第10回<昭和8年>選抜中等学校野球大会

<1回戦> 海草中 3-0 桐生中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 0 0 0 0 0 0 0 2 1 3
桐生中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 海草・森田投手は剛速球で相手方の打撃を完封しノーヒット・ノーランゲームを演じて表彰を受けた。

<1回戦> 海南中 8-5 高松中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海南中 1 0 0 0 4 3 0 0 0 8
高松中 0 0 0 0 1 4 0 0 0 5
<1回戦> 和歌山中 2-4 神戸一中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山中 0 0 1 0 0 0 0 0 1 2
神戸一中 0 0 0 0 1 0 1 2 × 4
<1回戦> 和歌山商 2-0 早稲田実
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山商 0 1 0 0 0 1 0 0 0 2
早稲田実 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
<2回戦> 海草中 3-2 海南中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
海草中 0 0 0 2 0 0 0 0 0 1 3
海南中 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 2

 地元同志の対戦で相手を知悉しているだけに両軍ファイトを燃して熱戦を展開した。海草4回浜本の中堅二塁打、楠本の単打で2点を先行すれば海南もその裏、磯野の遊越安打と木本の遊匍悪投で1点を返しその後、両軍相譲らぬ攻防戦を展開したが、9回裏、海南は亀井左翼線上に快打し木本も二塁を抜き前里の投匍は水本を二封したが三塁を走り過ぎた磯野を刺さんとした一塁手今市の暴投で磯野生還、延長戦に入る。しかし、海草は10回二死後、森田二越安打、二盗成り森下一の三匍暴投に貴重な1点を拾い勝利をつかんだ。

<2回戦> 和歌山商 5-0 神戸一中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山商 0 0 0 4 1 0 0 0 0 5
神戸一中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 2日降り続いた雨のため球場は軟弱でプレーヤーには気の毒な状態であった。神戸一中の敗因はいうまでもなく4回に4点を与えたことである。前投手の落着きとその投球法には少しの無理もなく比較的に小身であるが投手としての十分の力量があり、速球にも曲球にも細心の注意を払い重い曲球に頼って多くの打者を凡退せしめていた。それは4回に至り山本に四球、赤井に中前安打を許してから制球力を失い続く熊代・稲垣に連続四球を出して押し出しの1点を与えたのみならず、野手の失策が加わって一挙4点を献上してしまった。この日の両軍の力量から見て4点の開きを生じては挽回は困難で、殊に神戸一中の打力では如何することもできなかった。しかし、神戸一中の内野の守備はよく、特に遊撃・角岡の強肩と好守駿足は一人異彩を放っていた。

<3回戦> 岐阜商 3-0 海草中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
岐阜商 3 0 0 0 0 0 0 0 0 3
海草中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 岐阜・1回早くも一死満塁と攻めたて5番加藤の右翼安打、記野の左翼安打で一挙3点を入れ森田の速球をものともせず好打して毎回海草中を脅かした。海草中はよく守ってその後、追加を許さなかったが終始守勢に回りいわゆる勝ち目のないゲームだった。岐阜の攻撃力は一段を優れ充実していた。

<3回戦> 広島商 5-1 和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
広島商 1 0 0 0 1 0 2 1 5
和歌山商 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

 和歌山商・稲垣は胸辺りをかすめる速球で応戦して無難に広島商の攻撃を抑え、その裏広島商・鶴岡投手の不調に乗じて1安打、3回死球で1点を先行した。その折稲垣がバントするが如く見せ投手を牽制しながら四球を奪った方法は常に明治がとる手で甚だ良かった。なお一死満塁の好機を続いたが、焦り気味に打った吉川は一邪飛、尾野二匍でわずかに1点に終わった。1回の不調から立ち直った鶴岡は得意とする速球は着々功を奏し、和歌山商の攻撃は遅々として進まなかった。広島商は百戦錬磨のチームだけに徐々に和歌山商の牙城に迫って2回に1点、6回1点を挙げ優勢を示した。果たせるかな8回広島商は和歌山商の陣営の乱れに乗じて2点を加えて和商の苦戦は益々濃厚となり8,9回に必死の攻撃に出たが、力まかせに長振する結果功を奏せず恨を呑む。