第88回<平成18年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 粉河 1-10 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
粉河 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
智辯和歌山 0 0 5 0 3 0 1 1 × 10

 智辯和歌山は3回と5回に長短6安打に5四球を絡ませて8点を奪い、貫禄勝ちを見せた。
 智辯は3回から打線が目覚めた。3回、馬場、楠本が四球を選んで一死1,2塁とし、田村の左前打で1点先制。さらに古宮の四球で満塁とし、続く廣井が左翼に満塁本塁打を放ち計5点を挙げた。5回には、橋本、亀田の二塁打など長短3安打と2四球に上羽の犠打などで3点を追加した。
 先発・廣井の制球難で3回途中から登板した竹中は制球に苦しみ、4回、四球をはさんで2安打を浴びて1点を返されたが、その後立ち直り、粉河の反撃を抑えた。
 粉河は4回、畠中の安打と四球に北山の犠打で二死2,3塁とし、橋尾の左前打で1点を返したが、5回以降は1安打に抑え込まれた。智辯の先発・廣井の制球難につけ込んで、2回に田中の安打と2四球の一死満塁の先制の好機は北山の一塁へのライナーで併殺。3回にも道江の安打などで一死1,2塁とし、続く楠本も右前打で道江が本塁に突っ込んだが、松隈の好返球で刺されるなど、序盤の好機を得点に結びつけることができなかったのが最後まで響いた。

<準決勝> 日高中津 1-11 田辺 
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
日高中津 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
田辺 3 0 0 1 6 0 1 0 × 11

 立ち上がりから打線を爆発させた田辺が、13安打の猛攻で11点を奪い、11年ぶりに決勝へ進んだ。
 田辺は初回、二死から棒引の二塁打を足がかりに、薮本の内野安打でまず1点。続く渡口の左翼越えの二塁打で2点を加え、3点を先制した。4回には緒方の左越え本塁打で1点追加。5回、国本、棒引、吉本、薮本、渡口の5連打や坂井の二塁打、廣瀬の内野安打など打者一巡の猛攻で、6点を奪い、試合を決めた。大嶋は立ち上がりからテンポのいい投球で日高中津打線を2安打に封じ、打線の援護もあって完投勝ちをした。
 日高中津は先発の山田が初回、二死から田辺打線に捕らえられたのが痛かった。救援した宮川も勢いづいた攻撃を止めることができず、予想外の大量失点となった。打線も、2回に林の二塁打、3~5回にも四球や安打の走者を犠打で進めて好機をつくったが、決定打が出ず、9回に併殺崩れの間に二塁走者の西濱が本塁を突いて1点を返すのが精一杯だった。

<決勝> 智辯和歌山 6-1 田辺
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 0 0 3 2 1 0 0 6
田辺 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1

 決勝戦は、昨夏の覇者・智辯和歌山がノーシードから勝ち上がってきた田辺を逆転で破り、2年連続14回目の優勝を果たし、夏の甲子園を決めた。
 智辯は序盤、苦しい展開だったが、廣井の一発が試合の流れを変えた。3回には先発松隈の失策で先制点を許し、田辺の大嶋に4回まで2安打に抑えられていた。しかし5回二死、四球の楠本と投前へバント安打を決めた田村を2,3塁に置き、3番廣井が内角シュートをとらえて逆転の3点本塁打。「昨日打った満塁本塁打で吹っ切れ、打撃の調子も上がってきた」と廣井はうれしそうに言った。これで打線は落ち着きを取り戻した。6回には安打と四球で無死1,2塁とし、馬場の犠打が捕手の一塁への悪送球となった1点。続く上羽の二塁ゴロでさらに1点追加。7回にも3四死球の満塁で上羽が右前へ適時打を放ち1点と、相手投手の制球の乱れなどを突いて着々と加点し、頂点へ駆けあがっていった。
 今大会2度目の先発の松隈は立ち上がり制球が定まらず苦しい投球で、3回に坂井に右翼線に運ばれ二塁打に、続く大嶋がバント。松隈は転がる打線を捕り、迷わず三塁へ投げたが悪送球になり先制点を与えた。しかし、続くピンチを断ったのが大きく、4回以降は4安打に抑え、3塁を踏ませなかった。低めに球を集め、粘り強く打たせてとり、9回を148球で投げ切って甲子園への道を切り開く原動力となった。
 先手を取ったのは田辺だった。3回裏、先頭の坂井。「初球のストレートを狙う」と打席に入った。ねらい通りの外角直球。坂井は右翼線に流し打ち、二塁打に。次打者のバントが悪送球を誘い、坂井は先制のホームを踏んだ。しかし、踏ん張る松隈を打ち崩せない。中盤に逆転され、6点差をつけられた。それでも田辺は勝負をあきらめず、8回のピンチも二塁手廣瀬が横っ飛びライナーを好捕するなど粘り強さを見せたが、あと一歩及ばす、11年ぶり2度目の優勝は果たせなかった。

全国大会

<1回戦> 智辯和歌山 4-1 県岐阜商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 1 0 0 0 0 0 3 0 0 4
県岐阜商 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1

 初戦を突破。智辯和歌山は県岐阜商と対戦、初回に廣井の本塁打で先制したものの、すぐに追いつかれ緊迫した投手戦に。打線は県岐阜商の金森のスライダーに苦しんだが7回に勝負強さを発揮して3点を獲得。竹中の力投と鉄壁の守備で数々のピンチをしのぎ、4-1で逃げ切った。
 強力打線の智辯和歌山。そのはずが県岐阜商のエース金森の前に三振の山を築いた。金森の鋭いスライダーにバットが次々と空を切る。1回の廣井の本塁打以外、5回まで無安打10三振。6回の攻撃前、髙嶋監督の指示が出る。その指示が的中。1-1の同点で迎えた7回。二死2,3塁のチャンスに9番の楠本が指示通り、高めに浮いた直球を右前に2点適時打を放ち、三盗後古宮の内野安打で計3点を挙げ疲れの見えた金森を捕らえた。先発の松隈を2回途中から救援した竹中は毎回走者を背負う苦しい投球が続いたが、県岐阜商打線を6安打無失点に抑え、鍛え抜かれた守備で勝利を呼び込んだ。
 県岐阜商は9安打を放ったが、三上の犠飛による1点だけに終わった。

<2回戦> 智辯和歌山 5-2 金沢
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 0 0 5 0 0 0 0 5
金沢 0 0 0 0 0 0 1 1 0 2

 集中打でベスト16。智辯和歌山は石川代表の金沢と対戦した。5回に7安打を集中し、一挙5点を奪って試合の主導権を握った。先発の廣井は低めへの変化球がさえ、7回から救援した竹中との必勝リレーで逃げ切った。この日の勝利は髙嶋監督にとって夏の甲子園28勝目で、史上最多勝監督となった。
 試合前の予想は打撃戦だったが、智辯和歌山は4回まで走者を出しながらも得点が奪えない。しかし、打者11人で5得点。5回の集中打が勝利を決めた。その口火を切ったのは撫養の一打だった。この回、先頭の撫養が5球ファウルで粘り、一死2,3塁からまず上羽の右前安打で待望の先制点。さらに橋本の犠飛を挟み、廣井、亀田、松隈、馬場の連打で5点を挙げて流れを呼び込んだ。先発の廣井は初回二死2,3塁のピンチを切り抜けると、最速140キロの直球と切れのあるスライダーで打たせて取る投球で、6回を投げ4安打無失点に抑えた。
 金沢は自慢の強力打線が沈黙した。智辯の先発・廣井に6回まで無得点と攻略に苦しみ、中盤の大量失点も焦りにつながって、淡白な攻めが目立った。

<3回戦> 智辯和歌山 8-3 八重山商工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 0 3 3 0 3 1 1 8
八重山商工 0 1 1 0 1 0 0 0 0 3

 剛腕・大嶺を打ち崩し、ベスト8入り—。智辯和歌山は優勝候補の八重山商工(沖縄)と対戦した。廣井の2本塁打など6長打で8点をあげ圧勝。4年ぶり5度目の準々決勝を決めた。髙嶋監督は春夏合わせて甲子園で通算50勝を達成した。
 一つまた一つと相手の自信を封じていく。150キロの豪速球投手・大嶺を攻略した智辯打線。そのきっかけは廣井の本塁打だった。2点を追いかける5回。古宮の右中間二塁打などで一死1,3塁のチャンスで廣井は内角高めの直球をフルスイング。ボールは左翼スタンドに突き刺さる逆転の3点本塁打。大嶺は変化球主体の投球に切り替えたが、智辯打線は変化球にねらいを定めた。同点で迎えた7回、古宮と廣井の安打で二死1,3塁とし、橋本の右翼フェンス直撃の三塁打と亀田の適時打で計3点を奪い、続く8,9回にも竹中の三塁打や廣井のこの日2本目の本塁打などで2点と追加し、捕手橋本の好判断や内外野の堅守、松隈、竹中の好リレーで強豪を撃破した。
 八重山商工は序盤に敵失や長短打で制したが、常連校相手にいつもの伸びやかさは影を潜め、日本最南端の高校から春夏連続出場を果たしたが、敗れ去った。

<準々決勝> 帝京 12-13 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
帝京 0 0 0 2 0 0 0 2 8 12
智辯和歌山 0 3 0 3 0 0 2 0 13

 9回表。誰もが負けたと思ったその裏、奇跡の大逆転が—。智辯和歌山は準々決勝で東東京代表の帝京と対戦した。9回、帝京に一挙8点を奪われた智辯和歌山は、驚異的な粘りで4点差をひっくり返した。鮮やかなサヨナラ勝ちで、4年ぶり5度目の4強入り。1チーム1試合5本塁打は大会新記録である。
 智辯和歌山は序盤、長打攻撃で試合を優位に進めた。2回橋本の中前安打と四球などで一死1,3塁とし、7番の馬場が右翼スタンドに先制の3点本塁打。1点差に詰め寄られた4回に馬場が2打席連続本塁打で加点。さらに二死1塁から今度は上羽が2点本塁打を放ち、7回にも廣井が今大会4本目の本塁打で大きくリードした。しかし、4回から廣井を救援した竹中の調子が良くない。4点差で迎えた最終回、二死から沼田の3点本塁打を含む6連続安打で8点を失って逆転された。
 しかし9回の最後の攻撃で智辯和歌山は底力を発揮した。まず先頭の上羽そして廣井が四球で無死1,2塁。4番の橋本は3球目の直球を左中間席にたたき込んで3点。さらに亀田、松隈の四死球で一死1,2塁とし、代打青石の中前打で同点。続く楠本が四球で満塁となり、古宮の四球で奇跡のサヨナラ勝ちをした。
 帝京は9回二死から逆転する粘りを見せたが、最後はリードを保てなかった。

<準決勝> 智辯和歌山 4-7 駒大苫小牧
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 1 2 0 1 0 0 0 0 0 4
駒大苫小牧 4 0 1 0 2 0 0 0 × 7

 昨夏の覇者・駒大苫小牧にあと一歩及ばず―。智辯和歌山は積極的な打撃で先制したが、大会屈指の好投手田中投手のスライダーをとらえきれず、4-7で敗れた。
 1回の攻防が明暗を分けた。互いの失策が絡み、大量点の好機。駒大苫小牧はそれをものにし、智辯和歌山は最少得点に終わったのがあとあとまで響いた。
 智辯和歌山は1回、失策で出た古宮が橋本の左前安打で生還。なおも連続四球で二死満塁と攻めたが、1本がでない。逆転された2回、竹中が左前安打、楠本のバントが安打となり、古宮が二塁打を放ち2点を入れ、さらに死球で無死1,2塁。ついに田中をマウンドに引きずり出した。しかし直後に素早い牽制で1塁走者が刺され、今大会好調の廣井、橋本もうちとられた。2点差の4回二死2塁から、橋本が打席に。今度は田中のスライダーをとらえて右前への適時打で1点差に詰め寄ったが、5回以降は10三振を奪われ、全国制覇はならなかった。
 駒大苫小牧は1回、相手の失策で幸運な2点目が入った。ここで畳みかけるのがこのチーム。連続安打で計4点を奪って主導権を握り、3連覇の偉業へあと「1」となった。