第39回<昭和32年>全国高等学校野球選手権大会

県予選

<準決勝> 県和商 4-0 田辺
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
県和商 1 0 0 0 0 0 3 0 0 4
田辺 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 県和商1回阪本投手の初球を狙って宮地一塁失で生き二盗後、入口のバントで三進、スクイズを警戒し過ぎた投球を捕手後逸して1点を先行した。その後担々と進んだが7回県和商は山本四球、村中の三匍一塁悪投で無死二、三塁となり坂下、福塚連続スクイズを企て成功、次いで宮地三遊間安打し二盗後、入口の右前安打で3点を奪って勝利を不動にし大きな番狂わせを演じた。県和商吉田投手は内角に食い込む速球とドロップをうまく配して田辺を散発の5安打に抑えたが田辺は坂本投手に左程球威がなかった上にピンチに内野エラーが出てつぶれた。県和商は好球を見逃さず果敢に打って出たことと、うまいバント作戦が成功したことが勝因だった。

<準決勝> 伊都 2-0 桐蔭
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
伊都 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0
桐蔭 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2

 伊都は2回松本中越二塁打に出て三盗し一死後、井生が三遊間安打して松本生還、貴重な先取点を得た。9回にも二匍失に出た松本をバントで送りこの日当り屋井生が左越二塁打を放ちダメ押しの追加点を挙げ逃げ切った。一方桐蔭は森岡投手の内角低目の直球、内角に食い込むカーブを打ちあぐんで凡退を繰返し8回迄無安打に押さえられた。桐蔭最後の攻撃で前田左前に初めて安打し玉置遊匍で二封された後、木村の中前安打が出て二死一、二塁と攻め寄ったが河野の遊飛で遂に反撃できずシャットアウトされた。

<決勝> 伊都 0-2 県和商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
伊都 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
県和商 0 0 0 0 0 0 2 0 × 2

 両軍共固くなり前半波乱なく5回に至り伊都は一死2走者を置いて田村の中飛はあわや安打かとみえたが、中堅手前に転びながら好捕得点を阻まれた。又県和商はその裏、山本四球に出て二盗、送りバント失敗で山本二、三塁間に挾まれながら野手悪投して三進したが、村中三振、坂下スクイズ失敗で山本本塁でアウト、然し県和商は7回漸く井生の球に馴れ先ず吉田が左翼線に二塁打し、続く筒井もワンバウンドで左翼スタンドに飛び込む二塁打を放って吉田生還、更に山本の左越三塁打でこの回2点を挙げ通算4度目の優勝を飾った。
 伊都ベンチは予想に反して軟投井生を登板させて5回裏山本四球で出した際、森岡投手に切り替えてピンチを防いだが、6回また井生を再登板させて7回に県和商の猛打を浴びて敗れた。井生を思い切れず投手交代の時期を誤ったのが敗因だった。

<紀和決勝> 準決勝 高田 0-5 県和商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
高田 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
県和商 4 0 0 0 0 0 1 0 × 5

 高田は本格派の丹原投手を先発させたがカーブが曲り切らず、その上直球が低目に過ぎて立ち上りら制球に苦しんだ。県和商はこの隙に乗じて1回足でかせいだ宮路の遊匍内野安打を足がかりに入口四球の後、筒井意表をついて三バントを強行、三塁線にころがって絶好のバントとなって2点を先取。この奇襲で丹原投手ががっくりして続く村中が中前に適時安打を放って又2点を加え早くも大勢を決した。吉田投手はドロップ、カーブがよく決まった上コーナーワークが素晴らしく打たせて取る様気楽に投げたのが成功して高田を2安打に封じる一方7回にも2敵失、2死球で押し出しの1点を奪い反撃の機を与えず制勝した。

<紀和決勝> 伊都 1-2 県和商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
伊都 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
県和商 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2

 1回裏、県和商は二死後、吉田中前安打続く筒井は伊都森岡投手の2球目、内角高めの直球をたたけば左翼スタンドに飛び込む大会初の2ランホーマーとなり幸先良い2点を挙げた。伊都はこれにひるまず盛んに吉田投手の好球を狙って打ち気に出たが当たりはにぶく5回まで無安打、無走者に押さえられた。9回伊都最後の攻撃は二死後吉田投手稍々固くなり阪本四球、松本遊葡失に生き中本投手横を抜いて二死満塁、井生の一打は二塁寄り、福田慌ててボールを落し阪本生還1点を返し迫ったが及ばず万事休す。