第7回<大正10年>全国中等学校野球選手権大会

紀和大会

<予選> 和歌山中 39-0 和歌山工
<紀和決勝> 和歌山中 11-1 郡山中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山中 5 1 0 0 2 3 0 0 0 11
郡山中 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1

 両軍の実力に隔りあり和歌山中は1回深見の三塁打、柳、田島の二塁打に敵失を加えて一挙5点を入れ更に2回1点、5回深見再度の三塁打を放ち6回四球と失策、安打に3点を加え全く無人の境を征くが如く大勝した。

全国大会

<1回戦> 和歌山中 20-0 神戸一中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山中 5 1 0 1 0 4 3 0 6 20
神戸一中 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

 不戦勝の和歌山中は神戸一中と対戦したが、神戸は北島、井口両投手に完封され僅かに2安打に終わった。
これに反し和歌山中は1回戸田遊匍失に出るや深見、井口の二塁打を初め4安打を集中5点を挙げ2回にも二死後、北島中前安打、二、三塁を連盗し暴投に得点、後半は更に猛打を振って大量得点を重ね8回戸田中堅本塁打を放つなど驚異的な強さを示して大勝した。

<2回戦> 和歌山中 20-0 釜山中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
釜山商 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1
和歌山中 5 0 4 4 4 0 4 0 × 21

 釜山は7回まで4安打散発したばかりで、9回ようやく山本右翼線二塁打し捕逸と二木の安打に零敗を逸れた。和歌山中は1回戸田二匍高投に一挙に二進、深見、堀の安打、北島の右中間三塁打など猛打を浴せて5点、更に3回四球と敵失、武井の中堅安打などで4点、4回にも戸田の右越三塁打、井口の安打、四球で4点加えて問題とせず恰も傍若無人の境を征く有様で和歌山中の大勝に帰した。

<準決勝> 和歌山中 18-2 豊国中
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
和歌山中 2 1 5 1 0 2 5 0 2 18
豊国中 0 0 0 0 0 0 0 1 1 2

 和歌山中1回、戸田右安打し犠打と井口の三匍失、北島の遊越安打に2者生還、2回にも三塁安打の柳が高木の犠打と戸田の中前安打に1点を加え、更に3回井口三匍失に始まり北島の遊越安打と四球、武井の右飛失、戸田の中堅安打後逸で一挙5点を入れ大勢を決した。この波に乗った和歌山中の攻撃振りは驚異的で相手の繰り出す2投手をまるで打撃練習のように打ちまくり大勝した。

<決勝> 和歌山中 16-4 京都一商 
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
京都一商 0 0 3 1 0 0 0 0 0 4
和歌山中 1 0 5 0 1 3 2 4 × 16

 京都一商は頼みとする竹内投手準決勝に足を挫いて欠場したのが手痛く和歌山中1回当たり屋戸田中堅二塁打し8-4の返球悪投に三進、田島の三匍に幸先良き1点を挙げ、3回武井左翼二塁打し戸田二匍失に続くや田島左翼線二塁打して2者を迎う。更に敵失と2個の四球と深見の二塁打など安江投手に襲いかかり一挙5点を加う。京都一商も屈せず3回田中四球、川越の三匍に二進、河瀬二越安打して二盗、原田の二匍失に2者生還、二死後、小冠者、川越左翼線二塁打し原田の中前安打に1点を返し差2点と迫って善戦健斗した。
 しかし和歌山中は5回堀、高木の安打で1点、6回には一死後、田島三塁上を抜き井口の一打、左中間を抜く二塁打となって生還、更に敵失、四球、犠打で2点加えて7回には戸田の右中間2ランホーマーで2点、8回には気力を失った安江投手に攻撃の手を緩めず堀の右越本塁打で2点、更に敵失と深見・武井の安打で2点計4点を加え16-4の大差をもって優勝した。
 京都一商の善戦を期待されながら和歌山中の猛攻に当初より意気消沈、先頭打者、川越の好守好走の活躍は目覚しかったが内野守備特に遊撃と一塁手に欠陥多く捕手の邪飛捕球にも難あり、しばしばピンチを招いた。和歌山中、北島投手は前年同じ京都一商戦に自らの制球難に苦敗を喫しておるだけに一ヶ年の涙ぐましい精進ぶりが報いられ、本大会では見事な出来栄えで外角低目をつく剛速球がよくきまり与えた四球、4試合に僅かに6個という好投ぶりを示し主将の重責を十二分に果たした。