第6回<昭和4年>選抜中等学校野球大会

 この大会入場式より各校校名を記したプラカードを掲げてひときわ壮重さを加え、また勝利を祝福してセンターポールに高々と校歌吹奏裡に校旗を掲揚して勝利の栄誉を称えることになった。この2つのことは故人見絹江嬢の発案によるものである。なお甲子園球場も鉄筋コンクリートの東西アルプス席が増設、文字通り日本一の収容力を誇ることになった。

<1回戦> 和歌山中 1-5 愛知商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山中 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
愛知商 2 1 0 0 0 2 0 0 × 5
<1回戦> 海草中 5-0 平安中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 1 0 1 0 1 0 2 0 0 5
平安中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 本大会随一の好取組、平安の剛球伊藤と海草・西山の対戦は当然投手戦を予想されたが海草の攻撃振い1,3,5,7回に着々と得点を重ね快勝した。今日の勝因は西山投手の素晴らしいピッチング、特にアウドロと肩の釣球に平安打者を眩惑させ勝利を完全に掌中に収めた。また、好漢浜野三塁手が前日左足の靴づれが化膿切開し、当日の出場は医師から厳禁されていたのもきかず片足素足という涙ぐましい健闘振りはどれ程味方の士気を鼓舞したことか、しかも三塁打と単打を放った彼こそ正に今日の大殊勲者といえよう。

<2回戦> 八尾中 6-5 海草中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
八尾中 0 0 0 0 0 0 0 0 6 6
海草中 0 0 2 0 0 1 2 0 0 5

 この日、西山投手出来悪く攻撃も芯に当たりを見せなかったが、3,6,7回に小刻みに得点を重ねて計5点をリードしたから海草の完勝と思わせた。ところが最終回を迎え八尾無死、四球に走者を出すや一死後、雪本の安打、岡本中越三塁打し俄然攻撃大いに振い前進した海草内野陣を越すテキサス、野手選択、安打と八尾の矢継早の速攻に大混乱続き、長谷の中堅安打で一挙6点を挙げ遂に逆転、意外の大番狂わせに海草悲涙を呑む。
 橋戸頑鉄氏評「勝も負くるも涙、何といたづらだ。これは単に技術上で解決される問題でない。得点差5、一死満塁に内野前進せず守備範囲を広くし二、一塁の併殺、或いは確実にアウトを増すことに努力すれば海草を救ったであろうに真に惜しまれる。」