第54回<昭和57年>選抜高等学校野球大会

<1回戦> 大成 2-0 静岡市立
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
大成 0 1 1 0 0 0 0 0 0 2
静岡市立 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 初出場の大成が数少ないチャンスをものにして1勝をもぎとった。
 大成は2回二死から久保が四球後、すかさず二盗。続く佐原が3球目の直球をさからわず中前にはじき返して先制した。さらに3回一死後田村が右前打、バントで送られた後、西のなんでもない三ゴロを走者に気をとられた野沢が一塁へ悪送球、田村が還って2点目をあげた。ペースをつかんだ大成は5回一死から北、田村の連続ヒット、二死後敵失で満塁と好機を広げたが八木が三邪飛に倒れて加点できなかった。
 守っては左腕・佐原が大・小のカーブを駆使して静岡市立打線を4安打散発に抑えて完封の見事なピッチング。
 静岡市立は1回漆畑が内野安打して先制の好機だったが後続なく無得点。3回には敵失とバントで得点圏に走者を出したが、佐原の緩急おりまぜたカーブに幻惑されてどうしてもヒットが続かない。9回海野・杉浦が連続三遊間安打、深沢のバントで一死二、三塁と遅まきながら反撃のチャンスをつかんだものの、ここでも後続がカーブを打たされて、最後まで佐原をとらえることが出来なかった。深沢も変化球主体で打たせてとるうまいピッチングを見せたが、内野の乱れから足を引っ張られたのは気の毒だった。

<1回戦> 箕島 6-2 上尾
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
箕島 1 0 0 3 0 0 0 2 0 6
上尾 0 0 0 0 0 2 0 0 0 2

 箕島が積極的な攻撃、相手のミスにつけ込むまい攻撃、そして長打力と文句のない打をみせて上尾に快勝した。上尾にとっては前半に失策を重ねて失点を重ねるなど悔いの残る試合だった。
 箕島は1回、鮮やかな先制攻撃をみせた。まず先頭の杉山が初球を左前に返し、左翼・宗像が打球をそらす間に二進(記録は二塁打。)山田も初球バントし、一死三塁としたあと岩田の左犠飛であっという間に1点を入れた。この間、わずか7球、日野は立ち上がりの虚をつかれ公式戦の連続無失点は70で早くも消えた。
 そして4回、今度は上尾の乱れに乗じた。山田が遊失で出塁、バントで二進した後、南村も三塁手の一塁悪送球でニ、三塁。続く泉が投前スクイズを決め、さらに江川が四球と捕逸で二塁に進んだ二死に、三塁に住吉の右中間三塁打で2点加点。箕島は4回まで2安打で4点と効率のいい攻めだった。
 一方、上尾は5回までノーヒット、箕島の右腕・上野山は外角にゆるいカーブと内角に切れるシュートを制球よく決め、さらに要所に速球を生かして上尾打線を寄せつけなかった。
 しかし、上尾はようやく6回、上野山の投球に慣れ、松枝が四球のあと松沢が中前に初安打して無死一、二塁。清水のバントで二、三塁とし、若林の三塁内野安打で1点を返した。さらに暴投で2点差として、試合を面白くしたが箕島は8回、先頭の岩田が左翼へ今大会第2合本塁打。そして南村の二塁打と江川の左前適時打で4点差とする力強さを発揮して、上尾の追撃を断ち切った。

<2回戦> 大成 0-1 中京
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
大成 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
中京 0 1 0 0 0 0 0 0 × 1

 中京の野中投手が森田であげた唯一の1点を3安打で守り切って、中京は念願の"甲子園100勝"を達成した。試合時間は、わずか1時間24分と短かったが、ともによく守り緊迫した好試合だった。
 1回、三者凡退で終わった中京は2回、先頭の4番・森田が1-3から内角寄り、高めの好球左越えラッキーゾーンに運び先制した。森田は1回戦の桜宮戦でも、最終打席の8回に大会初ホーマーを放っており、2打席連続(2試合連続)のホーマーだった。
 しかし、1点を先行したものの1回戦で好投した野中の立ち上がりはやや不安だった。ボールが走らず、制球も今ひとつで2回、楠井に四球を出したあと暴投で一死二塁と自らピンチを招いた。だが大成打線は粗さが目立ち、森下・久保とボール球に手を出し凡退。その後、野中はようやく落ち着き大きく曲がるカーブでカウントをかせぐ余裕のあるピッチングで5回まで無安打で抑えた。
 しかし大成も必死、6回二死後、田林が一塁線にむずかしいゴロを打ち一塁手がはじく間に二進(二塁打)。続く野田も右前にかえし一、三塁の同点機を迎えたが西が二ゴロに倒れ無得点。あと1点とれb、ほぼ勝を握れる中京も2回以降変速モーションの左腕、佐原にタイミングが合わず6回まで1安打と抑えられてしまった。
 そして7回、二死から野中の安打と四球、中川の左前打で満塁とダメ押し点の好機をつかんだが、今井の二塁ゴロ封殺。追加点が奪えない重圧にもめげず、野中投手は終盤も淡々とした落ち着いたマウンドさばきで最後まで大成につけ入るスキを与えなかった。投げた球数は106球。守備の乱れが目立つセンバツで中京・大成ともに無失策と見応えがあった。

<2回戦> 明徳 3-4 箕島
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
明徳 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 1 3
箕島 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 4

 明徳が箕島に先手をかけておびやかせば、箕島が意地の反撃で逆転勝ちする球史に残る好ゲームを展開した。白熱した投手戦で、今大会初の延長戦に突入した試合は一転して活発な攻め合い、延長13回明徳が梶原の二塁打を足場に2点を先行、弘田の力投を待ったが箕島もすぐ反撃、3長短打で2点をあげ振り出しに戻す粘りを発揮、明徳も負けじと14回に2四球と武田の安打で一死満塁から堀尾の中前打で再度、箕島にプレッシャーをかけた。
 このリードで下位打者から始める箕島の敗色は濃く見えた。その箕島が勝ちゲームに持ち込んだのだから、まさに神がかりである。
 1点を追う箕島14回一死後、木戸が中越え二塁打、上野山の代打、藤本の三塁ゴロは三塁手のエラーを誘って一、三塁。江川が歩いて塁上を埋めたあと、杉山は2-3後の内角カーブを三塁線に快打、あざやかなサヨナラ勝ちにした。
 明徳の善戦は特筆されるが、強いて敗因をあげれば、低めの制球力で箕島打線を抑えていた弘田投手に疲労と勝利を意識していたことが箕島につけ込まれたといえる。それだけに、好機を伸ばすバントの失敗や強引な攻めでチャンスをつぶしたのは痛かった。早めに先行していれば、弘田投手を楽にしたかもしれない。ことに11回(一死一、三塁)、清水の捕邪飛で一塁走者が二塁をおとしいれなかったことの判断のミスや12回の一死二塁、下崎の中前打で走者を本塁に突っ込ませたのは惜しまれる。

<3回戦> 箕島 0-1 PL学園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
箕島 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
PL学園 0 0 1 0 0 0 0 0 × 1

 ともに奇跡の逆転劇を演じる力を持つチーム。最後まで緊迫したゲーム展開となったが、PL学園のエース、榎田が堅い守りに支えられて強打の箕島打線を沈黙させ、1点を守り抜いた。
 PL学園の貴重な1点は3回簡単に二死をとられてからたたき出された。1番に打順が戻り佐藤が左前打して二盗、清水四球の二死一、二塁に久保田が流し打ちで鮮やかなに一、二塁間を抜いて佐藤がホームを駆け抜けた。5回には星田の左前打、佐藤の右中間二塁打で一死二、三塁と追加点の好機を作りあげた。しかし、清水の二ゴロで星田が久保田の遊ゴロ(記録は安打)で二塁の佐藤が本塁を突こうとし、いずれも三本間に刺されてしまった。
 箕島は1回二死後、岩田・南村が連続右前打して以降、伸びのある速球と効果的な変化球を織りまぜた榎田を打ちあぐみ凡退の連続。8回には、前日延長14回を投げ抜いた疲れもみせずに好投する上野山を退けてまで代打攻撃をかけたが変らず、PL学園の1点が重くのしかかった。だが9回に猛反撃。一死後杉山が中前打、続く岩田がうまいバントを見せ球を拾った榎田が間に合わない一塁に高投して一死二、三塁。連日の逆転かと期待がかけられ、南村のカウント2-2からバッテリーの意表をつくスクイズを敢行。しかしファウルのスリーバント失敗に終わり、続く泉も投手ゴロを打たされてしまってゲームセット。箕島に惜しい結果となったが、土壇場のピンチを耐え抜いたPL学園の冷静さが光った。