第41回<昭和34年>全国高等学校野球選手権大会 県予選

<準決勝1> 御坊 2-3 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
御坊 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 2
南部 0 0 0 0 0 2 0 0 0 0 0 0 1 3

 息詰まる熱戦だったが南部の長打力が、威力を発揮し御坊は花光・松井の継投作戦に切り抜けんとして自ら苦しんだ。3回御坊一死、左前安打の染道に続き平野のバントが内野安打、更に次打者のバントも投手失に満塁、スクイズ警戒で固くなった投手のボークで1点を先行した。然し6回南部は二死一、二塁となり御坊ベンチは球威の衰えた花光投手に尚も続投させた為、田端に右越三塁打を浴び2者生還逆転した。南部川上投手は快調なピッチングでそのまま押し切るかと見えたが、御坊もさるものトップ森本が第1球の直球を左翼一杯に打ち込むホームランで同点、更に湯川の内野安打を生かして一死三塁と攻め立てたが、惜しくもスクイズ失敗併殺を喫し延長戦に入る。
 南部は後半よく打ち押し気味に進めたが13回に至り一死後、垣渕右中間三塁打し依然絶対のピンチに襲われた御坊は満塁策をとって滝川と勝負に出たが、この苦心の作戦も松井投手の制球意の如くならず1-3で遂に押し出しの決勝点を与え、南部は強敵御坊商工を降した。南部川上投手は内角低目に入る速球とシュートを武器に少しの崩れもみせず投げ通したのは見事であった。

<準決勝2> 田辺 1-4 海南
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
田辺 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1
海南 0 0 0 2 1 0 0 1 × 4

 田辺好投手西田も海南の底力ある打棒に打ち崩れた。海南の投・攻・守三拍子そろった強味を遺憾なく発揮された試合だった。4回海南無死、堂上の右越三塁打から始まって寺田、羽根、木下が次々と右翼へ二塁打を放って堂々2点を挙げ更に5回にも堂上、寺田が左中間を抜く連続三塁打を飛ばして圧倒した。海南木原投手の低目に入る速球は益々スピードも加わりカーブの切れも冴えて完封し13個の三振を奪う好投だった。
 田辺は8回一死、片山が右前安打を放った後、羽根の連失で1点を返したのみ。その裏、海南は寺田が再び右越二塁打を放ち1点を加え危な気なく制勝した。

<決勝> 海南 0-1 南部 
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海南 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
南部 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0

 南部無欲の勝利だった。川上投手は連投による疲労によく耐えて海南を封じ、而も自らの殊勲打で決勝点を挙げた活躍振りは大きなものだった。前半相譲らぬ投手戦で左腕川上投手が内角低目に鋭く決まるカーブで抑えれば海南木原も横手投げから外角ぎりぎりの速球を多投して試合は無得点のまま回を重ねた。
 海南は5安打を散発したのみで特に4回頃疲労の色漸く濃い川上投手を打ち崩せなかったのが海南としては惜しまれる。後半戦に入り優勝を意識してか海南は稍々萎縮したのに反し南部は気をよくして川上も立ち直り走者を出して押し気味。即ち5回無死走者を出し更に7回田端、滝川の連続安打して結局バント失敗でものに出来なかったのが海南を脅した。
 最終回を迎え南部は一死後、田畑の一打中堅手の前で不規則にバウンドして二塁打となり強打者滝川は敬遠の四球、次打者川上は2-2後ファウルを重ねて粘った後、第7球目を左中間に放ち田畑勇躍生還、サヨナラ勝ちで優勝候補海南を撃破、斬くて南部は初めて県代表の栄冠を獲得した。海南木原がスタミナに不足しこの日の投球にそれが現れていたのに反し、捨身の闘魂を以って投打に活躍、殊に最終回サヨナラ安打を放った川上投手の殊勲は賞賛に値する。

<紀和決勝> 天理 6-1 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
天理 2 0 0 0 0 1 0 1 2 6
南部 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1

 天理は立ち上がり南部川上投手の外角球を巧くミートして二死から4安打連発、先制の2点を挙げた。その裏南部は無死垣渕四球に出たが後続無為、3回には再び無死市場が内野安打に出て好機を迎えバントに二進後垣渕第1球を中前安打して1点を返す。然し4回天理一死後、内野安打と敵失で二進した大井は山崎の中前安打に本塁を衝いて滝川の好送球で寸前アウト。南部ピンチを脱してホットしたのも束の間、6回一死三塁のピンチに襲われ次打者のバント一塁手拾って本塁へ投げたが一瞬セーフ。益々優勢で更に8回にも3安打とバントで一死満塁から1点を加え9回には天理島中三塁打を放ちがっくり気落ちした川上投手を打ち崩してだめ押しの2点を加え試合を決めた。
 南部は8回裏無死、市場内野安打に反撃のチャンスを迎え代打者中村三振後、期待の垣渕右前に快打を放ったが市場は走塁を誤まり三塁を欲張って送球にタッチアウト、打った垣渕も一、二塁間に挟まれあたら好機をつぶしたのは大きかった。試合運び一段上の天理のペースにかき廻されては南部はどうしようもなかった。矢張り場慣れしない南部は動きが鈍く川上投手も最初からこつこつ右翼に狙い打ちされて精彩を欠き苦心の投球を続けて後半は疲れを見せた。斬くして有史以来3度紀和代表は奈良勢の手に奪われた。