第2回<大正14年>選抜中等学校野球大会

<2回戦> 高松商 5-3 和歌山中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
高松商 0 2 0 0 0 1 0 2 0 5
和歌山中 0 0 1 0 1 0 0 1 0 3

  高松の打者はみな第1球目から野田の球を打って出た。3者凡飛球に終わったが、そのアクチプな戦法が明らかに認められた。その裏に四球で出た和歌山中の寺井が本塁で刺されたが、こんなときは三塁コーチャーの機敏な判断によらなければならない。3回目から野田の球は目に見えてさえてきた。得意のドロップで打者の胸あたりをねらったのは、スイングの大きい敵打者に対して機宜を得た処置と思うがドロップ一点張りでほとんどストレートボールをまじえないのはとっておきの武器がピンチにおいて役に立たなくなる結果にはなりはしないかと思う。高松の宮武投手はコーナーをねらいすぎるせいか、ボールが多く大切な肩をウエストしすぎるきらいがあった。宮武のような体力の偉大な投手はとかく肩の節約ということをおろそかにするものであるが、あれくらいのスピードとカーブを持っているのであるから、もうすこし味方の守備力を信頼して敵を早く凡打さすことに意を用いてはどうかと思う。しかし、宮武のアウトコーナーの低いストレートボールと打者の腰と胸の間を通る速い”アップ”ぎみのサイドスローの直球とには和歌山中も大分悩まされていた。試合を通観するのに守備、打撃、走塁いずれの点においても高松に一日の長がある。和歌山中の6番以下の攻撃力の弱いことはその作戦をかなり消極的なものにした。しかし、和歌山中の古い歴史と伝統の底の強さとは近き将来においても必ずや偉大なチームに完成することと思う。高松の強みはなんといっても投手宮武にある。好漢願わくば自重せよ。