第36回<昭和29年>全国高等学校野球選手権大会

県予選

<準決勝> 新宮 3-0 田辺
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
新宮 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 3
田辺 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 新宮前岡はインドロ、田辺岩本はアウトカーブを決め球に息詰まる投手戦を展開した。双方共先取点を狙って焦り気味、ボールに手を出していた。延長戦となって11回まで双方三塁を踏む者なく12回田辺一死走者二、三塁の絶好機を迎えたが橋本、岩本凡退フイにした。
 これに対し新宮は13回岡田卓内野安打、バントに送られ二死後長嶋、由谷、庵野がいずれも高目の直球をたたいて二塁打3本を集中し一挙に3点を入れ勝利を不動にした。岩本は終始健闘したが頼む打線が無安打では到底勝ち目はなかった。

<準決勝> 県和商 3-1 串本
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
県和商 0 1 0 0 0 1 0 1 0 3
串本 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1

 串本福島投手は連投の為かスピードが落ち県和商は2回2安打を放ち1点をリード、更に6回1四球1安打で1点、8回には梶の二塁打と敵失でだめ押しの1点を加えそのまま押し切った。串本のチャンスは5回一死後走者一、三塁の時でスクイズ失敗で好機を逸したのが、この試合の山だった。9回二死後、3安打で1点を返したものの時既に遅く及ばなかった。
 串本は、福島投手が不調で加うるに7安打が散発に終わったのは不運であった。

<決勝> 新宮 1-0 県和商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1
県和商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 新宮前岡はこの日、直球に威力なくドロップを武器に県和商打線に対したが県和商は選球悪く焦り気味でボールに手を出した嫌いがあった。県和商堀内は決め球を持たぬため苦心の投球を続けた。2回新宮長嶋中前安打、バントに進み前岡四球後、清水の中前安打に1点を得。6回二死三塁に迫ったが庵野遊匍に入らず、一方県和商2回二死後、椎崎二塁打したが後続なく5回にも高松左前安打したが二盗に失敗。8回無死増田左前安打に出て二盗、色めいたが椎崎3度バント失敗、高松、西川凡退して好機を逸して敗退した。県和商8回の送りバントを悉く失敗したのが直接の敗因といえよう。

<紀和決勝> 新宮 5-2 高田
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 2 0 0 3 0 0 0 0 0 5
高田 0 0 0 0 1 0 1 0 0 2

 新宮前岡は慎重な投球を続け攻めては1,4回に安打を集中して前半で試合を決めた。1回には岡田卓四球、岡田守の三塁打と長嶋のスクイズで2点を先行。4回長嶋の安打に始まり打順一巡する猛攻を加えて3点を追加した。高田は前岡のインドロに悩まされ5回2個の四球を足場に1点。7回には坂本の本塁打で1点を返したが及ばなかった。高田は2回無死で木南が捕手けん制球に刺され7回にも福田が一死後、二盗に失敗するなど得点の開きを考えない無謀な走塁で好機をつぶした。

全国大会

<2回戦> 新宮 2-0 武生
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 0 0 0 0 1 1 0 0 0 2
武生 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 新宮の前岡、武生の牧野は4回まで対等の投球をみせたが牧野は5回前岡、岡田卓の好打で得点を許し、更に6回長嶋の安打を機に1点を追加された。武生にとって惜しまれるのは6回二死満塁を失ったこともあるが何より2回の逸機が痛かった。一死後牧野が安打、藤吉の中越二塁打で二、三塁の好機を迎え楽田の一撃は一瞬一塁を抜いたかと見えたが、前身守備を布いた清水の好捕にあい三塁走者牧野が三本間に狭殺に仆れてしまった。若しここで武生が先取点を奪っておればこの一戦はより力のはいったものとなったに違いない。

<3回戦> 新宮 1-0 北海
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
新宮 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
北海 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 新宮前岡投手は制球の乱れもなくこの試合ではインドロに冴えを見せて好打を誇る北海の攻撃をよく抑えた。一方北海の田村も対福島戦とうって変わって好投し球そのものは平凡だったが徹底して低目をつく投法バックスの好守と相待って新宮に乗ずる隙さえ与えなかった。試合は担々たる投手戦の中に延長戦に入り北海11回好機をつかんだが併殺を喫すれば、新宮も12回岡田守が最初の安打を放ったが由谷の三邪飛にダブられた。17回新宮は一死後、岡田守が右翼二塁打し由谷三振後、長嶋左中間を破る三塁打を放って貴重な1点を奪い快勝した。岡田守、長嶋の好打は正に殊勲甲といえよう。

<準決勝> 新宮 2-4 中京商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 0 2 0 0 0 0 0 0 0 2
中京商 0 1 0 2 1 0 0 0 × 4

 新宮は開戦直後凄い気迫で中山に体当たりを食わした。やや受身に立った中京中山投手は新宮に先手を取られて2回は甚しく球道を乱し1点を押出し、更に1点を二塁手のエラーによって奪われた。中京は屈する色なくその裏1点を返したが尚新宮は優位を占め前半は仲々興味深いものとなった。新宮前岡が真向から投げ込むドロップは可成り威力を示し、中京の強打者も打ち崩すことができなかった。中山は2回の乱調子から立ち直り両投手秘術を尽くしての対戦となった。4回表までリードした新宮はその裏中京の反撃を抑えきれず中山弟の長打に2点を許して逆転。更に5回裏三塁手の連失から1点を追加された。前岡は愈々精魂を尽して6回には2者を連続三振に葬り健闘したが新宮の武運は後半に恵まれず4-2のスコア一に変化が起こらず善戦も甲斐なくそのまま敗れた。勝敗の岐路をなしたものは内野手の失策もあるが矢張り攻撃面に力を持つ中京が順当の勝利を示したものというべきであろう。それにしても大敵を恐れず正面から鉾を交えて殆ど対等に試合を闘いぬいた新宮の意気込みと前岡の好投は見事なものであった。