第24回<昭和13年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会

<準決勝> 和歌山中 3-4 海南中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山中 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1
海南中 0 0 0 0 0 0 2 2 × 4

 小粒揃いの和歌山中はファイトを燃し好球を逃さず、短打主義に出たのが成功して3点リードした。海南は前半甘く見てか、粗雑な方法で意外の苦戦に陥ったが7回以降、立ち直って打つべきを良く打ち頽勢(タイセイ)を挽回したのは流石であった。

<準決勝> 和歌山商 1-2 海草中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山商 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1
海草中 0 1 0 0 0 0 0 1 × 2

先発の和歌山商・近藤投手は四球を連発して早々に上原にプレートを譲り1回ピンチを切り抜け、カーブと変化球に強気の海草中の打棒を巧みにかわし接戦を演じた。2回海草中一死後、加茂中越三塁打し竹尻三匍失に1点を先行すれば、和歌山商は7回四球2と近藤二匍に一、三塁に拠る時、中野遊匍失に同点満場騒然となる。しかし海草中は8回一死後古角左飛失に出て皆岡の左中間を破る大三塁打に決勝の1点を挙げ制勝した。

<決勝> 海草中 5-1 海南中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 1 1 2 0 0 0 0 1 0 5
海南中 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1

海草中は対和歌山商戦の苦戦にこりて、この日は当初から手堅く山崎投手を攻略、機先を制して得点を重ね、島投手は回の進むに従い快投振りを発揮して堂々3年連続優勝した。即ち1回海草中・松井第1球を遊匍して生きるや直ちに二盗、二死後、岩出の二匍1失に早くも1点、幸先よいスタートを切った。2回にも竹尻・松井の安打で1点、更に3回には岩出・右中間に三塁打し皆岡・竹尻の適時安打で2点と着々得点を重ね海南に圧勝した。島は剛速球で完封、制球力もあって素晴らしい出来だったが僅かに9回二死後、突如調子を乱し四球連発、1点を押し出したのは一抹の不安を与えた。

<紀和決勝> 海草中 17-0 天理中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 7 0 0 0 1 4 5 0 0 17
天理中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

両軍の技倆に開きがあって海草中は1回松井左前安打、直ちに二盗するや、古角の左翼三塁打を始め島の本塁打、岩出・金がつるべ打ちに打ちまくり一挙7点を入れ早くも勝敗を決した。島の剛速球は天理を完封し、ノーヒット・ノーランを記録した。

全国大会

<2回戦> 海草中 5-6 平安中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
海草中 1 0 0 0 0 2 0 2 0 5
平安中 0 0 0 0 0 0 1 3 2 6

 期待されたこの一戦、海草中滑り出し良く1回松井中前安打、得意の盗塁成功して敵膽を脅し古角・岩出のバント策戦に1点を挙ぐ。6回2走者を置いて皆岡三塁戦上に痛打を放ち2点、平安中は前半島に封じられたが、7回闘将雁瀬三邪飛に命拾いした後、右中間に二塁打して広瀬の三匍で三進、上村の右飛に生還やや色めき立ち、海草中8回表、松井三匍悪投、古角の右前安打に一、三塁となり岩出の適時安打と4死球で押し出しの2点計5点を挙げ勝利を掴んだと見えたが、その裏平安中一死一、二塁の時須山の一匍加茂併殺せんとした二塁送球がやや高くセーフ、一死満塁、木村進一塁戦上を抜き2点、この頃から制球力乱れて1点を押し出し上村の右飛を岩出本塁に好投して寸前に併殺危機を脱す。しかしその差1点と迫り満場騒然、島全く平静を失い最終回、無死四球に走者を出すやたまりかねて松井をプレートに送ったが及ばず、代わった遊撃手田中の手痛いエラーと須山の中堅安打に逆転雄図空しく挫折して悲運の涙を呑む。前半海草中は攻守に敵を圧し完勝するかと見えたのに雁瀬の一打を浴びてから島が動揺著しく自滅したのは意外であった。
 しかしながら両軍の攻防には好打、美技を織り交ぜて素晴らしい記録を留めたゲームであった。