第86回<平成16年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 日高中津 8-16 市和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
日高中津 0 0 0 4 0 0 3 0 1 8
市和歌山商 3 3 3 2 0 0 1 4 × 16

 両チーム合わせて27安打24得点の乱打戦は、序盤に大量点をあげた市和歌山商が粘る日高中津を振り切り、10年ぶりに決勝進出を果たした。
 市和歌山商は1回、相手守備の乱れに乗じて伊藤、玉置の連続適時打などで3点を先制。2、3回にも川端、玉置の三塁打や伊藤、森の二塁打に犠打を絡めた手堅い攻めで3点ずつ加え、大差をつけた。
 4点を返された直後の4回には、一死満塁で「今まで打てなかった分一発打ってやろう」と気合を入れた信下が右前へ適時打。続く松間の押し出しの死球で2点を追加。再び詰め寄られた7回には「とにかく出塁しようと考えていた」と話すこの回先頭の松間が中越えに三塁打を放ち、松本の左前安打で生還し加点。攻撃に転じようとする日高中津にたたみかけた。
 日高中津は4回無死満塁で、小早川が左翼線に二塁打を放つなど一挙4点を返し、反撃の口火を切った。7回にも森、瀧本の長打を含む5長短打で3点をもぎ取るなど打線は奮起したが、失点が多すぎた。

<準決勝> 日高 2-0 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
日高 0 0 0 0 1 0 0 0 1 2
南部 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 日高の神田、南部の井上、両主戦右腕の持ち味が出た投手戦となったが、日高は少ない得点機を生かし、堅い守りで競り勝って2度目(S31以来)の決勝進出を果たした。
 日高は5回表、西田がチーム3本目の安打で出塁。一死後、敵失で2、3塁とし、けん制悪送球で1点を拾った。9回は安打の林を犠牲バントで確実に送り、一死1、3塁から今度は神田の左犠飛で林を迎え入れた。
 神田は「ストライクを続けるな、球をコーナーに散らせ」のベンチの指示を守り、ストライクゾーンから落ちるカーブを決め球に、打ち気にはやる強打の南部打線を被安打4に抑え込んだ。守っても無失策で神田をもり立てた。
 南部は9回裏、井戸監督から「ここまでやってきたことをすべて出してこい」と檄を受けた出崎が期待に応えて右前安打で出塁。高瀬も続いた。一死1、2塁で清水のあたりは1,2塁間を破るかと思われたが、二塁手中島に好捕され二死。続く樫山も三ゴロで力尽きた。井上は4試合を一人で投げぬき、この試合も粘り強い投球で日高を2点に抑えたが、打線の援護がなく、涙を飲んだ。

<決勝> 日高 5-6 市和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
日高 1 0 0 2 0 0 2 0 0 0 0 0 5
市和歌山商 1 2 0 0 1 0 0 0 1 0 0 6

 市和歌山商が延長12回、サヨナラ勝ちで日高を下し、10年ぶり4回目の優勝、3回目の甲子園出場を決めた。
 市和歌山商は粘り強い試合運びで5-5のまま延長12回を迎え、主将松間がこの日4本目となる安打を放って劇的なサヨナラ勝ちを呼び込んだ。
 市和歌山商は1点をリードされた1回裏、梶本の二塁打など長短打と犠打ですぐさま追いつき、2回には二死2塁から松間、松本の連打や持ち前の足を絡めた攻撃で2点を奪いリードした。再び1点をリードされて迎えた土壇場の9回裏、二死2塁から伊藤が外角低めの直球を中前にはじき返して同点と市、勝負は延長に。そして12回裏、四球で出た森を犠打で送った二死2塁、「ここで試合を決める」と打席に立った松間は初球をたたき、森を迎え入れて3時間8分の熱戦に終止符を打った。
 先発した玉置はこの日、疲れからか立ち上がり出来が良くなく、3本の長短打で先制点を許し、その後も初優勝を目指す日高の積極的な攻撃に再三再四ピンチを迎えるが、要所で得意のカーブを駆使して13三振を奪う粘り強い投球を見せ、優勝への道を切り開く原動力となった。
 日高は初回からヒットエンドランや重盗を試みるなど足を絡めた積極的な攻撃を見せた。4回二死1、3塁から上野の4球目のヒットエンドランの時、振り逃げと敵失が重なって一挙に2点を挙げて同点。1点をリードされた7回には、長井と林の長短打で2点を挙げ、一時は試合をひっくり返した。延長へ入ってからも10回11回に得点機を迎えたがあと1本が出なかった。6回から登板した主戦神田は、毎回のように走者を抱えながら踏ん張ったが、最後に力尽きた。
 「最高の試合ができた。悔いは残っていない。みんなに、胸を張って帰ろうと話します」。延長12回を戦い抜いた日高の主将長井は誇らしげに言った。優勝候補を次々に破った日高の見事な戦いぶりに、スタンドなどから惜しみない大きな拍手が送られた。

全国大会

<1回戦> 宇都宮南 6-11 市和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
宇都宮南 0 0 1 1 0 0 4 0 0 6
市和歌山商 2 0 5 0 1 1 0 2 × 11

 市和歌山商は長打5本を含む12安打で11得点をあげ、宇都宮南の終盤の追い上げをかわして初戦を突破を決めた。
 市和歌山商の打線の中軸は1,2年生。1回裏一死1、2塁の好機に2年生の4番梶本が打席に入った。狙っていた内角の変化球。思い切り振った打球は中堅手の頭上を越える先制の2点二塁打。
 1点差に迫られた3回裏は俊足の松間の盗塁と死球などで一死1,3塁として打者は梶本。「死球の直後は直球が来るはず」。冷静な読み通り初球の直球を中前にはじき返し、貴重な追加点を挙げた。さらに一死2,3塁の好機に小久保が鋭いスイングで右前に運び、2人が生還して7点目。主導権を握る貴重な一打になった。
 市和歌山商の主戦・玉置の生命線は縦に大きく落ちるカーブ。このカーブを武器に6回までに2点に抑える力投を見せていた。しかし7回に疲れからか、突然崩れて3点差に詰め寄られた。楽勝ムードが一変した8回から救援したのが田中投手。「逆転されなければいいんだ」と言い聞かせた。先頭打者は打ち取ったものの緊張からか球が思うように走らず、一死満塁のピンチを迎えたが、後続を三振と内野ゴロで切り抜け、9回も宇都宮南打線を抑え込んだ。
 宇都宮南は7回、篠崎の3点三塁打などで反撃したが、8回一死満塁の好機を2番手田中に阻まれた。

<2回戦> 聖光学院 8-4 市和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
聖光学院 1 0 0 2 0 1 4 0 0 8
市和歌山商 0 0 1 1 1 0 0 0 1 4

 市和歌山商は聖光学院と対戦し、3盗塁を決めるなど市和歌山商らしい機動力を生かした攻撃を見せたが、長打に犠打を絡めた相手の手堅い攻撃の前に、最後まで主導権を握ることができず、4-8で敗れた。
 1点を先制された市和商は3回、三本間に挟まれた松間が、相手守備の乱れを誘って同点。再度1点差で迎えた5回、二死走者なしから小久保の適時打などで同点とすると、応援団の熱気も急上昇した。しかし、6回に1点追加され、7回にも一死満塁から左中間フェンス直撃の走者一掃の二塁打を打たれて劣勢になり、最終回の反撃も松間の三塁打と松本の適時打で1点返したにとどまり、市和歌山商の夏の舞台は幕を閉じた。
 聖光学院は先頭打者が出塁した5イニングのうち4回を得点につなげた。犠打や進塁打で好機を広げ、内野ゴロでも確実に点をつなげる効率のいい攻撃が光った。