第38回<昭和41年>選抜高等学校野球大会

<1回戦> 高野山高 0-4 土佐高
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
高野山高 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
土佐高 1 1 1 0 1 0 0 0 × 4

 初回、ともに先頭バッターが三塁打をかっ飛ばして、花々しく戦いの口火がきられた。
 高野山の上垣内が左中間へ、土佐の秋田が右中間へ、曇り空を吹き飛ばすような快音。
 この先制機を、高野山は3番芋生が2度のスクイズ失敗で逃したのに、土佐は2番尾崎が左翼へ犠飛をあげて、一死で簡単に先取点を奪った。ここから明暗2筋、両チームはそれぞれの道を歩んだ。
 土佐は2回にも無死上岡、広田の連続短長打で二、三塁とし、けん制球をそらした三塁手の失策で1点。3回にも、安打、敵失、四球で足場を築いたあと、また犠飛で1点と動きのにぶい高野山の虚をついて、小刻みに加点した。
 高野山は2回にも絶好機をにがした。四球と戸田の二塁打で、無死走者二、三塁としながら、下位打者3人が、上岡投手のつり球にひっかかって連続三振。
 バッティングが幾分進歩したというもののこのあたり高野山の非力さがうかがえた。1回は失敗こそしたが、ここでもう一度、スクイズを考えてみる打順ではなかったろうか。1、2回上岡がややぎこちないピッチングだったから、結果論ではなく、ベンチの迷いが惜しまれる。2回まで投球数の多かった下手投げの上岡は、これで立ち直った。3回からは制球力がよくなり、スピードも加わってきた。高野山はその後も安打は放ったが、堅陣のバックを信頼して投げる上岡の内角球、特にシュートにつまって、土佐に火をつけるに至らなかった。
 高野山の横山投手も序盤戦で低目に制球できなかったが、コントロールを取り戻してからは、くいついてくる土佐打線相手によく投げた。だが投手の肩の緊張がぬけないうちに、内野が連失を重ねては、打たせてとる横山にとってますます不利。
 その点、土佐は塁を一つでも多くとる抜け目なさと、カンの鋭さで、高野山をはるかにしのいだ。土佐の実践向きのバッティングは、5回に秋田が左翼へ大会4本目の本塁打をたたき込んで、高野山の希望を全くかき消した。
 練習量と実践経験の差が、試合運びに反映していた。ピンチにもあわてない土佐、ピンチばかりか、味方のチャンスにまで動揺気味の高野山という印象が残る。