第17回<昭和6年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会

<準決勝> 郡山中 11-5 伊都中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
郡山中 0 2 3 4 0 0 1 1 0 11
伊都中 2 0 1 0 2 0 0 0 0 5

 連日の奮闘に両軍共に疲れきっていた感があった。殊に伊都の投手は完全にコントロールを欠き徒らに敵打者に名を成さしめたが、ゲームを棄てず最後まで投げたのは悲荘だった。

<準決勝> 耐久中 1-4 和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
耐久中 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
和歌山商 2 2 0 0 0 0 0 0 × 4

 両軍共はち切れんばかりの元気で善く闘い、前半の打撃戦は後半に入って投手戦の形に変わり大チームの面影を見せた。耐久中・田上投手は終始スピードのある剛球にベースの真中から外角を通る曲球を混じえて和歌山商の打者を悩ましたが、前半において浮き気味の高いコースに入る速球をヒットされて決定的な4点を許したのは諦めがたいところであろう。和歌山商・紫田投手はよいコンビネーションであった。3日間にややスピードが落ちたのは無理からぬところだが、しかし、しばしば襲われかけたピンチを食い止め味方の攻撃を十分発揮せしめた功績は素晴らしいものがあった。

<決勝> 郡山中 1-4 和歌山商
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
郡山中 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
和歌山商 0 0 0 0 1 2 1 0 × 4

 何よりも先ず郡山中の善戦健闘を称賛したい。連日の奮闘にすっかり洗練されて見違えるばかりの好プレーぶりを見せて、堂々和歌山商の堅陣に肉薄して行った意気と技倆、正に敗れて尚悔いなしというべき武者振りだった。仲村投手の出来はとても素晴らしいもので、打者の近くからホームを通る曲球には流石の和歌山商の健棒も打ちあぐんだようだ。しかも最初の仲村のホームランで堂々1点を先取して、手に汗を握らせ勝敗の予断を許さなかったが、5回久保の三塁ベース上を抜くゴロを野球ファウルと誤認してむざむざ三塁に進ましたのが蹉跌のきっかけとなった。更に6回赤井死球に出て熊代のホームランに一挙、2点を奪われ勝負を決してしまった。
 一方和歌山商は最初楽観していたせいか、前半に思わぬ苦戦を続けた。殊に紫田の出来栄えが良くなかったのはゲームの開きを縮めた最大の原因だった。かくして和歌山商は雌伏10年、遂に宿望達して駒を甲子園へ進めることとなった。

全国大会

<1回戦> 和歌山商 1-4 広陵中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山商 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
広陵中 0 0 0 0 0 0 1 3 × 4

 入場式直後の試合、しかも和歌山商にとっては目に余る強豪、しかしその大敵に果敢に立ち向かった。1回久保遊撃内野安打、2回は赤井左前安打で広陵中の陣営を脅かし、守れば楠木の右翼の難飛球を熊代駿足を飛ばして見事に好捕し部矢の三塁右の安打を許したが山田の三匍で見事な併殺を演じた。3回に至り一死後、井上長梶に快音生れ左中間痛烈に二塁打で抜き久保遊撃右を破り井上本塁に憤死、二死となったが屈せず強打者赤桐衆望の期待にそむかず三遊間に安打して久保を迎え堂々たるエンドランなどで、1点を奪取して意気天を衝く。この1点リードに気を良くして紫田投手懸命の投球を続け3,4回広陵中強打者連を撫で切り敵をして顔色なからしめた。
  後半に入り広陵中必死の反撃を試み7回駿足の角谷、サウスポーの弱点を巧みについて突如本盗を企て成功、同点となり蘇る。更に8回二死から下位打者を迎え紫田気を緩めたか、或るは漸く力尽きたか、4安打を集中され忽ち3点を挙げられ和歌山商善戦空しく遂に敗退した。和歌山商8回の好機を失ったことが直接の敗因をなしたもので稲田投手のカーブが外角に流れて雑賀赤桐を四球に出しバントに二、三進した時、赤井はあまり得点をあせるかの傾きがあった。もう少し待って好球を狙い打ちしていたら和歌山商のためには実に惜しい逸機であった。