第14回<昭和3年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会予選

大会中長雨に悩まされ球場の乾きが悪く、しぶきをあげて強行する有様で7日漸く終了したがこれにこりて翌年より再び和歌山中校庭に戻して行うこととなった。

<準決勝> 和歌山商 2-31 和歌山中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山商 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2
和歌山中 2 6 6 3 4 4 6 0 × 31

 和歌山商は和歌山中・小川投手の速球を打ちあぐみ僅に3安打に終わったのに返し、和歌山中の攻撃は物凄く放った安打23本、中でも山下は2ホーマーを放って完ぷなきまでに打ちまくって大勝した。

<準決勝> 海草中 3-0 和歌山師
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 0 0 0 2 1 0 0 0 0 3
和歌山師 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 和歌山師は打撃不振で毎回凡退、海草中も3回まで適時安打を欠いたが、漸く4回に至り庄司三遊間安打、荒川も三塁を抜き西山四球で無死盗塁のチャンスを迎え、松本の投匍に併殺喫し忽ち二死となったが打谷の二塁打に2点を入れる。更に5回一死後、浜野左前安打、二死後二盗成り庄司の遊匍失と投手の暴投に1点を加え西山の好投で押し切って勝つ。

<決勝> 海草中 0-2 和歌山中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
和歌山中 0 1 0 0 0 1 0 0 × 2

 戦前両軍の実力から好試合を期待されたが、海草中は3回二死後、鈴木・浜野安打に出たが後続凡退、8回にも二死後、浜野二遊間安打し荒川二塁打して絶好機を迎えたが、流石に小川頑張って3番打者庄司を三振に討ち取り得点を許さず、これに反し和歌山中は2回小川中前安打、山下に送られ喜多島の二匍を名手荒川ファンブルする間に1点を先行した。
 更に6回二死後から小川を左中間二塁打を放ち山下の二遊間安打に1点を加え、海草中の反撃を押さえて優勝した。しかし海草中は小川の剛速球に良く食い下がり、西山投手の好投とバックスの好守と相俟って力のこもった好ゲームを展開したのは印象的だった。

全国大会

<2回戦> 佐賀中 0-12 和歌山中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
佐賀中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
和歌山中 5 2 0 3 0 1 0 1 × 12

 佐賀中は小川の剛球に全く封じられ3回に光武弟が中堅に、6回山田が一、二塁間を抜く安打を放ったのみ。
 和歌山中は1回から猛打を振い打者一巡、この間2個の四球、土井の左中間三塁打、山下の右越本塁打、島本・橋本の安打などで一挙5点入れ、更に2回1走者を置いて小川左中間本塁打を放ち2点を加え、4回にも脇所の右翼二塁打を始め集中安打を浴せて3点を加えて大差をつけ楽勝した。

<3回戦> 高松中 3-1 和歌山中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
高松中 1 0 1 1 0 0 0 0 0 3
和歌山中 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1

 小川、梶原両投手好投して緊迫したゲームだったが、初回高松中トップ高橋内野安打に出て外山の中越二塁打に1点、3回にも岡見三匍失捕手牽制に追い出されながら一塁失に命拾いし高橋四球後、外山の三塁内野安打と梶原の遊匍野選で1点加えた。更に4回一死後、中村正左中間二塁打し岡見中前安打、高橋の右飛に本塁を衝いて捕手のタッチ拙く生還、その裏、和歌山中・土井右越本塁打を放ち気を吐いたが、その後は梶原投手を打ち込めず最後まで三塁踏む者なく雄図空しく敗退した。和歌山中内野陣にエラー多く、しばしばピンチを招いたのが敗因といえよう。あたら超中学級の小川投手を持ちながら最後の桧舞台に味方の打力を伴わないため退いたのは惜しまれる。それにしても高松中・梶原、和歌山中・小川の力投、活発な打撃、それを阻む好守備を織り込んだこの試合は球史を飾る決戦であった。