第53回<昭和56年>選抜高等学校野球大会

<1回戦> 福島商 1-2 御坊商工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
福島商 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
御坊商工 0 0 1 1 0 0 0 0 × 2

 御坊商工が大会屈指の左腕、福島商の古溝投手を気力で攻め落とした。古溝の立ち上がりはやや制球は乱れたが、力のあるストレートは評判どおりの威力を持っていた。しかし、御坊商工は3回、下位打線で好機をつかむと無安打で先取点をあげるソツのなさをみせた。川口が1-3から歩いたあとすかさず二盗。薮内の三塁前バントで三進した川口は山下の二ゴロで本塁を陥れて先取点。そして4回は、先頭の中筋が第1球のストレートをジャストミート右中間を豪快に破る三塁打、一死後、薮死球の一、三塁からの羽佐が三遊間を破る適時打して中筋を迎え入れた。
 これに対し福島商は、御坊商工・薮投手の重い速球、切れのいい変化球にあって3回まで6三振を喫する始末で攻略の糸口がつかめなかった。やっと4回、芳賀が投手頭上を高いバウンドで越える安打とすると西牧が三遊間を破った。高野が中飛に倒れたあと小林も三遊間を破って一死満塁としたが古溝の深い遊ゴロで芳賀が還ったものの、御坊商工内野陣の好守にあって併殺を食い、1点どまりに抑えられた。これが後まで響いた。
 御坊商工の薮は5回以降、打たれながらも要所をぴしゃりと締めた。気力もさることながら古溝に投げ勝った薮の好投が光った。

<2回戦> 大府 0-4 御坊商工
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
大府 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
御坊商工 0 0 0 1 2 0 0 1 × 4

 御坊商工が果敢な攻撃スピード自慢の大府・槇原投手を攻略した。2回一死一塁と3回無死二、三塁をいずれも併殺で逃したが、4回、先頭の中筋が右中間三塁打したのを生かした。一死後、薮が右中間に大きな犠飛を打ち上げて中筋を迎え入れた。さらに5回は川口が敵失で出た一死二塁から、山下の一塁線を破る二塁打と森田・中筋の連安打で2点を加えた。
 槇原は快速球でストライクをとり観衆をわかせる出足だったが、軟弱なマウンドに踏ん張りがきかなかったのか、回を重ねるごとに球威をなくし、得意の快速球が決まらなくなった。そうしたところを御坊商工の打線がつけ込んだものだが、御坊商工の1人1人は実に気迫に満ち、剛腕・槇原の球に食い下がっていったのは見事の一言に尽きる。
 打線にそして森田遊撃手の好守などバックの大きな援護を受けた御坊商工の薮投手は緩急の球をコーナーに使って投げ分け、大府打線をかわした。大府は2回一死、鈴置が二塁打したが、後続が凡退、あとは制球を乱さぬ藪を攻め切れなかった。8回、槇原と代打・曽我の連安打で無死一、二塁の反撃機をつかんだ。しかし、薮のふんばりにあって得点に結びつけられず逆にその裏、薮の二塁打などで1点を許し、御坊商工に突き放された。水びたしの最悪のコンディションで両チームの選手には気の毒な試合になったが、御坊商工の攻守に見せたファイトが大府にまさった。

<3回戦> 御坊商工 0-4 上宮
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
御坊商工 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
上宮 0 2 0 1 0 0 0 1 × 4

 打力で一枚上の上宮が、柚木の好投もあって御坊商工に快勝。上宮は2回、先頭の藤原が右前へ鮮やかに流すと柚木がバントで藤原を確実に進めた。松本が三邪飛に倒れた二死後、笘篠がストレートを中前へはじき返すと、気落ちした藪に今度は森が左翼線へ強烈な二塁打を浴せて2点を先取した。4回も藤原が中前安打、二死二塁から当たっている笘篠が左中間を破る三塁打で加点。終始上宮ペースで進めた8回には二死から藤原がストレートで歩いて二盗、柚木の三遊間を破る適時打で藤原を迎えきっちりダメを押した。
 御坊商工は1回、山下が柚木のストレートをとらえて中前打、森田のバントで二進、中筋四球の一死一、二塁から石本が中前へ落した。ところが走者の拙さから中筋が2封されるセンターゴロで先取点の好機を逃がしたのが痛い。4回一死二塁、6回一死一、二塁の反撃機も柚木の好投の前に後続が凡退、1点も報いることができなかった。