第66回<昭和59年>全国高等学校野球選手権

和歌山県大会

<準決勝> 新宮 3-9 和歌山工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 0 1 0 0 1 0 0 0 1 3
和歌山工 0 0 0 2 1 2 0 4 × 9

 和歌山工が3三塁打を含む長短13安打を放って圧勝した。2-2で迎えた5回裏の和歌山工は二死一塁で、岩橋が左中間を抜く二塁打を放って再びリードし、6,8回にも得点した。森岡はコーナーギリギリをつく丁寧な投球で新宮を散発7安打に抑えた。
 しんぐう新宮は2回二死後、北村が真ん中の直球を中越えに本塁打して先制、1-2で迎えた5回は一死満塁で星山が四球を選び、押し出しで同点に追いついた。しかし、その後は9回に1点を返したが粘りが実らず、再三の好機にボールに手を出したのが痛かった。

<準決勝> 大成 0-2 箕島
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
大成 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
箕島 0 1 1 0 0 0 0 0 × 2

 箕島の杉本が好投し、守備陣も4併殺ともり立てて、体制を振り切った。箕島は2回無死から左前安打で出た勘佐を豆塚が手堅く犠打で送った後、杉本が右中間を破る二塁打を放って先制、3回一死からは左中間を破った島田が俊足を生かして一気にかえりランニング本塁打とした。杉本は伸びのある速球と変化球で好投、中盤以降は内野陣が手堅い守備で切り抜けた。
 2点を追うたいせい大成は8回二死から中越え二塁打を放った松尾が、続く上野山の右前打で一挙に本塁を突いたが、右翼種からの好返球で本塁憤死した。6,7,9回にはいずれも無死から安打で走者を出しながら併殺されたのが痛かった。

<決勝> 箕島 8-0 和歌山工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
箕島 0 0 2 2 1 2 1 0 0 8
和歌山工 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 箕島・島田投手の5球目が豆塚捕手のミットにおさまった。「ストライク」榊田球審の右手が高々と上がった。採集量のサイレンが鳴った。三塁手の山本主将がマウンドへ駆け寄り、島田投手と抱き合った。守備位置からベンチから箕島の選手たちが集まり、マウンド上で入り乱れ、肩をたたき合った。
 みの箕島の攻撃が勢いづいたのは3回からだった。まず先頭の島田が四球に出た。4番坂本が和歌山工・森岡投手の2球目を送りバントし、球は一塁線にうまくころがった。
 これを追った森岡が足をとられて一塁へ悪送球し、無死二、三塁となった。得点の好機だ。
 ここで今大会6割を打っている勘佐が打席に入った。勘佐は初球をうまく中前にはじき返し、三塁にいた島田に続いて二塁走者坂本も生還。2点を先取した。
 続く4回、安打や四球などで一死満塁の好機を迎えた。坂本が打席に入った。「ライナーに気をつけろ、併殺になるぞ」。尾藤監督の指示がとんだ。坂本は球を地面にたたきつけるように打った。打球は三遊間を鮮やかに破った。山本が一気に生還、続く勘佐の犠飛で田中精もかえり4-0と点差が開いた。
 勢いに乗った箕島打線は5回にも1点をあげ、6回には先頭の島田が三遊間安打で出塁した。100米11.7秒の足を持つ島田は、打者勘佐のときに二塁、6番豆塚を迎えた。冬場に右足を骨折し骨をつなぐビスを埋め込んだままの出場だった。「ベルトの高さだけを狙え」。豆塚は尾藤監督の言葉にうなずいた。前の打席は空振りの三振だった。「今度こそ」。豆塚は初球の内角高めのカーブを思いきり引っ張った。球は左翼の場外へ一直線に飛んだ。ダメ押しの2点本塁打となった。今大会で27本目の本塁打たっだ。
 和歌山工も必死だった。しかし、1回3番上田から4回1番松山まで、箕島・島田投手に打者8人が連続三振に打ちとられた。このあと打席に北野が入った。「狙い球を決めて初球から好球必打だ」。岡田監督が指示を与えた。北野は直球を待った。4球目は内閣に来た。力いっぱいバットを振った。打球は右前に落ちて和歌山工の初安打となった。しかし、後続がなかった。好機を確実に得点に結びつけた箕島に対して、和歌山工は4,5,6,8,9回に走者を出しながら、島田投手の切れのよりカーブを打ちあぐみ、連打ができなかったのが痛かった。

全国大会

<1回戦> 取手二 5-3 箕島
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
取手二 0 0 0 0 0 0 0 5 0 5
箕島 1 1 0 0 0 0 1 0 0 3

 一つのミスをきっかけに試合の流れが一気に取手二に傾いた。8回、先頭の桑原がニゴロ、これを二塁手が悪送球して二進。続く塙が追い込まれながらも左中間へ三塁打して1点を返した。走者を出しながらも踏みとどまっていた島田にはっきり動揺の色が浮いた。小菅が四球。続く吉田の遊ゴロは併殺を狙った二塁手の悪送球を誘い、なおも一死二塁、佐々木が三遊間を破りついに同点に追いついた。
 箕島は島田から杉本につなぎ、取手二の攻撃を食い止めようとしたが、勢いに乗る取手二は下田の三塁打と犠飛で計5点を奪い逆転した。この回、雨が降りはじめ、内野手にはボールが滑り、気の毒な面もあった。それにしても、取手二がミスを逃さずたたみかけた攻めは見事だった。
 箕島は2回、1点を追加し、なおも満塁で後続が併殺。3回にも無死で二塁でバント失敗して併殺されたのが痛い。ここで加点しておれば、一方的な展開となったろう。