第44回<昭和37年>全国高等学校野球選手権大会

県予選

<準決勝1> 橋本 3-4 新宮
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
橋本 0 0 0 0 1 2 0 0 0 3
新宮 0 0 0 0 0 0 2 2 × 4

 新宮は見事に逆転した。3点リードされた新宮は7回先頭の山面が右前打、続く宮本のゴロを三塁手が一塁へ悪投する間に一挙三進し、大川の三遊間安打で生還、続く奥のバントは一塁手の悪投を誘って無視満塁、田崎のスクイズバント失敗で三塁走者の宮本が本封されたが、二死後暴投で1点を加えた。さらに8回は先頭の小坂が二ゴロ失で出てバントで二進、山面四球のあと宮本殊勲の中越え二塁打して2点をあげ逆転。そのまま押切った。
 橋本は6回までに新宮の宮本、福田両投手に長打4本を含む9安打を浴びせ、3点を先取したが、7回から福田投手に完全におさえられた。1回の無死一、三塁の好機を逃がし、3回には二盗失敗後に三塁打が出るなど、前半再三のチャンスを逸したのが痛かった。

<準決勝2> 桐蔭 2-3 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
桐蔭 2 0 0 0 0 0 0 0 0 2
南部 0 0 0 1 1 1 0 0 × 3

 両校共優勝候補にふさわしく、好守好投の応酬で観客をわかす好ゲームを展開したが、6回の攻防が明暗をわけ、南部が逆転勝ちに成功、桐蔭の2年連続甲子園出場はならなかった。同点で迎えた6回表、桐蔭は相手の失策と安打で一死一、二塁のチャンスを迎えたが、後続なく無為に終った。この裏南部は先頭の田野が片原の投ゴロで二封されたが、片原は二盗に成功、坂口三振のあと谷上の二越え安打で片原生還、決勝点をあげた。
 桐蔭は1回相手の失策を足がかりに2本の安打で2点をあげ、試合運びの妙を見せたが、以後毎回のように走者を出しながら、南部の西垣投手に要所をしめられ、ずるずると敗れ去った。
 南部の勝利はヒジの痛みをおして投げた西垣の力投もさることながら2点リードに屈せず桐蔭の好投手北谷を打ちくずした打撃陣の気力にあるといえよう。

<決勝> 新宮 2-0 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 0 0 0 0 0 0 0 2 0 2
南部 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 新宮福田は速球と大きなカーブを、また、南部西垣は切味のよいシュートを武器に、ともにたん念にコーナーをつき、投手戦になった。強打でなる両チームのバットから快音は聞かれず、このまま大会2度目の延長戦かと思われた。しかし『ピンチのあとにはチャンスあり』のたとえ通り、7回裏のピンチを南部の拙攻に救われた新宮は、8回表この試合2度目のチャンスを迎えた。先頭の田崎が死球で出塁、荒尾はバントを失敗のあと中飛に倒れたが、1番小坂は粘ったあげく三遊間をゴロで破り一死一、二塁になった。次の大川は動揺した西垣の第1球をすかさずたたき、左中間を深々と破る二塁打、二塁から田崎、一塁から小坂相ついでかえり、これが決勝点になった。大川への第1球は真中高目の絶好球で、好投を続けた西垣にとっては無念の失投だった。
 ともに貧攻ながら8回まではむしろ南部が押していた。2回表は一死二、三塁のチャンスサインの不徹底で無為、また7回表も一死満塁のチャンスを強攻策からスクイズに切替えたところを新宮バッテリーに見破られて得点できなかった。先取点が大きくものをいう大試合だけに、このどちらかに点を入れていれば試合はどうひっくり返っていたかわからない。
 健闘の南部にとってまことに惜しまれる逸機だった。力量全く互角、ガップリ四つに組み、決勝戦にふさわしい見ごたえのある試合だったが、新宮の闘志がわずかに南部を上回り、その差が勝敗の明暗を分けた。

<紀和決勝> 天理 3-1 新宮
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
天理 0 0 1 0 0 0 2 0 0 3
新宮 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1

 1回天理の攻撃を3者凡退におさえた新宮はその裏絶好のチャンスを迎えた。まず先頭の小坂がうまいセーフティーバントを投手左にころがして出塁、次の大川の三塁前のバントが野選となって無死一、二塁、山面が定石通りバントで走者を二、三塁へ。さあ先制のチャンス。期待の宮本は2球目スクイズ失敗で小坂を三本間に殺し、自分も投ゴロに倒れて結局無為。
 天理は3回橋本が四球をえらび平井の送りバントで二進、土井は三ゴロで二死になったが、次の強い遊ゴロの荒尾トンネル、ボールが左中間に、橋本三塁をけって生還天理は無安打で幸運な先取点をあげた。新宮にとってはあきらめきれない高価な失策だった。
 1点を追って新宮必死、4回無死一、二塁も後続が断たれ、5回にも二死後大川が中前安打に出たが、盗塁失敗でアウト。このあたり、新宮の攻撃はあせり過ぎた感じ。
 一方天理は、7回一死満塁で詰めよった。新宮またもやピンチ。5回からリリーフした中本の投球に力がこもる。花山のバント失敗後三振で二死。その直後中本の恒岡への第1球が暴投、ボールはバックネットへ転々、ホームをカバーした中本への田崎の返球も悪投、この間に三塁から山中、二塁から小西とホームインして天理は決定的な2点を加えた。さすがは県予選で2度も逆転勝ちしたねばりの新宮だ。9回裏になって猛攻を開始した。先頭の小山は左翼線に二塁打、中本、福田も内野安打、四球でつづき、無視満塁の絶好のチャンスを迎えた。長打が出れば同点か、あわよくば逆転勝ち。しかし天理道治は田崎を三ゴロに仕止め、小山は本封、山脇も一ゴロで中本は生還したが二死、期待の小坂も平凡な遊撃ゴロになり万事休した。