第48回<昭和51年>選抜高等学校野球大会

<1回戦> 徳島商 6-3 和歌山工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
徳島商 2 0 0 3 0 0 0 0 1 6
和歌山工 0 0 0 0 0 0 0 3 0 3

 徳島商が前半、効率よく加点、終盤になって大会初ホーマーで追いあげる和歌山工を振り切った。
 和歌山工・吉田、徳島商・日川の両左腕の先発となったが、徳島商の初回の速攻で先取点。早朝試合でまた腕の振りのにぶい吉田をとらえ、先頭の武市が左前打、林が選んだあと、阿部が中前にはじき返して満塁、しきりと肩と腕を動かしマウンド上で気持ちを落ち着けようとする吉田。しかし動揺した表情はかくし切れず、そこにつけ込んだ安村は2-3と粘ったあと左前に2点タイムリー。
 さらに徳島商4回、庄野の左中間二塁打などをはじめ、長短4安打に2四球、スクイズなどをおりまぜ、打者一巡で3点を加えた。強打のつぎは一転して送りバント、つぎは強打と緩急自在の攻めはさすがによく鍛えあげられている。
 和歌山工はさほど球威があるとは感じられない日川がなかなかつかめない。2回、二死から浜崎が左中間を破る二塁打のあと真田が左前打。浜崎が本塁を欲ばり失敗。3回から5回まで毎回安打しながら低目の球に手をやき、あと一歩の壁が破れない。やっと8回になってやや疲れがみえ、投球動作がにぶくなった日川をじっくり攻めたて、無死から吉田が中前打、湯川が選んで一、二塁、二死後、西川が1-1後の内角高めを左翼ラッキーソーン今大会第1号ホーマーを放ち、3点をかえしたが遅かった。

<2回戦> 新宮 3-8 日田林工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 0 0 0 0 0 2 0 1 0 3
日田林工 5 1 0 0 0 2 0 0 × 8

 堅さのほぐれない新宮。その立ち上がりをついて日田林工が大量のリードを奪った。
 1回、一死米原が中前打し、ボークで進塁、柳川四球のとき三盗すると柳川もすかさず二盗。自らのミスとモーションの大きさをつかれた新宮・坂地投手は、ますますうわずって八谷にストレートの四球を与え満塁。ここで力の日田林がまず小わざで先制した。入田が2-1から投前スクイズ・バントすると二塁走者の好走塁でこれが2ラン・スクイズとなった。
 そのそつない攻撃のあとは一転して強打に転じ、山田の左前適時打につづき小関、松原も安打して再度満塁。喜見の一打は平凡な二ゴロだったが二塁手が一塁へ悪送球し、日田林は労せずして2点を追加した。
 新宮も懸命に攻めた。2、4、5回と先頭打者が出塁したが、ヒット性の当りが正面をつくなど2併殺を喫して逸機。ようやく6回3長、短打を集めて2点を返した。ところがその裏、2回半ばからリリーフして好投していた2年生の下村がつかまり、せっかく取り返した点をそっくりはき出してまた6点差。この2点が決定的となり、8回新宮の井上が左翼ボールにぶっつけた大会第3合本塁打も影が薄れ、本調子でない喜見投手に完投を許してしまった。
 新宮はよく攻めはしたが、かき回し戦法にもろい守りが、こうも破たんをきたしては勝ち目はなかった。逆に相手の弱点をつき、毎回安打で多彩な攻めをみせた日田林工は、ウワサどおり活発である。