第68回<平成8年>選抜高等学校野球大会

<1回戦> 伊都 1-2 鹿児島実業
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
伊都 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1
鹿児島実業 0 0 1 0 0 1 0 0 × 2

 投手がしっかりすると締まって、きびきびした好試合になる。伊都・谷野と鹿児島実・下窪の両右腕が、互いの持ち味を発揮して、ほぼ互角に投げ合ったが、制球力に勝る下窪が競り勝った。バックも終始先手を取って下窪をもりたてた。
 鹿児島実は3回、松下の二塁打で先制。6回には、岩切が3球続いたスライダーに的を絞り右前適時打。これが決勝点となった。伊都は8回、四球の増井をバントで送り、山下が二塁打。1点差に詰め寄ったが、3、4番が凡退。5回の一死満塁など要所を下窪に抑えられた。

<1回戦> 鵬翔 0-3 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
鵬翔 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
智辯和歌山 0 0 0 3 0 0 0 0 × 3

 智辯和歌山は4回二死二塁から、黒川の中前安打で1点。さらに高塚の内野安打で一、二塁とし、清水の左越二塁打で2走者がかえった。黒川、清水とも打ったのは初球。甘い球を逃さない積極性が好結果を生んだ。先発の高塚は被安打2、1四球。球威、制球とも申し分なく、この3点で十分だった。

<2回戦> 智辯和歌山 4-3 沖縄水産
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 2 0 0 0 1 1 0 4
沖縄水産 0 0 0 0 0 0 0 3 0 3

 沖縄水産の左腕・糸数、智辯和歌山の右腕・高塚の好投手対決。智辯和歌山は3回、3長短打などで2点を先取し、7、8回に加点。8回に1点差に詰め寄られたが逃げきった。智辯和歌山の打者は、球の見極めに優れている。3回、一死一塁から清水が外の直球を右翼三塁打して1点を先取。続く豊田は初球を中前へうまく運んで2点目をあげた。7回、一死から連打で二、三塁とした後も上林が外へ逃げるスライダーをよく見てスクイズを決めた。
 沖縄水産は、初戦で完封勝ちした智辯和歌山・高塚を攻めあぐんだ。8回、3安打と暴投や敵失に乗じて3点を返したが、反撃もここまで。3回からは毎回走者を出しながら、高塚の手元で伸びる速球に抑えられた。智辯和歌山は沖縄水産を下し2年ぶり2回目のベスト8入りを決めた。

<準々決勝> 智辯和歌山 3-0 国士館
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
智辯和歌山 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 3
国士館 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 0-0で迎えた延長13回、智辯和歌山は二死一、三塁からまず中山が中前へ適時打。高塚の左前への適時二塁打と悪返球で計3点をあげて、勝負を決めた。9回から毎回先頭打者が出塁しながら、10、12回のけん制死などで逸機を重ねた。13回も走者ミスのあとの得点。速球とカーブを駆使した高塚の好投をようやく生かし、一昨年以来の4強入りを果たした。
 国士館の高野も、緩急を付けて9回まで散発4安打に抑えた。だが、打線が沈黙し、11回には、先頭の西村が安打で出ながら、続く2打者が送りバントに失敗するなどして好機をつぶした。

<準決勝> 高陽東 2-4 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
高陽東 0 0 0 0 2 0 0 0 0 2
智辯和歌山 0 0 0 0 0 0 0 4 × 4

 接戦を勝ち抜いた智辯和歌山には、一瞬のスキを捕らえる鋭さがある。
 8回、高陽東・宗政の投球が甘くなってきたのを逃さず、二死から喜多の右前安打を足がかりに、左右に打ち分けて6連打。球を十分にひきつけ、逆らわない打撃をたたみかけ、逆転した。3連投の疲れから球威を欠いた高塚が、ていねいな投球で要所を抑えたことが、この反撃を呼んだといっていい。智辯和歌山は66回大会(1994年)以来、2年ぶり2度目の決勝進出となる。

<決勝> 鹿児島実業 6-3 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
鹿児島実業 3 0 0 0 0 1 0 2 0 6
智辯和歌山 0 0 1 1 0 0 0 1 0 3

 鹿児島実業の下窪が球の切れで勝負すれば智辯和歌山の高塚は、力でグイグイねじ伏せる。タイプの異なる好投手対決は、バックの援護の差がそのまま決壊に表れた。
 鹿児島実業は1回、一死三塁から松下が中前適時打。さらに二死満塁とし、宮田が右前にはじき返し、2点を加えた。鋭い先制攻撃で下窪は楽になった。得意のスライダー、緩いカーブを低めに投げて、アウトのうち、外野飛球はわずかに3。
 智辯和歌山は8回、喜多、西尾の長短打などで1点をもぎ取り、持ち前の粘り強さを発揮したが、最後まで立ち上がりの守備陣の乱れによる3失点が響いた。4連投の疲労が重くのしかかる高塚をもりたてようとの思いに加え、決勝の緊張感から動きが硬く、1回だけで2失策。高塚がその後、球威がないなりにしのいだだけに惜しまれた。