めた。一番最初に涙を流したのは、林監督だった。選手も泣き出した。選手たちのたくましい手に支えられ、空に舞ったのは林監督の方が先だった。

全国大会
<決勝>
優勝候補に数えられている箕島が大会屈指の左腕投手である能代の高松をどう攻めるかが試合の焦点であった。
1回、箕島の先頭打者、嶋田は初球直球ストライクを見逃したあと、真ん中に入ってくる二球目を鋭い振りで中越え三塁打した。自信を持って投げた球を打たれ、高松は動揺したのではないか。走者にも気をとられてボールが先行し、上野山を歩かせて無死一、三塁のピンチを招いた。
箕島ベンチは高松から大量点は無理と判断したのだろう。3番石井雅に1ー2からスクイズを指令。石井雅が投手の右に鮮やかに決めて先取点をあげた。2回からわずか2人の走者しか出せなかったのだから、箕島の手堅い作戦は正しかった。
能代も追いつくチャンスがあった。3回、制球を乱した石井毅に佐々木、梁瀬が連続四球。畠山も0ー2となった。だが、続く3球目に二塁走者佐々木が捕手のけん制球に刺され、好機をつぶした。6回にも一死後、近藤が左中間に二塁打したが、三塁をねらってオーバーランアウト。中軸打者につながるところだっただけにこの暴走は惜しまれる。
力で押す高松と球を散らしてかわす石井毅の、テンポの速い投手戦だった。

一挙に6点、箕島の猛打が7回に爆発した。1点を追ったこの回、箕島は先頭の浜野が遊撃の左の内野安打で出た。森下のバントは二塁手河名の好判断で二封されたが、森川が三遊間を抜く。この勢いが選手広島工のリズムを狂わせたのか、石井毅の投前バントは津田の三塁へ悪送球をさそって森下がかえった。1ー1。
広島工は嶋田を歩かせて満塁策をとった。だが代打の西川が四球を選んで押し出しの勝ち越し点。さらに石井雅が三遊間へ。そして北野は右中間を痛烈に破る三塁打したとたたみかけて計6点を奪った。ひとたび波に乗るとすばらしい破壊力をみせる箕島打線。広島工の津田にやや疲れがみえ、変化球を多投するところをねらい打った感じである。
広島工は鍛え込んだ守りに思わぬ破たんが生じた。津田の三塁送球は三塁手が捕れない球でなかったが、やはりあせっていたのだろう。それまでは6回の二死二塁で白井の左前安打を横洲、中村があざやかな中継プレー。本塁をついた北野を刺した機敏なプレーやバントシフトのうまさは格別だった。ひとつ失策から大差の試合となったが、6回までは攻守によくバランスがとれた広島工と箕島のしのぎあいは見ごたえがあった。

速球を武器に力の投球でわたりあった中京・武藤と箕島・上野の両投手。そして本塁打の応酬とさすが強豪同志の対決は見ごたえがあった。
先取点は中京。3回、安打の阪本を一塁に置いて、1番の山中が左スタンドに本塁打した。山中の本塁打は佐世保工戦に続く2試合連続のもので、リストのよく効いたすばらしい一打だった。箕島もすぐ反撃した。その裏、簡単にニ死となったが、石井雅が遊撃左に安打して出塁。このあと左打者の4番・北野がわずかに外角高めの球をうまくたたき左翼へ同点本塁打を放った。風が右から左へ流れていて、多少風に乗ったことも幸いしたが、左打者が左へ打ち込んだパワーは高校生ばなれしたものだった。
箕島はこの北野の本塁打で勢いづき、4回にはまたも二死から森川、上野の連安打で一、二塁とし、嶋田の遊越え適時打で1点。7回にも中京守備陣の乱れから1点を加え、4ー2とリードした。しかし、さすがは夏の選手権出場18回を誇る中京である。8回、一気に逆転した。小川と代打黒木の安打で一死一、二塁に栗岡が1ー0後の二球目を左翼へ逆転の3点本塁打した。7回の守備の破たんによる失点がダメ押し点となっては、面目がない。栗岡の本塁打はこのまま引き下がれない、おいう闘志が生んだ貴重な一発ともいえる。
投げる武藤は立ち直った。8、9回はいずれも三者凡退に封じた。



第61回<昭和54年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
桐蔭がしぶとく食い下がり、5回までは全くの五分。なかでも捻金はたくみに緩急織り交ぜた頭脳的な投球にさえをみせた。0ー0で迎えた6回、箕島は先頭の北野が四球で出塁、上野のバントはうまい守備にあい北野が二封されたが、上野はすかさず二盗、ニ死後、久保の打球は右翼線ぎりぎりにポトンと落ちる右前テキサス安打となり、俊足の上野が本塁に駆け込んで幸運な先制点をもぎとった。
続く7回、箕島は緊張の糸が切れたように攻めまくった。先頭の石井が右越え二塁打、嶋田が三塁線に絶妙のバントを転がし、これが内野安打となって無死一、三塁、宮本が右前安打を放って石井をかえし、さらに上野の中前安打などでこの回3点をあげ、試合を決めた。桐蔭は1回、敵失と死球でニ死一、二塁と攻め、3回には四球の嶋が嶋田の強肩に刺されたものの果敢に二盗を試み、6回は原が二塁打を打つなど、石井に立ち向かった。しかし、12三振を奪う石井の力投に要所を抑えられた。それにしても、箕島得意のプッシュバントをうまくさばいて2回も二封するなど、箕島をよく研究し、のびのびと戦った。泥まみれのユニホームが、その健闘を物語った。

試合のたびに打順を組み替える田辺商。これまで8、9番を打ってきた鈴木清を2番起用し、これがズバリ的中。3回、一死ニ、三塁の好機に鈴木清は左前安打して三塁から小林をかえし先制、同点に追いつかれたあとの5回には一死一塁で鈴木清の送りバントが成功。続く上村が左中間を破って勝ち越し点を挙げ、7回には一死二塁でまたも鈴木清が三遊間を破って一、三塁とし上村の左犠飛で加点した。鈴木清は8回にもニ死満塁で押し出しの四球を選ぶなど大活躍。これに刺激されたように打線全体が田辺の四投手を打ちまくった。
田辺は4回、先頭の西岡展が右前安打で出塁、柏木のバントで二進後、思いきって三盗し、捕手の悪送球を誘っていったんは同点に追いついた。だが8回、先発の赤堀に代わった山本順が四球を連発し、自滅したのが大誤算、ついには西岡洋がマウンドに上がり、西岡展との双子バッテリーも、これまでよく打った田辺打線が宮本に押さえ込まれてしまったのが敗因だ。

<決勝>
田辺商最後の打者小林を三振にうち取り、4度目の甲子園が決まった瞬間、箕島・石井投手は会心の笑みを浮かべた。『やったぞ。さあ目標は甲子園15勝だ。』嶋田投手とガッチリ握手を交わした。一塁側観覧席では母文枝さんが『あの子はやってくれると思っていました。もう、うれしくて、うれしくて。』静かに拍手を送った。
試合は苦しかった。石井自身も『70点の出来』というほどで制球、球威ともいま一つ。粘りを身上とする田辺商打線の攻撃は気迫に溢れていた。1ー0で迎えた2回、二塁に成瀬を置き、能代にファウルで粘られた末、左越え三塁打を打たれて同点。今大会初の失点だ。『なあに、また味方が打ってくれるだろう』顔色一つ変えず、「ポーカーフェイス」で投げ続けた。その裏、無視満塁に自らのバットで勝ち越し点をあげ、さらに上野山の右翼線三塁打などで計4点もらった。3、5、6、7回と安打で走者を出す田辺商打線を余裕たっぷりにかわした。『あの子の力の投球だけではありません。みなさんのおかげです。』文枝さんは、何度も繰り返した。石井に立ち向かう田辺商の攻撃は、迫力があった。強肩の嶋田捕手から2つの盗塁を成功させ長打、安打数とも箕島にひけをとらなかった。岡村二塁手の父、義承さんは『ようやった、ようやった』と、田辺商の攻撃に満足していた。
田辺商・宮本投手の顔は、くやしさでいっぱいだった。1ー1の同点に追いついた2回、無死一、二塁のピンチに浦野がバント。宮本はすばやく拾って三塁封殺をねらったが、手で球をよくにぎらないうちに、腕だけが出てしまった。球が地面にポトンと落ちて、オールセーフ。傷口を広げた。試合巧者の箕島が、この好機を見逃すはずがなかった。絶望的な4点をもぎとられた。3回以後、箕島打線を2安打に抑えただけに悔しさが残った。『残念です。ボクのミスで負けてしまった』と、くちびるをかみしめた。宮本投手の母・千寿子さんは涙ながらに『選抜で負けてあの子はショックを受けていました。それでも、翌日からすぐ練習を始め、すっかり立ち直って力をつけました。勝たせてやりたかったけど、しかたがありません。よくやってくれました。』といつまでも拍手を送り続けていた。

全国大会
<決勝>
箕島が札幌商の粘りに苦戦したが、力でねじ伏せ、春・夏連覇への一歩を踏み出した。箕島の自信あふれる攻めが1回から出た。先頭の嶋田が初球をいきなり中前安打、立ち上がりに難がある鈴木だけに、この一打が効いた。宮本が手堅くバントで送ったあと、上野山が四球で一、二塁。続く北野が右前適時打して1点を先制。さらにニ死後、森川も右前打ちして計2点を奪った。こうなると箕島ペース。3回には北野が右翼へ流し打ちの大会15号本塁打。4、5回にも鈴木が制球に苦しんだあげく、ストライクを取りに行く好球を逃さず追加点をあげた。そして3点差に詰め寄られた9回には、スクイズでダメを押すなど、優勝候補らしくパワーと技を存分にみせつけた。
札幌商は前半、石井のカーブ、シュートにタイミングが合わず、1回は3三振を喫するなど手を焼いた。しかし、前半の失点にも負けず6回に反撃した。ニ死から鈴木が四球で出たあと、山本以下が三連打を浴せて3点を奪い、石井をおびやかした。鈴木は時おりスピード豊かな速球を持ちながら、制球難からこの球を生かせなかった。また、左腕の金山への継投が一呼吸遅れたのが惜しまれる。

箕島が2度敗退の瀬戸際からはい上がって、延長18回、規定による引き分け寸前にサヨナラ勝ちするという劇的な試合をみせてくれた。これは球史に残る大熱戦ともいっていいだろう。18回、先頭の代打辻内が四球で出、上野山がスリーバント失敗後、北野がストレートの四球を選んだ。一死一、二塁。耳をつんざくような大歓声の中、上野は0ー2後の内閣球をつまりながらも左前に適時打し、辻内が二塁からかえって3時間50分にわたる熱戦に終止符が打たれた。大技、小技を身につけた箕島が得意のはずのバント戦法を、固い守りの星稜にことごとく封じられ、形勢は全く不利であった。延長戦に入って12回、一死一、二塁のピンチに、星稜・石黒のバットの先に当たった難しいゴロを二塁手が捕りそこなった。考えられない失策から決勝点となる1点を失ったかに見えた。ところがその裏、二死を数え、敗色が濃くなった空気を嶋田が見事に吹っ飛ばす同点本塁打を左へ放った。
こうした箕島は14回、安打の森川が久保のバントで二進し、投手のけん制の逆を巧につく三盗、粘る星稜の度肝を抜きかねないこの盗塁。だが、鍛えられた星稜ナインには落ち着きがあった。あまりほめられたことではないが三塁手の隠し球で、この三塁走者をアウトにした。一瞬ぼう然とする箕島ナイン。これで生気を取り戻した星稜は16回、一死後川井が死球、堅田の二塁強襲安打で一、二塁のチャンスを得た。音の投ゴロで堅田は二封されたものの、ニ死一、三塁から山下が右翼線に好打、川井がかえって、またも星稜リード、こんどこそ勝負あったかに見えた。だが、まさに大熱戦、その裏、ニ死から箕島は2ー1後左へ本塁打して3度目の同点。試合展開はいまだ見聞きしたことのない大試合ともいえた。箕島の大技が、大事な場面で発揮された底力はやはりたいしたものというべきだろう。しかし、敗れたとはいえ、腕も折よとばかりに、箕島打線を圧倒した左腕堅田の力投は、大いにたたえなくてはならない。そして堅田をもり立てたバックスの見事な攻守の援護ぶりも、絶賛に値する。

星稜戦で18回を1人で投げ抜いた石井が、この日は気力の投球を見せた。やはりは疲れは相当に残っていたのだろう。球威はなく、配球とコントロールの良さで城西打線をかわした。石井は1回、先頭の宮林に左前安打された。ここで石井は再三、早いけん制球で走者を一塁にくぎつけ、奥原に対しては初球ストライク、二球目はシュートでバントをファウルさせて追い込み、最後は外角スライダーで見逃しの三振にしとめた。さらに川幡の時には、2ー2から外角に大きくはずし二塁へ走った宮林を刺してピンチを逃れた。落ち着いたバッテリーのプレーだった。箕島は1回、四球の嶋田が宮本の三前バントで二封された。城西の好防御に得意のバント戦法も失敗に終わった。しかし、そのあとは力で先取点を奪う。上野山が左翼フェンスに直接ぶつける二塁打で一死二、三塁とし、北野が初球を一塁手右を抜く二塁打で2点。左打者のひざ元に入るカーブだったが、安倍の球には力がなかった。城西にとって痛かったのは、4回の攻め、先頭の川幡が右中間へ二塁打した一死後、宮沢の一ゴロを北野がはじいて一、三塁、生田が三遊間を破って1点をかえしてさらに中川竜が左前安打でなお一死満塁と石井を攻めたてた。ここで安倍が投前へスリーバントスクイズしたが、石井がダッシュよくさばき、投・捕・一と渡って併殺された。これを境に、箕島・石井が球速に変化をつけて落ち着きをとりもどしただけに、惜しい逸機だった。

<準決勝>
横浜商が箕島の好投手石井を打ち込めるかどうかが焦点の準決勝だったが、壁はやはり厚かった。5、8回に各1点、9回には二死から一、二塁とまで迫った。しかし、これは箕島内野手のまずい守備によるもので、内容的にはほぼ完全に抑えられていたといっていい。
石井は強打の横浜商に対し、外角球(左打者には内角球)を主体にした投球で、ピッチングを組み立てた。投ずる球は直球とカーブ。ホームプレートの一角をわずかにかすめるというきわどさで、そのコントロールのよさは驚くばかりだった。横浜商打線は、外角球に体を泳がされ、あるいは左へ引っかけるという打撃に終止した。初めての好機4回の一死三塁では中山、松村が外角の速球とカーブで一ゴロと一邪飛、石井が外角勝負で来るとわかっていて、打てなかっった。
石井と嶋田のバッテリーのうまさは、横浜商打線の目を外角に向けさせて置いて、ときに虚をつく内角球を混じえたことだ。6回のニ死一塁で、松村は逆をつく内角カーブを見逃して三振した。横浜商は、石井の技巧に持てる力を空転させられた印象が強い。
攻める箕島は、1、2点目は見事にとった。特に3回、ニ死二塁で北野が2ー0後の外角高めの誘い球を強引にたたき左超え二塁打したのは箕島らしい力強さだった。しかし、早いリードに気がゆるんだか、失投の少なくなった宮城を攻めあぐんだ。4回一死二、三塁を策もなくつぶしたのは試合巧者らしくない。いつものようにここでたたみかけていれば、試合は楽勝に終わっていたであろう。

<決勝>
上り調子の池田は、この石井を簡単に打ち込んだ。1回に二塁打を放った川原は、明らかに外角に的をしぼった流し打ちだった。だが、石井はすぐ2回から投球の組み立てを変えて成功した。強気に内角を突き、外角球を“捨て球”に使った。4回この試合まで0、563の高打率をあげて打ち気満々の永井に第一球、内角に入る甘いカーブを投げた以外、ほぼ自分のペースで投げきった。速球で内、外角のコーナーぎりぎりを突き、カーブとシュートの配合も申し分なかった。
投球数108、制球の良さを裏付けている。池田にリードされても最後まで冷静さを失わず、我慢強く投げ抜いた。石井の精神力も大したものだったが、石井を守りたてた嶋田の好リードも見逃がせない。 橋川も良く投げた。1回緊張したためめか、球が高めに浮いた。嶋田、北野に痛打を浴びてすぐ同点にされたが、その後、5回までは、むしろ石井よりも投球は安定していた。残念だったのは6回一死から北野を歩かせたこと。上野に三遊間を抜かれて一死一、三塁のピンチとなった。このあと箕島の足にかきまわされ、重盗で1点を失った。さらに8回、鉄壁を誇った池田の内野陣に3つのエラーが出て、せっかくの橋川の好投に水をさしてしまった。 さすがに箕島は試合運びがうまく、勝つ野球を知っている。その上、運にも恵まれた。6回の重盗も三塁走者の北野がとび出し、橋川がうまくさばいていれば本封されたタイミングだったし、8回のエラーをさそった北野の三進も暴走気味の走塁。それが貴重な得点に結びついた。球運に見放された池田だったが、チーム一丸となった野球は決して優勝した箕島に劣るものではなかった。



第62回<昭和55年>全国高等学校野球選手権

<準決勝>
横手からの変化球で内外角を揺さぶり、打たせて取る技巧派の伊都・内田。球速のある直球を主体にぐいぐい押す本格派の和歌山工・金本。両チームの対戦は予想通り1点を争う投手戦となった。0-0の均衡は7回、伊都が破った。先頭の内田が右中間安打し、東山の犠打で二進、久保遊ゴロで内田が飛び出して二、三塁間にきょう殺され、好機がつぶれたかに見えた。だが山本が0-1後の好球をうまく流し打って左越えに二塁打、久保を迎え入れ、これが決勝点となった。伊都が無死で走者を出したのは6回と7回の2度だけ、少ない好機を得点に結びつけた。前日、9回投げた内田は連投の疲れも見せず、6回以後は強打の和工打線を三者凡退で抑えたのが大きかった。 むしろ前半は和工の方が押し気味で、5回に絶好の先制機があった。中野・児玉の安打と四球で一死満塁。スクイズも考えられた。和工は強攻策に出た。しかし、後続打者がいずれも内野邪飛に打ちとられ作戦は裏目に。これが最後まで響いた。好投した金本には山本の二塁打が風に乗った一打だけに不運だった。

先行されても追いつき、最後には勝つ。それが箕島の強さのパターンである。まさにこの試合もそうだった。1点リードされた5回、平林の二塁打でたちまち同点に。再び1点入れられ「これまでか」と思わせた10回にも、島田の左犠飛でタイ、そして15回に本領を発揮、決着をつけた。
この回、先頭の皆本が左中間二塁打、次打者の二ゴロで三進し、一死三塁の好機をつくった。1点もやれない熊野は、続く堺、森川を敬遠して満塁策をとった。この日3安打と当っている児島を遊ゴロで仕留め、皆本を本封。この作戦も成功したかに見えた。が、続く松林が2-3まで粘ったあと、六球目を遊撃右に内野安打し、堺が生還、3時間10分の激闘に終止符を打った。松林の打球はつまっていたが、執念で安打にしたといえる。
ベスト4進出は49回大会(42年)以来、13年ぶりの熊野は、心配された重圧もそれほど感じられず、箕島に一歩もひけをとらなかった。5回、3つの犠打と野選、四球で1点を先制。バントを駆使し無安打で得点するソツのなさは、箕島のお株を奪った。10回には、一死一塁から田上の左中間を破る二塁打で再度リードし、優位に立った。このあと田上が次打者の遊ゴロで三塁を突いて刺され、加点機を逃したのが痛かった。それにしても、強打の箕島打線を3点に抑え、最後まで苦しめた熊野・伊藤のたんたんとした投球は光っていた。

<決勝>
箕島・宮本投手は8回裏、最大のピンチを迎えた。2安打一死球の二死満塁。打者は今大会本塁打も放っている四番久保。「ここで打たれたら、何のための三年間だ。」宮本は力をこめて初球外角直球ストライク。二球目、低めの直球はファウル。2-0と追い込んだ。一球はずす場面。が、勝負だと真ん中に直球。ベンチはヒャッとした。が、これもファウル。打たれていれば「勝利を焦った完全な失投」となるところ。最後は小さく落ちる変化球で空振り三振。勝利を掌中にした。 「勝つ欲を持たないかん」の伊都、「思い切って行け、負ければそれまで」の箕島との気持ちの差がどう出るかが、試合の大きな焦点だった。前夜9時には床につき、たっぷり10時間眠った宮本に代表されるリラックスさ、亡くなった前部長の遺影のお守りと事故死した前主将のキーホルダなど「負けられない事情」に包まれた伊都。 差が出た。宮本は前半、130キロ近い速球で勝負、外角低めの直球で伊都打線を寄せつけない。逆に内田はプレッシャーで腕が縮んだかのように伸びもキレもなかった。
3回、二死一、二塁で宮端が遊撃の深い所に内野安打、一塁セーフとなる間に二塁走者松林が本塁を突いたが、間一髪アウト。4回にも伊都・中岡右翼手がボールを見失ったのにも救われ、島田が右中間三塁打。次打者皆本の初球を東山捕手が後逸。島田が本塁へ。これもタッチアウト。硬さからくる伊都のミスに簑島も焦りがあって、なかなか突っ込めない。「よし、流れが変わった」と喜ぶ伊都・窪田「いやな感じ」の箕島・尾藤両監督。だが、流れは変わらなかった。宮本は落ちついていた。「勝ってくるわ」とあっさり家を出た様子にスタンドの父・基さん(48)は頼もしさを感じていた。「あいつも主将になりたての時は、監督にチームを引っぱれと怒られていた。この大会はようがんばっとる。」と声援後半はキレのいい落ちる変化球に切り替え、4回、チャンスの後のピンチも三振で仕留める。
「点を取ってくれよ。」わめくように宮本が円陣の中心で声をあげたその5回、鈴木が死球、森川が確実にバントで進めた。児島。「打ってくるわとそれだけいって出て行きましたわ」という父・昭次さん(53)の前で、右ねらいが成功した。先制の右中間二塁打。6回にも一死三塁から皆本が初球をうまく三塁前にスクイズ(内野安打)し、意表をついた。「長打と小わざ。それが箕島野球だ。」伊都は宮本の球速に抑えられ、鋭角的に落ちるカーブにバットは空を切った。チャンスらしいチャンスは8回だけ。「宮本にやられた」と窪田監督。「宮本が踏んばり全員がよくやった。」と尾藤監督。その宮本は「やっとチームを引っ張れる自信がつきました。と甲子園にも意欲。去年の夏、そして甲子園が終わればね、とコーチ役を約束しているスタンドの箕島少年野球チームに軽く手を振って「やったぞ」とサインを送った。

全国大会
<決勝>
前半は国立ペースだった。箕島は得点のきっかけをつかむのだが、国立・市川のカーブ、シュートを巧くまじえた投球に、各打者とも振り切れずに打たれていた。やっと3回、二死二塁から松林が右前安打した時は、右翼手の好返球に本塁をついた鈴木が刺されるありさまだった。箕島にとっては押しながら得点できないといういやな展開になった。
それでも、相手ペースを力で突き破ったのはさすがといえる。5回、二塁打した平本が投手のけん制球に刺された一死後、鈴木・森川の下位打線が安打と四球などで二死、二、三塁とした。試合内容からみて、ここも箕島が逸機するようだと、流れが国立に傾く大きなポイントだった。ところが、松林が右前に打って貴重な先手をとった。この一打は2-2からのゆるい外角カーブだった。泳ぎながらも重心をうまく残して流した巧打で、2者を返した。そして6回には宮端が内角寄りの低めシュートを左へライナーの本塁打、9回は国立の乱れを逃さず、ソツのない攻めでダメを押した。
国立は市川が好投し、バックスも持ち前の確実な守りをみせた。しかし、あまりにも打力が弱く、ミスも多かった。2回の無死一塁はバント失敗(封殺)。4,5回は走塁失敗。6回の2四球からの一死一、二塁は、2安打の名取が気負いすぎてボールに手を出し3球三振。国立としては、なんとか相手のミスを誘い、少ない好機を確実に生かしたいところだった。
それが自らのミスでこうも立て続けにつぶしては勝ちみは薄い。国立なりに力を出し切った善戦ともいえるが、内容は得点以上の差がはっきり出ていた。

春夏連続優勝をねらっていた高知商に意外な弱点があった。高校野球では一番基本にされているバントだ。2回無死安打の沢田をバント失敗で生かせなかったあと、3回も先頭の宮本が死球で生きたが小島尚のバントは前進してきた二塁手への飛球、続く家竹が二塁手右を破りながら、バント失敗。拙攻の連続で反撃機をつぶした。
無死で走者を出したのは、箕島と同じ4度だが、うち三度もバント失敗しては、反撃の糸口はつかめない。宮本の投球が低めを突き、バントしにくかったこともあるが、高知商にあせりがみえ基本的なものを忘れ、いたずらに当てにいったのはまずかった。
好投手中西も、立ち上がりから体の切れが悪く、持ち前の制球力がやや甘くなった。打者の心理を読み、うまい配球で凡打させる投球術は、さすがに高校離れしていたが無死の走者を確実にバントで進塁させる箕島の攻撃を抑え切れなかった。こうして箕島ペースに巻き込まれ、実力を出し切れぬまま姿を消した。
箕島は1回、先頭の児島が二塁手右を破ると、手堅く送り宮本の遊ゴロが失策となる間に児島がかえり、先制の1点。2回は死球の皆本をバントで二塁に進め、二死から森川が左前へ強気のヒット・エンド・ランを決めて1点を加えた。3回も三遊間安打の松林を投前の犠打野選とバントで三進させ、島田が三塁前スクイズバントを決め、計3点を奪った。前半、両チームともほとんど同じように走者を出したが、バントの差が明暗を分けたといえる。 箕島は9回にも3安打と重盗で2点を加えて圧勝。持ち味を出し切った箕島に対し、高知商は最後までリズムに乗れなかった。

箕島はさすがに試合巧者だ。相手のミスにつけ込むのが実にうまい。2回戦で箕島に敗れた高知商がそうだったように、箕島を相手にするチームは不思議とミスするが、美濃加茂もまた混乱を起こした。「箕島」の名に無言の重圧を受けてしまうのだろうか。
箕島は2回、岩崎が左前打で出て、投手のけん制球悪投でやすやすと二進した。森川のバントは三塁前やや強かった。拾った松田は、ベースに戻ってくる岩崎をアウトにしようか一塁へ送球しようか一瞬まよった。その分遅れて、一塁送球は間一髪間に合わず、無死一、三塁。皆本は1-2後のスクイズバントをファウル。守備側としては、箕島の作戦を一度は失敗させたわけだが、皆本は次の5球目を中犠飛にしてスクイズ失敗を帳消しにして1点を先取した。美濃加茂はその裏、一死満塁から星屋が右越え二塁打、池戸がスクイズを決めて同点にした。しかし、4回また守りで失敗した。箕島は森川が左翼線二塁打して三盗、皆本のスクイズは見破られて空振り、森川は三本間にはさまれたが捕手の悪投で生還、一死後森脇、児島の短、長打で3点目をあげた。6回の4点目も敵失でとったもので箕島の得点でエラーがからまないものは9回だけというぬけ目のなさだった。
箕島の左腕宮本は高知商戦ほどの球威なく、美濃加茂はしばしば好打を放った。8回は村瀬の四球を足場に黒瀬・松田の長短打で2点、しかも箕島外野手のエラーも出たが、これに乗じて一気に同点にできなかった。力はほぼ互角。試合運びの差が勝敗を分けた。

<準々決勝>
さすがに鍛え抜かれた同士だけあって秘術をつくし、精魂をかたむけた攻防は見ごたえがあった。準々決勝までの45試合中、随一の好試合といえよう。
3点をリードされた箕島は5回、代打大西が右直落球に生き、一気に二進、児島の右前打で一死一、三塁としたあと、松林が投前にスクイズバントを決めて1点を返した。6回は一死から鈴木が右前打、森川の投前バントは愛甲が二封をあせって拾いそこねた。皆本が三前にバントして二、三塁。一打同点と追い込まれて、横浜バッテリーも焦った。森脇の一球目は真ん中のカーブで「ストライク」だったが、捕手片平は直球のサインを出していたのだろう。これを後逸した。しかし、攻める箕島も焦っていた。三塁走者に続いて二塁走者の森川も生還をねらったが三塁を大きくオーバーランしたところで止まり、三本間でアウトになった。試合巧者箕島としては珍しい走塁ミスだが、選手のやる気持ちはわからぬはなかった。箕島の左腕宮本は、それほど不調とは思えなかった。だが、横浜打者の打撃は鋭く、直球・カーブ・シュートと宮本の栗脱すあらゆる球種を見事にとらえた。
1回安西の左中間二塁打とバント失策で無死一、三塁と攻め、愛甲の一ゴロで1点。2回は沼沢、宍倉の連打でつかんだ無死一、二塁から送りバント、スクイズプレーと続けて2点目。3回は二死から吉岡が左中間二塁打。左翼手一遊撃手の中継ミスをついて三進。そのあと鳥飼が二遊間を破って3点目をたたき出した。
横浜は宮本に対して毎回の14安打、それでいて3点しか取れなかったのは箕島のピンチにへこたれない粘り強い守備力があったからだ。これ以上はやれない“4点目”を防いだ4回以降の守りでとくにすばらしかったのは、7,9回。7回は一死三塁でスクイズを見破り、9回は無死一塁から送りバントを併殺にした。力では投打とも横浜が勝っており、横浜の勝利は順当といえたが、14安打の相手に7安打の1点差の勝負に持ち込んだあたり、箕島の面目躍如たるものがあった。尾藤監督は「高知商、横浜と当り、箕島野球を思う存分見せ、はなばなしく散りたい」といった。箕島はまさに、はなばなしく散った。



第63回<昭和56年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
勢いづいた和歌山工の打線は怖い。中盤、集中打で一挙に逆転。投げても2回から沢村を救援した中田がコーナーを丁寧につく投球で田辺商打線をかわした。
3点を先行された和歌山工は5回、無死から敵失と四球で一、二塁、国本が送りバントを失敗して一死となったが、続く中田、谷口の連続適時打で2点を返した。6回には二死中田のとき三塁走者中野、一塁国本の意表をつく重盗で同点、さらに中田の右前打で国体が生還して逆転。たたみかけるように谷口が中越の二塁打を放って中田をかえし、この回一挙3点をあげた。
田辺商は1回先発沢村の立ち上りを果敢に攻め、深見の左中間二塁打で2点を先制した。3回にも救援の中田から2安打で1点を加えた。しかし、中盤からは中田の低めのカーブにタイミングが合わず、9回必死の代打攻撃も実らなかった。

投打に似かよった両チームの対戦は8回までお互いに一歩も譲らなかった。それまで放った安打はともに4安打、9回、力をふりしぼった海南が2安打と1犠打で貴重な1点を奪い、逃げ切った。
0-0のまま迎えた9回、海南は一死のあと中井、呉が連続中前にはじき返した。さらに西川が四球を選んで一死満塁の好機。続く石井は四球目を一塁線ぎりぎりに見事なスクイズバントを決め三塁走者を中井を迎え入れ、決勝点となった。
県和商は1,2,8回に走者を三塁まで送りながら得点に結びつけられなかった。9回二死後、代打の小川、塩路が連打して必死の反撃に出たが、崎浜が二ゴロに倒れ希望を断たれた。

<決勝>
「いいか、何でもいいから塁に出ろ」3回和歌山工・吉川監督は先頭打者の中田に指示した。1回のピンチを1点で抑え併殺で切り抜けた。2回、3回も併殺で得点を許さない。「よし、みんなががっちり守っている。走者を出せば流れが変わる」と読んだ吉川監督。期待にこたえて中田が四球、続く谷口は遊ゴロ、児玉も三塁ライナーで二死、「打線を信頼しているので」(吉川監督)という強攻策は裏目にと思われた。が、山本の三塁ゴロを川村がそらし一、三塁。江原の三塁ゴロが再び敵失となり、中田が両手をたたいて本塁ベースを踏んだ。結果的に試合の流れを変える1点となった。
勢いに乗る和歌山工は4回、先頭の浜野が右中間を破る二塁打、田中が送ったあと、国本は二球目、高めの速球を二塁前へ絶妙のスクイズ、浜野が躍り上がってかえり勝ち越した。 1回から激しいカネ、太鼓で応援を送り続けていたスタンドがわく。「海南タオセーヨ。」叫びが渦のように流れた。そのスタンドの一角に和歌山工一小柄な山本の母・和子さんが見えた。「甲子園行くからなひとこと言って家を出たんですよ。」とグラウンドいっぱいに小さな体をはずませる山本を目を細めて追っていた。
粘る海南を突き放したのは和歌山工の5回集中打だった。今大会、絶好調の谷口、児玉が連続二塁打した。「4回ごろから呉投手の球が高めに浮いていた。前に立って思い切りたたけと指示した」と吉川監督。言葉通りの打撃だった。山本の二塁ゴロで三進していた児玉も江原のスクイズが投前の内野安打となる間に生還、この2点。力投を続ける中田も「5回の2点で、体が楽になった」というほど重みのある追加点となった。
海南の先制攻撃も見事だった。1回、先頭の南村が中田の投じた二球目をたたくと快音を残し左中間を深々と破る二塁打。山野が確実に送った後、中井は右前へ適時打。一試合ごとに力をつけてきた海南の息もつかせぬ攻めだった。海南の攻撃は当っている四番呉を迎え波に乗るかこみえたが、呉は遊ゴロで併殺。追加点のチャンスは一瞬にして消えた。2回にも無死から西川が四球で出塁。石井の送りバントは不運にも一塁邪飛、飛び出していた西川まで刺されて2回目の痛い併殺。不運はさらに続き、3回にも酒井が死球で出塁したが、南村の二塁ゴロでまた併殺。「追加点、ダメ押しの好機だった。あれで試合の流れがガラリと変わった。」南口監督の思いも同じだった。
序盤、毎回のように走者を出していた中田は、海南の不運な攻撃と味方打線の援護でしり上りに調子を上げた。低め一杯のカーブと直球、ゆっくりとしたモーション、冷静を失わない投球に変っていた。中盤まで粘りを見せた海南打線も、立ち直った中田に7回以降は1人も走者も出せなかった。「試合前、今日はお前にすべてを任せるといったんです。中田はその通りのねばりの投球を見せてくれた。あいつの気力が初優勝を呼び込んだといってもいい。」吉川監督の顔がはじめてゆるんだ。

全国大会
<決勝>
和歌山工は基本に忠実な攻撃で先行した。1回、児玉が左前安打で出ると、バントで送って一死二塁、この好機に江原が二塁手左を抜いて1点。バックホームの間に二進した江原が中野の二ゴロで三進、続く谷口の二塁内野安打で加点した。星稜の左腕・浅香が立ち上がりにカーブの制球に苦しんでいるのを見抜き、ストライクを取りにくる直球にねらいをつけ、さらに各打者が走者を進めようとする打法をみせた。
星稜は好守に同校の持ち味であるうまさやしぶとさがなかった。1回の守りで致命的だったのは、一死二塁から江原の打球を処理した音のバックホーム。このため、打者走者に二塁を奪われ、中野の二ゴロで三塁を与えたことだ。これが2点目になった。徹底して守備の強化をはかり、細かい野球を身上にする星稜だけに惜しいプレーだった。また、打撃面でも、ねらい球が絞れなかったようだ。中途半端な大振りが目立ち、和歌山工・中田の内外角低めの変化球が打てなかった。4回に中村、6回に西川が球をよく引きつけ、本来の力を出したが得点に結びつけられずに終わった。
和歌山工・中田の投球は平凡に見えても内容は実に豊かだ。球速はなくてもほとんどの球が打者の手元で変化する。しかも低めをていねいにつき、打者の打ち気を読んで巧みにゆさぶった。
1回、近江は先頭の藤田が中前安打してすぐ二盗、田中のバントで一死三塁と中田を攻めつけた。だが、中田は少しもあわてず坂口を0-2から内角へ鋭いシュートで詰まらせ遊飛。二国には外角をついて二ゴロにかわした。もう一つのピンチは8回無死で代打古川が右越え三塁打された場面だったが、近江のスクイズ失敗で切り抜け完封した。中田が持ち味を出せたのは早い回。
主戦投手を右腕骨折で欠く熊谷商。一年生の松本では、やはり荷が重かった。スローカーブなどをまじえて懸命に和歌山工打線をかわそうと試みたが1回、児玉の二塁打と中野の一、二塁間安打で先制された。2回は安打やバントで二死二塁とされ、田中の左前安打を左翼手が三塁手に悪送球して2点目。さらに3回は、四球後、中野・谷口に短、長打を浴びて計2点を許した。投手が非力なのに、野手が足を引っぱるようでは熊谷商も苦しい。
熊谷商としては、ある程度の失点は覚悟のうえ、打ち合いで勝機を見いだしたかったのだろう。しかし、中田の低めによくコントロールされた速球、カーブをどうしても打ち込めず、7回まで1安打、8回、一死から根岸、原隆が連打してようやく一、二塁の好機をつかんだが、後続が凡退。9回も連打で一死一、三塁と『粘りの熊谷商』らしい反撃をみせたが、あと一本が出なかった。
和歌山工は、三試合を連続して完封、無四球の中田の力投もさることながら、守りが実に堅い。とくに中堅・岡本、遊撃・児玉が難しい打球を再三好捕し、中田をもりたてたのが光った。

京都商が見事な右翼打ちを見せた。3回一死後、まず中沢が外角に入るカーブを右前安打、つづく777の二球目にヒットエンドラン。777は外角球を一、二塁間に流し打ちして一、三塁間。777は次打者の初球に二盗を決めて和歌山工・中田を攻めつけた。中田は三試合連続無失点と安定した投球を続けていたが、やはり疲れていたのだろうか、直球、カーブもこれまでにみられた打者の手元にきてからの伸びと威力がなくなっていた。
中田は低めを突いた投球で内野ゴロを打たせ、このピンチを逃れようとしたのだろう。水本への2球目は外角低めへ落ちる球、だが、球威がないために水本はスクイズバントを成功させた。30イニング目の失点。心の動揺をつくかのように、堀田は初球を投手強襲安打して2点目を加えた。不調の中田とは対照的に、京都商・井口の右腕はさえた。初回から落差の大きいカーブを多投、和歌山工打線に決定打を許さなかった。このため和歌山工は5回まで無安打、6回に田中が初安打、二死二塁で江原が一、二塁間を破ったが、田中が三塁コーチの静止を振り切って本塁を突き右翼手からの好返球で刺された。中田が打たれ、打線がわずか4安打では和歌山工の敗戦も仕方がないだろう。



第64回<昭和57年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
終盤、激しい打撃戦になったが南部が7回、2本塁打を含む打者10人の猛攻で挙げた6点で辛勝した。7回逆転され1点をリードされた南部は一死後、左前打の植田を置いて土井が右翼越えの二点本塁打。さらに永井が中前打ちで出塁、葛本がヒット・エンド・ランを決め一死一、三塁とし続く山崎智が投前スクイズを決めた。本塁返球の間に一塁から三塁へ走った葛本は刺され二死となったが、湯川の右中間二塁打で山崎智も返って4点目、寺前が左翼越えの本塁打で2点を追加、この回一挙6点を入れた。
8回には無死一、三塁で永井が左前適時打して1点を加え、粘る智弁和歌山を突き放した。智弁和歌山は2回、佐藤の大会2本目の本塁打で先制、7回には佐藤の三塁打などで2点、8回にも長短4安打、打者一巡の反撃で4点を入れ食い下がったが、後半、疲れの見える三宅が打ち込まれ惜敗した。

新宮・松本が強豪吉備を散発6安打に抑えて完封、味方打線も7本の長打で援護し強敵を破った。新宮は3回、先頭の井戸が左前打し、二盗、小栗須の送りバントで三進、続く田中荘が一塁前へ絶妙のスクイズを決め先制、二死となったが松谷が左中間を破る二塁打のあと、たたみかけるように佐古口も中越え三塁打し、松谷がかえって2点目をあげた。
6回には二死後、玉瀬を二塁に置いて井戸が中越え二塁打して加点。さらに8回一死では三塁走者の田中政がスクイズをはずされ三本間にはさまれたが、本塁前でうまく回り込みだめ押した。吉備は前半、松本を攻め、3回には小原、岡本の連打、4回にも弓場の中前打、四球などでいずれも二死一、三塁の好機を迎えたが適時打がでなかった。終盤は回を追うごとに調子を上げてきた松本の速球にてこずり完敗した。

南部の主将杉本の投球数は12回で180球を超えた。四連投。ピンチの連続。『なんとか点をとってやりたい。』その回の裏、打席に立った土井は2球目、低めに入るカーブをすくい上げるように打つと球は右中間に、この日一人で3本目の二塁打だ。続く永井が投前に送りバント。見事に決まった。葛本に回った。『カウントによってはスクイズもある。だが最初は思い切って打て。』井戸監督の指示をうけて葛本はふるいに立った。葛本はこの日いいところがなかった。4回には一死一、三塁にスリーバントスクイズを試みてファウルで三振、8回新宮の攻撃で田中壮の二ゴロをはじいて二塁走者の生還を許した。『おれ一人で足を引っ張っている。今度こそ。』5球目、力いっぱい打った球はセンターに深々と飛んだ。中犠飛。本塁を駆け抜ける土井。優勝だ。選手たちは小躍りし、手を握り合った。涙、涙・・・・。
試合前の打撃戦の予想は見事に外れた。緊張感みなぎる投げ合いである。杉本もよく投げたが、新宮・松本も負けなかった。前半こそボールが先行、7四球を出した。しかし、同点に追いついた8回から調子はしり上がりに良くなった。守備陣も攻守でもり立てた。最後のふんばりだ。投球数120球を越えてからかえって球が生きてきた。南部打線がつまる、内野ゴロの連続だ。
12回の危機。松本はこう読んだ。『スクイズはない。打ってくる。それなら打者をつまらせる速球しかない。』しかし、球は外野へはじき返された。『低めの球を南部の打者はよく打ってきた。自分としては精いっぱい投げました。』と、二年生の松本。悔いの残らない懸命の投球だった。

全国大会
<決勝>
熊谷は1回、先頭の増田がファウルで粘って四球。小野が型通りバントで送ったあと、戸井田の二ゴロで三進。星野は2ー3からの真ん中絶好球を左中間二塁打して1点を先行した。走者を進めるチームバッティングといい、堅実な攻めは見事。こうなると、試合の興味は南部打線が熊谷のエース江頭をどう打つかにかかった。が、江頭はゆっくりしたモーションから内外角に速球を散らし、時折りカーブを交える丁寧な配球で南部打線のタイミングを狂わせた。南部は1回一死から山崎英が右前安打したが、二盗に失敗。さらに四球と死球で二死一、二塁。だが、杉本が2ー1と追い込まれたあとのカーブに体が泳いで投ゴロ。得点圏に走者を進めたのはこの回だけで、結局、3安打に抑え込まれた。速球に降り遅れていただけに下位打者はバットを短く持つなどの工夫が欲しかった。熊谷は7回まで12残塁。南部の思い切ったバントシフトに惑わされ、打って出て併殺されるなど、中盤は焦りがあった。今後の課題だろう。



第65回<昭和58年>全国高等学校野球選手権大会

<準決勝>
向陽は終盤1点差に追い上げたが、箕島が序盤に挙げた3点を守り切り、辛勝した。
箕島は2回、先頭の山下が中前打、続く硯も内野安打で出塁。川村がバントで手堅く送った後、角田が右犠飛で山下をかえし先制。3回も連打で出た吉井と千川を山本が確実に送り一死二、三塁、続く勘佐が投前へ絶妙のスクイズを決め吉井が本塁を踏み2点目。二塁走者千川も一気に本塁をうたがったが、三本間で挟殺。この間、勘佐は一塁に生き続く山下の豪快な右翼越え三塁打で生還。3点目をあげた。向陽は3回一死から家永が右越え二塁打、二死後、間宮・本脇が連打して1点を返した。8回無死からは間宮が中越え三塁打で出塁。一死後、長雄がスクイズを決めた。しかし、反撃はそこまで家永は4回以降、気力あふれる投球で箕島打線を抑えた。しかし、5回無死二塁、6回二死二、三塁の好機に適時打が出なかったのが痛かった。

御坊商工は三原、吉備は木本が本塁打を放つなど見ごたえのある展開となったが先手を取った吉備が終盤、御坊商工・関投手の乱れに乗じて決勝点を挙げ逃げ切った。
吉備は同点で迎えた7回、代わったばかりの関に襲いかかり一死後、弓場、岡本の連続四球で二死満塁。続く木本がうまく中前へはじき返して決勝点を挙げた。
一回、弓場の中前打と木本の中前適時打などで先制した吉備は2回一死で、二塁走者、中村文が生還、1点を拾った。中盤、奥山が打ち込まれ苦戦したが、1点をリードされた6回、先頭の木本が球威の落ちた森下から、
右中間にに大会17号の本塁打を放ち同点に追いついた。
御坊商工は、1点差と迫った5回二死、左前打の浜口を一塁に置いて、三原が右翼席に大会第16号を放って逆転。吉備を上回る長短13安打を放ち、7回を除いて毎回塁上をにぎわしたが、好機に決定打が出ず涙をのんだ。

<決勝>
箕島・吉井投手の137球目の球は快音を残して右前へ抜けた。『キャー。』三塁側の吉備応援席から悲鳴が上がる。しかし、箕島・山下右翼手からの送球が勘佐一塁手へ。塁審の右手が上がった。試合終了。けがで負傷、ベンチから声援を送っていた主将の田伏が躍り上がるように本塁前へ。名選手とがっちり握手を交わした。
先手をとったのは箕島だった。2回、先頭の山下が捕邪飛に倒れた後、続く硯が打席に。対市和歌山商、智弁和歌山戦で本塁打を放っている。一球目ストライクの後の二球目。171センチ、79キロのがっしりとした体がびゅんと回った。打球は一直線で左翼席へ箕島のパワーが早くも爆発した。勢いづいた箕島は3回、先頭の吉井が左前打で出た。千川が手堅く送った後、山本は四球、勘佐が左前打を放って一死満塁の好機。山下が左打席に入る。『スクイズ』しかし、山下は外角への難しい球を左翼線へ巧打。三塁走者吉井に続いて、二塁走者山本も本塁を駆け抜けた。吉備も必死だ。一回、中前打で出塁した先頭打者出崎は、弓場の送りバントで二塁へ頭から突っ込んだ。『打倒箕島が私の野球人生のすべて』という林監督の闘志が選手に乗り移ったかのようだ。続く岡本の三塁ゴロは野選となり、一塁に生きた。しかし、箕島・吉井投手は落ち着いていた。中村に四球を与えて二死満塁のピンチになりながらも、ストライクを先行させて坂本を投飛に打ち取った。吉備・奥山投手も踏んばった。多投していたカーブが打たれ始めるとみるや、伸びのある速球と大きく曲がるカーブを投げ分け、4回から7回まで箕島打線を無安打に抑えた。8回、吉備打線は奥山の力投にこたえた。この回一死から出崎が見事な左翼越え二塁打。二死後、岡本は四球を選んだ。三塁側応援席から『ワッショイ』コールが続く。期待にこたえた木本の打球は中前へ。山崎が本塁を踏んだ。点差はあと2点目。9回、吉備は代打攻勢をかけた。一球ごとに箕島・吉井投手をにらんで、食い下がる吉備の打者、しかし、吉井の懸命の力投に追撃も及ばなかった。

全国大会
<決勝>
延長13回、相手の2失策につけ込み、角田の決勝打で逆転サヨナラ勝ちした箕島だが、この優勝好捕を最後まで苦しめ抜いた吉田の健闘がひときわ光った。
その最大の原動力は、左腕・三浦の巧投である。球威不足を大きく割れるゆるいカーブで補い、箕島打線の打ち気をうまくかわした。だからこそ、6回まで安打1本。内野ゴロ10個封じることができた。7、9回、硯の連続打席本塁打で追いつかれはしたが、これは彼の打撃力をほめるべき。延長に入り、球は上ずって来たが、気力で投げた。その点、13個の守りで一死一塁から山下の犠牲バントを捕手が一塁へ悪送球、さらに硯敬遠のあと、遊ゴロの処理ミスが出たのは三浦にとって気の毒だった。
吉田は、3回無死から三塁打の桑原を柴田が右前打でかえして先制。5回にも三浦の中前打をきっかけに2点目と下位打線が活躍。また、7回。1点差とされた場面で川村の右翼大飛球を山中が後ろ向きで好捕するなど、すがすがしい善戦だった。
箕島は、受け身に回ったのが苦戦の原因。吉井の出来がいまひとつだったこともあるが、延長後、再び攻めが緩慢になるなど反省材料は多い。

箕島が強さと弱点の両面を見せた。強さを感じさせたのは、バントを多用しての得点経過。一回戦の吉田戦では、大味な攻めをして苦戦したが、この日は一転して手堅い攻めを見せた。1点を追う2回には硯の安打をきっかけにバントと安打で一死一、三塁とし、小林がスクイズを決めて同点。なお二、三塁と攻め、千川が高めの内角球を鋭い振りで中前へたたき返し、二者をかえした。バント攻めで相手のを脅かしたあと強打で加点と多彩な攻めだった。5、6回も併殺崩れやバント攻めでソツなく得点した。しかし、吉井の投球と内野の守りは心もとない。1回、駒大岩見沢の小林が三盗すると相手の三塁送球を三塁手が後逸して先制点を許した。9回には4点差を背負いながら力んで制球が甘くなり、内野ももたついていた。代打岡の二塁打で2点差と追い上げられ、なお一、三塁と危なかった。
駒大岩見沢は、選球眼がいま一息、好機で難しい球に手を出すなど、制球に苦しむ吉井を助けてしまった。伸び伸びとプレーすることも大事だが、送りバントなど基本の徹底練習も必要だろう。

朝早い試合で、箕島のコンディションは万全でなかったようだ。吉井は立ち上がりから制球が悪く、コーナーを狙った球が浮き気味。加えて守備の動きが鈍く、1回、いきなり2点を先制された。先頭町田に遊撃右へ内野安打され、吉野の送りバントを間に合わない二塁に送って一、二塁。さらに山下の二塁右へゴロを野手が体に当てて安打にし、満塁。このあと津野に押し出しの四球、続く岸本の強い二ゴロを野手がはじいて併殺を逸し、三塁から吉野の生還を許した。2回にすぐ1点を返して追い上げ機運に乗りかけた箕島だったが、肝心の吉井が依然、制球難。その裏、二死から2四球と安打で再び満塁のピンチに立ち、津野に不用意に投げた初球の真ん中直球を左へ打ち込まれ、早々と大勢を決められた。



第67回<昭和60年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
和歌山工は箕島の好投手西原から9安打を奪って打ち崩し、森岡投手も再三ピンチに立ちながら要所を押さえて力投、箕島を完封した。
和歌山工は2回、先頭打者有田の死球を足がかりに、山下が三遊間安打を放って一死一、三塁と好機をつくり、信定の中堅への大きな犠飛で有田が生還、先制点をものにした。9回には左中間に二塁打を放った貞包を山下が投前バントで送り、信定が中前適時打を放って貴重な追加点をあげ、下位打線の勝負強い打撃が光った。
箕島は8、9回を除いて毎回走者を出しながら、好機に一発が出なかった。4回、先頭打者岩崎が左前安打を放ち、左翼失で二塁まで進み、坂本の犠打で一死三塁と攻めたてた。しかし、九鬼がスクイズを試みたが空振り、岩崎が三本間にはさまれアウト。7回にも森川の安打などで二死二、三塁としながら、原井のいい当たりが投直となるなど、森川投手を打ち崩せなかった。

田辺、高野山の4投手がそれぞれ持ち味を出して好投し、1点を争うシーソーゲームとなったが、田辺は9回、高野山の本格派投手、山田の速球を狙って3連打を浴びせ、逆転勝ちした。
田辺は9回、四球の高山を森が投前バントで送って一死二塁とし、岩本幸が右翼線へ二塁打を放って高山が生還、土壇場で同点に追いついた。さらに硲の左前安打で一死一、三塁とし、菅井のバントが遊前に転がって内野安打となる間に岩本幸もかえり、決勝点を奪った。
高野山は8回、前川の右前安打、盗塁、森脇の遊失で一死一、三塁の好機に、休場が一塁前にスクイズを決め、内野安打となる間に前川がかえり、一時は勝ち越した。しかし、三塁に走者を進めた2、6回の好機に一発がでなかったのが最後まで響いた。

<決勝>
和歌山工にとって苦しみ抜いての勝利だった。3回表、1点をとられたあと、すぐ同点に追いついたものの、ずっと田辺に押され気味だった。6回一死で森岡が打席に立った。投打のかなめのはずの森岡も、大会に入って打撃が不振だった。「僕がなっとかしなくては」。森岡はバットを振り切り中前へはじき返した。続く有田は支給を選んだ、そして、この大会で4割を打っている貞包の当たりが右前にポトンと落ちた。「やった満塁だ」
岡田監督は次打者の山下に「外野フライでいいから思い切り行け」とハッパをかけた。前の打席にスクイズを失敗している山下は「高めの球が来たら力いっぱい振ろう」と打席に立った。1球めのボールのあと、高めの直球が来た。「カーン」。打球のはぐんぐんのびた。深い位置で中堅手の高山が捕った。「ゴー」。三塁コーチの西田の声に、三塁から森岡が必死に走った。返球は来なかった。森岡はガッツ・ポーズをしながら本塁を踏んだ。「やった。勝ち越し打」。ベンチの緊張した空気もやっとやわらいだ。「逃げまわるな、バックを信頼して向かって行け」。岡田監督の指示通り、リードしてから森岡の制球も一段とよくなった。捕手の山下は8回、右人さし指のつめをはがしながらも好リードを続けた。9回、自分の失策で危機を招いた遊撃手の石井があざやかに併殺を決め、勝利を導いた。
一戦ずつ力をつけてきた田辺もよく戦った。3回、2番田辺が四球を選んだ、そして森岡のすきを見て二塁へ盗塁した。この大会で当たっていない高山がすかさず左前へ打ち返した。一死一、三塁だ。「田辺が大将。田辺が大将」。応援団の歓声が球場を包んだ。「森、頼んだぞ」。4番の森は球を思い切りたたいた。「しまった、併殺だ。ゆるいゴロを三塁手が取って二塁へ送球した。「アウト」。森は必死に走った。一塁は「セーフ」。すでに三塁から本塁を踏んでいた田辺は「やった。1点取ったぞ」跳び上がった。
しかしその後、毎回のように走者を出しながらあと一発が出なかった。和歌山工の好守の前に田辺創部88年目の甲子園の夢はかなわなかった。

全国大会
<2回戦>
巧みなバント、優れた選球眼、積極的な打撃。海星の勝利は、これらをからめてのものだった。
1-1の3回、2四球で無死一、二塁とし、打者の林が三振の時に重盗を決め、市野が左前へ2点適時打。これで活気づき、藤田のバントヒットや野崎の左前安打で追い打ちをかけた。市野、平野はともに内角の直球を好打したが、腰の回転が鋭かったために球足が速かった。
5回にも鮮やかな攻めをみせた。野崎、石田、乾、北野、奥田が森岡、塩崎両投手に5連安打を浴びせる中堅返しの打法。これで7点差とし、左腕の北野が持ち前の鋭いカーブと重い直球でかわした。
その北野に和歌山工は、力負けしたようだ。4回、貞包、山下の連安打なので一死満塁としたが、あとが続かず二者三振。遠回りのスイングだったためカーブについていけなかった。
先発の左腕、森岡が制球を崩したのも大きな敗因。コースを狙いすぎたようで、伸びのある直球とカーブを生かせなかった。本人にすれば、悔やまれて仕方のない投球だろう。



第68回<昭和61年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
箕島が好機に安打を集め、守っては尾藤を救援した原井が好投、大成に快勝した。
丁寧な投球の山本に、3回まで無安打に抑えられた箕島は4回、左前打の阪本を江川がバントで送り一死二塁。ここで福田が左中間に二塁打にして先制、二死後、安川も左翼線に二塁打して2点を挙げ、主導権を握った。初球ストライクから積極的に打っていく攻撃が功を奏した。後半疲れのみえる山本を攻め、7回には原井の左翼線二塁打と武内のスクイズで2点、8、9回にも加点して勝負を決めた。
大成は1回、2四球と奈須の左前打でつかんだ二死満塁の好機に山本のいい当たりのゴロが投手正面をつき、先制できなかったのが痛かった。この打球を尾藤が左足にあてて降板、2回から救援した原井からも6安打を奪ったが、適時打がなく涙をのんだ。部員14人の小所帯ながらベスト4まで勝ち抜いた健闘は立派だった。

両チームの先発投手の調子がいまひとつで、本塁打を応酬する打撃戦となったが序盤に大量点をあげた桐蔭が優勢に試合を進め、追いすがる耐久を振り切った。
桐蔭は1回、金持を攻め、先頭の根木が左前打、続く河﨑が初球を左越えに大会10号の2点本塁打して先制、さらに左越え二塁打の中井も犠打と敵失でかえって計3点を奪った。2回は谷地の左越え大会12号の本塁打、3回には安打と2四球で二死満塁とし、救援の森川淳から小松が右中間に二塁打して2者を迎えた。5回には長短2安打などで2点を奪い、突き放した。
耐久は8回、高田の二塁打を足場に四球、二塁ゴロ失で無死満塁と好機、石谷の中前打と押し出しの四球で2点を取って3点差に詰め寄り、なおも一死満塁。が、三木が二塁ゴロで痛恨の併殺を喫した。2回には山家が左翼へ大会11号の場外本塁打、5回には中越え三塁打の一坪が三木の右前適時打でかえるなど桐蔭を上回る11安打で健闘したが、一歩及ばなかった。

<決勝>
9回裏二死、5-3とリードされた箕島は走者二、三塁。一打出れば同点だ。桐蔭、鹿嶋がマウンドに、打席には松尾。両校の応援席は総立ち。すごい歓声が紀三井寺球場に響く。その中で鹿嶋は意外と落ち着いていた。「バックを信じて打たせてとろう」。勝負球は一番得意なカーブだった。外角低めへ。松尾が懸命に打った球は二塁ゴロ。がっちりつかんだ河﨑が一塁の吉田へ。「わーっ」と歓声が三塁側に、悲鳴が一塁側にわいた。古豪桐蔭が25年ぶりの甲子園出場をつかみとったのだ。
桐蔭には、苦しい試合だった。1回に先攻したものの5回には、内野守備の乱れが出て逆転された。7回追いついたが、すぐにリードされた。さすがに逆転の連続で勝ち抜いてきた箕島だ。が、桐蔭の選手たちは、ミーティングでの監督の河野允生の言葉を腹に収めていた。「相手は同じ高校生だ。最後まで自分たちの力を信じてあきらめるな」。「まだ負けた訳ではない」と自らを奮い立たせた。
9回、反撃の口火は先頭の谷地が切った。左前打。根木ががっちりバントで送る。打席に入った河﨑は投手に向けて気合を入れた。「必ず打つ」。ベンチは総立ちだ。「カーン」。打球は右翼線へ。谷地が三塁を回って本塁へ突っ込む。同点。中井が右前打して一死一、三塁。逆転の好機が続く。
打者は津呂、4番の意地にかけても、ここは打たねばならない。「思い切り振るだけだ」。1-1からの3球目、カーブをはじき返した打球はライナーで中前へ。河﨑が右手を高々と挙げて本塁を馳け抜けた。さらに吉田も適時打した。スコアボードには「3」。2-3が5-3になった。「ここ一番に弱い」といわれた桐蔭、選手たちは早朝の自主練を黙々と続けた。どこにも負けない練習量、それにヒーローはいないが、チームワークの全員野球。その「新しい桐蔭野球」が「甲子園」につながった。「先輩たちの伝統を受け継ぎながら、自分たちのチームカラーを加えて新しい伝統をつくりたい」。主将の根木はそういった。
箕島の戦いぶりも見事だった。主戦・尾藤は、準決勝の大成戦で打球を左足に受けて降板。一晩冷やし続けての登板だった。実は右足も痛めていた。大会前の走り込みで肉離れ。しかし、それを監督である父親にも隠し続けた。この日は、高めにボールが浮く苦しい立ち上がり、1点を先行されたが、主戦の意地で、7回、原井にマウンドを譲るまで投げ抜いた。
1点の重荷は5回、2安打と敵失などで、あっさり逆転した。追いつかれた7回には代打松岡が中前打で武内をかえし、また突き放した。ここというときに、一人ひとりが役割を果たす「箕島野球」。それが松岡の快打だった。
逆転された9回裏、楯本、武内が、桐蔭、鹿嶋に連打を浴びせた。江川がバントで送り一死一、三塁、後続は断たれたが、今大会、逆転で勝ち進み、決勝戦でみせた見事な粘りは、紀三井寺のファンに強烈な印象を残した。

全国大会
<1回戦>
宇都宮工は、相当に鍛えられたチームだ。飛び抜けた選手は見当たらないが、プレーの端々にそれを感じさせた。
2-2の7回無死一塁で、8番の田宮がカウント2-3後の球をバントの構えから強打、左前へヒット・エンド・ランを決めて一、三塁とした。下位打者だから2ストライクを取られていてもバントで走者を進めるのかと思われたが、ベンチは強攻、田宮も期待にこたえた。続く荒川の三塁内野安打で決勝の1点を挙げただけに、この思い切りのよい攻めは、同点にもっていった4回のスクイズも鮮やかだった。
桐蔭の攻めもなかなかのものだった。1回に津呂、2回に谷地が適時打し、各1点を奪った。田宮の甘い内角球を小さな振り幅で好打。9回にも、河﨑、津呂の安打で二死一、二塁とするなど、よく粘り再三の好守とともに評価してよかろう。
大会記録 無失策試合 通算104度目



第69回<昭和62年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
両チーム合わせて24安打が飛び交う打撃戦。相手のミスに乗じた智辯和歌山が、土壇場で市和歌山商においつき、うっちゃった。
智辯和歌山は9回、一死から2四死球で一、二塁とし、堀口の左前安打で同点。そして10回、先頭の泉が左翼線に二塁打、大井死球、坂上の送りバントを焦った捕手が野選して無死満塁。ここで南方が、終盤になって直球一本やりだった市和歌山商・松本の初球を左前にたたき、サヨナラ勝ちした、2、5、6回と合わせ、好機を確実にものにした智辯和歌山は創部9年目で初めて決勝に進んだが、球を手元まで引きつけ、思い切り振り抜く打撃は迫力いっぱいだった。
市和歌山商は1回、4長短打を南方に浴びせ、鮮やかな先制攻撃を見せた。リードされた8回には、二塁打と次打者の内野安打で三進した坂東が神前の右前打でかえり同点、9回には、松本のワンバウンドでフェンスに当たる中越二塁打で勝ち越し、勝利を手中にしたかに見えたが、頼みの松本が最後まで単調な技術になり、競り合いに負けた。2回の無死三塁、7回の一死一、三塁好機に、強攻策で無得点だったのが惜しまれる。

吉備打線が箕島の主戦、尾藤を見事に攻略、58年以来、4年ぶり3回目の決勝進出を決めた。
吉備は2回、先頭の佐原が中前打、一死後、山本、松本が続けて左前へはじき返し、先取点。箕島、尾藤は前日の対伊都戦の延長16回、217球の疲れのせいか、得意の速球、カーブともに切れ味がいまひとつ。4回には一死から、山本が高めの速球を左翼芝生席に打ち込む、今大会6本目の本塁打で加点。6回には死球の走者が盗塁、犠牲バントで三塁に進み、山本が中前に適時打して小刻みに点を重ねた。
箕島は今大会、相手に先行される展開はこれが初めて。1回、吉備、芝野投手の立ち上がりを攻め一死一、二塁の先制機を迎えたが、内野ゴロで併殺、5回には二死ながら3連打で満塁としたものの、芝野の内外角を巧みにつく落ち着いた投球に適時打が出ず、完封敗けを喫した。  本塁打 山本  二塁打 藤野

<決勝>
緊張の1-1で迎えた9回裏、智辯は先頭の泉が吉備、芝野の初球をたたき、三遊間を抜いた。大井はすかさず初球を確実に投前犠牲バント。日頃の練習成果が一つずつ実を結びながら好機をふくらませる。坂上も初球の高めの直球をたたいた。球は二塁ベースわきを抜け中前に。一死一、三塁で、次の打者は、準決勝の市和歌山商戦でサヨナラを放ち、この日も3打数2安打と大当たりの南方。「よし、サヨナラ!」智辯ベンチはがぜん盛り上がった。
吉備のベンチから岩鼻忠が伝令に走った。吉備、林監督からの指示は「勝負するか、くさいところを突くか、はずして敬遠するか」。選手の自主性を大事にして、2年生中心の若いチームに伸び伸び野球をさせてきた林監督は、最大の危機でもその姿勢を崩さなかった。たった3球で招いた危機に芝野は動揺した。芝野の答えは「はずす」。満塁策をとった。
一死満塁。智辯は今福に代えて、一年生の左打者上出を打席に送った。智辯・高嶋監督は「上出なら外野飛球は十分打てる。ベースに近づいて思い切りたたけ」と激励して打席へ送った。上出は芝野の外角寄りの直球を見事なスイングで中前にはじき返した。三塁から泉が躍り上がって本塁に馳けこんだ。2-1 智辯の鮮やかなサヨナラ勝ちだ。54年の創部以来初めての夏の甲子園出場。全校生徒約1,000人でごったかえす一塁側応援席は喜びで沸いた。
先取点を取ったのは吉備だった。2回表、吉備は二死一塁から福居が右前に落として一、三塁。納への2球目。一塁走者の福居が果敢に走った。捕手今福は低めの球を二塁へ投げた。これをカットしようとした投手、阿波屋がはじき、三塁走者松本が本塁へ馳け込んだ。重盗成功で先取点。吉備の足技で智辯にいやなムードが覆った。しかし、今年の智辯の攻撃はここから本領発揮する。すぐ2回裏、泉が芝野の真ん中直球をジャストミートして左越えに本塁打して同点に、試合は再び振り出しに戻った。
吉備、芝野はこの日球の切れがなく、調子は悪かった。しかし、内角へ直球、外角へカーブを投げ分け、打たせて取る投球でしのいだ。7回裏、坂上、南方に連打され、無死一、三塁。芝野がモーションを起こした瞬間、三塁走者坂上がダッシュした。芝野が球を投げる前に佐原が立ち上がった。スクイズをはずされた智辯は絶好機を逃し、勝負は終盤に持ち込まれた。
打のチームといわれてきた智辯。それは投が弱いということの裏がえしでもあった。阿波屋の好投はそんな評判をくつがえすほどのものだった。185cmの長身の左腕から投げ下ろす球は、内外角を鋭くついた。内角のシュートも良かった。
智辯の試合ぶりはこれまで大味なものが多かった。高嶋監督も「粗削りなチーム」と認める。この粗削りな野球が魅力でもある。甲子園では和歌山大会の勢いをそのまま持ち込み、激しい闘志をぶっつける試合をしてくれることを期待。

全国大会
<1回戦>
1点を追う東北の前半は、それまで2度の同点機を、いずれもバントのまずさやサインの不徹底からスクイズ失敗で逃していた。しかし、5回、小野寺と高城の安打でつくった一死一、三塁で、堀篭が初球スクイズを成功させ同点。6回には斉藤、橋本の安打などで一死満塁と阿波屋を攻めつけ、小野寺が初球ストライクを狙って中犠飛、決勝点を奪った。
智辯は、2回に大井、坂上が、橋本の直球に的を絞って連安打、それではと、カーブに切り替えたのを、南方が巧打の左前適時打で先制した。このあたり、打力を重点にチームづくりした成果はあったが、後半は強打に頼るあまり、橋本のゆさぶり投法に巻き込まれた。
東北といえば、いつも長打が自慢の大味なチームなのに今大会のチームは7バントが実証するように、しぶい野球に変身していた。ここに逆転勝ちの要因があったと思う。



第70回<昭和63年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
高野山が終盤猛打を爆発させ、橋本の初めての決勝進出を阻んだ。
高野山は3回、先頭の吉本が中前打で出塁。盗塁と送りバントで一死三塁としたあと、坂本が2-2からの外角の直球を中前に打ち返して先制した。中盤は中村の丹念にコーナーをつく投球に3人ずつの攻撃を繰り返したが、7回、自慢の猛打が爆発して勝負を決めた。
この回、無死から江川孝、阪本が連続中越え三塁打を放って口火を切り、さらに四球などで無死満塁とし、江川浩のスクイズ、吉本の左前打、死球、右犠飛など大技、小技を絡めて一挙に8得点、試合を決定づけた。中村の球が疲れのために浮いたことを差し引いても、しっかり呼び込んで確実なミートで鋭く振り抜く打法はすばらしかった。
橋本は4回、二死から浦口がチーム初安打の左越え二塁打したが、あとが続かず無得点。9回には一死から森田が右前打したが、後続が連続右飛。植-江川孝の前に結局、この2安打に抑え込まれた。狙い球を絞り切れなかったのが惜しまれる。

箕島がそつのない攻めで好機を着実にものにして智辯和歌山を振り切った。箕島は2回、敵失をきっかけに角田、増田の連続安打で先制、さらに4回には一死一、三塁で、打者角田の時、いったんはスクイズを外され、二死二塁となったものの、角田は中越え三塁打を放ち計2点。変わりかかった流れを再び自陣へ引き戻した。
5回にも、箕島は二死一、三塁で上中の遊撃左への内野安打で加点、打者西川の時、智辯和歌山の南方が暴投して4点目をあげた。さらに6回には、岡、増田の長短打で1点、9回も3長短打と送りバントなどで2点を奪う力強い試合運びで、智辯和歌山を突き放した。
前半を増田に抑えられていた智辯和歌山は、6回、楠の中前安打を足がかりに二死満塁と攻め、土井の中前適時打と敵失で2点を返した。しかし、つきがなく、8回には無死一塁で杉山の痛烈な当たりが遊撃手の正面を突いて併殺打となるなど、好機を生かしきれなかった。

<決勝>
1点リードされて迎えた6回、高野山は二死二塁の同点機をつかんだ。鈴木監督は次打者江川孝をベンチに呼んだ。そして「思い切って振ってこい」とひとこと。江川孝は大きく息をして打席へ向かった。
5球目までは全部カーブで2-3.だが、江川孝は動かなかった。カーブが苦手ということと、どうにかしなければという気負いで金縛りに遭ったようになっていたのだ。6球目、この打席初めての直球をファウル。これで江川孝の緊張がほぐれた。「あれこれ考えず、なんでもきた球をたたこう」。一回打席をはずし、バットを握り直す。そして7球目。内角の直球、バットが自然に出た。打球は右中間へ。二塁走者、坂本はゆっくりと生還。江川孝は二塁を回って三塁へ。右翼手-二塁手-三塁手へと転送された箕島の返球が三塁手の前でそれた。江川孝は頭から本塁へ滑り込んだ。勝ち越しの3点目、箕島の選手たちの表情が一瞬沈んで見えた。
高野山の粘りが見事だった。先取点を奪われたすぐあとの4回には、二死満塁から池上が外角低めの打ちにくいカーブを右前に運んで同点。逆転したあとの追加点がほしい7回には、相手のミスで無死三塁としたあと宮本が外角のカーブを中前にたたいた。「5、6点は取って打撃戦に持ち込みたい」。試合前に鈴木監督が話した通りの試合運びとなった。
植を救援した宮本の好投も見逃せない。箕島の打線を相手に5回3分の2を投げ、散髪5安打にかわした。気負いのない宮本の投球と気負って強振した箕島打線のコントラストが勝敗を左右したように見えた。
監督20年目で初めての甲子園の土を踏む鈴木監督は「1点差でようやく勝った初戦の日高中津戦をはじめ、どの試合も中盤までは冷や汗の連続。後半に得点して勝負を決めて来たが楽な試合はひとつもなかった。この競い合いの中で一試合ごとに選手がたくましくなった」と大会5試合を1試合ずつ思い起こしながら話した。
「チャレンジ精神で」と試合前、監督も主将も話していた箕島。4回、四球の浜口をバントで送り、西川が右翼線へ二塁打、先制の1点。「これからの箕島のペース」と思わせた。その通り、5回にも増田が左前打、手堅く送ったあと、中西が右中間三塁打した。スタンドが期待した9回も、ついに終わった。ノーシードながら市和歌山商、星林、日高、智辯和歌山を倒して決勝に出た。「さすが箕島」とファンを喜ばせ、大会を大きく盛り上げた。

全国大会
<1回戦>
高野山の堅い守りに点差を広げることができなかった堀越は9回、一死から築野が遊撃内野安打。井上が送ったあと築野は三盗を決めた。ここで小森が右翼線に二塁打し3点目。さらに土橋の内野安打で一、三塁。阿部の初球の時、土橋が二盗を試みて一、二塁間で挟まれている間に小森が生還、決定的な1点を加えた。
堀越は2回まで、高野山の先発植の緩い球を打たされて三者凡退していた。だが、引きつけて振り抜く鋭い打撃にかえて、3、5回に1点ずつを入れ優位に立った。また、高野山のいい当たりをよくさばいた二塁手井上の好守も、主戦の竹内をもり立てた。
高野山は、堀越、竹内の角度ある重い速球をうちあぐんだ。しかし、9回、先頭の坂本が左翼へ本塁打。二死後も阪本が三遊間安打するなど最後まで食い下がる粘りが目を引いた。



第71回<平成元年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
打力に勝る智辯和歌山が相手投手の立ち上がりを攻め先制、その後も大量安打で得点を重ね守っては三重殺を決めるなどして田辺のチャンスをつぶした。
智辯和歌山は1回一死から蒲田が左前安打して出塁、続く楠の中越え三塁打で先制。動揺した橘から上出が四球を選んで一死一、三塁としたところで篠崎がスクイズ、2点目をあげた。
智辯和歌山は、その後も攻撃の手をゆるめず、2回には4四球、2安打と敵失で5点、その後も着実に加点し、田辺の追撃を許さなかった。
今大会「逆転の田辺」で調子づいている田辺は、1点かえしたあとの5回、尾崎の内野安打、玉井の左翼線を襲う二塁打、田中が四球を選んで無死満塁としたあと、那須の中前安打で2走者を迎え入れた。無死一、三塁となおも好機が続いたが、坂本の三ゴロで一塁走者が二封、その間に三塁を飛び出した田中がはさまれ二死、さらに坂本が二進を狙ったが刺され三重殺、せっかくのチャンスをフルに生かすことが出来なかった。

大会屈指の右腕砂村も、コンパクトながら力強い桐蔭打線には通用しなかった。
桐蔭は今大会12イニング無失点できた星林、砂村を攻め、1回一死から松山が中越え二塁打、川口のバントヒットと二盗で二、三塁としたあと新田の中犠飛で先取点を挙げた。3回には川口の本塁打で加点、5回にも前川、小西、岡本の連打で2点を挙げて引き離した。速球に自信を持つ砂村だけに、足を生かした先制の1点に続く川口の本塁打で動揺があったのかも知れない。
さらに救援の小久保からも7回、前川、小西の連打などで2点を取り試合を決めた。
星林は、桐蔭の先発、前川に対し2回、先頭の武輪の左越え安打と敵失、犠飛で1点、3回にも先頭の庄堂の三塁打とスクイズで1点を入れ、ここまでは桐蔭と互角の戦いをした。しかし、その後は、落差のあるカーブを武器とする前川を打ち崩すことができなかった。

<決勝>
グラウンドに、スタンドに張りつめた4時間近い緊張の糸が13回裏に切れた。この回智辯和歌山、二死満塁。一打サヨナラを迎えた。打席には、今大会4割と当たっている永井が立った。
6回途中からマウンドに上った桐蔭の三宅投手の外角低めの直球に「ホームランを狙って」バットを出した永井の打球が右翼手前川の前に落ちた。三塁から杉山が万歳をしながらホームベースを踏んだ。熱闘は、この時終わった。桐蔭の捕手佐々木が本塁上でヘタリこんだまま動こうとしない。
勝利のきっかけは、杉山がつくった。副主将で主戦投手。「とにかく打って塁に出よう」。自分に言い聞かせていた。1、2戦で先発したものの、2戦の新宮商戦では2回投げたところで、楠に救援を求め、準々決勝、準決勝は1年生の小久保が投げ、マウンドに立たせてもらえなかった。その悔しい思いが爆発した。二死だった。三宅の3球目をジャストミート。打球は右翼手前川の頭を越え、2バウンドしてフェンスに当たった。二塁打となった。
桐蔭は、次打者藤本に敬遠策をとった。空いている一塁を埋め守りやすくするためだった。これが裏目に出た。4球目を藤本が選んで一塁に走りかけたとき、杉山が虚をついたように三塁に向けて走った。「全くの単独盗塁です。いちかばちかかけてみた」と杉山。驚いた捕手佐々木は三塁へ送球、タイミングは合うと。ところが白い球が三塁手中村昌のグラブから落ちていた。
三宅に動揺があったかもしれない。二死一、三塁から桐蔭ベンチは満塁策を指示、小久保を歩かせた。ここで長居を迎えたのである。
試合は前半桐蔭にやや分のある展開だった。桐蔭は6回、一死一塁から、今大会2本の本塁打を放って当たっている小西が中前に安打、続く岡本も中前に打ち返して満塁。桐蔭は代打に大道を送る。このとき杉山が暴投。三塁から新田がかえり先制した。しかし、その裏、智辯和歌山がおいついてから一進一退の攻防が続いた。
桐蔭の短く握って鋭く振る力強いバッティングも、変化球でタイミングをはずしにくる杉山と内角に食い込むシュートと外角に決まるカーブをうまく使い分けた小久保にかわされ、得点につなぐことができなかった。
延長に入ってからは両チームの選手とも疲れをみせるどころか必死に球を追い、送球、攻守交代のテンポも速く、スタンドはがっぷり四つに組んだ好試合にわいた(戦評は朝日新聞より)

全国大会
<1回戦>
成東が苦しんだ末、11回に智辯和歌山の守りの乱れに乗じて決勝点を挙げた。この回、先頭の池和田が左前安打。小久保の一塁けん制悪送球で難なく二塁へ進んだ。本田の投前バントを小久保が間に合わぬ三塁へ投げ一、三塁、ここで鈴木が1-2からの直球を中前へはじき返し池和田を迎え入れた。それまでの成東打線は振りが鈍く、智辯の変化球攻めにタイミングが合わなかった。
リードした智辯和歌山は8回、一死から杉山が3本目の安打を打たれると小久保にスイッチ。しかし、押尾、大野に安打を許して追いつかれた。1年生の小久保は11回の守りでも、経験不足が出てしまった。
智辯は1回に先制、終盤も好投手、押尾を攻め続けた。特に9回は成東の失策もからみ、一死満塁とした。そして続く堀口は初球にスクイズ。しかし、成東バッテリに―はずされて空振り、逸機した。下位打線であったが、押尾に疲れが見えてきただけにいま少しじっくり攻めてもよかったろう。

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第72回<平成2年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
得点機を漏らさず小刻みに加点していった南部が快勝。8年ぶりの決勝進出を果たした。1回、和歌山工の先発、石井のこの試合唯一の四球が、南部の小刻み加点のスタートとなった。この回四球を選んだ先頭の下浦が、犠打、安打で三進、嶋の中犠飛で先制。3回には二死三塁から北川の二塁打で1点。さらに5回、8回と加点、無理のない攻めで「思った通りの野球」(井戸監督)。守りでは復調した背番号10の主戦野村が無四球投球。落差のあるカーブを速いピッチで決めて追い込み、ボールになる直球を見せ球にした後、カーブで勝負、要所を凡打に打ち取り、最後まで和歌山工打線をかわした。バックも外野がよく守り、無失策。
「いつかとらえられると思いながら……」と和歌山工・岡田監督、速球のあまりない野村の球に振りが大きくなった。4回、二死から寒川が安打で出塁。続く江川が左翼線を抜く二塁打を放ったが左翼手が素早く処理し、生還できず、その後「アウトカウントを間違えた」(岡田監督)という二死からのスクイズが失敗、かみ合わない攻めで好機が消えた。6回、3安打で1点を返したが、流れは南部のまま動かなかった。

星林・尾崎、橋本・芝の両投手が互いに譲らず、3回まで両校とも無安打、無四球の投球を続けた尾崎が橋本打線を2安打に抑え、7回に四球と2長短打で手にした2点を守り抜いた。
星林は5・6回と得点圏に走者を進めながらあと1本が出なかったが、7回にやっと好機をものにした。無死から庄堂が四球で出塁、尾崎の右前安打などで二死二、三塁。星林唯一の一年生先発選手松田が三塁線をきれいに抜く二塁打を放ち、2点を先取。
橋本は6回まで三者凡退が続いた。7回に大沼が二塁打、9回に山本潤が左前安打を放ったが、いずれも二死からで、後が続かなかった。しかし、強気にコーナーを攻める芝の小気味良い投球とそれを支えた内、外野陣の広い守備範囲、捕手前田の冷静なけん制などは、試合を引き締まったものにした。

<決勝>
南部・野村は、不安を感じていた。肩の痛みを注射で抑えられなくなっていたからだ。星林打線は、そんな野村の調子を見逃さなかった。1回、二死から庄堂がカーブを中前にはじき返し、続く武輪が四球。尾崎も無理せず中前打し、あっさりと先制。2回にも先頭1年生の松田が右前打、雑崎、加藤の連打などで2点目。星林が今大会一貫して見せてきた「取れる点は取る野球」は、決勝の緊張も鈍らなかった。
「普通どおりやろう」。主将庄堂は繰り返しチームメートに言ってきた。初戦の箕島戦にいつもの力を出して勝ってから「普通どおり」が星林の合言葉になった。この試合、ピンチは3、8回の2度。マウンドに集った選手は「思い切って普通にやろう」とだけ確認し合った。尾崎のスライダーは、この日もさえた。自然にシュートする球で打者の体を起こして、外へ逃げるスライダーで勝負。「相手打線は内角に強いと聞いていたから、内角は全部、見せ球にしようと決めていた」と捕手武輪。三振を取った落ちる球はフォークだった。大会を通じて38イニング無四球の制球力もさえる。
肩を痛めた野村は春から投げられない状態が続いていた。エースナンバーは杉若に譲り、背番号10の不運の主戦。が、チームの柱には変わりはなかった。準々決勝で初先発してから一人で投げ抜いてきた。気力が彼を支えた。
「野村で勝とう」。南部選手の願いでもあった。その気持が通じたかのように、野村は3回から立ち直った。井戸監督には言わなかったが、下浦にはその痛みを打ち明けていた。「おれたちが守ってやる」「打ってお前を楽にしてやるよ」チームメートは励ました。「ぼくがここまで投げられたのも、みんなのおかげです」。野村は試合後そう振り返った。南部は3、8回にスクイズで1点ずつ返し、最後までしぶとい紀南の意地を見せてくれた。
試合前、両監督はともに「勝つとすれば3対2ぐらい」と読んだ。実力伯仲、投手のできでどちらにころぶか分からない試合であることを言い当てていた。「普通の心」。それを持ち続けることができた星林の精神力がマイペースで勝つことを可能にした。
勝利の瞬間、ベンチで竹中雅彦部長と赤坂俊幸副部長は抱き合った。谷口健次監督はイニングを8回と錯覚して、キョトン。ベンチでいちばんあがっていたのは谷口監督だったかもしれない。

全国大会
<2回戦>
延長10回、星林は先頭の加藤が死球で出塁。続く川口の捕前バントで、加藤が二封されたが、当たっている庄堂が右前安打、一、二塁とチャンスの芽をふくらませ、武輪が左翼線へ二塁打、川口がサヨナラのホームを踏み、もつれた試合の決着をつけた。
中標津は3点差を背負いながら、7回、山口の適時打で追いあげ、8回には一死二、三塁から立沢の内野ゴロと、岡村の適時打で同点に追いついた。さらに延長10回には、無死二塁から木内が三遊間を抜けそうな打球を放ったが、イレギュラーして二塁走者の森に当たる不運。試合の流れが星林に渡った。
中標津のエース・武田は球威はあったが、制球力不足10三振を奪いながら6四死球をだしたのが敗戦に結びついたともいえる。

<3回戦>
山陽はなかなかしたたかだ。1回、新谷が三遊間安打、死、四球で無死満塁と星林・尾崎の立ち上がりを攻め、新田の右犠飛で先制した。5回には失策につけ込み新谷、網本の長短打でまず2点と、尾崎の投球が高めに浮くところをすかさず狙い打った。
守っても2回、一死一塁で投前バントを川岡が判断よく二封、併殺。4回の一死一、二塁も遊ゴロ併殺でかわすなど3つの併殺で星林の好機を摘みとったあたりはそつがない。
星林は7回、二塁打の武輪を二死後、松田が中前安打してかえした1点だけに終わった。この反撃機も松田が川岡のけん制球につり出されて逸機、肝心な場面で川岡を攻めきれなかったのが痛い。前半で山陽の勢いに押され、力を出し切れなかったのは残念だった。



第73回<平成3年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
智辯和歌山打線が市和歌山商の青木投手の直球を狙い打ち、中盤に得点を重ねて逃げ切った。智辯和歌山は4回一死から、今大会これまで無安打だった東田に待望の左前打が出た。「彼に1本出れば」という試合前の高嶋監督の言葉通り、ベンチの雰囲気はこれで楽になった。小久保が四球、高瀬が死球で一死満塁の好機を迎え、狗巻の中堅への犠飛、高嶋の右翼線安打でこの回2点を先制、前日の練習中にけがをした杉浦にかわってこの日先発した高嶋は6回にも二死一、三塁から2者をかえす二塁打を放つ活躍を見せた。智辯和歌山は9回にもダメ押しの2点を追加。
市和歌山商の青木は3回まで変化球でかわす投球で智辯打線をおさえたが、直球主体の投球に切り替えたところを打たれた。打線は4回無死満塁から山田友の右犠飛で1点をかえし、8回にも1点を追加して追いすがったが届かなかった。

松田の2本の本塁打などで中盤着々と得点した星林が2年連続で決勝進出を決めた。星林は2回一死から松田が田辺工・中川の3球目の直球を右翼へ先制本塁打。これまで3試合連続無失点の投球を続けてきた中川から1点をもぎとった。3、4回にも安打に犠打をからめて1点ずつ追加、試合の主導権を握った。6回には安打で出た和歌を一塁に置いて一死後、松田が中川の3球目今度はカーブを右中間の一番深いところまで運んだ。
田辺工・中川は前日の伊都戦の終盤に右手中指のマメをつぶして、ボールを握る手に力が入らない状態だった。決め球となる外角へのカーブが曲がらず、高めに浮いた。星林に左打者が多くいたこともカーブを投げにくい一因になった。田辺工は6回浜口、中道の連続安打でまず1点、四球犠飛などでさらに2点を追加、2点差に迫った。8回の雨の中断の後も走者を出して攻めたが流れを変えることはできなかった。

<決勝>
智辯和歌山は本来の打って勝つ野球を初めて、しかも十分に見せつけた。序盤は星林の松田のゆるいカーブにタイミングが合わず、1、2回は無得点に終わった。投手戦になりそうな気配。しかし、智辯の打者は直球に的をしぼり、狙い球がくると迷わず振りぬいていた。
3回、この作戦が当たった。先頭の高嶋が左翼線に安打で出塁、友永がバントを警戒して前進してきた三塁手の頭上を抜いて続いた。中田がきっちりと送り一死二、三塁として湯浅が打席に立った。1-0からの2球目、直球だった。打った瞬間に左翼フェンスを越えるとわかう当たり、3点本塁打で先制した5回に2点、6回に3点を加えて試合の流れをつかんだ。
星林は4回二死一、二塁から加藤の内野安打で二塁走者中川が一気に本塁を突く好走塁。1点を返した。大会5試合で17盗塁を記録した星林の機動力は決勝でも光った。8回には先頭の中川が四球で出て、一死後照井の右翼線への二塁打でかえり1点。松田が右前打を重ねてさらに1点を追加、9回にも二死から控えの3年生西出が意地の二塁打。照井が中前打でかえし、南部戦でみせた終盤の粘りを決勝でも示したが最後は届かなかった。
この試合、星林の加藤主将は捕手で先発。4回途中から先発にかわってマウンドへ。5回途中からは左腕南出にマウンドをゆずって再度マスクをかぶった。しかし南出は智辯和歌山打線につかまり、加藤は6回途中から再び投手を務めた。経験のない2年生投手2人の面倒を半年間見つづけ、自らも投手と捕手の練習を両立させた加藤。決勝では意地の投球を見せ打者14人を被安打1に打ち取って最後の夏を飾った。
智辯和歌山も万全な状態ではなかった。先発小久保はこの6月、投げ込みすぎてろっ骨にひびが入った。一時は体を動かすこともできない状態だった。練習を再開できたのは7月に入ってから。今大会は2年生投手の石井と2人でマウンドを守ってきた。決勝でも2人の継投。「おたがい良いライバルとして高めあってきた」と高嶋監督は2人をたたえた。
今大会、智辯和歌山は好投手とたて続けに対戦して苦戦を続けてきた。主軸の犠打も辞さない戦い方で勝ち抜いてきた。決勝でも終始リードしながら4番東田のスクイズを含む7犠打を記録した。「智辯和歌山の戦いぶりとは思えない」と周囲は口をそろえる。「そうでもしないと今年のチームでは勝てなかった」と高嶋監督は試合後苦笑した。しかし、試合を重なるごとに確実にいままでとはひと味ちがう強さを身につけ、たくましくなた。

全国大会
<1回戦>
学法石川の川越が、5回二死二、三塁から暴投で得た幸運な勝ち越し点を、度胸満点の投球で守り切った。特に8回は無死三塁のピンチ。ここで2番以下を直球で勝負に出て三振、三振、中直に封じたのは見事だった。打線も3回に3連続長短打とスクイズで同点にするなど、ここ1番で集中力を見せた。
智辯和歌山は1回、安打と2つのバントに野選がからんで一死二、三塁とし、ボークとスクイズで先制。そつなく攻めたが2回以降は直球を中心にした川越に毎回の13三振を奪われ、力負けした。



第74回<平成4年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
打力に勝った智辯和歌山は延長11回に集中打を浴びせ、2時間38分の熱戦に終止符を打ち、2年連続の決勝進出を果たした。
この回先頭の藤田が投手の足元を抜く安打。強攻策で園山が一塁手の左を抜いて一、二塁に。バントは失敗し走者が入れ替わった直後、ヒットエンドランのサイン。高嶋が外角低めをチョコンと合わせた球が二塁手の頭を越えて右前へ。二塁走者園山が生還し勝ち越し点。
耐久は6回、成川四球、坂部左前打で一死一、三塁。白井壮が飛びつきながらスクイズを決め、同点。11回二死一、二塁と迫ったが、右中間への福田善の痛烈な当たりを右翼手に好捕され、初の決勝進出を阻まれた。

終盤まで息詰まる接戦を展開したが、先行し気迫に勝る日高中津が、南部の猛追を振り切り、初めて決勝へこまを進めた。
日高中津は1回、一死後、岡田が右翼左を抜く二塁打、檀本が左前安打して先制。4回にも二塁打の檀本が果敢に三盗、中野の左翼越え二塁打で加点、8回には谷本、稲葉両投手から盗塁をからめた3安打でダメ押し点をもぎとった。
南部は9回、稲葉が左前安打で出塁、中尾の左中間二塁打で1点を返し、好投の林投手を引きずり降ろした。二死後、敵失で1点を奪い、なお一塁と粘ったが、中飛で万事休した。6回、一死二、三塁での強攻策失敗が最後まで響き、春、夏連続出場の夢は断たれた。

<決勝>
「攻撃力があるのに表に出てこない」智辯和歌山・高嶋監督を心配させていた打線が、この日本領を発揮。日高中津を圧倒した。
「林投手の内角は2ストライクまで捨てて、甘い球を狙え」という監督の指示が的中した。
1回、先頭打者友永の四球を足がかりに二死一、二塁、藤田の中前適時打で友永が一気に生還して1点。2回には二死から楠が安打、四球、狗巻右前安打で満塁。投手が檀本に代わった。湯浅の右翼の右を破る二塁打で走者2人がかえり2点。3回には杉浦の左越え本塁打。序盤で試合の流れを決めた。
さらに8回、昨夏の決勝で先制の3点本塁打を放った湯浅が、この日も3点本塁打。日高中津の反撃ムードを断った。
高嶋監督はこの日、3回戦の串本戦で好投した2年生投手楠をマウンドへ。「緊張した」という楠は1回、先頭打者加藤に左中間二塁打された。二死満塁のピンチ。やっと林を左邪飛にしとめ、難をのがれた。その後は「点を取ってくれたので楽になった」と、2点を奪われながらも、勢いに乗る日高中津を散発6安打に抑えた。
日高中津・垣内監督は主戦林、檀本の2人に最初から「ランナーがたまったらいつでも檀本に代えるぞ」と告げていた。
2回、二死満塁のピンチ。日高中津のマウンドには林に代わり、檀本が上った。「抑えた」と思ったが湯浅の打球は右翼横を抜く二塁打。「相手がうまい」と振り返る。
8回にも檀本は二死一、三塁で湯浅を迎えた「外角直球を打たれたから次は内角に」。そう思ってストライクを取りにいった初球。審判のコールは「ボール」。「えーっ」と悔しがる。気を取り直して投げた2球目は、内角やや高めに浮いてしまった。金属音を残し、湯浅の打球は左翼席へ。檀本はマウンドにうずくまった。
だが、中盤4回から7回まで林、檀本の継投が成功。智辯和歌山を散発2安打、4三振に抑える力投ぶりだった。試合後2人の投手は「120パーセントの力を出し切りました。満足です。笑顔を見せていた。

全国大会
<2回戦>
攻勢に転じたら、一気にたたみかけるのは勝負の鉄則。拓大紅陵の決勝点がそうだった。
6回の二死二塁から紺野、立川の長短打で同点。この直後に仕掛けた。木内の2球目にヒット・エンド・ラン。打球は右翼線二塁打となり、立川が一塁から生還した。簡単には点を取れない二死一塁の場面から見事に勝ち越した。
智辯和歌山は4回、藤田が左翼へ痛烈な3点本塁打を放ち優位に立った。しかし、拓大紅陵の2投手に12三振を喫する粗さがたたり、追加点を挙げることが出来なかった。



第75回<平成5年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
智辯和歌山・有木と桐蔭・出口の投げ合いで緊迫した投手戦となったが、智辯和歌山が井口の好走塁などで辛勝した。1点を先制された2回、一死一塁に園山の右中間を抜く二塁打で走者井口が間一髪生還し同点。さらに西中の左越え二塁打で園山がかえり逆転した。有木は7回以外は毎回走者を出しながらも要所をおさえ、1点差を守り切った。
桐蔭は1回、四球の中井が紀本・出口の連続安打で生還し素早い先制。3回にも2四球などを足がかりに迎えた二死二、三塁の反撃機をつぶしたのが惜しまれる。

終盤、相手投手の乱れをついて和歌山工が逆転勝ちした。和歌山工は9回、二死から野口、宮川が連続四球、高橋の右中間二塁打で2者とも生還し同点。10回には先頭打者中村が三遊間安打。小川、岡畑、野口の3連続四球で押し出して勝ち越し点。宮川の左前安打、高橋の中前安打で2点を加え突き放した。
箕島は1回内野安打の佐武を置き、清水がバックスクリーンへの本塁打を放ち2点を先制。さらに3回、北岡の左越え本塁打で加点したが、4回以降は打線がつながらなかった。5、7、10回と三塁まで走者を進めながら適時打が出ず、苦杯をなめた。

「先発で行け、と言われたのは今朝。前の試合ではカーブが悪かったので、それを低めにきっちり決めろ、と」。智辯和歌山の先発笠木投手は目を赤くして語った。
2点をリードしていた6回、先頭打者宮川に四球。二死をとったものの盗塁を許し、再び中村に四球。走者一、二塁に。「ボールが決まらない」高嶋監督が「代われ」と告げる。だが笠木は「まだいけます」。
しかし次打者に左前打。これを野手がはじく間に、二塁走者が生還し、1点差に迫られた。
この時、代わってマウンドに立ったのが松野。2日前、県和歌山商戦で右肩に死球を受け、全治2週間の打撲。「30分しかもたないといわれた」痛み止めを打っての登板だ。
直球が思いどおりに決まる。次打者を一塁ゴロに仕留め、ピンチを脱した。「元々僕が投げることになっていた。投げろと言われれば、がんばって投げるだけです」。7回から9回まで、球を外野に運ばせなかった。3年連続甲子園出場をかなえた継投策だった。
「一番ほめてあげたいのは井口ですね」。高嶋監督が試合後、振り返った。2回、敵失で出塁した中本を置いて、井口が三遊間安打。続く園山も左前安打。左翼手が球の処理にもたついている間に中本は一気に三塁を駆け抜け本塁へ。先制の1点だった。
「これでいける」。西中四球の後、岸辺の中前安打で園山も生還。この2点目が勝ち越し点となった。「練習中はよう井口を怒ったけど、捕手の彼が守備のかなめとなり、攻撃の糸口を作ってくれた」と監督は笑顔で話した。
相手の校歌を聞いたあと、和歌山工の西田投手は、涙もほとんど見せず、淡々としていた。6試合のすべて完投、うち3回戦からは4連投。4試合目の対伊都戦あたりから疲労がたまってきた。腰の疲れがひどく、試合後マッサージに通う日々。それでも「今までで一番良いできだった、変化球も切れていた。ここまで来たのは、精神力でした」。
2回の無死二、三塁のピンチにも、グラウンドで落ち着いて右手を挙げアウトカウントを確かめた。
強豪智辯和歌山に10安打を浴びたものの、要所を踏ん張り抜いた。「楽しく投げられました」。最後の言葉は自信と満足にあふれていた。

全国大会
<1回戦>
智辯和歌山が継投で強打の東北をかわしサヨナラ勝ち。12回、先頭の井口が三遊間安打、バントで二進後、松野が左中間二塁打した。先発・有木の投打にわたる活躍も見逃せない。スライダーが効果的で、9回途中まで4安打の力投。2回、内角球に体が開かず、左翼へ運んだ先制本塁打も試合の流れを引き寄せた。
東北は、4回無死一、二塁で二塁走者がけん制死、勝ち越しの機の11回は盗塁失敗など走塁ミスが目立った。主戦、佐藤真が持ち味を出しただけに、大振りした打線と、強引な攻めが悔やまれる。

<2回戦>
智辯和歌山の勝因は攻守両面の積極さにあった。1回、城北の守りの乱れで1点を先取すると、3回は一死一、二塁とし、武内が0-2から2球続けてヒットエンドラン。併殺を焦った二塁手の失策を誘って1点。二死から井口が中越えに二塁打。4-0とした。好球を逃がさず打って出た強気が相手の守りを圧倒した感じだ。守っては後半のピンチを楠、松野、有木と思い切った継投で2失点でしのいだ。
城北は前半、速いテンポの楠のペースに巻き込まれたのが惜しまれる。7回の一死満塁も連続三振で生かせなかった。

<3回戦>
徳島商が効果的な先制攻撃で逃げ切った。1回、先頭の利光が死球、二盗に成功したあと、佐藤が右翼へ適時打して1点。2回にも平山の遊撃を強襲する二塁打とバントで好機をつかみ、横手の二塁への安打(不規則バウンド)で追加点をあげた。智辯和歌山・有木の高めに浮く球を積極的に狙ったのが成功した。
智辯和歌山は、徳島商・川上の速球に遅れ気味で、追い込まれたあとはフォークボールに幻惑されて的がしぼり切れない。7回、ようやく「右狙い」に徹し、有木、岸辺の右前安打で1点を返したが及ばなかった。
わずかな力の差が明暗を分けたが、両チームとも堅実な守りで引き締まった試合だった。



第76回<平成6年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
日高中津が追いすがる田辺工をかろうじて振り切り、4試合連続1点差の勝利をものにした。
日高中津は3回、一死一、二塁から榎本の右前安打や村尾の中前安打で計3点を先制。4回にも祝いの左中間三塁打や岡のスクイズで2点を加えた。主戦中村は12安打を浴びながらも、徹底した外角攻めで要所を抑え、完投した。
毎回走者を出しながら中村の巧投に抑えられていた田辺工は6回、二死満塁から濱本(辰)の中前安打でまず2点。7回にも戎嶋、木下の長打で2点を加え、1点差としたが、追撃もそこまで。序盤、雨の中守備が乱れたのが悔やまれる。

市和歌山商の主戦小谷が11三振を奪う力投で、強打の星林を3安打に抑え完封勝ちした。
市和歌山商は1回、星林の主戦竹森の立ち上がりをとらえた。一死から原口の遊撃強襲安打の後、相良が右翼スタンドに2点本塁打を放ち、先制、4回には小谷の右越え二塁打5、7回にも原口、玉置が長打を重ね、6回を除いて毎回出塁するなど追加点の好機を生かせず、詰めの甘さも見えた。変化球と直球を交ぜた小谷、山田のバッテリーの配球のうまさが光った。
星林は6回、宮端、宮下の連打で一死一、二塁としたものの、後続が併殺に倒れた。強力打線も強振が目立ち、最後まで小谷の攻略に手こずった。

<決勝>
天国と地獄……そんな7回裏だった。「6回まではベストの投球だった」日高中津の主戦投手が、突然崩れた。
二死二塁、市和歌山商の山田はフルカウントから四球に。「逃げるな、低めに攻めろ」と伝令が走る。しかし、続く前田、原口にも連続四球をゆるし、「押し出し」で1点を与えた。直前に打線の援護で差を3点と広げ、気持ちが楽になったはずなのに。
続いて打席に立ったのは相良。この日は2三振、左飛と不調だった。しかし、「中村投手は、70球を過ぎたら疲れが出ると聞いていたので、後半必ず打てると信じていた」その中村の投球数は、すでに120球を超えていた。カウント2-2からの130球目、思い切ってバットを振った。打球は三塁手の左を抜けて左前へ。2者がかえって、市和商は同点に追いついた。そして4番井上。大会直前に突然、打撃不振に悩んだ。1回戦は無安打、2回戦からは毎試合1本は安打を打ったが、決して満足できる結果でなかった。家へ帰ってフォームをチェックしながら素振りを繰り返した。この日も、最初の打席でこそ中前安打を放ったが、その後は遊ゴロ。捕邪飛と不発。「必ず打つ」。心に決めて打席に入った。二死フルカウント。「直球だ」。打撃不振を吹き飛ばす左越え二塁打で決勝点を挙げた。
中村は今大会、162球、153球、165球、154球と、どの試合とも球数が多かった。毎試合2桁安打を打たれたが、要所はしっかり抑えてきた。しかし、この回は「力んでボールが高めに浮いてしまった。気持ちで負けた」。
「2年前の決勝は、監督が弱気になって負けた」と、日高中津の垣内監督。この日は、3盗塁をはじめ、これまで以上に積極的に攻めた。
1点のリードで迎えた7回表、二死から三塁内野安打の岩井が果敢に二盗、岡が四球を選んだ。そこへ松本が走者一掃の右中間二塁打を放ち、甲子園を手にしたかにみえた。
逆転を許した後の9回にも、一死一、三塁から「攻めろ」。スクイズでなく強攻策に出たが、裏目に。甲子園は再び「夢」に終わった。
「選手の気持ちを育てられなかった私の責任です。今度こそ甲子園をつかむため、プラスアルファを学んで出直します」。〔戦評は朝日新聞より〕

全国大会
<2回戦>
延々と続くかと思われた投手戦もいつかは終わりが来る。双葉は9回、加藤が投手右へのバント安打を決め、2つの送りバントで二死三塁とした後、遠藤が0-2後の直球を中前にはじき返して競り合いに決着をつけた。
見事な投げ合いだった。双葉の右の田中は球威十分の直球とカーブの配球が巧みで、市和歌山商の左の小谷はスライダーに切れがあった。双葉打線が得点への執念でわずかに上回ったというほかない。双葉の三遊間や市和歌山商の捕手山田の強肩など互いの堅守も試合を引き締めた要因だ。



第77回<平成7年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
犠打に全得点をからませて確実な攻撃をした田辺が、伊都を振り切った。
田辺は同点で迎えた5回、先頭の講初が左前打で出塁。犠打、四球と中平のバント安打で一死満塁とし、浅山の投前スクイズが野選を誘った。1点を入れてなお満塁に、大谷も初球スクイズを決めた。3回の先取点も浅山のスクイズ。同点に追いつかれた直後の9回は、打撃妨害で出た走者を犠打で送り、亀田将が中前に適時打。三たび勝ち越した。鍛えられたバントが光った。主戦浅山は、内外角を投げ分ける頭脳的な投球で相手打線を4安打に抑えた。
伊都は4回、西端の左越え本塁打で同点。8回も山下、小野寺が長短打を連ね、2度も追いつく底力を見せた。初先発の鈴木も37人の打者を6安打に抑える好投だったが、本格的な投手になって1ヶ月余りで、バント処理に慣れていなかったのが唯一残念だった。

高野山が大会新となる11犠打で着実に得点し、左腕の新田が緩急をつけたカーブで箕島打線を散発5安打に完封した。
高野山は4回、二塁打の新田をバントで送り、安井の中前適時打で先制。7回には振り逃げ三振の太田が捕手の一塁悪送球で二進。バントとスクイズを連発し、敵失も誘って加点した。8回は一死満塁から田代の内野安打と松岡の右犠飛で決定的な2点を挙げた。全得点に犠飛をからめる堅実な攻撃が目立った。
箕島は相手の犠打攻勢に内野陣が浮足立ち、失策が失点につながった。1点を追う4回と6回、ともに二死二、三塁の好機をつくったが、後続の鋭い当たりが投直、二ゴロとなる不運もあって、無得点、9回一死から代打中尾が三遊間を抜き、出塁して粘ったが、後続が併殺打となり、万事休した。

<決勝>
技巧派同志の投手戦との予想に反して、田辺の積極攻撃が功を奏し、悲願の甲子園出場を手にした。
3回戦からここまで、田辺は2点差以内の試合を、浅山の好投で勝ち進んできた。「最後の決勝だけは、打線の力で浅山を楽にしてやろう」。この気持ちが一回に表れた。
四球、犠打、四球で一死一、二塁。監督の愛須のサインは重盗。「相手はモーションが大きい。三盗はやりやすい」。4番山本和の初球。思い切ってスタートを切った二塁走者は楽々三塁へ。続く2球目を山本和が中前に打ち返し、先制。スクイズで競り勝った前日とは対照的な積極策だった。
高野山は浅山の低目をつく丁寧な投球に、内野ゴロの山を築いた。5回までに7個。準決勝までの4試合のうち3試合は先制してきた。後半までリードを許したのは今大会これが初めて。
6回、じりじりした気分を一発が吹き払った。一死無走者。「ストライクを取りに来る球をたたこう」。笹本は初球を狙った。直球を思い切り引っ張った。打球は右翼スタンドに飛び込んだ。ベンチに大声が戻った。追撃開始かと思った。
相手に傾きかけた流れを田辺が再度、引き寄せた。ここでも、果敢な走塁だった。6回、無死から四球で出た山本和が、バント失敗などで二死となってから二盗。捕手の送球がひとテンポ遅れた。さらに四球亀田将とともに重盗。中平の内野安打でかえり、失った1点をすぐに取り戻した。
田辺は7回に3点。8回に1点を加え、試合の流れを完全に握った。
高野山は、主戦新田に疲れがあったのか、準決勝で見せたほどの好投が見られなかった。田辺の足をからませた積極策で投球のリズムを狂わされ、甘い球を狙われた。しかし、最後まであきらめない、さわやかな野球を見せた。(以上朝日新聞より)

全国大会
<1回戦>
韮山の待球作戦が功を奏し、田辺の投手陣を崩した。3回は2四球と安打で一死満塁とした後、深沢の左犠飛、山田健の右中間三塁打で3点を挙げて逆転した。試合を決定づけた6回の5点も4連続四死球で押し出し、さらに山田健の2点安打などで奪った。裏を返せば、各打者が打つべき球、待つべき球を心得ていたといえる。
田辺は1回、山本の安打で先手を取った。4回は小谷、山本の長短打で差を詰めた。しかし、主戦、浅山の制球難が誤算となったうえ、守備陣もピンチで浮足立った。
6回、田辺の愛須監督はエース浅山を遊撃手にまわし、亀田将をマウンドに送った。浅山は5回まで、被安打6、5四死球で失点5と、乱調だった。
「応援のすごさもあって、浅山は周りが見えないくらいのみ込まれていた。一度マウンドから降ろして、落ち着いたらまた投げさせようと思ったんです」。しかし、それが裏目に出てしまった。亀田将は連続4四死球で押し出し、さらに適時打も浴びて、一死も取らずに、再びマウンドを浅井に渡した。「重しをつけられて、投げているような感じでした」。浅山を落ち着かせるはずが、亀田将自身も周りにのみこまれていた。
甲子園での初勝利はならなかったが、今年、田辺は学校創立百年目。その年に初出場を決める快挙だった。愛須監督は「僕自身もプレッシャーを感じた。みんなを落ち着かせることも出来なかったし、判断ミスもしてしまった」と、残念そうに振り返っていた。



第78回<平成8年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
南部・濱中、智辯・畑山の投げ合いで緊迫した好試合。守備の安定している智辯が2回に下位打線がつくった好機に挙げた3点を守り切った。
智辯は2回、中谷の中前打と2四死球で二死満塁とし、清水が走者一掃の三塁打を放って3点を先取した。投げては畑山が毎回のように走者を出しながらも、3併殺を奪う巧みな投球で要所を締めた。
南部は3回、吉田のヒットで1点を返した。4回にも一死から山名の二塁打で畑山を攻めたが、後続が打ち取られた。2回無死一塁、7回の一死一塁の好機ではともに送りバントを失敗、併殺を喫したのが大きく響いた。

3回に山下の三塁打などで先行した伊都が、谷野の力投で粘る熊野を振り切った。伊都は3回、右前打の米田と四球の竹中を置いて、山下が右翼へ三塁打。返球がそれる間に山下も生還して一挙3点を入れた。さらに1点を返された直後の5回、内野安打で出塁した竹中を山下がバントで送り、二死から田宮が左翼へ適時打し、貴重な追加点をあげた。熊野は7回に2点差としたが、反撃もそこまでで、決勝進出はならなかった。

<決勝>
智辯和歌山は4回、喜多が左中間二塁打。4番の西尾が手堅くバントで三塁へ送る。続く上林が投前へバント。スタートを切った喜多が生還し先制。上林も一塁に生きた。
次の中谷が伊都の谷野の投球を左手に受けて出塁、黒川が送り、二死二、三塁と好機が続く。次の中山が内野ゴロだったが、一塁への悪送球で2走者が生還し、さらに高塚の二塁打で中山もかえってこの回4点を入れた。
伊都もその裏、制球に苦しむ高塚を攻めた。上田と竹中が四球を選び、山下が送って一死二、三塁。二死後、田宮も四球を選んで満塁とした。続く谷野の右中間の三塁打で3点を返し、井端の四球。ここで智辯和歌山は畑山をマウンドに送ったが、米田の幸運なセンター右の二塁打で同点。試合の流れは伊都に傾きかけたが、ここで畑山が二塁へ絶妙のけん制、走者を刺してピンチを切り抜けた。これが勝敗を分けた。
智辯和歌山は6回、先頭の上林が2球目を中前安打で出塁。中谷が右翼線二塁打で続き、無死二、三塁。だが、黒川は三振、中山のスクイズ失敗で三塁走者上林が挟殺されてチャンスが消えかけたが、中山の四球の時の球が暴投となり、三塁から中谷がかえって再び勝ち越した。さらに畑山の二塁ゴロを野手が一塁へ悪送球する間に中山も一挙本塁へかえり2点差とした。さらに7回、中前安打で出塁した喜多が盗塁などで三塁へ。西尾が左中間へ二塁打を放ち、1点。中谷も中前安打で2点目をあげ、谷野はマウンドを井端にゆずった。
伊都は7回、井端の右前安打と米田、増井の連続犠打、上田の四球で二死二、三塁の好機をつくったが、後続が倒れた。逆に9回、智辯和歌山は二塁打の豊田をおいて西尾が左翼席へ本塁打で、ダメを押し、3年ぶり6度目の優勝を果たし、春夏連続の甲子園出場を決めた。伊都は夏の甲子園出場はならなかったが、その健闘ぶりにスタンドから大きな拍手が送られた。

全国大会
<1回戦>
水戸短大付属が力で智辯和歌山をねじ伏せた。畑山、宮崎、豊田の3投手に12安打を浴びせた思い切りのよい打撃が目を引いた。2回、佐々木の左越え本塁打で同点とし、3回、細谷の左翼線2点二塁打と一死満塁から谷仲の走者一掃の右中間を破る二塁打で主導権を握った。
智辯和歌山は1回、喜多、西尾の長短打で先行。リードされた3回は西尾の2点本塁打で追い上げにかかった。しかし、その後は立ち直った平野の伸びのある直球、スライダーを思うように打てず、結局、6安打に終わった。



第79回<平成9年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
重苦しい雰囲気が漂い始めた日高中津を救ったのは、4番坂尻のバットだった。8回一死から代打で登場し、右前安打の市木が一塁に出塁。二死後、坂尻が内角高め直球を左翼席に打ち込んで逆転し、北山が後をしめくくって勝利をものにした。
田辺商は福田恒の好投が光った。前日の準々決勝からの連投で、連打を浴びたりしたが、低めに丁寧に球を集め、日高中津打線に7回までは決定打を与えなかった。打線も、3回二死後から敵失ででた走者を中井が左越え二塁打でかえして先制。岡本捕手の大胆かつ細心のリード、バックの好守もあって優勢に試合を進めたが、あと一押し足りず、涙を飲む結果となった。
日高中津は苦しい試合をものにし、3年ぶりに決勝へ駒を進めて甲子園初出場を目指すことになった。

雨で中断した後、日高が見事な粘りを見せた。7回、二死一、二塁で畑崎が右中間を深々と破る三塁打。続く下田も中前安打を放ち、1点差に迫ったが、リリーフした清水に後続を断たれ、決勝進出はならなかった。
智辯和歌山は2回、木戸が中前打で出塁後、連続3四球と暴投、2番の鵜瀬の左前安打で一挙3点。5回にも追加点をあげ、1点差に追い上げられた7回二死から、清水が7人の打者をきっちり押さえて勝利を呼び込み、2年連続7回目の甲子園を目指して今春の選抜大会に出場した日高中津と対戦することになった。

<決勝>
春・夏連続の甲子園を目指す日高中津と2年連続をねらう智辯和歌山の決勝は、前半は緊迫した投手戦、後半は1点を取り合う接戦となったが、智辯和歌山が日高中津を逆転で下した2年連続7回目の優勝を果たした。
強打を誇った智辯和歌山の打線は、再三得点機をつくりながら、日高中津のエース北山から決定打が奪えなかった。1、4回に続き、6回にも三塁に走者を進めたが、中軸が北山のスライダーにバットがあわず、凡退を繰り返した。5回にはこの大会で初めて先制され、7回裏に中山の安打で同点となった直後に、再度リードを許し、焦りに近いムードが出始めた。しかし、8回、先頭の鵜瀬が遊撃を襲う安打で出塁。喜多が送りバントを決め、続く清水は左翼芝生席に逆転の2点本塁打を放ち、底力を見せつけた。
日高中津は立ち上がりから再三走者を得点圏に送られる苦しい展開となったが、5回表、横貫の適時打で先制し、同点に追いつかれた8回には西岡の左翼越えの本塁打で再度リードを奪った。逆転された9回表二死後、代打市木が左前安打し、続く横貫の打球を野手がはじいて一、二塁。さらに、山本も二遊間を破る安打で二死満塁とし、一打逆転まで迫ったが、続く西岡の打球は二塁手の前のゴロになり、初出場の夢は消えた。

全国大会
<2回戦>
肩の故障のため、和歌山大会では一度もマウンドに立つことがなかったエース高塚が先発で登板したが、実戦から遠ざかっているという不安が的中して、立ち上がりからボールが先行し、日本文理打線に打ち込まれる。しかし、エースの登板に燃え、「高塚を負け投手にするな」という思いの智辯和歌山の打線が爆発し、21安打で19点を奪い圧勝した。
5点を先行された2回裏、倉谷がいきなり右翼席に本塁打。続く中山も内野安打で出塁。その後、四球などで二死一、二塁。ここで喜多が中前適時打して波に乗り、さらに中谷、木戸の連打でこの回一挙6点を奪い逆転した。同点にされた3回裏一死満塁のチャンスに喜多の右前安打で2点を勝ち越し。5回には中谷の左中間への二塁打を含む6長短安打に、2つの失策を絡めて6点を奪って、勝負を決定。さらに、6回に2点、7回にも2点を加えて試合を一方的にした。日本文理に5点を先行され、苦しい展開になったが、打線の援護と3回以降1点に迎えた救援投手陣の活躍で初戦をものにし、3回戦に進んだ。

<3回戦>
3回に先制した智辯和歌山は5、6回にも木戸の本塁打、中谷、喜多の長短打などで勝負を決めた。いずれも福岡工大付のエース・小椋の速球を狙い打ったもので、その力強い打撃は見事だった。
3回、先頭の豊田の四球を足場に、喜多の遊撃左への内野安打で一死一、二塁。続く清水は内角高めの直球を左翼線にはじき返す二塁打を放って2者をかえして先制。さらに中谷がスクイズを決めて主導権を握った。5回には中谷の左越え二塁打と木戸のバックスクリーンへ飛び込む本塁打で3点。6、7回にも中軸打線の活躍で追加点をあげて、試合展開を楽なものにした。甲子園初登板の左腕・藤谷は6回を投げて4安打に迎える好投を見せ、失策がらみの点はとられたが上々の投球であった。

<準々決勝>
打撃好調の智辯和歌山は2回、清水が左中間にソロ本塁打を放って先制。3回、4回にも加点。6、7回に計4点返されたが、7回裏に1点を追加、県勢としては18年ぶり、智辯和歌山としては初の4強進出を決めた。
2回裏、先頭の清水が左中間に大会28号本塁打を打ち込んで先制。3回にも二死からの連続四球で一、二塁とし続く清水が今度は左中間に2点二塁打を放って、追加点をあげた。4回裏にも倉谷の安打と2四球で無死満塁と攻め替わった中村から豊田、鵜瀬が連続適時打し、リードを広げた。
先発・藤谷は6回を投げて1点に抑えたが、7回から登板した児玉の出来がよくなく無死一、二塁ピンチに、自らの失策と適時打で1点差に迫られた。しかし、7回裏、先頭の中谷のエラーでの出塁と木戸の右前打で走者をため、続く倉谷が適時打を放って追加点をあげて佐野日大を突き放した。智辯和歌山はこの試合で13安打を放ち、初戦から3試合連続2ケタ安打を記録して、県勢としては61回大会で優勝した箕島以来、18年ぶりに準決勝進出となった。

<準決勝>
智辯和歌山は延長10回、中谷の犠飛でサヨナラ勝ちをし初の決勝、県勢としては61回大会以来の決勝進出となった。
9回までに何度も得点圏に走者を進めながら、4試合で36点をあげた強力打線が、浦添商のエース・上間の前に沈黙した。カーブでかわされ要所で重いストレート。9回まで6度の無死の走者をいずれもバントなどで進塁させたが、得点にならなかった。
先発の児玉は丁寧な投球で浦添商をおさえ、8回から清水が登板。後半、毎回得点圏の走者を背負い、9回表には二死一、三塁の絶体絶命のピンチとなったが、左翼への大飛球を鵜瀬が後ろ向きに好捕するなど、堅実な守備で得点を許さなかった。
延長10回裏、その鵜瀬の内野安打、喜多の安打と四球で一死満塁の好機を作った。ここで中谷が中堅へ犠飛を挙げ、決勝点を挙げて、京都の平安高校と16年ぶりとなる8度目の近畿勢同士の決勝戦へ進出した。

<決勝>
強打を誇る智辯和歌山は7犠打の手堅い攻めで好投手・川口を攻略、競り合いの末古豪・平安を破って初の栄冠を獲得し、県勢としては18年ぶりの快挙を成し遂げた。
試合は1点を争う好ゲーム。同点で迎えた8回、智辯和歌山は先頭の清水が三塁内野安打で出塁すると、犠打などで二死一、二塁。中山が三塁線を破る二塁打を放ち、2点を勝ち越した。
序盤から走者が出ると確実に犠打で進め、得点はすべて犠打絡み。3回には、四球の中山を藤谷が送った後、二死三塁とし、鵜瀬の先制内野安打につなげた。4回にも一死一、三塁で倉谷がスクイズで決めるなど3犠打。連投の疲れの見える川口に対し、徹底した策で重圧をかけ続けた。
平安もよく粘った。2点を追う5回には、一死満塁から宮田芳がスクイズを決めて1点。続く奥井が三遊間適時打を放ち、一度は逆転したが及ばなかった。
大会屈指の好投手・川口の速球に力負けせず、しっかりたたきつけた打線、無失策の守備陣と、決勝にふさわしい好試合で、和歌山県勢にとっては18年ぶりの全国制覇となった。



第80回<平成10年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
あっけない幕切れだった。星林は9回裏、2四球と永井の内野安打で無死満塁とした後、栗山英が投ゴロ併殺。川口真も遊ゴロで延長かと思われたが、悪送球で三塁走者の阪本が生還、サヨナラ勝ちした。
すべて逆転勝ちで勝ち上がってきた星林が初めて先手をとった。2回二死後、栗山聖の左中間二塁打と行平の中前安打で先制。追いつかれた4回には四球と連続安打で満塁とした後、投手のけん制悪投で追加点をあげ、7年ぶり4回目の決勝進出を果たした。
初芝橋本は初めて準決勝に進出し、数少ないチャンスをものにして粘りを見せたが、あと一歩のところで涙をのんだ。3回、中前安打の相馬がボークで二進後、稲吉の中越え三塁打で1点。8回には左翼線二塁打の代打荒井をバントで送った後、鈴木がスクイズを決め、再び同点とした。9回には中前安打の北井が二盗失敗。その後安打と四球が出ただけに惜しまれる。

追いつ追われつの展開となったが、5犠打を記録し、好機を確実に得点に結びつけた智辯和歌山が粘る伊都を振り切って、3年連続8回目の決勝進出を果たした。
2点先行された3回、四球と久米の内野安打などで一死一、三塁とし、福地が左中間に三塁打を放って追いつき、中村秀の中犠飛で勝ち越し。さらに再び同点で迎えた8回は、左前安打の鵜瀬が犠打と暴投で三進。堤野が一塁強襲安打で放ち、決勝点を奪った。
先制したのは伊都だった。3回四球と岸田の右翼線二塁打などで無死二、三塁とし、スクイズと土井の二塁打で2点先行。リードされた4回には尾花の二塁打で追いつき、7回には敵失がらみで同点とするなどしぶとさを見せたが、智弁和歌山の好継投により反撃の芽が断たれてしまった。

<決勝>
強力打線で突き放そうとする智辯和歌山を星林がしぶとく追いすがる展開になったが、智辯和歌山が振り切って、3年連続8回目の優勝をはたし、2年連続の全国制覇を目指すことになった。
智辯和歌山立ち上がりから敵失や福地の二塁打などで4点先制。同点に追いつかれた5回には、2四球と池辺亮、鵜瀬の2本の内野安打、敵失で2点を勝ち越し。さらに一死一三塁からのスクイズははずされて二死二塁となったが、川崎の左前安打で追加点を挙げた。続く6回には、四球と佐々木の左前安打で一死一、三塁とチャンスをつくり、4番の中村秀がきっちりとスクイズを決め、この1点が結局、決勝点となった。
星林は4点を追う5回、四球と栗山聖の左前安打で一、二塁。代打栗山郷がバントで送った後、池田が四球を選んで満塁。熊井が押し出しの四球を選んでまず1点。続く坂田がスクイズを決め、二死二、三塁から阪本の左越えの二塁打で同点に追いついた。
再び4点をリードされた8回、四球と安打などで一死一、三塁から、栗山聖の中前安打、代打花野の右前安打と敵失で3点を奪い、智辯和歌山の山野を降板させたが、リリーフしたエース児玉の速球と切れのいいカーブを打ち崩せず、後続を断ちきられた。しかし、離されても追いすがるその粘りは見事であった。

全国大会
<1回戦>
昨夏、全国制覇してわかせた朱色のユニフォームが1年ぶりに甲子園の塁上を舞った。智辯和歌山は7犠打を決め、右打ちに徹する堅実な攻撃を見せる一方、ヒットエンドランなどの強攻策に出る多彩な攻撃を見せ、追いすがる掛川西を振り切った。
1回、先頭の福地が頭に死球を受け、堤野が臨時代走にはいる。鵜瀬がきっちりバントで送り、一死二塁。当たっている佐々木が右中間を破って堤野がかえり、先制。中盤は掛川西・石川に抑えられたが、6回無死一塁から4番の中村秀の時、ヒットエンドランを敢行。その打球は左翼越えの二塁打となり、一塁から佐々木がかえって待望の追加点を挙げた。さらに無死二塁から井上が送り、一死三塁。池辺の5球目にスクイズ。本塁から遠くはずれた球に飛びついて1点と、硬軟取りまぜた鮮やかな攻めを見せた。7回には、安打の堤野を犠打で進めるなどして二死二塁。鵜瀬と佐々木の連続二塁打で2点追加し、突き放した。

<2回戦>
智辯和歌山は5犠打とヒットエンドラン、盗塁をからめる多彩な攻撃を見せて試合を常に優位にし、守ってはエース児玉が粘り強く投げ抜き、無失策の堅い守備にも守られて2試合連続で関東、3回戦に進出した。
智辯和歌山打線は岐阜三田・市原の厳しいコースの球を鋭い振りでとらえた。2回、先頭の池辺が中前安打。バントなどで二死二塁とした後、池辺は三盗を試み、相手捕手の悪送球を誘ってそのまま本塁を踏み、先制。さらに二死一塁とし、児玉の左翼越え三塁打で1点を加えた。3回にも、一死一塁から中村秀の左翼線二塁打と敵失で1点追加。なお二死三塁から、鵜瀬の内野安打。序盤で4点を奪った。中盤の5、6回にも、相手内野守備のミスに乗じて追加点を挙げ、岐阜三田を突き放した。
児玉は立ち上がり制球が乱れ、3回に長短打で1点を返された。しかし、中盤からカーブが内外角に決まりだして立ち直り、8回に1点を奪われた後、9回にも二死満塁のピンチをバックの好守備にも助けられて完投勝利を収め、3回戦で2年連続のベスト8進出をかけ、東愛知代表の豊田大谷高校と対戦することになった。

<3回戦>
智辯和歌山は中盤のリードを守りきれず、豊田大谷の終盤の粘りに屈して3回戦で涙をのんだ。
前半は完全な智辯和歌山のペースだった。1点を追う2回、2四球と犠打などで二死一、三塁。児玉の内野安打で同点に追いついた。再び1点をリードされた3回、福地が中前安打で出塁。続く佐々木の左翼中段に飛び込む2点本塁打で逆転。4回には、児玉の左翼ポール際へのソロ本塁打。5回にも、四球と川崎の右前安打などで一死一、三塁。続く瀬戸口のスクイズで1点と、大技小技を絡めた攻撃で、一度は豊田を6-2と突き放した。
児玉は強打の豊田大谷に対して、立ち上がりから気迫のある投球でよく抑えていた。しかし7回、古木の本塁打などで2点を返され、8回にも一死一、三塁とピンチを招いて、降板。救援した中村秀がこのピンチを抑えたが、9回、一死二、三塁から前田の三塁手の頭上をワンバウンドで越す左翼への安打で逆転を許した。6回以降、走者を出しながら得点に結びつけられない。8回、9回とチャンスはあったが、豊田大谷の上田の粘り強い投球に後続が断たれ、連覇の夢は意外な展開であっけなく消えた。

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第81回<平成11年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
大会タイ記録の1試合4本塁打を放った智辯和歌山が和歌山工を圧倒した。
智辯和歌山は1回、久米が先頭打者本塁打を左翼席に打つと4番の佐々木も右翼席に流し打って2点を先制。3回は堤野のソロ本塁打、中盤に長短4安打に4四球を絡めて4点追加。7回には、佐々木が2本目の本塁打を左中間に放ち、9回にも3本の長短打で2点を加えて、勝負を決めた。
和歌山工も意地を見せた。10点差をつけられた7回、一死満塁から内野ゴロで1点返し反撃。8回にも千原が左中間に二塁打を放って1点を追加し、最後まであきらめなかったが、走塁ミスで2度、得点機を逸したのが惜しまれる。

17年ぶりの優勝を目指す南部が13安打を放ち、創部10年目で初の決勝進出を目指して追いすがる国際開洋二を振り切って、9年ぶりに決勝へ進んだ。
南部は2回、二死一、三塁から松本の適時打で先制。4回には敵失をきっかけに中谷の本塁打などで勝ち越した。
主戦中嵜は、前半こそ国際開洋二打線に苦しんだが、後半はすっかり立ち直り、特に6回以降は走者を出さない完ぺきな投球を見せた。
国際開洋二も粘りを見せた。3回には二死二、三塁三原が敵失を誘って同点。4回には、一死一、三塁から多田が右翼席へ3点本塁打を放ち、1点差にまで迫った。さらに二死一、三塁の好機をつくったが、追撃もここまで、あと一歩及ばなかった。

<決勝>
見事な集中打を見せて2点差をはね返した智辯和歌山が、追いすがる南部を振りきって逆転勝ちし、戦後初の4年連続で9回目の優勝を果たした。
智辯和歌山は立ち上がりから先手を取られたが、3回には久米、佐々木の長短打で同点。再度突き放された5回には、内野ゴロで1点、7回にも1四球をはさんで久米、池辺の安打で二死満塁とすると、疲れの見える中嵜から武内が中前打して同点。8回には犠打と敵失をからめ、一死一、三塁の好機。続く堤野は遊撃手を強襲する安打を放って勝ち越し、さらに4番佐々木の右中間を破る2点二塁打で引き離した。智辯和歌山の井上は、選球眼良く逆らわずに打ち返す南部打線に苦しんだが、5回以降毎回走者を出しながらも要所をしめ、粘り強い投球で南部打線を抑えきった。
南部は幸先のいい立ち上がりだった。1回、2四球と内野安打で一死満塁に、日下の内野ゴロで1点先制した。その後も押し気味に試合を進め、4回にも一死満塁から中嵜の適時打で2点を追加、先手を取ったが、続く満塁の好機を逸したのが響いた。先発の中嵜は連投にもかかわらず、強力な智辯和歌山打線をあいてに8回で交代するまで直球主体の投球で立ち向かったが、後半立ち直った井上の切れのいいカーブを打ち崩せず、後続を断ちきられ、17年ぶりの優勝は成らなかった。

全国大会
<2回戦>
最後の打者の打球が川崎から堤野にわたり、智辯和歌山は城東を5-2で破り、3年連続で初戦を突破した。
相手投手の緩急をつけた投球の前に、5回まで2安打と苦戦したが、後半は自慢の打線のつながりを見せた。同点で迎えた6回一死一、三塁で武内の右前適時打で勝ち越し。7回に久米の犠飛で1点を加えると、8回には長打力を見せつけた。4番佐々木のバックスクリーンへ飛び込む本塁打。さらに、池辺と本丸の二塁打で加点し、ペースをつかんだ。
前半は苦しい展開が続いた。先制した後の2回、城東の先頭打者の飛球を見失って三塁打となり、一死後、内野安打で同点。さらに4回には、3安打で二死満塁とさrたが、続く右翼後方の飛球を久米が好捕し、ピンチを未然に防いだ。
井上は変化球の制球に苦しんだが、福地の直球主体の組立に救われ、4点リードで迎えた9回無死一、二塁のピンチも何とか1点で切り抜けた。前半のしのぎ合いを守り切った智辯和歌山は、苦しい中にも確かな戦いぶりで、3回戦に進出した。

<3回戦>
久米の2点本塁打で先制した智辯和歌山は、追加点が取れない緊迫した試合展開の中、終盤のピンチを再三の攻守で守りきり、投げては主戦・井上が相手打線を3安打に完封し、準々決勝に進出した。
尽誠学園の主戦・森本の術中にはまりかけていた智辯和歌山打線は、3回二死、井上の幸運な一塁後方のテキサス安打で流れを引き寄せた。続く久米が6球目の甘く入ったスライダーをフルスイングすると、左翼席に飛び込む2点本塁打となって先制した。その後も再三走者を出したが、強気の投球をする森本から追加点が奪えない苦しい展開となったが、鍛えぬいた守備で力投する井上を支えた。
前進守備で重圧をかけて犠牲バント失敗させ、盗塁も福地が封じ、6回まで二塁を踏ませない。7回の二死三塁では川崎が強肩を見せ、8回の一死一塁では佐々木の横っ飛びの好捕で併殺と要所で攻守を見せ、リズムをつかんだ井上はボール球を巧みに織り交ぜ、長打力のある尽誠打線に的を絞らせず、完封勝ちをした。

<準々決勝>
智辯和歌山は終盤の見事な集中打で柏陵に逆転勝ちし、2年ぶりの準決勝進出を果たした。
7回まで1安打と、柏陵の左腕・清水の巧みな投球の前に沈黙していた智辯和歌山打線は、2点を追う8回、打者9人を送って、6本の長短打に犠打を絡めて一挙に逆転した。
この回、まず先頭の久米が中前安打。犠打をはさみ福地、佐々木の連打で1点差にし、池辺も安打でつないだ一死満塁のチャンスに、武内が左中間に走者一掃の三塁打を放って逆転、二死後、川崎の適時打で加点した。
制球が定まらず、再三走者を出す井上をこの日も無失策の野手がもり立てた。先制された2回には内野陣の冷静な挟殺プレーでピンチを防ぎ、5回の二死満塁も追加点を与えず、その後6、7回にも走者を許したが、いずれも内野の堅い守りでしのいだ。逆転した直後の8回、無死一塁も打球が井上の正面をついて併殺と、運も味方して相手の反撃の芽をつんだ。

<準決勝>
智辯和歌山は決勝進出をかけて岡山理大付と対戦し、惜しくも逆転サヨナラ負けした。
先制された智辯和歌山は3回、四球で出た川崎を犠打で送ると、久米が一、二塁間を破り同点。さらに犠打や、積極的な盗塁で進塁し、福地の中前適時打で逆転。5回には、中前安打の井上を一塁に置いて、久米が大会2本目の本塁打を左中間に放って加点し、3点のリードを奪った。守備もこれまで通りさえて、2回は久米の好返球で、4回には川崎の好捕でいずれも走者を仕留めた。
しかし、6回以降毎回走者を出しながら得点できず、主戦・井上も、終盤に毎回走者を許しながらも粘りの投球を続けていたが、試合の流れは徐々に相手の方へ傾いていった。7回、3本の長短打で1点差とされ、8回の二死一、二塁のピンチはしのいだが、ついに最終回に岡山理大付打線に捕まって、2安打と失策の二死満塁から左中間に痛打されて力尽き、2度目の全国制覇ならなかった。



第82回<平成12年> 全国高等学校野球選手権

和歌山大会
<準決勝>
南部・奈須、箕島・寺村の見応えのある投げ合いは、守備の乱れで決着がついた。
2-2で迎えた延長10回、南部は二死から敵失で二塁に進んだ橘が三盗。このとき、寺村が暴投し、球がバックネット前に転がる間に橘が本塁へすべり込んで決勝点を挙げた。
先制したのは南部。3回、橘が右中間に2試合連続の本塁打で2点。箕島は4回、木下の左前適時打で1点を返し、6回には松尾の適時打で同点に追いついた。終わってみれば、南部4安打、箕島10安打で、南部の積極的な攻撃が勝利を呼んだ形だが、改めてミスの怖さを感じさせる試合であった。

選抜準優勝の智辯和歌山と春季県大会優勝の日高中津の試合は、智辯和歌山が大量得点して快勝した。
智辯和歌山は日高中津の先発谷の立ち上がりを攻め、1回一死一、二塁から池辺の二塁打で先制。3回には池辺、後藤の連打と内野ゴロで1点、さらに2四球をはさむ6連続長短打で7点と、打者13人を送る猛攻で勝負を決めた。
日高中津は春の近畿大会県予選の準決勝で智辯和歌山を破ったが、中家の力のある投球に抑えられ、6回一死二塁から、中元の適時打で意地を見せたが、前半の大量失点が重くのしかかった。

<決勝>
戦後初めて2年連続同一チーム同士の対戦となった試合は、いきなり智辯和歌山が先制、すぐに南部が追いつく展開。その後は息詰まる投手戦となったが、終盤に智辯和歌山が連打で南部を突き放し、戦後記録を更新する5年連続10回目の優勝を決めた。
2年連続同じチームの対戦となった決勝戦は見応えのある接戦となった。1回表智辯和歌山は先頭の小関がいきなり中前安打。堤野の犠打で二進し、武内の左中間二塁打で先制。さらに池辺の適時打でこの回計2点を奪った。
南部もその裏すぐに反撃した。二死から遠藤が内野安打で出塁すると、橘の中前安打で二死一、三塁として暴投で1点返し、橘の三盗の後、中村の内野安打で同点に追いついた。
2回以降は投手戦。冷静な智辯和歌山・山野と丁寧にコーナーをついた南部・那須の投げ合いとなった。
試合が動いたのは8回。智辯和歌山は先頭の堤野が中前安打で出ると、武内がバントで進め、主砲・池辺の右前安打で勝ち越し。さらに9回にも青山、北橋の連続適時打で2点を追加、試合を決定づけた。
南部は立ち上がり先制されながらも、その裏、3連打で同点に追いつく粘りを見せ、その後那須が見事な投球で智辯和歌山打線を抑えるなど互角の戦いぶりであったが、山野から追加点を奪うことができず、後半力尽きて18年ぶり4回目の優勝はならなかった。

全国大会
<1回戦>
智辯和歌山は1回戦で新潟代表の新発田農と対戦、初回に1点先制されたが、2回に後藤の本塁打ですぐに同点。2点差に迫られた6回には武内の2点本塁打で突き放すなど、長打攻勢で新発田農を圧倒し、危なげない戦いぶりで初戦を突破した。
初回、先発山野がいきなり先頭打者に二塁打を許し、犠打と適時打で1点先行されたが、2回に後藤の本塁打で追いつき、3、4回には4長短打で勝ち越し。2点差に追い上げられた6回、先頭の堤野の左前安打の後、武内の2点本塁打などで3点追加。続く7回にも7長短打で6点加え、計22点の猛攻を見せた。
主戦山野は、制球が定まらず、苦しい投球となったが、粘り強く投げて要所を抑え、送りバントのミスや守備の乱れなど課題も残したが、猛打で2回戦に進出した。

<2回戦>
序盤から得意の集中攻撃が出て、勝負強く点を積み重ねた智辯和歌山が、終盤のピンチを再三の好守で守りきり、中家、山野の継投で逃げ切った。
試合は急展開した。1回、二死から四死球を足がかりに山野の適時打で2点を先取。5回も二死から連打で得点。6、7回にもそつなく加点した迎えた7回、好投していた中家が中京大中京打線につかまり、無死一、二塁から重盗をはさみ犠飛で1点。さらに連打に失策も絡んで一挙6点が奪われた。ここで急遽山野が救援して後続を断ったが、8回にも一死一、三塁のピンチ。ここで死球退場した正捕手の後藤の代役岡崎が中京の二盗を阻止し、相手に行きかけた流れを引き寄せた。
中家は7回に打ち込まれたものの、6回まで3安打無四球の丁寧な投球で踏ん張りを見せ、山野も再三のピンチを落ち着いた投球でしのぎ、勝利に結びつけた。
中京大中京は中盤までに大量点を失ったが、7回に1点差に迫る集中攻撃を見せ、伝統校の底力を示した。

<3回戦>
智辯和歌山は、3回の池辺と山野の本塁打、5回の山野の2打席連続の計3本の本塁打などで先行。終盤、PL学園に猛追を受けたが、9回にも1試合のチーム最多本塁打の大会記録に並ぶ後藤の本塁打などでダメを押し、準々決勝に進出した。
長打力の差が出た試合であった。智辯和歌山は1点リードで迎えた3回、二死一塁から池辺が2点本塁打、直後の二死一塁から山野の中越の本塁打で4点追加。さらに5回にも山野の2打席連続の本塁打で2点差に追い上げられた9回には、後藤が貴重な追加点を左翼席に運び、追いすがるPL学園を振り切った。

<準々決勝>
劇的なサヨナラ勝ちで、頂点まであと2つ。福岡代表の柳川高校と対戦した智辯和歌山は、先発中家が打ち込まれ、7回までに2-6とリードを許す苦しい展開。しかし、8回に武内と山野が本塁打を放ち同点に。さらに、延長11回二死一、二塁の好機で、後藤が右翼へサヨナラ安打を放ち、熱戦を制した。
1-3で迎えた4回裏智辯和歌山は、二死二塁から中家の適時打で1点差に。しかし5回、一死一、三塁の場面で救援した松本がボークで失点、次の打者にも四球を与えて降板。マウンドを山野に託し、総力戦は激しさを増した。4点を追う8回、武内が右本塁打。さらに二死一、二塁から山野が左翼席に起死回生の3点本塁打で同点にすると、延長11回、後藤が右翼線にサヨナラ安打して決着をつけた。

<準決勝>
強打を誇る智辯和歌山だが、この日は犠打や盗塁などで好機を広げ、着実に得点を重ねる手堅い攻めを見せ、守っても再三の美技で先発山野を盛り立てて競り勝ち、第79回大会以来、3年ぶり2度目の優勝を目指すことになった。
智辯和歌山は序盤先制しながら、3回に死球と内野安打の一死一、三塁から北川に同点となる3点本塁打を打たれ、5回にはさらに1点を失い、逆転される苦しい展開となった。7回に山野の三塁打で再度逆転したが、その裏すぐに同点。先行すれば追いつかれる。そんな重苦しい雰囲気を主砲の一振りが破った。5-5の同点で迎えた8回二死一、二塁。4番の池辺の打球は低いライナーで二遊間を破り中堅手がはじく間に2人が還って勝ち越した。これまでの4試合でチームの本塁打数は8本。しかし、この日は12安打のうち10本が短打。長打に注目が集まる中、もう一つの強さを見せて、全国制覇まであと一つとなった。

<決勝>
智辯和歌山は終盤に打線が爆発。千葉代表の東海大浦安に逆転勝ちし、3年ぶり2度目の全国優勝を果たした。和歌山大会から通算11試合連続の二けた安打に加え、選手権大会の通算チーム最多安打、最多本塁打、最多塁打、チーム最高打率の4つの記録を更新し、また、県勢としても通算100勝目を達成。圧倒的な打線に粘り強い投手陣がうまくかみ合い、春の選抜大会準優勝の雪辱を果たした。
立ち上がりから追いつ追われつの展開で1点差で迎えた8回智辯和歌山は、一死二塁から山野の中越二塁打で同点し、さらに二死三塁で青山の中前適時打で勝ち越し。続く二死満塁の好機に堤野の左前安打と武内の二塁打で計5点を奪い、試合を決めた。序盤にリードを許して苦しい展開となったが、堤野の2本の本塁打などでしぶとく食い下がり、8回のラッキーイニングをものにして、記録づくめの優勝を飾った。
東海大浦安は、単打を連ねて相手に食らいついた。3回は無安打で2点、5回は足を使った攻撃で2点を取り、リードする展開にもっていったが、主戦・浜名の3連投の疲れから疲労の色が濃く、後半逆転された。