第79回<平成9年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 日高中津 2-1 田辺商業
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
日高中津 0 0 0 0 0 0 0 2 0 2
田辺商業 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1

 重苦しい雰囲気が漂い始めた日高中津を救ったのは、4番坂尻のバットだった。8回一死から代打で登場し、右前安打の市木が一塁に出塁。二死後、坂尻が内角高め直球を左翼席に打ち込んで逆転し、北山が後をしめくくって勝利をものにした。
 田辺商は福田恒の好投が光った。前日の準々決勝からの連投で、連打を浴びたりしたが、低めに丁寧に球を集め、日高中津打線に7回までは決定打を与えなかった。打線も、3回二死後から敵失ででた走者を中井が左越え二塁打でかえして先制。岡本捕手の大胆かつ細心のリード、バックの好守もあって優勢に試合を進めたが、あと一押し足りず、涙を飲む結果となった。
 日高中津は苦しい試合をものにし、3年ぶりに決勝へ駒を進めて甲子園初出場を目指すことになった。

<準決勝> 智辯和歌山 4-3 日高
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 3 0 0 1 0 0 0 0 4
日高 0 0 0 0 0 0 3 0 × 3

 雨で中断した後、日高が見事な粘りを見せた。7回、二死一、二塁で畑崎が右中間を深々と破る三塁打。続く下田も中前安打を放ち、1点差に迫ったが、リリーフした清水に後続を断たれ、決勝進出はならなかった。
 智辯和歌山は2回、木戸が中前打で出塁後、連続3四球と暴投、2番の鵜瀬の左前安打で一挙3点。5回にも追加点をあげ、1点差に追い上げられた7回二死から、清水が7人の打者をきっちり押さえて勝利を呼び込み、2年連続7回目の甲子園を目指して今春の選抜大会に出場した日高中津と対戦することになった。

<決勝> 日高中津 2-3 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
日高中津 0 0 0 0 1 0 0 1 0 2
智辯和歌山 0 0 0 0 0 0 1 2 × 3

 春・夏連続の甲子園を目指す日高中津と2年連続をねらう智辯和歌山の決勝戦は、前半は緊迫した投手戦、後半は1点を取り合う接戦となったが、智辯和歌山が日高中津を逆転で下した2年連続7回目の優勝を果たした。
 強打を誇った智辯和歌山の打線は、再三得点機をつくりながら、日高中津のエース北山から決定打が奪えなかった。1、4回に続き、6回にも三塁に走者を進めたが、中軸が北山のスライダーにバットがあわず、凡退を繰り返した。5回にはこの大会で初めて先制され、7回裏に中山の安打で同点となった直後に、再度リードを許し、焦りに近いムードが出始めた。しかし、8回、先頭の鵜瀬が遊撃を襲う安打で出塁。喜多が送りバントを決め、続く清水は左翼芝生席に逆転の2点本塁打を放ち、底力を見せつけた。
 日高中津は立ち上がりから再三走者を得点圏に送られる苦しい展開となったが、5回表、横貫の適時打で先制し、同点に追いつかれた8回には西岡の左翼越えの本塁打で再度リードを奪った。逆転された9回表二死後、代打市木が左前安打し、続く横貫の打球を野手がはじいて一、二塁。さらに、山本も二遊間を破る安打で二死満塁とし、一打逆転まで迫ったが、続く西岡の打球は二塁手の前のゴロになり、初出場の夢は消えた。

全国大会

<2回戦> 日本文理 6-19 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
日本文理  2 3 1 0 0 0 0 0 0 6
智辯和歌山 0 6 2 0 6 2 2 1 × 19

 肩の故障のため、和歌山大会では一度もマウンドに立つことがなかったエース高塚が先発で登板したが、実戦から遠ざかっているという不安が的中して、立ち上がりからボールが先行し、日本文理打線に打ち込まれる。しかし、エースの登板に燃え、「高塚を負け投手にするな」という思いの智辯和歌山の打線が爆発し、21安打で19点を奪い圧勝した。
 5点を先行された2回裏、倉谷がいきなり右翼席に本塁打。続く中山も内野安打で出塁。その後、四球などで二死一、二塁。ここで喜多が中前適時打して波に乗り、さらに中谷、木戸の連打でこの回一挙6点を奪い逆転した。同点にされた3回裏一死満塁のチャンスに喜多の右前安打で2点を勝ち越し。5回には中谷の左中間への二塁打を含む6長短安打に、2つの失策を絡めて6点を奪って、勝負を決定。さらに、6回に2点、7回にも2点を加えて試合を一方的にした。日本文理に5点を先行され、苦しい展開になったが、打線の援護と3回以降1点に迎えた救援投手陣の活躍で初戦をものにし、3回戦に進んだ。

<3回戦> 福岡工大付 4-10 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
福岡工大付 0 0 0 0 1 0 3 0 0 4
智辯和歌山 0 0 3 0 3 2 2 0 × 10

 3回に先制した智辯和歌山は5、6回にも木戸の本塁打、中谷、喜多の長短打などで勝負を決めた。いずれも福岡工大付のエース・小椋の速球を狙い打ったもので、その力強い打撃は見事だった。
 3回、先頭の豊田の四球を足場に、喜多の遊撃左への内野安打で一死一、二塁。続く清水は内角高めの直球を左翼線にはじき返す二塁打を放って2者をかえして先制。さらに中谷がスクイズを決めて主導権を握った。5回には中谷の左越え二塁打と木戸のバックスクリーンへ飛び込む本塁打で3点。6、7回にも中軸打線の活躍で追加点をあげて、試合展開を楽なものにした。甲子園初登板の左腕・藤谷は6回を投げて4安打に迎える好投を見せ、失策がらみの点はとられたが上々の投球であった。

<準々決勝> 佐野日大 4-6 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
佐野日大 0 0 0 0 0 1 3 0 0 4
智辯和歌山 0 1 2 2 0 0 1 0 × 6

 打撃好調の智辯和歌山は2回、清水が左中間にソロ本塁打を放って先制。3回、4回にも加点。6、7回に計4点返されたが、7回裏に1点を追加、県勢としては18年ぶり、智辯和歌山としては初の4強進出を決めた。
 2回裏、先頭の清水が左中間に大会28号本塁打を打ち込んで先制。3回にも二死からの連続四球で1、2塁とし続く清水が今度は左中間に2点二塁打を放って、追加点をあげた。4回裏にも倉谷の安打と2四球で無死満塁と攻め替わった中村から豊田、鵜瀬が連続適時打し、リードを広げた。
 先発・藤谷は6回を投げて1点に抑えたが、7回から登板した児玉の出来がよくなく無死一、二塁ピンチに、自らの失策と適時打で1点差に迫られた。しかし、7回裏、先頭の中谷のエラーでの出塁と木戸の右前打で走者をため、続く倉谷が適時打を放って追加点をあげて佐野日大を突き放した。智辯和歌山はこの試合で13安打を放ち、初戦から3試合連続2ケタ安打を記録して、県勢としては61回大会で優勝した箕島以来、18年ぶりに準決勝進出となった。

<準決勝> 浦添商 0-1 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
浦添商 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
智辯和歌山 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1

 智辯和歌山は延長10回、中谷の犠飛でサヨナラ勝ちをし初の決勝、県勢としては61回大会以来の決勝進出となった。
 9回までに何度も得点圏に走者を進めながら、4試合で36点をあげた強力打線が、浦添商のエース・上間の前に沈黙した。カーブでかわされ要所で重いストレート。9回まで6度の無死の走者をいずれもバントなどで進塁させたが、得点にならなかった。
 先発の児玉は丁寧な投球で浦添商をおさえ、8回から清水が登板。後半、毎回得点圏の走者を背負い、9回表には二死一、三塁の絶体絶命のピンチとなったが、左翼への大飛球を鵜瀬が後ろ向きに好捕するなど、堅実な守備で得点を許さなかった。
 延長10回裏、その鵜瀬の内野安打、喜多の安打と四球で一死満塁の好機を作った。ここで中谷が中堅へ犠飛を挙げ、決勝点を挙げて、京都の平安高校と16年ぶりとなる8度目の近畿勢同士の決勝戦へ進出した。

<決勝> 智辯和歌山 6-3 平安
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 1 1 0 0 1 2 1 6
平安 0 0 0 0 3 0 0 0 0 3

 強打を誇る智辯和歌山は7犠打の手堅い攻めで好投手・川口を攻略、競り合いの末古豪・平安を破って初の栄冠を獲得し、県勢としては18年ぶりの快挙を成し遂げた。
 試合は1点を争う好ゲーム。同点で迎えた8回、智辯和歌山は先頭の清水が三塁内野安打で出塁すると、犠打などで二死一、二塁。中山が三塁線を破る二塁打を放ち、2点を勝ち越した。
 序盤から走者が出ると確実に犠打で進め、得点はすべて犠打絡み。3回には、四球の中山を藤谷が送った後、二死三塁とし、鵜瀬の先制内野安打につなげた。4回にも一死一、三塁で倉谷がスクイズで決めるなど3犠打。連投の疲れの見える川口に対し、徹底した策で重圧をかけ続けた。
 平安もよく粘った。2点を追う5回には、一死満塁から宮田芳がスクイズを決めて1点。続く奥井が三遊間適時打を放ち、一度は逆転したが及ばなかった。
 大会屈指の好投手・川口の速球に力負けせず、しっかりたたきつけた打線、無失策の守備陣と、決勝にふさわしい好試合で、和歌山県勢にとっては18年ぶりの全国制覇となった。