第64回<昭和57年>全国高等学校野球選手権大会

和歌山大会

<準決勝> 智辯和歌山 8-10 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 1 1 0 0 0 2 4 0 8
南部 0 1 2 0 0 0 6 1 × 10

 終盤、激しい打撃戦になったが南部が7回、2本塁打を含む打者10人の猛攻で挙げた6点で辛勝した。
 7回逆転され1点をリードされた南部は一死後、左前打の植田を置いて土井が右翼越えの二点本塁打。さらに永井が中前打ちで出塁、葛本がヒット・エンド・ランを決め一死一、三塁とし続く山崎智が投前スクイズを決めた。本塁返球の間に一塁から三塁へ走った葛本は刺され二死となったが、湯川の右中間二塁打で山崎智も返って4点目、寺前が左翼越えの本塁打で2点を追加、この回一挙6点を入れた。
 8回には無死一、三塁で永井が左前適時打して1点を加え、粘る智弁和歌山を突き放した。
 智弁和歌山は2回、佐藤の大会2本目の本塁打で先制、7回には佐藤の三塁打などで2点、8回にも長短4安打、打者一巡の反撃で4点を入れ食い下がったが、後半、疲れの見える三宅が打ち込まれ惜敗した。

<準決勝> 新宮 4-0 吉備
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
新宮 0 0 2 0 0 1 0 1 0 4
吉備 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 新宮・松本が強豪吉備を散発6安打に抑えて完封、味方打線も7本の長打で援護し強敵を破った。
 新宮は3回、先頭の井戸が左前打し、二盗、小栗須の送りバントで三進、続く田中荘が一塁前へ絶妙のスクイズを決め先制、二死となったが松谷が左中間を破る二塁打のあと、たたみかけるように佐古口も中越え三塁打し、松谷がかえって2点目をあげた。
 6回には二死後、玉瀬を二塁に置いて井戸が中越え二塁打して加点。さらに8回一死では三塁走者の田中政がスクイズをはずされ三本間にはさまれたが、本塁前でうまく回り込みだめ押した。
 吉備は前半、松本を攻め、3回には小原、岡本の連打、4回にも弓場の中前打、四球などでいずれも二死一、三塁の好機を迎えたが適時打がでなかった。終盤は回を追うごとに調子を上げてきた松本の速球にてこずり完敗した。

<決勝> 新宮 2-3 南部
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
新宮 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 2
南部 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1 3

 

 南部の主将杉本の投球数は12回で180球を超えた。四連投。ピンチの連続。『なんとか点をとってやりたい。』その回の裏、打席に立った土井は2球目、低めに入るカーブをすくい上げるように打つと球は右中間に、この日一人で3本目の二塁打だ。続く永井が投前に送りバント。見事に決まった。葛本に回った。『カウントによってはスクイズもある。だが最初は思い切って打て。』井戸監督の指示をうけて葛本はふるいに立った。
 葛本はこの日いいところがなかった。4回には一死一、三塁にスリーバントスクイズを試みてファウルで三振、8回新宮の攻撃で田中壮の二ゴロをはじいて二塁走者の生還を許した。『おれ一人で足を引っ張っている。今度こそ。』5球目、力いっぱい打った球はセンターに深々と飛んだ。中犠飛。本塁を駆け抜ける土井。優勝だ。選手たちは小躍りし、手を握り合った。涙、涙・・・・。
 試合前の打撃戦の予想は見事に外れた。緊張感みなぎる投げ合いである。杉本もよく投げたが、新宮・松本も負けなかった。前半こそボールが先行、7四球を出した。しかし、同点に追いついた8回から調子はしり上がりに良くなった。守備陣も攻守でもり立てた。最後のふんばりだ。投球数120球を越えてからかえって球が生きてきた。南部打線がつまる、内野ゴロの連続だ。
 12回の危機。松本はこう読んだ。『スクイズはない。打ってくる。それなら打者をつまらせる速球しかない。』しかし、球は外野へはじき返された。『低めの球を南部の打者はよく打ってきた。自分としては精いっぱい投げました。』と、二年生の松本。悔いの残らない懸命の投球だった。

全国大会

<1回戦>
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
熊谷 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1
南部 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 熊谷は1回、先頭の増田がファウルで粘って四球。小野が型通りバントで送ったあと、戸井田の二ゴロで三進。星野は2ー3からの真ん中絶好球を左中間二塁打して1点を先行した。走者を進めるチームバッティングといい、堅実な攻めは見事。
 こうなると、試合の興味は南部打線が熊谷のエース江頭をどう打つかにかかった。が、江頭はゆっくりしたモーションから内外角に速球を散らし、時折りカーブを交える丁寧な配球で南部打線のタイミングを狂わせた。南部は1回一死から山崎英が右前安打したが、二盗に失敗。さらに四球と死球で二死一、二塁。だが、杉本が2ー1と追い込まれたあとのカーブに体が泳いで投ゴロ。得点圏に走者を進めたのはこの回だけで、結局、3安打に抑え込まれた。速球に降り遅れていただけに下位打者はバットを短く持つなどの工夫が欲しかった。
 熊谷は7回まで12残塁。南部の思い切ったバントシフトに惑わされ、打って出て併殺されるなど、中盤は焦りがあった。今後の課題だろう。