第32回<昭和25年>全国高等学校野球選手権大会

県予選

<準決勝> 新宮 6-0 串本
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 2 0 0 2 0 0 0 2 0 6
串本 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 紀南同志の対戦で強豪田辺を破った串本が期待されたが串本西脇投手出来悪く1回新宮植田四球、寺本三遊間安打に一、三塁、大橋遊匍に植田生還、更に小野一匍失に寺本還えり串本はその裏、無死走者一、二塁となったが投匍に併殺を喫した。新宮4回表、2走者を置いてピンチヒッター飯田の二塁打に2点を加え串本の敗色漸く濃厚、6回裏、無死満塁の好機も小山三振のとき、三塁走者帰塁遅く併殺され新宮の美技に阻まれて止む。8回新宮は更に安打連発でだめ押しの2点を加え決勝戦へ勝ち進む。

<準決勝> 向陽 2-6 海南
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
向陽 0 0 0 0 0 2 0 0 0 2
海南 1 0 0 1 0 0 0 4 × 6

 1回向陽一死満塁の好機を迎えたがスクイズ失敗して併殺されその裏、海南も無死一、二塁でバント失敗し好機去るかと思われたが、野崎カーブを右翼三塁打して1点を先行、山下、二出川投手共大きく落ちるアウドロを武器に適時胸の辺りをつく速球を混えて相譲らず健闘したが、海南は4回一死後、吉田の左翼二塁打で1点を追加、2点リードした。然し向陽は6回一死三塁の好機を今度はスクイズ成功、更に二出川適時安打に2点返し2-2とする。7回海南向陽の内野手の連失で一死二、三塁となりながらまたまたスクイズ失敗、無得点に終われば向陽も8回二死二塁に茨木よく右前安打したが三塁コーチの指示悪く三、本間に憤死得点に至らず、その裏、海南2四死球、5安打を集中して二出川をノックアウトして4点を得て押し切った。両軍共バントの拙さが目立っていた。

<決勝> 海南 2-6 新宮
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海南 0 0 0 0 1 1 0 0 0 2
新宮 0 0 1 2 0 0 0 3 × 6

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       
 1日休養した杉本と3日連投の山下が共に曲球を武器に懸命な投球、3回まず新宮杉本が左中間三塁打し中継に出た野手の三塁への大暴投に1点先行、4回海南川口右前安打、二盗に成功、野崎四球無死一、二塁の好機から強気に打って山下1飛、古田の一打は左中間を襲ったが、植田の美技に阻まれたのは惜しかった。新宮内外野手の好守備を考え山下に送らせ手堅く1点を返すところだったと思われる。
 その裏新宮2走者を置いて橋本左前へ三塁打して更に2点追加したが、海南の追撃鋭く5回1点、6回四球に出た野崎を古田二塁打して1点を帰し3-2とその差1点と迫り投手戦から打撃戦に転じたが、8回海南期待された好打順を無為に終れば新宮植田左飛凡失に生き2四球で満塁となり大平、橋本連続安打して3点を加え大きく引離して試合を決した。打力に優る新宮の勝利といえよう。

<紀和決勝> 郡山 1-2 新宮
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
郡山 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
新宮 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2

 実力接近した場合の先取得点はナインに与える精神的影響は大きく、この日の郡山は2回に1点をあげて足並が急に調子づいていた。
 だが以後は二、三塁打を放ちながら加点できず、7回にも3個の四球を奪いながらけん制球に刺されるなど攻撃面の粗雑さはおおえなかった。
 一方新宮は4回から得意の足を生かしてしばしば好機を生みつつ最後まで予断を許さぬ激しい反撃を繰返した。然かし惜しいかな打球はしばしばライナー性の当りで郡山守備の正面をつき不運の攻撃と幸運の守備を交錯しつつ郡山にとっては正に魔の最終回を迎えた。
 即ち遊匍失、二死後、四球と再度の遊葡失で満塁と攻めたて仲1-0後の一打は中堅前の安打となって2者生還、劇的逆転で栄冠は初めて紀南の新宮に輝いた。勝運から見放されていたというか、郡山にとっては飽きらめ切れぬものがあったろう。然し両軍死力を尽くしての一戦は正に高校野球ならではのもので新宮の勝因ともなった不屈の闘志もさることながら郡山の善戦は激賞に値する。

全国大会

<2回戦> 新宮 9-10 鳴門
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 1 1 1 0 2 0 2 0 2 9
鳴門 0 0 4 3 0 0 2 1 × 10

 初陣同志の一戦は活気あふれる両軍打線に両主戦投手は耐えきれず早くも2,3回ノックアウトされ最終回まで波乱を生み多彩なゲームを展開した。
 新宮は小刻みに得点、2回近藤を降板させた時は前途はかなり明るいものがあったが鳴門もさるもの3回集中打で杉本を降して逆転、4回にも救援の左腕仲を攻略して3点を追加した。新宮も屈せず、5回小野の快打で2点、7回には二死後、橋本の長打と一塁手の落球で同点に持ち込んだ。これも束の間、鳴門は栗橋の安打と中飛で勝利点を奪い、8回には田渕浩の好打で勝利を決した。然しそれにしても新宮は打棄る可き最終回のチャンスを焦り逃したのは惜しまれる。即ち佐藤の快打で1点、一死後、大橋の三塁強襲安打で植田生還した時二塁走者佐藤が無暴にも本塁をついて仆れ寺本三盗を試みて再び仆れ、あたら好機も自らの暴走に自滅した。両チーム共よく練習を積み波乱多いゲームで満場を湧かせた。