第85回<平成15年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 粉河 7-8 国際海洋二
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
粉河 2 0 2 1 1 0 1 0 0 7
国際海洋二 2 0 1 0 0 0 3 2 × 8

 両チーム合わせて24安打の乱打戦となったが、国際海洋二が13四死球、失策7を記録しながらも、終盤の集中打で制し、初の決勝進出を果たした。
 国際海洋二は立ち上がりから沖の制球がままならず、四死球に失策も絡んで、失点を重ねた。しかし8回、5安打を集中して1点差に追いつき、さらに9回、沖野中前安打と宮城の右前安打で一死1、3塁とし、木村の幸運な三遊間安打で同点。平本がつないで満塁とし、中禮禮の投ゴロが併殺崩れとなる間に三塁走者の宮城が本塁を駆け抜け、サヨナラ勝ちした。
 粉河は1回、敵失と2四死球で二死満塁とし、辻内の右前安打で2点を先制。3回には、内野安打と敵失で1点を挙げて勝ち越し、さらに山田の右前安打で加点。その後も小刻みに点を入れたが、及ばなかった。

<準決勝> 智辯和歌山 8-5 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 2 0 3 0 1 0 2 8
南部 1 2 2 0 0 0 0 0 0 5

 智辯和歌山が先制されながらも連続本塁打を含む14安打で南部に逆転勝ちし、2年連続の決勝進出を果たした。
 智辯和歌山は3回、前田匡と嶋田の連続本塁打で1点差に詰め寄ったが、その裏に2点本塁打で点差を広げられた。「甲子園に出たくないのか」という髙嶋監督の言葉に選手が奮起。5回一死1、2塁から堂浦、上野、山崎の適時打で3点を加えて同点に追いつき、7回には一死1塁から本田の三塁打で逆転。さらに9回には嶋田の右前安打などで一死2、3塁とし、本田が中前安打に運んで2点を追加した。3回から救援した滝谷は、中盤のピンチを落ち着いた投球で切り抜け、南部の反撃を断った。
 南部は1回、敵失の走者を久堀が犠飛でかえし先制。2回には二死2、3塁から山本の右前への2点適時打、3回には岡本が2点本塁打でリードしたが、終盤打線がふるわなかった。岡本は中盤以降、5連投の疲れが出た。

<決勝> 智辯和歌山 10-1 国際海洋二
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 2 4 1 0 3 0 0 10
国際海洋二 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

 智辯和歌山が15安打10得点の猛攻で国際海洋二を圧倒し、2年連続12回目の甲子園出場を決めた。
 智辯和歌山は3回、堂浦の中前安打と四球で無死1、2塁とし、次打者は本田。1、2回に三塁に走者を進めながらチームが凡退に終わり、「悪い流れを引き戻そう」と高めのカーブを引っ張り、三塁線を抜ける2点適時打で逆転した。
 4回には、坪内の遊撃手強襲安打と「最多本塁打記録」を狙って打席に入った嶋田の一塁線を抜ける二塁打などで無死満塁とし、捕逸と上野、本田、天本の適時打で一挙に4点を加えた。7回にも、無死1,2塁から上野、本田、山崎の主軸が左右に3連打して3点を加え、試合を決めた。
 「回を追うごとに制球が良くなった」という坪内は、得意のスライダーで連打を許さず、2四球5安打に抑えた。
 国際海洋二は1回、先頭打者中禮が「狙っていた」という内角高めの直球を振りぬいて左翼フェンス直撃のあわや本塁打という二塁打で出塁。犠打で三進し、坪内が「力んでしまった」という暴投の間に生還して先制した。
 4回には、沖の左前安打と四球などで一死2、3塁と好機をつくったが、後続を断たれた。5回と9回にも単打で出塁したが、併殺で好機を広げられなかった。
 前日の粉河戦を一人で投げ抜いた主戦沖。「ここまできたら疲れはみんな同じ」と気力を振り絞ってマウンドに登った。立ち上がりで連続四球を出すなど、制球に苦しんだが、カーブとスライダーを武器に6三振を奪い、197球を投げ抜いた。
 国際海洋二の甲子園出場はならなかったが、最後まであきらめない戦いで、有力校を次々と破る健闘に観客から惜しみない拍手が送られた。

全国大会

<1回戦> 智辯和歌山 6-1 長野工業
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 1 0 2 0 0 0 3 0 6
長野工業 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1

 智辯和歌山の左腕、滝谷がスライダーを有効に使って、長野工を5安打1点に抑え、初戦を飾った。
 打線は4回二死1、3塁で加藤が勝ち越しの三塁打。中盤は相手投手の巧みな投球に追加点を阻まれたが、8回、連続四球で二死1、2塁となって打者は5番山崎。2点をリードしながら5回以降、味方打線はわずか1安打で、山崎にも当たりは無かった。「思いきり振ろう」。麻場正投手の2球目をフルスイングした。手ごたえはあった。この山崎の3点本塁打で相手を突き放し、「猛打」智辯和歌山らしさを取り戻した。9回裏、二死1塁で、右中間安打をされたが、右翼・山崎の三塁への好返球で走者を刺し、試合を締めくくった。
 2回裏、2本の長打で同点に追いつかれ、なおも一死1、2塁のピンチ。初球から振ってくる強気の長野工打線だが、捕手の加藤は滝谷の速球に振り遅れていることに気づいた。「まっすぐでいこう」。加藤のリードに滝谷がこたえた。このピンチに連続三振。その後も持ち味の速球を生かすリードで長野工打線を抑え込んだ。
 長野工は2回、児島が同点打。麻場正も工夫した投球で、強豪校相手に健闘した。

<2回戦> 智辯和歌山 3-6 常総学院
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 0 2 0 0 1 0 0 3
常総学院 2 0 0 0 2 0 1 1 × 6

 智辯和歌山は常総学院と対戦。初回に失策がらみで2点を先制され、同点に追いついた中盤にも再び失策でリードを許すなど、守備の乱れから最後までリズムに乗り切れず、3-6で敗れた。
 三塁手の森川が「あっ」という驚きの表情を浮かべた。1回の一死1塁。痛烈な打球を捕り、二塁手堂浦に送球した後だ。堂浦の胸元への好送球。理想的な併殺を思い浮かべる場面。堂浦はグラブを差し出すと同時に、視線を一瞬一塁に向けた。その瞬間、グラブからボールがこぼれた。なおも二死1、2塁で吉原の右前安打を処理した右翼手山崎の本塁返球が高くそれ、一塁走者まで生還を許した。
 守りの基本を忘れたプレーの連鎖。が、信じられない光景はまだ続く。5回、二死2、3塁。滝谷が代打上田の詰まった打球をジャンプして捕った後の送球は、一塁手本田のはるか頭上越える高投となり、2者が生還した。失策が致命的な4失点に結びつき、攻撃も後手後手に回ってしまった。
 2点リードされた7回、二死1塁で本田は6球目を一塁線へ流し打ちすると、打球は右翼の深いところへ飛び、1点を返す三塁打。3点を追う9回の一死1,2塁の好機。上野が直球を左前に運んで一死満塁にしたが、本田の三振で二死。続く山崎は一塁への飛球。相手と同数の12安打を放ちながらも、左右の継投に苦しめられて、あと1本が出ず、2回戦で甲子園をあとにした。