第94回<平成24年>全国高等学校野球選手権

和歌山大会

<準決勝> 智辯和歌山 8-1 桐蔭
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 0 0 0 2 1 5 0 8
桐蔭 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1

 敵失を逃さない智辯和歌山が逆転し、一気に突き放して、8年連続となる決勝進出を決めた。
 1点を追う智辯和歌山は6回一死から、片山の死球、高垣の安打などで二死満塁とし、相手の内外野が走者を刺そうとして悪送球を重ねる間に2点を入れて逆転。7回は死球で出た嶌を犠打で送り、大蔵の右前安打で一死1,3塁として、続く天野の中犠飛で1点を追加。8回には3安打3四球に野選や暴投、捕逸も絡み、打者一巡の猛攻で5点を入れて突き放した。
 先発の蔭地野は先制こそ許したが、5回二死まで無安打毎回奪三振と好投。6回から登板した吉川も毎回の7奪三振と好救援をみせ、味方の反撃を呼び込んだ。
 桐蔭は5回、二死1,2塁から大江の左前適時打で先制したが、総合力で上回る智辯和歌山に対して4失策や捕逸などがあり、勝機を見いだせなかった。

<準決勝> 那賀 2-1 近大新宮
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
那賀 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 2
近大新宮 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1

 信頼度抜群の主戦同士の投げ合いの末、那賀の福井が制球力で上回り、接戦を制して初の決勝進出を果たした。
 1点を追う那賀は6回む無死から才力、北野の連続安打で1,2塁としたが、続く福井の強硬策が裏目となり内野ゴロ併殺で二死3塁に。好機がしぼだかに思われた。しかし、次打者の5球目が暴投となり、その間に3塁走者が生還して同点とした。1-1で迎えた延長10回、那賀は才力の安打と2四球などで二死満塁。近大新宮の吉田が投げた161球目が暴投になり、3塁走者が生還して勝ち越した。福井は緩いカーブを交えた制球がさえ、2回以降4度の得点機を迎えるも、要所を締めた。
 近大新宮は1回、硲、東の長短打などで先制。3回に無死1,2塁の好機を逃したのが惜しかった。

<決勝> 智辯和歌山 4-2 那賀
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
智辯和歌山 0 0 0 0 0 0 2 0 0
那賀 2 0 0 0 0 0 0 0 0
10 11 12 13 14
0 0 0 0 2 4
0 0 0 0 0 2

 「和歌山大会の球史に残る名勝負」。試合を見守る誰もが手に汗握った決勝は経験に勝る智辯和歌山が制し、通算20回目の優勝を飾った。延長14回の決勝を勝ち抜き、戦後初の8連覇を達成した。「王者」を追いつめた那賀は、あと一歩で初の甲子園出場を逃した。
 智辯和歌山の主軸打者が不振を吹き払う快打を放ち、延長14回・3時間38分の死闘に決着をつけた。2点を追う智辯和歌山は7回、先頭の吉川が左中間への二塁打で出塁。犠打で三進後、高垣の左前適時打で1点を返す。さらに犠打と敵失で二死1,3塁とし、嶌への2球目が暴投となる間に、3塁走者が生還して同点となった。2-2の同点で迎えた14回、嶌がこの試合3本目の安打を右前に運び、阪本が犠打を決めて一死2塁。続く打者は決勝までの打率が1割8分台と不調の3番大倉。福井の初球の直球を振り抜き、右翼手の頭上を越えるライナーの三塁打を放ち、嶌が決勝点のホームを駆け抜けた。
 初先発の左腕・吉川は利き腕がつるアクシデントを乗り越えて9回と3分の1を投げ、失点は初回の2点にとどめた。球威のある土井、蔭地野が好救援した。
 那賀は初回、押し出しで先制後、小槙、才力の連打と高島のスクイズで2点目をあげて好スタートを切った。13回、敵失などで二死2塁とし、山本祥が放った安打性の打球が智辯の2塁手阪本に好捕された。
 福井は14回を一人で投げた。スローカーブのあとの速球で内外角をつく頭脳的な投球が光った。智辯和歌山の髙嶋仁監督は「うちに複数の投手がいたことが勝因」と、暗に福井をたたえた。
 福井に劣らず見事だったのは、守備だ。9回、走者を2塁に置いたピンチで、2塁手の山本祥は安打性の飛球を飛び込んで好捕。10回には中堅への大飛球を中堅手・河﨑が背走してつかんだ。捕手の毛利も13回の一死2,3塁、スクイズで突入した走者を本封した。

全国大会

<2回戦> 神村学園 3-2 智辯和歌山
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
神村学園 0 2 0 1 0 0 0 0 0 3
智辯和歌山 0 0 0 2 0 0 0 0 0 2

 戦後初となる地方大会8連覇の勢いに乗って、甲子園での初戦突破をめざした智辯和歌山。立ちふさがる「九州王者」に、あと1点が遠かった。智辯和歌山は神村学園と対戦。相手に先制される厳しい展開となり2-3で惜敗した。
 投手陣の粘りのピッチングで接戦に持ち込んだが、一つのミスが最後まで重くのしかかり、智辯和歌山が初戦で散った。
 1回裏、神村学園の好投手・柿沢の立ち上がりを攻めた。先頭打者の沼倉が初球をたたき、右中間に鋭いライナーが飛んだ。中堅手の好捕に阻まれたものの、続く阪本が中前安打で出塁するなど1,2回ともに3塁まで走者を進めたが、得点できず波に乗れなかった。打線がつながったのは、2点を追いかける4回裏。先頭の吉川が死球で出たあと、続く高垣の打線が敵失を誘い無死1,3塁。天野が左越えに2点適時二塁打を放った。
 だがその後、智辯和歌山打線は、柿沢や救援の平藪を打ち崩せなかった。5回以降、放った安打はわずか1本。終盤の7,8回に一死から走者を出したが、いずれも併殺で生かせなかったのが痛かった。
 0-0で迎えた2回表、二死2塁で智辯和歌山の先発吉川は相手打者を三ゴロに打ち取り、1塁への送球でそのままチェンジのはずが、3塁手が走ってきた2塁走者からタッチアウトを奪おうとして失敗。二死1,3塁とされ、次打者に左越え二塁打を浴び2点を与えてしまった。4回にも、二死満塁から田中の右前適時打で1点を追加された。
 先発の吉川、9回から継投した蔭地野の両投手は5回以降、毎回のように走者を背負う苦しい投球ながら、要所を締める粘りの投球で神村学園に追加点を許さなかっただけに、結果的には2回表のミスをきっかけに失った2点が勝敗を分ける形になった。