第38回<昭和31年>全国高等学校野球選手権大会

県予選

<準決勝> 県和商 5-7 新宮
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
県和商 0 0 0 0 0 5 0 0 0 5
新宮 0 0 3 3 0 0 1 0 × 7

 県和商の先発吉田は好調な滑り出しだったが新宮は3回一死後、倉本の幸運な内野安打を足掛かり2安打、1四球、1敵失で先制の3点を挙げ続く4回にも二死後、倉本の三遊間安打をきっかけとして好打して3点を加えて一方的に試合を進めた。これに対し県和商は6回制球力の乱れた桧作から1安打、2四球を得て代わった浜口からも4個の四球後、1安打を奪いタイムリーエラーもあって5点を返し1点差に迫った。然し7回から新宮桧作を再び登板させて立ち直り県和商打線を押える一方7回には吉田投手の好球を田渕の左越安打を始め長短打3本放ちダメ押しの1点を加え食い下る県和商を振り切った。新宮はチャンスに倉本、天ノ川の適時安打が出たのが勝因だが、県和商は折角吉田投手の健闘をバックスの手痛い凡失でふいにした。

<準決勝> 海南 1-2 日高
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
海南 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
日高 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 2

 海南谷投手はコントロールよく特にスピードに乗ったドロップが内角に決まり、一方日高玉置忠はカーブを混じえてコーナーをつく直球をうまく配し息詰まる投手戦となった。6回海南二死後貴重な先取点を挙げたが、日高もその裏すかさず谷野投手を攻めて同点に持ち込んだ。然しその後投手戦を続け1-1の儘延長戦に入り、11回裏、この日当り屋日高桧三木高目のカーブを左翼左に二塁打し投手けん制球に刺されたが更に藤川安打して二盗後、織田の二塁打でホームイン、決勝の1点を挙げ熱戦の幕は閉じた。

<決勝> 新宮 3-0 日高
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 0 0 0 0 0 1 2 0 0 3
日高 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 日高玉置投手は滑り出しやや悪かったが、2回以後コーナーを低く攻め打者をインザホールに追い込んでは伸びのある直球とカーブを配して打ち取り3、4回のピンチも切り抜けた。然し6回野手失に1点を許してからはペースがやや乱れ7回二死後、高目の好球を桧作に三塁打され更に8番西辻󠄀に与えなくともよい四球を与え、続く津井の長打を呼んで追加点を許してしまった。新宮桧作り投手は球威の不足をもっぱら凡打主義で補い成功した。1回玉置<忠>に低目の直球を投げて二塁打されたが、事なく、5回のピンチは楠の盗塁失敗に救われ、7回には三木に左越二塁打され藤川に四球を与えて無死絶対のピンチに陥ったが織田の左飛は野手の好捕に、楠の三匍は5-4と併殺してシャットアウトした。日高の玉置投手は決して不調とは云えなかったが新宮の力と内野手の手痛いエラーで屈した。新宮桧作投手の攻守に亘る活躍は見事で新宮優勝のきっかけを作った。

<紀和決勝> 新宮 2-0 郡山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 0 0 0 0 0 1 0 0 1 2
郡山 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 力では数段優れていた新宮が大西の軟投に打ち気を誘われ悪球に手を出したのが苦戦の原因で前半は両軍得点なく5回に至り新宮西辻󠄀の右中間本塁打で先取点を挙げ漸く均衡を破った。9回にも二塁失に出た浜口を田渕が左翼線二塁打して還えしだめ押しの追加点を挙げ制勝した。この日桧作り投手は速曲球のコントロール良く郡山をノーヒット、ノーランに退け快心のピッチングを見せた。

全国大会

<1回戦> 早稲田実 2-1 新宮
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
早稲田実 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2
新宮 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1

 早稲田実は最終回スクイズで逆転、新宮を打棄った。入場式直後の第1試合とて前半は共に萎縮していたが最終回にやっと高潮した。早稲田実は4回まで毎回安打を放ち新宮を脅し続けたが新宮は2回二死後、桧作左前安打し続く田渕の三匍一塁悪投で二、三進、西辻󠄀四球の後、津井がよく選んで桧作を押し出し先取点をものにした。新宮桧作投手はこれに気を良くして4回以後やっと自己のペースを取り戻し巧みにシュート、スローボールを混じえて焦りを見せた早稲田実の進撃をかわして逃げ切るかと思われたところが、最終回になって球威を失い一死満塁から2度のスクイズで2点を許し逆転の憂目にあった。新宮の上位打者が慎重に低目を攻める大井投手に対して強振し続けたのが敗因であり4回にも2安打、6回にも一死二、三塁の絶好機をスクイズに失敗して追加点を挙げ得なかった。最終回早稲田実の菊地、手塚がスクイズを成功させた時の新宮のバッテリーは全然無警戒だったのは腑に落ちなかった。