第53回<昭和46年>全国高等学校野球選手権大会

県予選

<準決勝> 新宮 8-11 市和商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 3 0 5 0 0 0 0 0 0 8
市和商 6 0 0 0 0 2 3 0 × 11

壮絶な打撃戦、結局、市和商の後半の反撃がものをいった。
 市和商は1回3点を先取されたが、すぐその裏、本山の安打から始まる5安打、四球2つの猛攻で6点を奪った。新宮・前野投手は1、2回戦とくらべてやや球威がなくこのまま市和商の優勢のうちに進むかに見えた。
 しかし、3回、岩井投手が打込むまれ8ー6と新宮に逆転されたところから試合は全く予断を許さなくなった。市和商は6回、川上の二塁打で得た二死一、二塁に岩井が右中間二塁打を放ち2点をあげて同点とした。
 さらに7回、前野に代った峯本投手から安打2本と四球1で無死満塁、本山の遊撃右を抜く安打などで3点をあげ、これが勝利に結びついた。
 新宮は前半猛攻をふるった。とくに庄司は1回、岩井の初球をたたいて大会4号、庄司としては大会3本目の3点本塁打を放ち、3回にも無死二、三塁から安打で打点2とめざましい活躍をした。この前半互角の打撃戦も、7回前野ー峯本ー前野という投手リレーが裏目に出て逆転され、後半、見事は復調ぶりをみせた岩井に封じられ敗れた。

<準決勝> 向陽 3-9 桐蔭
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
向陽 0 0 0 0 0 1 0 2 0 3
桐蔭 0 0 0 0 3 0 0 6 × 9

 桐蔭の粘り強さがものをいって終盤一挙に向陽を引離した。1回から4回まで制球のよい桐蔭・和田と、試合を重ねるごとに復調してきた向陽・中原の投げあいで淡々とした投手戦が続いた。
 桐蔭は5回、中前安打の貴志が二盗したあと、中堅左を抜く三塁打で先制の1点。好投していた中原はこれでやや気落ちしたのか次打者和田へのスクイズを警戒したウエスト球が暴投となって中村がかえった。このあと和田、片山の連続二塁打が出て計3点をあげ試合の主導権をにぎった。
 和田の内外角にうまくちらす球に押さえられていた向陽打線は5回ごろから当たりが出はじめ6回、死球の雑賀をおいて右翼へ流し打ちして1点をかえしてから犠打で二進したあと、中原が反撃を開始した。8回無死一、三塁から宮下のスクイズが成功、1点差に追いつき、なお成田の中前安打で一死満塁という絶好のヤマ場を迎えた。ここで中津が中前安打を放ち同点に追いついた。しかし、そのあと追加点がでなかった。

<決勝> 市和商 4-1 桐蔭 
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
市和商 0 0 0 0 2 2 0 0 0 4
桐蔭 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1

 市和商が終始試合を押し気味に試合を進めた。市和商は準決勝までの4試合を1人で投げ抜いた岩井を立てた。桐蔭は和田、中村の2本柱のうち今大会好調の左腕和田をあえて準決勝の対向陽戦に続いて連投させ、背水の陣をひいた。市和商は3、3、4回と二塁まで走者を送りながら得点に結びつけられなかった。しかし、やや高目に浮き気味の桐蔭・和田の球に打線は自信を持ち、5、6回と攻撃を開始した。5回市和商は二死一、二塁から川上が右中間に三塁打を放ち、まず先制の2点をあげた。6回にも戸上、冨田、東出の3連続安打が出るなどさらに2点を追加した。
 これに対し桐蔭は29日の対新宮戦で8点を奪われて不調から立直った市和商・岩井に5回まで散発2安打に押さえられた。6回に反撃、安田の片山を二塁において、成瀬の右越え三塁打で1点をかえした。8回にも2安打、四球で二死満塁と迫ったがものにならず9回一死一、二塁の好機にも後続打者がでなかった。
 桐蔭は1年生ながら好打の山下、強肩の捕手・貴志ら俊敏な選手を揃えていたが、チャンスに一気にたたみかける市和商のチーム力が一枚上だった。

<紀和決勝> 市和商 0-1 郡山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
市和商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
郡山 0 0 1 0 0 0 0 0 × 1

 明暗は1回すでに現れた。
1回表、市和商先頭打者本山は校歌に送られて勇んで打席に着いた。郡山のエース川畑はゆっくりしたモーションから鋭いカーブ、シュートを繰出す。たちまち本山は追い込まれた。『やる』『手ごわいぞ』—市和商ナインにさっと緊張の色。
 本山は二フライ、谷三ゴロ、川上三振。これに対し市和商の岩井は1回裏、1安打四球1を奪われて、やや不調の立上り。
 市和商は3回、先頭打者宮田がドラッグバントを試みあざやかに成功、初の走者を出した。宮田は川畑の大きいモーションをついて二盗を試みたが、捕手からの送球にアウト。惜しいチャンスをつぶした。この裏岩井は、一死満塁の危機を迎えた。郡山・薮内の強い打球を右翼手宮田は好捕したものの転倒、その間に郡山三塁走者がかえって1点を奪われた。
 岩井は4回一死一、二塁のピンチも切抜け、市和商は1点をリードされたまま期待を後半につないだ。
 5、6、7回と市和商はベンチから『ガンバレヨ』の声援をうけて次々と川畑攻略に向った。気負って振るもののファウルフライを打ち上げたり、当りそこねのゴロになったりするばかりだった。7回橋本との打球はあわや本塁打と思われる大飛球だった。郡山左翼手金野が背走、好捕したとき満場からため息がもれた。
 8回表、一死から東出が遊撃頭上をライナーで抜く安打を放ったが続く南出の投ゴロで無情な併殺、9回表は、1番から始める好打順で市和商ベンチは最後の望みをかけたが、本山は中堅フライ、谷の代打白川はライトフライ、川上の力いっぱいのスイングも当りそこねの遊撃小飛球となってゲームセット。