第71回<平成元年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 智辯 13-5 田辺
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯 2 5 0 2 2 0 0 1 1 13
田辺 0 1 0 0 2 0 0 2 0 5

 打力に勝る智辯和歌山が相手投手の立ち上がりを攻め先制、その後も大量安打で得点を重ね守っては三重殺を決めるなどして田辺のチャンスをつぶした。
 智辯和歌山は1回一死から鎌田が左前安打して出塁、続く楠の中越え三塁打で先制。動揺した橘から上出が四球を選んで一死一、三塁としたところで篠崎がスクイズ、2点目をあげた。
 智辯和歌山は、その後も攻撃の手をゆるめず、2回には4四球、2安打と敵失で5点、その後も着実に加点し、田辺の追撃を許さなかった。
 今大会「逆転の田辺」で調子づいている田辺は、1点かえしたあとの5回、尾崎の内野安打、玉井の左翼線を襲う二塁打、田中が四球を選んで無死満塁としたあと、那須の中前安打で2走者を迎え入れた。無死一、三塁となおも好機が続いたが、坂本の三ゴロで一塁走者が二封、その間に三塁を飛び出した田中がはさまれ二死、さらに坂本が二進を狙ったが刺され三重殺、せっかくのチャンスをフルに生かすことが出来なかった。

<準決勝> 桐蔭 7-2 星林
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
桐蔭 1 0 1 0 2 0 2 1 0 7
星林 0 1 1 0 0 0 0 0 0 2

 大会屈指の右腕砂村も、コンパクトながら力強い桐蔭打線には通用しなかった。
 桐蔭は今大会12イニング無失点できた星林、砂村を攻め、1回一死から松山が中越え二塁打、川口のバントヒットと二盗で二、三塁としたあと新田の中犠飛で先取点を挙げた。3回には川口の本塁打で加点、5回にも前川、小西、岡本の連打で2点を挙げて引き離した。速球に自信を持つ砂村だけに、足を生かした先制の1点に続く川口の本塁打で動揺があったのかも知れない。
 さらに救援の小久保からも7回、前川、小西の連打などで2点を取り試合を決めた。
星林は、桐蔭の先発、前川に対し2回、先頭の武輪の左越え安打と敵失、犠飛で1点、3回にも先頭の庄堂の三塁打とスクイズで1点を入れ、ここまでは桐蔭と互角の戦いをした。しかし、その後は、落差のあるカーブを武器とする前川を打ち崩すことができなかった。

<決勝> 桐蔭 1-2 智辯
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
桐蔭 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
智辯 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 2

 グラウンドに、スタンドに張りつめた4時間近い緊張の糸が13回裏に切れた。この回智辯和歌山、二死満塁。一打サヨナラを迎えた。打席には、今大会4割と当たっている永井が立った。
 6回途中からマウンドに上った桐蔭の三宅投手の外角低めの直球に「ホームランを狙って」バットを出した永井の打球が右翼手前川の前に落ちた。三塁から杉山が万歳をしながらホームベースを踏んだ。熱闘は、この時終わった。桐蔭の捕手佐々木が本塁上でヘタリこんだまま動こうとしない。
 勝利のきっかけは、杉山がつくった。副主将で主戦投手。「とにかく打って塁に出よう」。自分に言い聞かせていた。1、2戦で先発したものの、2戦の新宮商戦では2回投げたところで、楠に救援を求め、準々決勝、準決勝は1年生の小久保が投げ、マウンドに立たせてもらえなかった。その悔しい思いが爆発した。二死だった。三宅の3球目をジャストミート。打球は右翼手前川の頭を越え、2バウンドしてフェンスに当たった。二塁打となった。
 桐蔭は、次打者藤本に敬遠策をとった。空いている一塁を埋め守りやすくするためだった。これが裏目に出た。4球目を藤本が選んで一塁に走りかけたとき、杉山が虚をついたように三塁に向けて走った。「全くの単独盗塁です。いちかばちかかけてみた」と杉山。驚いた捕手佐々木は三塁へ送球、タイミングはアウト。ところが白い球が三塁手中村昌のグラブから落ちていた。
 三宅に動揺があったかもしれない。二死一、三塁から桐蔭ベンチは満塁策を指示、小久保を歩かせた。ここで長居を迎えたのである。
 試合は前半桐蔭にやや分のある展開だった。桐蔭は6回、一死一塁から、今大会2本の本塁打を放って当たっている小西が中前に安打、続く岡本も中前に打ち返して満塁。桐蔭は代打に大道を送る。このとき杉山が暴投。三塁から新田がかえり先制した。しかし、その裏、智辯和歌山がおいついてから一進一退の攻防が続いた。
 桐蔭の短く握って鋭く振る力強いバッティングも、変化球でタイミングをはずしにくる杉山と内角に食い込むシュートと外角に決まるカーブをうまく使い分けた小久保にかわされ、得点につなぐことができなかった。
 延長に入ってからは両チームの選手とも疲れをみせるどころか必死に球を追い、送球、攻守交代のテンポも速く、スタンドはがっぷり四つに組んだ好試合にわいた(戦評は朝日新聞より)

 

全国大会

<1回戦> 成東 2-1 智辯
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
成東 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 2
智辯 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1

 成東が苦しんだ末、11回に智辯和歌山の守りの乱れに乗じて決勝点を挙げた。この回、先頭の池和田が左前安打。小久保の一塁けん制悪送球で難なく二塁へ進んだ。本田の投前バントを小久保が間に合わぬ三塁へ投げ一、三塁、ここで鈴木が1-2からの直球を中前へはじき返し池和田を迎え入れた。それまでの成東打線は振りが鈍く、智辯の変化球攻めにタイミングが合わなかった。
 リードした智辯和歌山は8回、一死から杉山が3本目の安打を打たれると小久保にスイッチ。しかし、押尾、大野に安打を許して追いつかれた。1年生の小久保は11回の守りでも、経験不足が出てしまった。
 智辯は1回に先制、終盤も好投手、押尾を攻め続けた。特に9回は成東の失策もからみ、一死満塁とした。そして続く堀口は初球にスクイズ。しかし、成東バッテリーにはずされて空振り、逸機した。下位打線であったが、押尾に疲れが見えてきただけにいま少しじっくり攻めてもよかったろう。