第19回<昭和8年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会

<準決勝> 海草中 0-6 海南中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
海南中 3 0 0 0 0 3 0 0 × 6

 海草中・森田投手腰を痛め意気揚がらず海南1回磯野・亀井の適時安打に堂々3点をリードし、6回更に二死ながら2走者を置いて長谷川中堅安打、トンネルに走者を一掃大勢を決した。海草中は3回好機を迎え、しかも好打順だったが松下・荒川何れも内野ゴロして入らず海南中の一方的勝利に帰した。

<準決勝> 和歌山中 3-7 和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山中 0 0 0 1 0 1 0 0 1 3
和歌山商 0 1 0 0 0 1 0 5 × 7

 試合は予想通り大会随一の白熱戦となった。両軍共はち切れんばかりの元気で、チーム全体として優劣はみられなかった。和歌山中は敗れたりとはいえ悔いのない善戦を続け特に和田投手の健闘は賞賛に値したが、只8回に雑賀に三塁打を浴び、敗因を招いたのは気の毒で捲土重来を祈りたい。一方和歌山商は攻守とも上出来で、一層の自重を望んで止まらない。

<決勝> 海草中 5-2 和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海南中 0 0 1 0 0 4 0 0 0 5
和歌山商 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2

 技術上の甲乙を附することは出来ないが、この日海南中・長谷川投手の出来栄え素晴らしく一糸乱れずピッチングに得意のカーブを混え敵打者を完封したのは真に見事だった。これに反し和歌山商・稲垣投手は上出来でなく持前の力を十分に発揮し得ない憾みがあった。
 海南中の殊勲賞は何といっても亀井三塁手で、攻守共きびきびしたそのプレイは際立っていた。2回裏、海南中・阿瀬の一匍を飛び上がって捕え併殺した和歌山商・山本一塁手の美技も特筆に値しよう。海南は闘志に於て既に相手を呑み、5回まで押されながら萎縮せず後半強靭な反発力を発揮して遂に勝利を物にした。

<紀和決勝> 海南中 3-6 郡山中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海南中 0 0 1 0 0 0 0 1 1 3
郡山中 1 0 3 0 0 0 0 2 × 6

 海南中・長谷川投手はこの日押さえが利かず、高目高目に球が浮き上がりから郡山中の猛攻を浴びた。即ち1回郡山中激しく攻めたて桜井いきなり左翼二塁打に出て、星野の中前安打に1点先行し意気頓に揚がる。更に3回中田四球、大橋遊撃安打、星野中越二塁打を放って長尾の遊匍に計3点を挙げ断然海南中を圧した。
 海南中はやや負けの形で3回栗生遊匍失に出て中田の三匍で封殺されたが、中田の二盗成り上山の遊越安打に生還1点を返し、その後は3点のアヘッドに可なり苦戦を続けた。8回磯野中前安打し小林も適時安打して磯野を迎えたがその裏、郡山中・大橋左前安打しこの日当たり屋星野右中間本塁打を憂飛し止めの2点を加えられた。最終回、海南中必死の反撃に出た中田三塁打し、長谷川の遊匍に1点を返したが遂に及ばず敗退。海南中は連日の奮戦に疲れが出たのか、攻守に優りながら前半の失点が最後まで響き十二分の実力を出し切れず、紀和大会有史以来初めて奈良勢に甲子園進出を譲ることとなった。